David T. Works Vol.32

David Tが参加した数々のアルバムの中からピックアップして紹介するこのコーナー。まだまだ続きます。ではVol.32の10選をどうぞ。

Jermaine Jackson / Jermaine (1972)

ジャクソンファミリーの中でも屈指の人気者、ジャーメインのこれがソロ1st。アルバム中ほとんどを占めるカヴァー曲の多彩さ、その選曲センスはエグゼクティブ ・プロデューサーであるベリー・ゴーディの貢献度大の感はあるものの、それに応える主役のジャーメインの歌とバックトラックの完成度の高さによる仕上がり具合が実に素晴らしい一枚だ。カヴァー曲以外にも、ジョニー・ブリストルによる「That's How Love Goes」「I let Love Pass Me By」やリオン・ウエアの「If You Were My Woman」など質の高い楽曲群とアレンジがずらりと並び聴く者のツボをくすぐる感じが素敵。David Tも地味ながらアルバム全体に渡って随所に貢献。ジーン・ペイジのストリングスアレンジが冴える「Live It Up」、ドゥービー・ブラザースやアイズレー・ブラザースによるカヴァーで有名な「Take Me In Your Arms」やホランド=ドジャー=ホランドのペンによるA2「I'm In A Different Word」でのワウプレイ、そして最大のヒットチューンとなったB5「Daddy's Home」でのDavid Tのメロウフレーズを耳にすると、心地よさと安心感のようなものを感じてしまうから不思議。弟マイケルのアルバムにばかり話題が行きがちで目立たないが、存在感ある好盤だ。

Original Soundtrack / Melinda (1972)

ジェリー・バトラーとジェリー・ピータースの手によるサントラ盤。クレジットが一切ないものの聴こえてくる音はキレ味鋭いグルーヴが炸裂するムービーアルバムの傑作だ。リーダーとなる二人と旧知の仲であるDavid Tも全面的に参加。インストナンバーA3「Part III」で聴ける粘っこいカッティングとワウプレイ、スローテンポのメロウナンバーA4「Tank's Theme」でのキラ星フレーズのオンパレード、B3「The Blues」で聴ける文字通りのブルースフィーリング溢れるソロプレイなど、超の字がつく大活躍ぶり。この時期ブームのようにリリースされたブラックムービー系アルバムの質感と微妙に異なる落ち着きのある肌触りはジェリー・ピータースの個性によるものだろうか。そのピータースの手によると思われるエレピの浮遊感とちょっと変わった転調の妙が粋なB1「Melinda Latino」は一瞬映画音楽であることを忘れさせる音楽性でハッとした気分に。

Jackson5 / Get It Together (1973)

多少地味な印象だった前作『Skywriter』から僅か5ヶ月のインターバルでリリースされたアルバム。一変してポップでキッズテイスト溢れるアルバムジャケットがグループのリスタートを思わせるのと同時に、多少ディスコ的サウンドが顔を覗かせ始める時期の微妙なソウルフィーリングがこれまた実にカッコイイという、彼らの魅力再発見の感が満載の一枚だ。中でも躍動感たっぷりのベースラインをフィーチャーしたアルバムラストを飾る「Dancing Machine」のクールなファンクネスには思わず拍手。David Tはリオン・ウェアのペンによるミディアムマイナーナンバー「It's Too Late To Change The Time」で一瞬でそれとわかるフレーズで応戦している。

Michael Jackson / Music & Me (1973)

落ち着きのあるテイスト感。ジャクソン5での溌溂としたポップテイストと意図的に異なる感触を用意しようという企みなのか、幼少時代のマイケルのソロアルバムは比較的トーンがおとなしめ。特にアルバム冒頭を飾る1曲目がキモで、華々しさよりしっとり感が際立っている。本作も然りでA1「With A Child's Heart」からA2「Up Again」と続く落ち着きのある空気感。ベリー・ゴーディのプロデュースセンスがちらりと垣間見える構成が実にニヤリな一枚だ。フレディ・ペレン、フォンス・ミゼル、ハル・デイヴィスといったお馴染みプロデューサー陣にジーン・ペイジ、デイヴィッド・ブラムバーグといったアレンジャー陣が加われば鬼に金棒。David Tも地味ながらも随所にキラリと光るプレイで貢献度大だ。B1「Doggin' Around」でのプルージーかつソウルフルなプレイはさすがの一言。

Miracles / Renaissance (1973)

