David T. Works Vol.58

まだまだまだ続くこのコーナー! Vol.58の10選をどうぞ。

Sammy Davis Jr. / The Song And Dance Man (1976)

テレビ界や映画界に多大なる影響を及ぼした天才エンターテイナーの70年代中期。刑事コジャックのテーマ「We'll Make It This Time」など、マイク・カーブ総指揮の元、アル・キャプス、ドン・コスタら敏腕アレンジャーを軽く従え料理したポップス絵巻集的代表作がコレ。当時関わりのあったエンターテインメント系作品の楽曲を一部集めた企画色の濃い一枚で、78年にリリースされる『Sings The Great TV Tunes』にも収録されたテレビシリーズ「Baretta」のテーマ曲としてデイヴ・グルーシン制作による一曲「Baretta's Theme (Keep Your Eye On The Sparrow)」では、バンドサウンドとは幾分異なる、楽器パートの多い映画やドラマのサウンドトラックに、言葉数少なくも演奏陣に自然に溶け込むDaivid T流貢献の象徴的プレイが見て取れる。

The Jackson 5 / Boogie (1979)

既にグループ名はジャクソン5からジャクソンズに移行し、マイケルもソロアルバム『Off The Wall』で再びブレイクする直前という時期に、古巣モータウンの傍系レーベルNatural Resourcesからリリースされた既発曲と未発表曲を織り交ぜたコンピレーション。全10曲のうち7曲が未発表曲で占められる中、なぜか代表曲でもある「ABC」「One Day I'll Marry You」「Dancing Machine」の3曲も収録されているという不可思議さはあるものの、通して聴くと彼ら兄弟の絶頂期の変遷を辿っている感覚になる絶妙の構成具合が二重丸。と同時に、クオリティの高い未発表曲がまだまだ眠っているというモータウンの凄みを感じ入るに十分な一枚だ。「Penny Arcade」やスティーヴィー・ワンダーの名曲「I Was Made To Love Her」など、当時裏方として一心同体でもあったDavid Tのギターフレーズが、決して目立たない存在ではあるもののひっそりと奏でられているところに、なんとも言えない安堵を覚えるのだ。

Deleon Richards / Deleon (1984)

それまで保持していたマイケル・ジャクソンの記録を塗り替え、9才でグラミー賞に最年少ノミネート、幼少期からゴスペルシンガーとして現在も幅広く活動を続けるデレオン・リチャーズのデビュー作は、ジェリー・ピータースのプロデュースワークのもと、ンドゥグ・レオン・チャンスラー、ジェイムズ・ジェマーソン・Jr.、アル・マッケイらL.A.のミュージシャンたちが勢揃いしバックアップしたポップマインドあふれるゴスペルアルバム。少女のチャーミングな歌声とミドルテンポのR&Bなゴスペル世界が描くアダルト感覚。そこに奇異な印象がそれほど残らないのは、バックを務めたミュージシャンたちのやわらかなバッキングがギリギリの地平で両者をポップに融合させているからこそ。その一人としてDavid Tも、「Child Of God」や「Just Jesus」など、やさしく包み込むようなフレーズで彼女のパフォーマンスをサポートしている。

中山美穂 / Angel Hearts (1988)

大ヒット曲「You're My Only Shinin' Star」リリース後、同年に発表された通算8作目のアルバム。今剛、山木秀夫、本田雅人ら、当時の歌謡曲フィールドをバックアップしたスタジオミュージシャンたちの貢献も大きく、隙のないトラック満載のプロダクションだが、作家陣にCINDY、鳴海寛、鳥山雄司らを起用したところも見逃せないポイント。アイドルからシンガーとしての一面を提示した一枚として聴くと違った感触が味わえるから実に不思議だ。収録曲「Diamomd Lights」を作曲した和製David Tの呼び声ナンバーワンの鳴海寛が、デモトラックづくりに関与した「Try or Cry」にDavid Tが参加。アルバムラストを飾るに相応しいゆったりと広がりあるサウンドをバックに歌う主役の声に、David Tのメロウなギターが見事にハマっている。

Dreams Come True / Love Unlimited (1996)

大ヒットした名曲「Love Love Love」を収録した通算8枚目。以降も続くDavid Tの共演が本格的にはじまった最初の作品がコレ。David Tは「7月7日、晴れ」一曲のみに参加。厳密にはこの前年、吉田美和のソロアルバム『Beauty and Harmoney』のレコーディングとそのツアーで接点ができていたDavid Tだが、ドリカムというグループへの客演という意味では今後十数年以上に渡って続く蜜月関係のこれがはじまり。昔から大ファンだったと語るバンマス中村正人の影響が大きかったと思われるが、ヴォーカル吉田美和にとっても次第に大きな存在になっていくDavid T。この時期以降、日本で近しく楽しめるようDavid Tを起用を続けた彼らの功績は計り知れなく大きい。そのDavid Tが数多くの共演を果たしたバリー・ホワイトを象徴するキーワード「ラヴ・アンリミテッド」をアルバムタイトルに冠したことも、偉大なるレジェンドへのリスペクトのあらわれだと思いたい。

Smappies / Smappies Ⅱ (1999)

