David T. Works Vol.12

David Tが参加した数々の名演の中からピックアップして紹介するこのコーナー。まだまだ続きます。参加度は控え目な作品が多いですが、Vol.12の10選をどうぞ。

Original Soundtrack / Cool Breeze (1972)

ソロモン・バークによる同名タイトル映画のサントラ盤。疾走感溢れるノリのいいファンキーな楽曲から壮大なオーケストレーションまで、70年代ムービーの定番的なバラエティ感でグイグイと聴かせる一枚だ。特にこの手のサントラでは必要不可欠とも言われるワウ・ペダルによるグルーヴ感はDavid Tの手によるもので、これがまた当時の彼のエネルギッシュな一面をのぞかせていて実に印象的だ。B3「Fight Back」で聴けるジーン・ペイジの豪華なストリングスとファンキーなリズムによるグルーヴ感は映画のワンシーンを容易に想像させるに難くないが、楽曲単体としても十分にノリを感じる一曲に仕上がっている。

The Osmonds / The Proud One (1975)

白人版ジャクソン5とも呼ばれるポップグループ、オズモンドの75年作。世界中の女性ファンを釘付けにしたそのポップ・アイドル性が際立つあまり、当時はアルバム単位での正当な評価は得られなかったのではないかと思えるほど、コーラスワークを多用したメロウナンバーは今聴くと新鮮。特にタイトル曲B2「The Proud One」やB5「Where Are You Going To My Love」などに代表されるゆったりとしたスローテンポのハーモニーで包まれたオズモンドの世界は、ジャクソン5とはまた違ったスウィートさで心地良い。David Tは一聴するだけでは気がつかないくらいの小さな音量でのバッキング参加だが、A2「Where Would I Be Without You」などではワー・ワー・ワトソンらとともにきらめくようなサポートを静かに果たしている。

The Whispers / Open Up Your Love (1977)

ボーカルグループ、ウィスパーズの77年作。時代の特性からかダンサブルでメロウなチューン満載の世界が繰り広げられる裏には「職人達」の存在が大きい。エド・グリーン(Dr)、ジェイムズ・ギャドソン(Dr)、ウィルトン・フェルダー(B)、アルフォンゾ・ジョンソン(B)、ジーン・ペイジ(Str)、ワー・ワー・ワトソン(G)、ジョー・サンプル(Key)といった当時の精鋭を惜しげもなく配置した豪華版。特に「I fell in Love Last Night」で聴けるワー・ワーの切れのよいカッティングとジーン・ペイジによるオーケストレーションの組み合わせなどは、当時のディスコシーンでの需要を容易に想像できる明快なメロディとリズムが爽快さ満点。しかし何といってもスコット兄弟らによる伸びやかなボーカルワークが魅力を決定づけているのは間違いない。ノリのいい楽曲と「You Are Number One」などのスローなメロウナンバーの対照さが、彼らのようなボーカルグループの真骨頂。David Tも彼らのボーカルの影でひっそりとではあるが「Make It With You」や「Chocolate Girl」などの曲で「うたもの」バッキングに徹したプレイで参加。中でもアルフォンゾ・ジョンソンのフレットレスベースによるソロが見事なジャジーなスイングナンバー「You Never Miss Your Water」での控え目でパーカッシブなプレイは印象的だ。

Peaches & Herb / 2 Hot! (1978)

フランシーヌ・パーカーとハーバート・フィームスターのユニット、ピーチズ&ハーブの78年作。60年代から活躍する二人だが、本作ではディスコソング的肌触りのダンスナンバーが多くを占める、当時のトレンドを反映した仕上がりだ。特にA2「Shake Your Groove Thing」や「All Your Love」などは、そのポップ性も相まってディスコソングとしての地位を不動のものにしている感がある。また名バラードA3「Reunited」は、ヒットチャート1位を記録する大ヒットナンバー。ジェイムズ・ギャドソン(Dr)、ワー・ワー・ワトソン(G)らも参加した手堅い音作りも実は見逃せないところ。こういった「大ヒットアルバム」にも、実はDavid Tがサポートに一役買っていたという事実を知ると、それら曲に対するイメージにもう一歩踏み込んだような感慨深い感覚を伴い、なんだかとてもうれしくなってしまうのだ。

Raul De Souza / 'Til Tomorrow Comes (1979)

爽快なブラジルのリズムに乗って奏でるトロンボーンの音色が心地良いラウル・デ・スーザの79年作。アーサー・ライトをプロデューサーに迎えた本作は、ディープな「ブラジル」とは一線を画す、ノリの良い心地良さ満点のブラジリアン・ジャズ・ファンクサウンドに仕上がっている。特にA1「'Til Tomorrow Comes」やB1「Up and At It」などの哀愁感漂うメロディにシンコペーションの効いたクラビネットとファンキーなベース、そこにラウルの「歌う」トロンボーンが絡み合う様はなんともグルーヴィで象徴的だ。B2「Everybody's Got To Dance To the Music」では、ゆったりとしたストリングスと小刻みに奏でるクラビネットが同居する実に印象的な曲の途中で、突然のようにDavid Tとしか言いようのないメロウなフレーズが展開される。一瞬にして曲のイメージを転換しつつも、数秒後には全く違和感なく曲に溶け込むプレイが、地味ではあるが実にDavid T的と感じてしまうのだ。

