David T. Works Vol.43

まだまだまだ続くこのコーナー。Vol.43の10選をどうぞ。

Ray Charles / Love Country Style (1970)

アトランティックからABCレコードに舞台を移した60年代を経て、この時代特有のニューソウル的趣きをも取り入れながら時代と向き合った70年代初頭のレイ。しかし、時代やトレンドがどうであれ、聴こえてくる歌声が“ミスター・ソウルマン”であることを再確認させられるのがレイのレイたる由縁だ。そんな彼が“Love”を歌った一枚がコレ。後にシュープリームスやアリス・クラーク、リンダ・ロンシュタットらもカヴァーするジミー・ウェッブ作の「I Keep It Hid」や、ウィスパーズやエスター・フィリップスもカヴァーした「Your Love Is So Doggone Good」など、メロウで流麗なオーケストレーションと相まった落ち着きのあるソウルネスが満載。リタ・クーリッジのバージョンでも知られるアルバム冒頭を飾るジミー・ルイス作「If You Were Mine」にDavid Tは参加。レイの持つカントリーテイストに、この時代に顕著なDavid Tのファンキーフレーズが奥ゆかしくも強烈に響いている。

Jackson5 / Dancing Machine (1974)

静かなエレピのイントロから次第に高揚していく7分を超すナンバー「I Am Love」の幕明けが印象的なジャクソン5の74年作。ヒットナンバーを量産した飛ぶ鳥を落とす勢い感はやや抑制された感のあるこの時期の彼ら。シングルカットもされ、前作『Get It Together』に収録されたアルバムタイトル曲「Dancing Machine」や、テンプテーションズ版も知られるリオン・ウェア作「If I Don't Love You This Way」など、ヒットメーカー&アイドル的ポップ感覚に加え、フロアでも重宝されたであろうアダルトテイストなR&B的アプローチが随所に見られるところが面白いところ。David Tは「She's A Rhythm Child」で控え目ながらもキレのある弾力的でファンキーなバッキングを披露している。

James Cleveland With The Troubadours / All You Need (1974)

ゴスペル界の巨匠ジェイムズ・クリーヴランドがトルバドールズなるボーカルユニットを率いてリリースしたサヴォイ・レコードからの一枚。バックを支える多くの歌声が荘厳にハーモニーを奏でる正真正銘のゴスペルアルバムだが、ソウルフィーリングも随所に溢れる躍動感ある仕上がりが印象的。歌声がメインのこのアルバムに、少ない伴奏隊の一人としてDavid Tも全編に渡って参戦。時折りワウペダルを駆使して音像に彩りを添えながら、この時期特有のDavid T節を展開する。中でも、自身のソロアルバム『With A Smile』や、バンド・オブ・プレジャーでもカヴァーするジョニー・ナッシュの名曲「I Can See Clearly Now」では、原曲よりもスローでディープなアレンジの中、キレのあるファンキーなバッキングを披露し、ひと際存在感ある輝きを放っている。

The Temptations / House Party (1975)

永き渡るキャリアの中では見過ごされがちな70年代中期テンプス。本作は曲単位でプロデューサーが異なる楽曲集約的一枚だが、寄せ集め的な印象は薄く、軽快なテンポの楽曲がバランス良くまとめられている。「Way Of A Grown Up Man」などノリの良い楽曲3曲でスティーヴ・クロッパーが制作に関与するほか、ホランド=ドジャー=ホランドもアルバム冒頭を飾る「Keep Holding On」でさすがの仕事ぶりを発揮。David Tは、ジャクソン5も演じたリオン・ウェア作の「If I Don't Love You This Way」に参戦。ジェイムズ・カーマイケルのプロデュース&アレンジの元、ファンキーなテイストを柔らかいフレーズでモノにする絶頂期のプレイがここでも堪能できる。

Billy Preston / Universal Love (1980)

A&M、モータウンと、メジャーレーベルで活動続けた70年代から80年代のビリーだが、一方で並行しながらクリスチャン系レーベルmyrrhからもアルバムをリリース。78年の『Behold!』に続き80年にリリースされたのが本作だ。女性バックコーラスの存在が比重を大きく占める構成だが、とはいえ音楽的な躍動やコード感覚はビリー節そのもので、ウネる鍵盤を軸にしたソウルフルな楽曲がずらり。アルバムラストを飾る名曲「Amazing Grace」では、ビリーによるオルガンの独演アレンジでアルバム全体を静かにおおらかに締めくくっている。David Tは「Just For Us」一曲のみにひっそりとゲスト参加。デヴィッド・ブロムバーグによるストリングスとホーンセクションに、ケニー・バークのスラップベースが小気味良く調和する軽快なナンバーに仕上がっている。

Jack Jones / Don't Stop Now (1980)

ジャック・ジョーンズの80年作は、時代的にもサウンド的にもAORの香りと風貌が全編に漂う一枚。女優にしてシンガーでもあるモーリン・マクガヴァンが歌と楽曲提供で参加しているところも本作のポイント。ケニー・ロギンスのカヴァー「This Is It」や、表題曲「Don't Stop Now」では、主役のジャックとのデュエットで二人の艶やかな世界を奏でている。David Tは、その「This Is It」や、ディオンヌ・ワーウィック&アイザック・ヘイズの「Deja Vu」に、多くの音数に埋もれる微かなバッキングフレーズで参加。それでもラストを飾る本作の中でも最もメロウな「I've Been Here All The Time」では、一聴でそれとわかるキラ星プレイのフレーズが的確に機能している。

