David T. Works Vol.27

David Tが参加した数々のアルバムの中からピックアップして紹介するこのコーナー。まだまだ続きます。ではVol.27の10選をどうぞ。

The Whispers / Life And Breath (1972)

このコーラス・ワーク。極上のR&Bがここにあるといっても過言ではないウィスパーズの72年作。ファルセットを使ったメロウネス・フィーリングがちらほらを顔を覗かせ、力強さだけでなく甘いテイストもバランス良く配置された感のある素晴らしいヴォーカルアルバムだ。ストリングス・アレンジもゴージャス感を演出するに一役買い、時折り絡むサックスの音色も程良いムードを醸し出す。David Tは地味な参加で目立たないが、それでも「Does She Care」などで、5人の歌声の後ろにひっそりとメロウフレーズを奏でている。

Barry White / Stone Gon' (1973)

この低音ヴォイス。まさに油の乗り切ったこの時期のバリーの一枚。前後にリリースされているアルバムと比べてさほど大差ない構成だが、どのアルバムでも人を惹き付ける音を醸し出すから不思議。バックをサポートする面々もほぼ同じで、アレンジワークはご存じジーン・ペイジ、コーラスワークにはこれまた不動の秘蔵っ子ラヴ・アンリミテッドの面々が参加。クレジットはないが、エド・グリーン(Dr)、ウィルトン・フェルダー(B)らの参加も濃厚な、抑制されたメロウネスがふんだんにちりばめられたバリー印全開の仕上がりだ。となるとDavid Tの参加もこれまた必然で、ほぼ全曲に渡ってバリーのしっとりとした歌声をひっそりと静かにサポートしている。アルバム全5曲のうち、4曲までをスロー〜ミディアムテンポのしっとり路線でかため、ジーン・ペイジのストリングスが最高の高揚感を誘うアルバムラスト曲「Never Never Gonna Give Ya Up」で一気に盛り上げる構成も見事。ちなみにジャケ写はノーマン・シーフ、デザインはあのローリング・ストーンズ『スティッキー・フィンガーズ』のデザインワークにも参加したCraig Braunが担当。ピアノの上に置かれたブランデーグラスの存在が妙に気になるといえば気になる。でもないか。

The 5th Dimension / Soul & Inspiration (1974)

フィフス・ディメンション後期の傑作。マリリン・マックー、ビリー・デイヴィス・Jrをはじめとした不動の5人が織り成す美しいハーモニーが、ここでは幾分かのソウルネスを交えながら最高の化学反応を呼び起こす。ドラムにハル・ブレイン、ベースにジョー・オズボーン、ギターにデニス・バドマイヤーと、これまたいつもの職人の面々がバックを務め、彼らの歌声をがっちりとサポートしている。全曲聴きごたえたっぷりの出来だが、中でもB1「No Love In The Room」で聴けるマイナートーンのメロウネスは、全編を彩るストリングスアレンジの冴えも素晴らしく躍動感も十分。David Tは、B3「Somebody Warm Like Me」1曲のみに参加。ビリー・デイヴィスの張りのある歌声が響くスローテンポの楽曲に実によくハマるDavid Tのギターが6人目の「声」となって見事に調和している。

Donald Byrd / Caricatures (1976)

アル・ハーシュフェルドの文字通り"カリカチュア"によるアートワークが粋なドナルド・バードの76年作。そのアルバムジャケからは想像もできないファンキー・グルーヴ・ナンバーが満載な本作を手掛けるのは前作に引き続いてご存じラリー&フォンス・ミゼル兄弟のスカイ・ハイ・プロダクション。さらに、腰にくる圧倒的なファンクネスと疾走感溢れるナンバーがずらりと並ぶ珠玉のジャズ・ファンク・アルバムを彩るのは、ハーヴィー・メイソン(Dr)、アルフォンゾ・ムゾン(Dr)、パトリース・ラッシェン(Key)、ジェリー・ピータース(Key)、スコット・エドワーズ(B)、ゲイリー・バーツ(Sax)といったミゼル人脈のフルラインナップだ。スカイ・ハイの代名詞ともなった浮遊感漂うクリアなサウンドプロダクションは幾分控え目で、粘っこい黒さとファンクネスが随所に聴こえながら、曲によってはダンスミュージック半歩手前の均一感覚さえも顔を覗かせる。ファンクミュージックの時代の流れが微妙に垣間見えるところが実に興味深く面白い。冒頭を飾るA1「Dance Band」で登場するバネの効いたジェイムズ・ジェマーソンのベースと弾力感たっぷりのDavid Tのキレのあるカッティングギターが鳴り響けばつかみはOK。続くA2「Wild Life」からA3「Caricatures」へと息もつかせぬ怒濤のダンサブルチューンが目白押し。その流れはB面でも衰えを知らずあっという間にアルバム一枚を堪能してしまう。いや堪能するには必ずもう一度最初から針を落とすこと必至の一枚。

