David T. Works Vol.59

まだまだまだ続くこのコーナー! Vol.59の10選をどうぞ。

Marvin Gaye / That Stubborn Kinda Fellow (1962)

70年代から80年代にかけてさまざまな形で共演し歴史を彩ったマーヴィンとDavid T。その歴史は、本作に収録されシングルリリースされた「Stubborn Kind Of Fellow」のレコーディングにDavid Tが参加したことからはじまる。その後、1965年にデトロイトのモータウンスタジオで初対面することになる二人は、70年代以降、幾多の名演を残す間柄となっていく。1962年のこの当時、のちに姿をあらわにするDavid Tの個性的なプレイはまだ影を潜めており、二人の未来はおそらくは互いに予想できなかったかもしれない。しかし、それぞれが必要とする音楽的交配が必然だったことは、残された名演の数々とヒストリーそのものが雄弁に物語っているように思えるのだ。

Andy & David Williams / Meet Andy & David Williams (1973)

アンディ・ウィリアムスの甥であり双子ユニットの1stアルバム。ロジャー・ニコルス「I Won't Last A Day Without You」カヴァーや、キャロル・キング作「Satisfied」、リトル・アンソニー&インペリアルズ「Goin' Out Of My Head」などの楽曲を、背伸びしない等身大の佇まいでゆるやかに彩る王道的ポップスが心地良い一枚だ。中でも「You're The Only Girl」などで聴ける双子ならではのハーモニーと堅実なバッキングが調和した軽妙なグルーヴ感は、同時期ブラディ・バンチもプロデュースしたジャッキー・ミルズをはじめ、アレンジワークを務めたアル・キャプス、アーティー・バトラーら職人たちのしっかりとした仕事の証し。クレジットこそないものの、バカラック&デヴィッド作「Make It Easy On Yourself」や、ポピュラースタンダード「I Don't Know Why (I Just Do)」で聴けるキラ星感に溢れ思わず身を委ねたくなるDavid Tの優しさに満ちたプレイは、主役二人の瑞々しさを後押ししながら楽曲の存在感をもグッと高めている。

Tom Jones / The Body And Soul Of Tom Jones (1973)

英Deccaと米Parrotからリリースされた73年作は、英米両国、ロンドンとハリウッドで録音された一枚。ポップス、カントリーなど、ソウルフルながらも多彩なジャンルをまたぐ力強い歌声は健在で、なかでもルーサー・イングラム「(If Loving You Is Wrong) I Don't Want To Be Right」をはじめ、時代を切り取る才に長けるジョーンズらしく、当時話題のビル・ウィザースの「Ain't No Sunshine」と「Lean On Me」の2曲のカヴァーも聴きどころの一つ。そのうち「Lean On Me」にはDavid Tが参加。女性バッキングコーラス隊として参加したブラッサムズとともに、クレジットこそないものの、当時代名詞のように使用したエモーショナルなワウペダルプレイでゆったりとしたファンクネスを彩っている。

Johnny Mathis / Hold Me, Thrill Me, Kiss Me (1977)

映画やミュージカルなどさまざまなテーマソングやヒット曲のカヴァーを中心とした77年作。前年ヒットのボズ・スキャッグス「We're All Alone」をはじめ、あらゆるジャンルの音楽を自身の個性で違和感なくまとめあげ表現してしまうマティスの自在ぶりが随所に際立つ一枚だ。70年代中期から多くのマティス作品をサポートするDavid Tは本作にも参加。アルバート・ハモンド作の「When I Need You」やミュージカル「アニー」のテーマソング「Tomorrow」のカヴァー、モハメド・アリの自伝映画「The Greatest」のエンディングソング「I Always Knew I Had It in Me」のカヴァーなどでは比較的地味なバッキングに徹するものの、アルバムラストを飾る「Don't Give Up On Us」では、静かながらも特徴的なやわらかなフレーズをマティスの呼吸に合わせ披露する姿が。オーケストレーションも配した極上アレンジのサウンドに埋もれることなく、主役を際立たせる存在感こそ匠の名に相応しいギタープレイだ。

Barry White / The Message Is Love (1979)

20th Centuryレコードから舞台を移し、自身が立ち上げたUnlimited Goldレーベルから初となる自身名義のソロ作。前作までとは制作体制が幾分変更されたものの、コーラス隊には秘蔵っ子ラヴ・アンリミテッドが参加するなど、サウンドの風貌を彩るバリー節は健在。David Tもその流れに一役買うべく参戦するものの、その輪郭をとらえることが困難な控え目な貢献が残念なところ。しかし、多くのバリー関連のアルバムへの参加がそうであるように、決して特徴的な色合いが多くなくとも、バリーが必要とするサウンドの一翼をDavid Tが担い成立するという近過ぎず遠過ぎずの関係性にこそ、逆に二人の人間的なつながりの深みが見え隠れすると思えてしまうのだ。

Clarence Paul & Neal Kimble / Real Rhythm & Blues (1987)