King Errisson / King Errisson (1980)

自身のレーベルErrisongからリリースした80年作。バリー・ホワイトの「Don't Make Me Wait Too Long」のトロピカルなカヴァーで幕を開ける本作は、そのパーカッシヴなリズム感覚が南国風味でもあり、メロウな風情でもあり、はたまたジャズ的プログレッシヴな風貌でもありという多種多様な彩り。そんな楽園的異種配合感覚がパーカッショニストとしてあらゆるセッションに参加してきたエリソンの真骨頂だろう。支えるメンバーもDavid Tをはじめ、ウィルトン・フェルダー(B)、スコット・エドワーズ(B)、ジェリー・ピータース(Key)、ハーヴィー・メイソン(Dr)といった旧知の面々。ギタリストとしてカル・グリーンの名前がクレジットされているのも面白いところだ。アシュフォード&シンプソンの名曲「Ain't No Mountain」のカヴァーで聴けるファンキー感覚など、音数の多いリズムアプローチの深みを、判りやすい躍動に昇華して聴かせる手腕が実に見事。

B.B. King / Live In London (1982)

ロンドンのロイヤル・フィルハーモニック・オーケストラとの共演ライヴ。クルセイダーズ・レコードからのリリースで、となれば思い起されるのがクルセイダーズがB.B.と共演を果たしたアルバム『Royal Jam』('81)。本作はその『Royal Jam』と同じ公演の中からB.B.のステージ部分をメインに収録したもの。B.B.のブルースフィーリングはいつもと変わらず大きな磁場を生んでいるが、オーケストラとの共演によって「Everyday I have The Blues」などの代名詞的ナンバーも貫禄と新鮮な趣きが共存する面白いライヴとなっている。クルセイダーズとB.B.の両者が最後に一堂に会したと思われるアルバムラストを飾る「Encore」というジャムセッションナンバーでクルセイダーズが登場。当時、クルセイダーズのツアーメンバーとして参加していたDavid Tは、クレジットこそないものの、B.B.の強烈なブルースソロの後、負けず劣らずのエネルギッシュでブルージーなソロプレイを展開。決してフロントマンの邪魔をせず、しかし、ここぞというときにはその力量を力強くもさりげなく披露するDavid Tの強烈な個性と存在感がキラリと光る一曲だ。

Maestro Charles May Workshop Ensemble / Deliverance (1984)

多数のミュージシャンとヴォーカリストが参加した、チャールズ・メイ率いるゴスペルユニットの84年作は、壮大な趣きで描かれるハーモニーの音楽力が全編を支配する一大絵巻物。ソロイストという形で曲ごとに異なるミュージシャンをフィーチャーして聴かせる多様なアンサンブルが聴きどころだ。面白いのは、チャールズ・メイが翌年にリリースするユニットThe Forth Of Mayでも共演を果たすビリー・プレストンの参加。メジャーなポップフィールドとゴスペル世界を行き来するビリー参加作品に、かなりの確率で共演を果たすDavid Tという図式は、彼ら二人の関係性を紐解く上でも興味深い。そのDavid Tも本作に僅かながら参戦。「Somehow」など、一聴してそれとわかるフレーズで楽曲の高揚感に一役買いながらクッキリと足跡を残している。

Brian Culbertson / Bringing Back The Funk (2008)

若き天才キーボディストにしてプロデューサー的資質十分の呼び声も高い、ブライアン・カルバートソンのGRPレーベル3作目。70年代から80年代のソウル、ジャズを支えたアーティストたちを“Extra Special Thanks”とリスペクトし、その象徴としてヘッドフォンを着けた幼少時代の写真をアルバムジャケットに用いたブライアンが、その想いを結実させた2008年度版ソウル&ファンクの共演。描いた青写真の成功は、プロデューサー、モーリス・ホワイトをはじめとして、トニー・メイデン、ボビー・ワトソン、レイ・パーカー・Jr、メイシオ・パーカー、トム・スコットほか、ツワモノたちの起用が物語っている。ブーツィ・コリンズをフィーチャーしたアルバム冒頭を飾るファンクチューン「Funkin' Like My Father」、ラリー・グラハムの硬軟自在のベースとロニー・ロウズのサックスがサポートする「The Home Of Music」をはじめ、ミディアムテンポでクールに迫る「The World Keeps Going Around」ではレディシをヴォーカルに迎えるという周到さ。いずれも極上のグルーヴだが、単にノリ重視のプロダクションではなく、ブライアンのピアノやキーボードがテンションの高いグルーヴをメロディアスにクールダウンするバランス加減が実にスマートだ。David Tは、ダニー・ハザウェイの名曲カヴァー「Voices Inside ( Everything Is Everything ) 」で、エディ・ミラーと共にフィーチャリング。黒く重いグルーヴの中に、新しい光明が見え隠れし続ける強烈な躍動感を、存在感溢れるフレーズでバックアップしている。

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