David T. Works Vol.46

まだまだまだ続くこのコーナー。Vol.46の10選をどうぞ。

Jackson 5 / Christmas Album (1970)

デビュー直後の1970年にリリースされたクリスマスアルバム。立て続けにヒットを飛ばしたこの時期の彼らにとって、ファミリーグループとクリスマスというキーワードが見事に合致した感のある一枚。収められたクリスマスソングのすべてがポップ感覚溢れる楽しさ120%の仕上がりであることは、当時彼らが向かうところ敵なしの異名を持つスーパーグループであったことの証明でもある。David Tもそんな彼らの飛躍をサポート。ジャーメイン・ジャクソンのヴォーカルによる「Have Yourself A Merry Little Christmas」や「The Christmas Song」では十八番のメロウなフレーズを披露。「Up On The House Top」では、若き日の躍動するマイケル・ジャクソンのリードヴォーカルに負けず劣らずの軽快なフレーズを繰り出している。

G.C. Cameron / G.C. Cameron (1976)

ソロ転向2作目。複数のプロデューサーとアレンジャーが関与するものの、当時のトレンドを加味した楽曲の良さと、スピナーズ時代からさらに磨きのかかったメロウで堂々たる歌声が相まったバランスのとれた一枚となった。ダイアナ・ロス&マーヴィン・ゲイのデュエット版で知られる「Include Me In Your Life 」のカヴァーは、原曲でのDavid Tによるフレーズを軸に構成したデヴィッド・ブラムバーグによるアレンジワークに対し、本作で起用されたジーン・ペイジのエレピを軸にしたアレンジという対比も一興。また、前年1975年の映画「Cooley High」のサントラ用に用意され、後年ボーイズ・II・メンもカヴァーする「It's So Hard To Say Goodbye To Yesterday」では、ここぞとばかりに本領発揮の感が大のG.C.の姿が見て取れる。そんな中、何と言ってもリオン・ウェアが関与した2曲が聴き逃せないポイント。アヴェレージ・ホワイト・バンドやクインシー・ジョーンズ、ナンシー・ウィルソンら多くのアーティストがカヴァーしたリオン作の名曲「If I Ever Lose This Heaven」では、G.C.流ソウルフィーリングたっぷりのパフォーマンスが粋。もう一曲、リオンがプロデューサーとして関与しT・ボーイ・ロスによるソングライティングの「Me And My Life」では、クレジットこそないものの、アルバム中、この曲のみDavid Tが極微量のギターフレーズで参戦。時期的にはリオン・ウェア『Musical Massage』とマーヴィン・ゲイ『I Want You』と同じ頃。リオン・ウェアとT・ボーイ・ロスのコンビによるこの一曲は、本来両アルバムのいずれか用に構想された一曲だったのかも、という想像も実に楽しく興味深いところだ。

Bili Thedford / Music Of My 2nd Birth (1977)

アンドレ・クラウチやビル・マックスウェル人脈と繋がりのあるヴォーカリストがゴスペル系レーベルのGood Newsからリリースしたソロ作は、ほぼ全曲のソングライティングに関与した意欲作。親しみやすいメロディラインと洗練されたバックトラックといった、この時期のコンテンポラリー・ゴスペル特有の風貌が全開の仕上がりで、サポートしたのはジェイ・グレイドン(G)、ディーン・パークス(G)、スコット・エドワーズ(B)、エド・グリーン(Dr)、ビル・マックスウェル(Dr)、アーニー・ワッツ(Sax)といった面々。そんな中、David Tも2曲にひっそりと参加。「Reach Out To Me」は影の薄い参加で残念だが、それでもビル・マックスウェルのドラムが躍動感を増幅する「Remember Me」では、特有の輪郭がかろうじてではあるが聴き取れる。

Original Soundtrack / Roots (1977)

70年代に社会現象まで巻き起したテレビドラマシリーズのサントラ盤。全体を取り仕切るクインシー・ジョーンズの元には、壮大なドラマテーマに必要なオーケストレーションチームや、ビル・サマーズ、ボビー・ホール、キング・エリソン、ヴィクター・フェルドマンといった、アフリカ〜アメリカが交差するブラックミュージックを彩るパーカッショニスト、そしてバッキングを務めるデイヴ・グルーシン(Key)、リチャード・ティー(organ&pianio)、リー・リトナー(G)、チャック・レイニー(B)、ボビー・ブライアント(Trp)といった豪華ミュージシャンたちが集結。無論、ドラマのサントラだけに、音楽だけでは成立しない要素もあるが、時代を彩った作品に彼らミュージシャンたちが欠かせなかったことも忘れてはならない事実だ。レッタ・ムブールのヴォーカルをフィーチャーした「Oluwa (Many Rains Ago)」で聴けるDavid Tの控え目なバッキングプレイも、ドラマの世界観に沿って大人数のミュージシャンたちが関与する中、わずかではあるがきっちりと役割を果たす堅実なプレイだ。

Gene Page / Close Encounters (1978)