90年代、アルバム制作に米国スタジオミュージシャンを起用したスマップ。その発展形として1996年に世に出たスマップの歌抜きユニット「Smappies」が、3年後の1999年にリリースした第2作。オマー・ハキム、ウィル・リー、フィリップ・セス、ハイラム・ブロックの4人を中核としながら、グローヴァー・ワシントン・Jr.、マイケル・ブレッカー、バーナード・パーディ、フィル・ウッズ、ラルフ・マクドナルドといった凄腕らを惜し気もなく配置したサウンドは、キワモノ的印象に陥りがちな企画アルバムの意匠をスパッと切り裂く切れ味と音楽的豊潤さが充満。ダンサブルでグルーヴ感あふれる楽曲がズラリと並ぶなか、「声を聞くよりも」で聴けるDavid Tらしいメロウなフレーズは、スティーヴ・ガッド、アンソニー・ジャクソン、ハイラム・ブロックらが奏でるバッキングを一瞬にして一つの輪としてつなぐ威力を発揮している。

Various Artists / Untinted : Sources For Madlib's Shades Of Blue (2003)

マッドリブが70年代ブルーノート作品をヒップホップ世代ならではの感覚でカットアップしたリミックス集『Shades Of Blue』と同時期発売された、収録音源の原曲すべてを収録した一枚がコレ。ロニー・フォスター、ボビ・ハンフリー、ボビー・ハッチャーソン、ホレス・シルヴァーらの楽曲を、あらたな感覚で料理したマッドリブのリミックス版を聴いた上で、すべての原曲を通して楽しめるという企画アルバムではあるが、そこに光るのはマッドリブならではの選曲の妙だ。ほぼ既発の楽曲で占められる中、1972年リリースの『Black Byrd』録音時のセッション音源と記された「Distant Land」というドナルド・バードの未発表曲が収められており、この曲にDavid Tが参加。ラリー&フォンスのミゼル兄弟が関与するサウンドの空気が封じ込められたこの一曲に、David Tのギターが地味ながらも欠かせないアンサンブルの一翼を担っている。

Jazz For Japan / Jazz For Japan (2011)

2011年東日本大震災発生後、日本のためにジャズミュージシャンたちが復興の願いを込めて制作した一枚。スティーヴ・ガッド、トム・スコット、ピーター・アースキン、ネイザン・イースト、リー・リトナーらが、震災発生から数日とたたないうちに集結。ネット先行配信ののちにCDとしてもリリースされるという彼らのスピーディな行動力と、シンプルに選曲されたであろう楽曲を手慣れた感覚ではなく短い時間の中でしっかりとアレンジしながら強い思いを込める力量はさすがの一言だ。収められたのはスタンダードなジャズ。だが、馴染みのある楽曲だからこそ、普遍的な音楽力が際立って響いてくる。クラレンス・マクドナルドとンドゥグ・チャンスラーの盟友二人とともにDavid Tも2曲に参加。「Sugar」では中盤に十八番的フレーズ満載のソロプレイを聴かせ、マーカス・ミラーがベースとして参加した「What A Wonderful World」ではしっとりとしたメロウなフレーズで応戦。震災直後にDavid Tが発した「Stay Strong and Press On」のメッセージと、日本でも親しまれる楽曲にロスのミュージシャンたちが込めた願いに、身も心も引き締まる思いだ。

Dionne Warwick / We Need To Go Back - The Unissued Warner Bros. Master (2013)

ワーナー時代となる70年代中期に残した未発表曲集。なぜオクラ入りになったのか首を傾げること必至の実にクオリティの高い楽曲揃いのコンピレーションだ。盟友バート・バカラックをはじめ、アシュフォード&シンプソン、トム・ベル、ホランド=ドジャー、マイケル・オマーティアン、ランディ・エデルマン、シド・シャープなど、72年から77年にかけての短い期間ながら時期的に異なるプロデューサーが起用されながら、いずれもディオンヌの個性がしっかりと際立つ仕上がりに着地しているところが実に面白いところ。David Tとディオンヌの共演はこれまでありそうでなかった組み合わせだが、実は76年にリリースする予定で録音されたものの結局オクラ入りとなったディオンヌのソロアルバム録音に参加。グラディス・ナイト&ザ・ピップスとの仕事で知られるジョー・ポーターのプロデュースによるそれら楽曲は38年の時を経てようやく陽の目をみることになった。そのグラディスのソロ作にも収録された「Am I Too Late」やアイザック・ヘイズ作「Make A Little Love To Me」など、エレガントでソウルフルなディオンヌの歌声を持ち前の柔らかなタッチでひっそりとサポートしている。

Gladys Knight & The Pips / Visions (2CD Deluxe Edition) (2013)

Buddahレーベルからコロンビアに移籍した80年代初頭も、70年代から引き続き年一作のペースでアルバムをリリース。次第に打ち込み的意匠も見られるようになってきた83年作がコレ。サム・ディーズがペンをとった楽曲が3曲収録されるなどグラディスの歌声は変わらない躍動とソウルフィーリングに満ちている。そんな本作が2013年に突如ボーナストラックや未発表曲を多数収録したデラックスエディションとしてリイシュー。1983年リリースのオリジナル盤では参加のなかったDavid Tも、あらたに追加収録された音源の随所でキラ星プレイを披露する。1984年の映画「The Buddy System」の主題歌としてシングルオンリーでリリースされた「Here's That Sunny Day」をはじめ、未発表曲としては1981年に録音された「Here Now」や「Look At The Two Of Us (Take 2)」や「More, More, More」などで、大仰な目立ち方ではない線の細いバッキングながらも、ところどころにふくよかなアタック音によるフレージングをサラリと織り交ぜるDavid Tの姿が。それらはいずれもサム・ディーズが関与した楽曲であるという相性の良さも実に興味深いところだ。

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