スモーキー・ロビンソン脱退後のミラクルズ単独名義での1stアルバム。冒頭から流れるリオン・ウエア&T-ボーイ・ロスのペンによるイキの良い痛快ナンバー「What Is A Heart Good For」で掴みはOK。新加入のビリー・グリフィンの高い声域ヴォイスに、David Tのきらびやかな鈴の音がそこらじゅうから聴こえてくるアレンジに思わず拍手だ。ハル・デイヴィス、ウィリー・ハッチ、フォンス・ミゼル、H.B.バーナムといった多彩なプロデューサー&アレンジャー陣も質の高い仕事ぶりでがっちりキメる。特にマーヴィン・ゲイのプロデュースによるスローテンポのB1「I Love You Secretly」は、David Tの必殺のフレーズとデイヴィッド・ブラムバーグのストリングスアレンジに4人の歌声も本領発揮。そのゆったりとしたメロウネスに身も心も委ねてしまうこと間違い無し。

Donny & Marie Osmond / I'm Leaving It All Up To You (1974)

ご存じオズモンズ・ファミリーの二人によるデュエットユニットの1st。ソフトでメロディアスな楽曲がずらりと並ぶポップな構成はオズモンズのアルバムと同様の世界。唯一異なるマリーの存在もダニーとの美しいハーモニーを奏でる抜群の相性できらめきを放っている。アレンジャーにH.B.バーナムの名前も見られる中、地味ながらもDavid Tもこの一大ポップアルバムに参加。B1「Morning Side Of The Mountain」やB2「True Love」などで二人のハーモニーに華を添える堅実なバッキングを披露している。

Donny Osmond / Donny (1974)

そのダニーのソロアルバム74年作。その甘いマスクの陰に隠れて見逃されがちだが、オズモンズ・ファミリーの全面的参加とバックアップメンバーの好演によるメロディアスで質の高いポップアルバムに仕上がった本作は、ストリングスの響きとハーモニーがやはりキモ。オズモンズワールドはここでも十分に体感できる。David Tはごく僅かながらもこのポップアルバムに貢献。A4「Sixteen Candles」でストリングスの音色の背後に聴こえるDavid Tのキラメキフレーズは、全体のハーモニーと間違いなく調和しながらもその枠に収まり切れない個性ある異彩をも同時に放っている。

Johnny Mathis / I Only Have Eyes For You (1976)

バリー・マニロウで有名なバラードナンバー「I Write The Songs」のカヴァーで幕を開けるジョニー・マティスの76年作。ニール・セダカの「The Hungry Years」やダイアナ・ロスの「Do You Know Where You're Going To」をはじめとしたアルバム中ほとんどを占めるカヴァー曲を、さらりとさりげなく深追いせずに歌い上げるところはエンターテイナーとしての真骨頂。この「さらり」が実にニクい。アレンジャーはジーン・ペイジ、とくればDavid Tの登場は推して知るべし。派手さはないものの、アルバムほぼ全編にからむスマートなバッキング。その引き出しの多さと個性にあらためてリスペクト。

Lenny Williams / Let's Do It Today (1980)

元タワー・オブ・パワーのヴォーカリスト、レニー・ウィリアムスの80年作。エド・グリーン(Dr)、トム・スコット(Sax)、レイ・パーカーJr(G)、ポール・ジャクソンJr(G)、ネイザン・イースト(B)、クラレンス・マクドナルド(Key)、ジーン・ペイジ(Arr)といった書き切れない程の強者たちがバックアップした完成度の高いコンテンポラリーサウンドが全編に展開。メロウテイストも随所にちりばめられたAOR〜ブラコン路線が好き嫌いの分かれ目か。そんなオールスター揃いの面々の中にひっそりと姿を覗かせるDavid T。大きな活躍どころはないものの、B3「Play With Me, Stay With Me」などで聴けるキレのある弾力感たっぷりのカッティングは、サウンド全体を画一的と一言で割り切れなくしてしまう情緒的な香りを感じさせるから不思議。ヴァレリー・カーターをはじめとして多くのアーティストがカヴァーする「Ooh Child」でのメロウな仕上がりは聴きどころの一つ。

Howard Huntsberry / With Love (1988)

80年代R&Bフィールドで活躍した3人組Kliqueのボーカリストのソロデビュー作。打ち込みと生楽器をバランス良く配置させたブラコンサウンドが特徴的な80年代後半特有の西海岸プロダクション。多少喉に引っ掛かり気味の主役の歌声も、その完璧なバックトラックにのっかると恐いもの無しに聴こえてくるから不思議。そんなアッパーな楽曲群が並ぶ本作の中で、スロー&メロウなナンバーにはやはりDavid Tのギターが不可欠なようで、「With Love」「You Ought To Be With Me」で、極上のスウィートネスを演出している。

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