自身のソロ名義としてはアトランティックからアリスタに移籍後初の一枚。70年代のポピュラーミュージックシーンに欠かせないアレンジャー&コンダクターのソロ作だけあって、ウィルトン・フェルダー(B)、スコット・エドワーズ(B)、エド・グリーン(Dr)、ワー・ワー・ワトソン(G)、グレッグ・フィリンゲイズ(Key)、アーニー・ワッツ(Sax)といった旧知の面々が参戦。時代の流れか、ディスコテイストが加味された軽いビートの楽曲が大半を占めるものの、背後に流れるストリングスとの相乗効果はここでも絶大。幾分軽妙に料理された「スタートレックのテーマ」など、構える必要のないサウンドトラックアルバム的インストミュージックを展開している。ボリュームバランスの比率が小さいDavid Tのプレイは残念だが、個性の異なるもう一人のギタリスト、ワー・ワーとの対比的なプレイが興味深いところ。そんな中、スタンダードナンバー「星に願いを」のカヴァーで、ラストわずか数秒間に繰り出される、彼らしさ溢れる艶やかなフレーズに瞬間的な色気を痛感。

Johnny Mathis / You Light Up My Life (1978)

盟友ジャック・ゴールドのプロデュースによる1978作。この時期毎年のごとく作品をリリースし意欲的な側面が覗ける中での本作は、ビージーズの「愛はきらめきの中に(How Deep Is Your Love)」と「Emotion」のカヴァーが収められ、また同年リリースのデュエットアルバム『That's What Friends Are For』の相棒デニース・ウィリアムスをフィーチャーした2曲も収録している。そのうちの一曲「Too Much, Too Little, Too Late」では、David Tもこの時期例年通り欠かせない一人として参戦し、弾力感たっぷりのフレーズを披露している。

Gloria Bare / From The Heart (1985)

H.B.バーナムのプロデュースワークによる堅実で的確なバックトラックと一体化した彼女の1stアルバム。ポップフィーリングに溢れ、耳馴染みもよい明解なソウルナンバーが満載の一枚だ。クレジットこそないものの、David Tも旧知のバーナムの期待に応える好サポートぶりを発揮。ダンサブルで軽快な「You're The Best Part Of My World」や、一聴してそれとわかる低音弦によるアプローチとキラ星フレーズを織り込んだ「What Good Is A Song」や「From The Heart」など、全体の音像の中では決して大きなバランスではないものの、的確なバッキングを随所で見せる。主役のグロリアのソウルフィーリング溢れる「Sweetest Inspiration」で聴けるDavid Tの、ポイントを熟知した強烈な一音を随所に折り込むバッキングの音色は、音数こそ少ないものの、聴き手の感情が自然と込み上げる躍動に一役買っている。

Marvin Gaye / Romantically Yours (1985)

マーヴンの死後発表された未発表曲集アルバム。異なる録音時期の楽曲群から、スタンダードなポピュラーソングカヴァーとマーヴィンの自作曲を織り交ぜた構成は、ストリングスを多用した落ち着きのあるメロウなアレンジも相まって、さまざまな側面で語られた悲劇のアーティストのヴォーカリストとしての魅力をあらためて浮き彫りにもする。David Tもそんなメロウなマーヴィンを好サポートする貢献。ノーマン・ホイットフィールドのプロデュースによる「Happy Go Lucky」や、マーヴィン自作の「Just Like」や「Walkin' In The Rain」できらびやかなプレイを披露。マーヴィンのロマンティックな一面を効果的に演出する見事なプレイを披露している。

Lou Rawls / Christmas Is The Time (1993)

盟友ルー・ロウルズのクリスマスアルバム。主役のルーによる重心の低いヴォーカルときらびやかなストリングスを交えたアレンジは、しっとりとメロウに、ジャジーなテイストで、聖なる日を迎えるのに相応しい仕上がり。随所で聴けるマキシ・アンダーソンやエドナ・ライトらによるバックヴォーカルもアルバムに彩りを添えている。David Tもそんなムードを支える好サポート。スタンダード・ナンバーがほとんどを占める中、冒頭を飾るルーのオリジナル曲「Christmas Is The Time」からきらびやかなトーンを連発。「God Rest Ye Merry Gentlemen」や「The First Noel」など、アルバム全編に渡って演じられる楽しさ溢れるバッキングフレーズが、クリスマスのムードを一層効果的に演出している。

Smokey Robinson / Time Files When You're Having Fun (2009)

モータウンレジェンドが放つ渾身の一作。全12曲中、ノラ・ジョーンズの「Don't Know Why」のカヴァーを除く11曲をオリジナル曲で揃え、数年間に渡って蓄積された音源を一枚の作品としてじっくりと仕上げた意欲作だ。その風貌は「Please Don't Take Your Love」でのサンタナのギター、「You're The One For Me」でのジョス・ストーン、「You're Just My Life」でのインディア・アリーといった新旧世代取り混ぜたゲストに加え、レイ・パーカー・Jr(G)、ポール・ジャクソン・Jr(G)、フィル・アップチャーチ(G)、フレディ・ワシントン(B)といった旧知の職人たちによる安定感たっぷりのアンサンブルなど実に多彩。David Tもそんな一人として参戦し「Time Flies」と「Satisfy You」でメロウなフレーズを連発している。艶やかさを失わないスモーキーの歌声とともに奏でられる熟した音楽の凄みは、聴き手を穏やかな心持ちにさせるチカラがあると実感。

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