Johnny Bristol / Bristol's Creme (1976)

何度も言うようですが、David Tにはジョニー・ブリストル。ジョニブリにはDavid T。この格言通り、まさしく珠玉の名演が並ぶジョニー・ブリストルが76年に発表したアトランティック移籍第一弾がこれ。何はともあれ、アルバム冒頭を飾る「Do It To My Mind」で腰を動かしてみてください。いや動かされてください。いきなりDavid Tの援護射撃に完全KO必至なはず。A2「I Love Talkin' 'Bout Baby」やA4「You Turned Me On To Love」で聴けるメロウネス全開のDavid T節は、あくまでDavid Tとしか言い様のないフレーズで冴え渡り度120%の貢献が実に頼もしい。リズミカルでシンコペーションの効いたエレピとドラムのアレンジに絶妙に絡むストリングスが刺激の強い興奮をそそるA3「I Sho Like Grooving With Ya」も聴きどころの一つ。前2作と比べて粒立ちのはっきりとしたクリアな音像、バックを支えるタイトな伴奏、それにジョニーの低く伸びのある歌声がミラクルな高揚感を膨らませ、そしてそれは次作『Stranger』へと引き継がれていく。全編に渡ってDavid Tの何たるかが十二分に伺い知れるマスト盤だ。

Edwin Starr / Clean (1978)

モータウンを離れ20th Centuryに移籍後の2枚目となる78年作。プロデュースワークにラモント・ドジャー、ストリングス・アレンジにH.B.バーナムとデイヴィッド・ブラムバーグが名を連ね、当時のトレンドを十二分に意識したダンサブルチューンが顔を覗かす手堅いサウンドプロダクションが印象的だ。A3「Contact」などはまさにその筆頭で、その長尺な展開もフロアでの需要が容易に想像できるディスコソング風で特長的。これら均一的であまり変化のないリズムトラックを叩き出すのがジェイムズ・ギャドソンのしなやかなドラムであるという点も実は面白いところだ。David Tはラモント・ドジャー作のアップテンポの痛快ナンバーB1「Storm Clouds On The Way」やB3「Music Brings Out The Beast In Me」で、地味ながらも小刻みにバネのあるカッティングを披露している。

Gloria Gaynor / Stories (1980)

フレディ・ペレンのプロデュースによるグロリア・ゲイナーの80年作。時代はディスコ・ブームから少し落ち着きを取り戻した頃。フロアでの需要を意識したリズム重視の楽曲から、ポップでメロウなメロディアスな風味もちりばめた感のある彩りが全体から漂ってくる。サポートメンバーはジェイムズ・ギャドソン(Dr)、ネーザン・イースト(B)、ボビー・ホール(Conga)、ジーン・ペイジ(Arr)、デイヴィッド・ブラムバーグ(Arr)、アーニー・ワッツ(Sax)といった豪華陣。とはいえ、画一的であまり特長のないアルバム全体の個性で、聴きどころが絞りにくいのも事実で、幾分単調な仕上がり。そんな中、A4「Lock Me Up」やB4「Make Me Yours」で、背後から有機的に絡んでくるDavid Tのギターフレーズが聴こえると「もうそれだけで十分」的な満足感を得てしまう。さほどのインパクトのないアルバムであればあるほど、逆に存在感をあらわにする摩訶不思議なDavid Tのギタープレイ。悩みとは言えない悩みを抱えてしまう恐るべきDavid Tのミラクルだ。ジャケ写はノーマン・シーフ。