Patrice Rushen / Posh (1980)

キーボード奏者パトリース・ラッシェンの80年作。70年代にはプレステッジから『Prelusion』などの名作を発表しているように、元々はジャズ畑の彼女。エレクトラに移籍してからは自らボーカルもこなしつつ、ポップでファンキーな面をさらに前面に押し出すことで新しい魅力を提示している。ジェイムズ・ギャドソン(Dr)、ンドゥグ・レオン・チャンクラー(Dr)、ポール・ジャクソン(G)らによる手堅いバックアップもアルバム全体の躍動感に一役買っている。David TはA1「Never Gonna Give You Up」のようなファンキーな楽曲ではポール・ジャクソンとともに鮮やかなカッティングフレーズを描き、B2「The Dream」やB4「This Is All I Really Know」などのメロウな楽曲では、その美しいメロディにのるパトリースの歌声を優しく包むフレーズで会話する。アルバム全体への貢献度は決して高くはないが、印象度は低くない。そんなDavid Tらしい個性が感じられる一枚だ。

Minnie Riperton / The Best of Minnie Riperton (1981)

5オクターブの声域を持つパーフェクトエンジェル、ミニー・リパートンのベスト盤。永遠の名曲「Lovin' You」をはじめとして彼女のそれまでの軌跡を存分に味わえる好企画盤である。単に彼女の発表してきたライブラリーの中からの選曲のみならず、本盤でしか聴けないテイクが幾つか含まれているところも興味深いところ。彼女とDavid Tはクインシー・ジョーンズの『Body Heat』やレオン・ウエアの『Musical Massage』でも顔を合わせているが、彼女のソロアルバムには参加していない。しかし本盤では、79年発表の『Minnie』収録の「Lover and Friend」のライブテイクが収められており、この1曲のみDavid Tがバッキングとして参加している。目立たないが一聴してわかる彼のフレーズがミニーの声と絡む様は、なんとも心地良い瞬間であるのと同時にせつなさを感じてしまう。

Johnnie Taylor / Just Ain't Good Enough (1982)

70年代には「Disco Lady」のヒットシングルを飛ばしたサザンソウルシンガー、ジョニー・テイラーの82年作。ゆったりとした切ないソウルミュージックがずらりと並ぶ本作でも、本来持つその抜群の歌唱力は存分に堪能できる。ジェイムズ・ギャドソン(Dr)、ネーザン・イースト(B)のリズム隊に、ジーン・ページのストリングスアレンジ、ウォーターズのバックボーカルなど、参加した面々も素晴らしいプレイで彼の声をバックアップしている。David Tもアルバム全体に万遍なくいつものプレイを披露している。それにしても、込み上げてくるようなジョニーのボーカルは地味ながら本当に素晴らしい。しかし、そんなボーカルにDavid Tのギターは抜群に映える。そのことが逆にジョニーの素晴らしさを再認識させるという「逆説の常識」をあらためて痛感してしまう、というと言い過ぎだろうか?

Gwen McCrae / On My Way (1982)

ウェブスター・ルイスのプロデュースによるグエン・マックレーの82年作。独特のビブラートが印象的なシャウトは、まさにファンキー&ディープ。2拍4拍が強調された画一的なリズムが時代を感じさせるが、彼女はいつもと変わらない熱唱ぶり。しっとりとしたバラードでは逆にバックトラックは控え目で、彼女の歌を引き立たせるに十分の演出だ。全体的にはアップテンポのノリのよい楽曲が目立つが、B1「Be For Real」のようなスローテンポのR&Bでは、David Tのギターフレーズがやはり際立ち、アルバム全体を引き締めるに十分な一曲に仕上がっている。

Orienta / Little Flame (2000)

透明感と力強さを併せ持つOrientaの2ndアルバム。全12曲、すべての意匠を異にしながら縦横無尽に行き来する音空間が、不可思議ながらも強さを漂わすという実に印象的なアルバムだ。どこか異空間にトリップしたような世界の魅力。淡々とリズムを刻む無機的な打ち込み音と情感豊かな生音が絶妙のバランスで化学反応を起こすバックトラックに因るところも大きいが、彼女の繰り広げる歌世界もまたその両面性を内包し、そこが魅力の一つにもなっている。3曲目「flow」で聴ける浮遊感は、4曲目「フレア」では力強さを感じる色彩へと形を変えてゆく。自在な形状の向こうには優しさに満ち溢れた世界が見え隠れし心地良い。David Tは2曲目「Luck」の1曲のみに参加。研ぎ澄まされた無駄のない打ち込み音の隙間を縫いながら有機的に絡み合うDavid Tのギターと彼女の淡い声。彼女のポテンシャルの高さを否が応でも物語ってしまうこの曲が、アルバム全体を象徴するかのようで素晴らしい。

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