モータウンでのプロデュースワークでも知られるクラレンス・ポールと、ブルース&ソウル系シンガーのニール・キンブルが組んだユニット唯一の作品。過去の録音音源も織り交ぜて完成させた感のあるこの作品には、カル・グリーン、ラリー・ナッシュ、レイ・パーカー・Jr、ジェイムズ・ジェマーソンらが参加。なかでも「Something About Music」にはスティーヴィー・ワンダーがゲスト参加するなど、面白い楽曲が並んでいる。David Tは冒頭を飾る「We Can Make It」一曲に参加。この時代特有のプログラミングドラムやシンセサウンドの中で、ハッキリそれとわかる特徴的なフレーズで応戦するDavid Tのプレイは、この時代のリズム&ブルースとは何かという問いの答えとして表明したとも思えるアルバムタイトルに相応しい、彼ら流のスタイルとプライドを支える普遍的な音色として聴こえてくる。

Saché / Are You Attracted To Me (1987)

シンセやプログラミングによるリズムセクションをフィーチャーした女性ソウルポップユニットの87年作。80年代後半特有のダンサブルなアレンジとサウンドプロダクションを中軸としながらも、マーロ・ヘンダーソンのギターなど時折り有機的な音色が顔を覗かせるところがミソ。David Tは「Just One Little Kiss」一曲に参加。特徴的なフレーズこそないものの、ミディアムスローな楽曲にからむ得意のメロウバッキングがいつの時代においても必要不可欠であることを、自らのギタープレイで証明してみせることの凄みをあらためて痛感。

Craig T Cooper / Purpose (2014)

ギター奏者クレイグ・T・クーパーの2014年作は、レイ・パーカー・Jr、パトリース・ラッシェン、ハワード・ヒューイット、ジム・ギルストラップら多彩なゲスト陣のサポートも功を奏した、ジャズテイストを適度なさじ加減で包み仕上げたメロウでアーバンなR&B集。ゲスト陣の一人として、David Tも「Abracadabra」一曲に参加。ロニー・ロウズのエモーショナルなサックスとともに、淡々と得意のメロウフレーズを重ねるDavid Tのプレイは、トータルなバランスを念頭に構想されたであろう楽曲の骨格に端正な表情で迫るクレイグのギターを邪魔しない出過ぎず退き過ぎずの呼吸で調和。期待どおりに描かれた佇まいの貢献が、実にDavid Tらしくて二重丸。

Sunday Mitsuru / LA Moonshine (2014)

80年代にDavid Tのソロ作『Y-Ence』『With A Smile』『Ahimsa』を共同プロデュース、現在はL.A.在住のプロデューサーでありマルチクリエーターのニール・オダが、サンデイ・ミツル名義でリリースした2014年最新作。ソウル、ジャズ、ラテンなどのジャンルを横串しにした楽曲群を、インスト主体でグルーヴィにメロウなタッチでサラリと仕上げた手腕は実に的確。その一翼を担うべく、盟友David Tが「Living With A Smile」一曲に参加。中軸を担うかのように全体を率いていくギターフレーズの数々と楽曲タイトルに込められた世界観とが見事に一体化し展開する瑞々しいこのインストナンバーは、聴き手をハッピーな心持ちへと瞬間的に誘うに充分な晴れやかな心地良さが見事で痛快。

Peggy Lipton / The Complete Ode Recordings (2014)

1968年にリリースされた女優ペギー・リプトン唯一のアルバム『Peggy Lipton』に、当時アルバム未収録だったシングルオンリー4曲と、発売元のOdeレコードに残された未発表音源4曲をボーナストラックとしてプラスしたスペシャル盤。ハル・ブレイン、ジョー・オズボーン、ラリー・ネクテル、チャールズ・ラーキーらスタジオミュージシャンをバックに、ローラ・ニーロやキャロル・キングの楽曲カヴァーと自身のペンによる楽曲とを程よく配置した原盤11曲は、きらめくような歌声とともに今なお色褪せない魅力をはなっている。当時、時を同じくしてソロデビューしたDavid Tも、一部楽曲のアレンジャーとして起用されたジーン・ペイジの誘いから本作のレコーディングに参加。残念ながら原盤11曲の中からは彼のギタープレイは聴こえてこないが、当時シングル楽曲としてのみリリースされ、本作にボーナストラックとして収録されたローラ・ニーロ作「Lu」から、微量ながらもDavid Tの音色が。さらに今回、未発表音源として収録され、同時期に同じOdeレコードからリリースされた、キャロル・キング、チャールズ・ラーキー、ダニー・コーチマーが結成したザ・シティ唯一のアルバム「Now That Everything's Been Said」のタイトル曲カヴァーにDavid Tが参加。キャロル・キング作の弾むメロディに、僅かな音量で静かに響くDavid Tのギタープレイとリプトンの魅惑的な歌声の柔らかな調和が、46年の時を超えようやく音盤として姿をあらわしたことに、まずは拍手と感謝だ。

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