Syreeta / Syreeta (1980)

スティーヴィー・ワンダー作の名曲「Blame It On the Sun」の美しく物悲しい調べで幕を開けるシリータ・ライトの80年作。ハーヴィー・メイソン(Dr)、リー・リトナー(G)、ジェイ・グレイドン(G)、レオン・ンドゥグ・チャンクラー(Dr)、リチャード・ティー(Key)、ジェイムズ・ギャドソン(Dr)、ジェリー・ピータース(Key)など、豪華なサポート陣による抑制されたテイスト感が満載で、心に染み入る高いクオリティの仕上がりが嬉しい一枚だ。ビル・ウィザースのカヴァーA2「Let Me Be The One」では控え目ながらもビリー・プレストンの情緒豊かなフェンダー・ローズも印象的。そのビリー・プレストンとのデュエットが聴けるA4「Please Stay」など、大きな特徴はないものの随所で聴けるDavid Tならではのピッキングは健在。CD化が待たれる一枚だ。

Leon Ware Leon Ware (1982)

80年代初頭の珠玉のメロウグルーヴ。リオンならではの、リオンしか成し得ない音が100%堪能できる一枚。70年代の「あの音」から一歩脱した洗練さが全編に漂いまくり。ソウル、ジャズといったカテゴリー分けが無意味に思えてくる程のリオン節が確立しきった感のある素晴らしいアルバムだ。ある種のゴージャス感と哀愁風味が両立するそれらの音を構築するのは、デイヴィッド・ペイチ(Key)、ジェフ・ポーカロ(Dr)、ネーザン・イースト(B)、ジェイムズ・ギャドソン(Dr)、チャック・レイニー(B)、ガトー・バルビエリ(Sax)らに我らがDavid Tといった布陣。A4「Why I Came To California」では、ジェイムズ・ギャドソンの大きなうねりとしなやかさを持ったドラミングに乗って、マンハッタン・トランスファーのボーカリスト、ジャニス・シーゲルとリオンの歌声が実に心地よく響く。B2「Words Of Love」ではイントロからDavid Tの粘り気たっぷりのフレーズが飛び出すミドルテンポのメロウネスが最高の居心地の良さを演出。アイアート・モレイラとフローラ・プリムを迎えたB4「Somewhere」でも、そのラテンテイストにDavid Tのメロウフレーズが見事にハマっている。

After The Fact / After The Fact (1999)

ワー・ワー・ワトソンのソロプロジェクト、After The Fact。プロジェクト名こそついてるものの、事実上ワー・ワーのソロアルバムと言っても過言ではないアルバムがこれ。本職のギタープレイのみならず、ベース、キーボード、パーカッション、ドラムプログラミングまでこなす彼のマルチプレイヤーぶりが窺い知れる一枚だ。キレのあるギターカッティングやピアノ、サックスの音色などの生音とプログラミングによる音世界の融合が、決して熱くなり過ぎずに一歩引いた感のあるクールな化学反応を引き起す。軽いタッチのホーンセクションが効果的なミディアムテンポのファンキーナンバー「Come A Little Closer」では、「もうちょっと近くに寄って」という日本語のヴォイス音が効果的に挿入され、ハービー・ハンコックの大名盤『Man Child』収録の悶絶ジャズファンクチューン「Hang Up Your Hang Ups」のカヴァーでは、原曲と同じくワー・ワーの弾力あるカッティングリフが、幾分かテンポ遅めの粘り気たっぷりのファンクネスと絶妙に絡む。旧知の中であるDavid Tも2曲に参戦。「Pain」ではワー・ワーのループ感覚溢れるカッティングに、そのハービー・ハンコックが生ピアノで参戦し、途中から絡み付くDavid Tの生々しいギターフレーズが見事に重なりあうという楽器間の対比も実に面白い。「Yesterday」ではワー・ワーの手によるシンプルなドラムとベース音とギターカッティングに、いつものメロウフレーズで応酬するDavid T。一体この二人の組み合わせで過去何回のセッションをこなしたのだろうかと、思わず感慨深くなる一枚なのである。

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