Solo album 80's & 90's

Y-ENCE (1987)

76年の前作『On Love』から実に10年以上ぶりのソロ作。この間、ジョー・サンプルとの共演盤『Swing Street Cafe』が発表されているものの、ソロ作としてはまさに待望の一枚となった本作。「David T.Walker & Warm Heart」というバンド名がクレジットされており、メンバーはジェイムズ・ギャドソン(Dr)、スコット・エドワード(B)、ジェリー・ピータース(Key)といった面々に加えてニール・オダこと小田充氏が名を連ねている。冒頭を飾る「Tectonics」で、いきなりDavid Tトーンが静かに炸裂し一気に高揚感が上昇。シンセドラム音がフィルインしてくる辺りはご愛嬌だが、David Tの音色が十分に呼応していて思わず笑みが漏れること請け合い。「Tryone World」でもお得意のDavid T的フレーズが全開。ゆったりとした楽曲群のなか、久しぶりに自由に音を奏でるDavid Tの姿が容易に想像できる会心作だ。

WITH A SMILE(1988)

アルバム冒頭から名曲「Press On」のイントロをそのまま盛り込んだ「Watts At Sunrise」が流れると、過去と現在が対比的に浮かんでもくる88年作。その予兆は、1stアルバム『The Sidewalk』に収録されていた「My Flowers」「Direction Wes」の2曲を、それぞれ「In Full Bloom」「Directions」と改題した再演という形で、ライヴ感覚十分に新たな表情として映し出した。前作同様ニール・オダ氏との共同プロデュース。参加メンバーもほぼ同じ面々で制作された本作は、音作りも前作の延長線上にあるが、1曲のみバーバラ・モリソンのボーカルをフィーチャーしたナンバー「Dreams In Flight」が収録されており、全編インストゥルメンタルの楽曲群の中で一際彩りを添えている。やはり女性ボーカルのバックでプレイするDavid Tは格別の味だ。アルバムラストを飾る痛快なナンバー「Recipe」もDavid Tらしさを感じさせ、心地良い余韻を残して幕を閉じるのである。

AHIMSA (1989)

David T率いるバンドWarm Heartによる3作目にして最後の作品。本作からボビー・ホール(Per)、オスカー・ブラッシャー(Tp)の2名が追加クレジットされている。全曲David Tのオリジナル曲で、ポップ、ソウル、ジャズのエッセンスを縦横無尽に取り入れたナンバーが目白押しの本作は、まさに意欲作という名に相応しい仕上がり。「Plumb Happy」でのスイング感溢れるプレイも聴き応え十分。またシルヴィア・スミスのボーカルをフィーチャーした「Didn't I」でのソウル心溢れるソロプレイも涙モノだ。「Going Up」では2ndアルバム『Going Up』バージョンよりもゆったりとしたジャズ・フレイバーが気分を馴染ませていく。マキシ・アンダーソンのボーカルがゴキゲンなポップナンバー「Good Thoghts」にもやはりDavid Tのゴキゲンなフレーズが呼応し、しなやかなノリを生み出している。

...FROM MY HEART (1993)

通算10枚目、江戸屋レコードに活動の場を移した90年代最初の一枚だ。本作からDavid T愛用のギブソン・バードランドからアーテックス社のオリジナルモデルギターを使用。幾分音色に変化が見られるもののフレーズやタッチは従来のDavid Tそのもの。前作までの参加メンバーに加え、ウィルトン・フェルダーやジョー・サンプルらも顔を覗かせている。「A Place For Us」ではLA屈指のボーカルユニット、ウォーターズの4人が参加。ゆったりとしたムーディなR&Bを奏でている。1stアルバム『The Sidewalk』の再演バージョン「The Sidewalk Today」は、まさに「Today」の名の通り、90年代に入ってのDavid Tの意欲をそのまま伝える形となる快作。原曲との対比も一興だろう。

DREAM CATCHER (1994)

94年発表の通算11枚目の会心作。バランスのとれたバラエティに富む楽曲群が聴き心地良く、David Tのギターもいつもより弾んでいるかのよう。ドラムがこの時期共演回数の多かったジェイムズ・ギャドソンではなく、レオン・ンドゥグ・チャンクラーとケニー・エリオットが務めているためか、しなやかさよりタイトさが幾分際立った感がありシャープさとファンキー加減が増しているのも特徴的だ。また本作では2曲の印象的な歌モノが収録されているのも興味深いところ。「The Best I've Got」では数多くのセッションワークをこなしDavid Tとも旧知の仲のステファニー・スプルイルをボーカルに起用、コンテポラリー度の高いR&Bを奏でている。バーバラ・モリソンを起用した「The One」は、彼女のボーカルにDavid Tのギターがさりげなく、そして違和感なく溶け込んでおり、その居心地の良さは彼女のソロナンバーでのバッキングのような錯覚を起こす。アルバムラストを飾る「Radius」では近年に珍しくワウプレイも披露するなど「健在」ぶりを十二分にアピールした90年代での彼のベスト作だ。

BELOVED (1995)

なんと全曲バート・バカラック&ハル・デヴィッドの名曲で構成される異色作。これが見事にハマった感ある傑作盤。前作とほぼ同じメンバーでのプレイに、多彩なゲストが参戦。「That's What Friends Are For」ではバーバラ・モリソンの落ち着いた歌唱力とDavid Tのハートウォームなプレイが繰り広げられ、カーペンターズでも有名な「Close To You」では、旧知の仲であるメリー・クレイトンがボーカルで参加し、ジャジーでソウルフルなムードを演出。ため息が漏れる「うっとり度」100%の出来だ。楽曲の印象度を残しつつも、原曲とはひと味違う色彩を施すDavid Tのプレイから、繊細でリスペクトに満ちた想いが伝わってくる。タイトルに偽りなしの全10曲。本作発表後、David Tはソロ名義ではアルバムを発表していない。ドリカムとのコラボレーションなど、まだまだ現役の存在感をあらわにしているだけに、復活の作品が待ち遠しいのである。
※この後、2008年11月5日、13年ぶり14枚目のソロアルバム『Thoughts』がリリースされました。


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『For All Time』
『Wear My Love』
『Thoughts』
Solo album 60's & 70's
Solo album 80's & 90's
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