David T. Works Vol.30

David Tが参加した数々のアルバムの中からピックアップして紹介するこのコーナー。ではVol.30の10選をどうぞ。

Donald Byrd / Black Byrd (1972)

以後も続くミゼル兄弟とのコラボレーション第一弾、ドナルド・バードの名盤中の名盤がコレ。ジョー・サンプル(Key)、ハーヴィー・メイソン(Dr)、チャック・レイニー(B)、ウィルトン・フェルダー(B)、ボビー・ホール(Per)といった面々が織り成すジャズファンクは、それぞれの楽器がドナルドのペット音像に針を刺すかのように紡いでいくアンサンブルによって次第にキレのある表情を見せていく。その姿とグルーヴは実にクールだ。David Tも1曲目「Flight Time」からキレの良さを全開。パーカッシブなカッティングとワウペダルによる表情あるリズム、そしてメロウなフレーズと、8分を越す楽曲の中でバッキングギターの引き出しを惜しみなく披露している。続くアルバムタイトル曲「Black Byrd」でも贅肉を削ぎ落としたシンプルなプレイの数々が繰り広げられ終盤の高揚感へと展開。隙間無く繰り出される音の変遷の過程は、楽曲の長尺ささえも必然であるかのような錯覚さえ起こす。ミゼル兄弟の思惑とツボにハマった証拠なのかも。

Diana Ross / Last Time I Saw Him (1973)

全米ヒットナンバーとなるアルバムタイトル曲を収録したポップ色の濃い一枚。彼女の中では比較的地味な扱いの作品だが、曲単位で見てみると馴染みのあるメロディがそこにある。A2「No One's Gonna Be A Fool Forever」などはその良い例で、マイケル・オマーティアンとジーン・ペイジの手によるストリングスアレンジによって美しいメロディが展開されていく。ともすれば印象が薄くなりがちなダイアナの歌だが、ポップでキュートな楽曲にこそ映える個性は健在。David Tも目立った活躍こそないものの、B4「Behind Closed Doors」などでブリリアントなフレーズをモノにしている。

The Friends Of Distinction / Love Can Make It Easier (1973)

男女4人のコーラスワークが冴えるフレンズ・オブ・ディスティンクションの73年作。クレジットにはエド・グリーン(Dr)、ハーヴィー・メイソン(Dr)、ジェリー・ピータース(Key)、ジョー・サンプル(key)、ボビー・ホール(Per)、デイヴィッド・ブラムバーグ(Arr)といった名前が見当たり、4人のボーカルとの均整もとれたバランスの良い仕上がり具合がグッド。ファンキーさ加減も適度に軽いテイストで実に心地よい。特にA5「You're Gonna Make It」やA5「The Chittlin' Song」などのストリングスとボーカルワークが一体となった転調ナンバーはこのユニットの真骨頂。B2「The Way We Planned It」でも4人のハーモニーは聴く者を揺さぶるミラクルがあり魅力的光線を放っている。そんな美しいボーカルに華を添えるのはやはり我らがDavid T。冒頭を飾るアルバムタイトル曲での小鳥がさえずるようなフレーズも爽やかの一言。込み上げ系ソウルナンバーB1「Ain't No Woman (Like The One I've Got)」では地味ながらもうっすらと小気味良いリズムを奏でている。

Ladies Of Song / Try Jesus (1974)

女性ボーカル4人によるゴスペルアルバムの隠れた傑作。冒頭からエンジン全開のDavid Tのギターがアルバム全編に渡ってキラリと光りまくりの一枚だ。アレンジワークも担うメンバーの一人、ロデナ・プレストンの実弟であることから客演したと思われるビリー・プレストンの鍵盤が、彼女たちのハリのある歌声をガッチリとサポートしている。David Tもほぼフル回転のバッキングを披露。速いテンポでハンドクラップのノリも十分なA4「God Is Good」ではキレのあるリズミカルなフレーズの山を築き倒し、ビリー・プレストンのオルガンが冴え渡るスローバラードB3「Such a Long Way」では落ち着いた曲調の中にこれでもかとばかりにキラ星フレーズを連発する。そんな全曲マストとも言える仕上がり具合の中、ハイライトはやはりB1「(This Is) Power In The Blood」だろう。スローテンポのR&Bなこの一曲で、ソロパートとコーラスワークの見事なアンサンブルによる彼女ら4人のボーカルにリラックス極まりない流暢で深みのあるフレーズでバックアップするDavid T。歌伴ギターと歌そのものの調和が幸せに結実したブラックゴスペル名作の一つだ。

Stanley Turrentine / In The Pocket (1975)

デニムのポケットに見立てた変型ジャケットもユニークなスタンリー・タレンタインの75年のFantasy盤。プロデュースとアレンジワークをジーン・ペイジが担当したムーディさいっぱいの一枚だ。壮大なストリングスの音色が全編を多く支配する中、ワー・ワー・ワトソン(G)、レイ・パーカー・Jr(G)、エド・グリーン(Dr)、スコット・エドワーズ(B)、ボビー・ホール(Conga)といったいつものバックアップ陣もほぼ100%のサポートぶり。派手さはないもの、安心して寄り掛かれる気軽さとゆったり感が二重丸の仕上がりがうれしい。David Tも気負いがほとんど感じられない落ち着いたプレイで聴きやすく、スタンリーのブロウの居心地の良さとうまく溶け込んでいる。とはいえ全体的にリラックスした雰囲気が連続するだけに、David Tのギターが突如として切り込んできる瞬間には思わずドキっとさせられる。懐の刀とはまさにこのことか。ちがうか。

Linda Carr / Cherry Pie Guy (1976)

ポップな楽曲をソウルフレイヴァーで包み込んだリンダ・カーのキュートでしなやかな一枚。軽快でノリのいい楽曲に、多少喉に引っ掛かり気味なリンダの高音ヴォイスが全編を彩る仕上がりが聴く者を飽きさせず、アルバム一枚あっという間に聴き終えてしまう勢いが秀逸。プロデューサーにケニー・ノーラン、アレンジャーにジーン・ペイジが名を連ねる本作に当然のごとくDavid Tも参加。全体的には地味な貢献だが、それでもA3「Lost and Found」やB4「Dial L For The Love Squad」ではリンダの陽気なパフォーマンスを支える鈴の音のようなDavid Tのエクセレントフレーズが随所に聴こえてニヤリの笑みに。

The Whitney Family / Airways (1977)

総勢10名からなるホイットニー一家の唯一のアルバム。ジャクソン5やシルヴァースに代表される兄弟ユニット同様、絆の一体感が持ち味。曲毎に異なるメインボーカルを起用しそれぞれをバックアップするという構成で、幅広い年齢層の歌声が混然一体となる魅力が伝わってくる。リー・リトナー(G)、ジェイ・グレイドン(G)、エド・グリーン(Dr)、ウィルトン・フェルダー(B)、アーニー・ワッツ(Sax)といった強者たちも彼らの個性を完全バックアップ。バラードからアッパーな楽曲までバラエティに富んだ全10曲を質の高いポップソウルアルバムに仕上げている。David Tはその豪華面々の影に隠れながらもいつものフレーズで応戦している。

The Memphis Horns / The Memphis Horns Band II (1978)

キング・カーティス『Live at Fillmore West』など、数多くのミュージシャンのバックで名演を繰り広げるメンフィス・ホーンズの78年作。ボビー・キンボール、ビル・チャップリン、マイケル・マクドナルド、ジム・ギルストラップといった豪華ボーカル陣をゲストに迎えた気合いの一枚だ。アルバム冒頭を飾るノリのいいナンバーA1「Don't Change It」で掴みはオッケー。その後もバラエティに富んだ洗練されたR&Bとダンスナンバーの数々が実に心地よく響く。David Tも弾力のあるカッティングからメロウフレーズまで全面的参加。楽曲自体にそれほど大きな特徴は見当たらないがDavid Tの貢献はかなり大。特に時代に相応しいディスコチックで画一的なリズムも目立つ塀際ギリギリの楽曲群を、バネの効いたキレのあるリズムギターでさばく具合は実に見事で頼もしい。A4「(Let's Go) All The Way」あたりはその好例だ。

Thelma Houston & Jerry Butler / Two To One (1978)

前年の『Thelma & Jerry』に続くテルマ・ヒューストンとジェリー・バトラーのデュエット第二弾。基本路線は前作と変わらないものの、互いがソロボーカルで歌う構成がキモであるようなないような。とはいえアルバムラストを飾るバラードB4「You Gave Me Long」では、曲の後半から盛り上がりを見せるデュエットならではの展開に思わずニヤリ。バックを務めるミュージシャンのクレジット表記はないがおそらくはいつもの凄腕たちが参加したと思われるタイトな演奏にのって、二人の個性がそれぞれ映える仕上がりだ。そんな中、David Tも地味ながら参加。リオン・ウエアのペンによるB1「Never Gonna Get Enough」では、バリー・ホワイトかと思わせるジェリーの歌声とストリングスにのって縦横無尽にフレーズを奏でている。

Bloodstone / Party (1984)

ブラッドストーンとDavid Tの関連と言えば82年の『We Go A Long Way Back』があるが、84年の本作もその一つ。彼らのキャリアの中ではあまり語られることがない一枚で、シンセドラム多用による一本調子の仕上がりは確かにメリハリを欠く内容ではある。が、唯一の救いはB1「Instant Love」。David Tが参加したこのミドルテンポのメロウチューンは、一転して有機的なアンサンブルが生々しさをうまく表現したナイスな一曲で実に魅力的。彼らの歌とDavid Tのギターの絡みは相変わらずの素晴らしさなだけに、アルバム全体から漂う中途半端さ加減が幾分残念な仕上がりではある。良くも悪くも時代の流れが左右した感ありの一枚。

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