David T. Works Vol.19

David Tが参加したアルバムの中からピックアップして紹介するこのコーナー。Vol.19の10選をどうぞ。

Young Hearts / Sweet Soul Shakin' (1968)

4人組ボーカルユニットの68年作。ソウルファルセットを多用するリードボーカルに、柔らかくしなやかなコーラスが絡む様が実に心地良く、彼らの実力の高さは一聴瞭然の仕上りだ。キャロル・ケイ(B)、ポール・ハンフリー(Dr)といったリズム隊に交じって、我らがDavid Tも全曲に渡って参加。地味ながらも、粘っこく小気味良い初期のバッキングスタイルを披露している。特にA1のアルバムタイトル同名曲ではその傾向が顕著で、リード、オブリと全力投球のプレイが聴ける。

Original Soundtrack / Shaft In Africa (1973)

オーケストレーションアレンジにジョニー・ペイト、メインタイトルとなる「Are You Man Enough」にフォー・トップスが参加し華を添えた、ブラックムービーサントラを代表するグルーヴ感満載の一枚。全編「キレ」がほとばしるA4「Shaft In Africa」やB3「Truck Stop」など、ベース、ドラムのリズムに、流れるように宙を舞うエレピの音色が絶妙に交差する抜群の躍動感がアルバムを支配。その躍動感に一役買っているのがDavid Tのワウプレイだ。出番は少ないものの、小気味良い疾走感溢れるプレイが、心地良いシンコペーションを生み出しており、全身ノリノリ状態必至の一枚だ。

Richard "Groove" Holmes / Six Million Dollar Man (1975)

人気TVシリーズ「600万ドルの男」のテーマ曲を収録した75年作。疾走感溢れるホーンセクションに乗ってリチャードの軽快なオルガンが絡む同曲のインパクトはやはり強烈で、70年代ムービーソングの代表格的風格を漂わす。そしてこの曲以外ではチャック・レイニー(B)、ジム・ゴードン(Dr)らがリズムを刻むノリの良いソウル・ジャズが全編を彩る。David Tは全8曲中6曲に登場。ファンキーなグルーヴの一端を担う活躍だが、アレンジの具合からかそのフレーズはほとんど目立たない。が、微かに聴こえてくるその粘っこいピッキングが、やはりこの時代のバッキングには不可欠だったことを再認識させてくれる。B4「Mama's Groove」などは、「控え目バッキング」の教科書的プレイだ。

Willie Tee / Anticipation (1976)

あのワイルド・マグノリアスへの参加でも知られるウィリー・ティーの76年作。ソロ活動としては『I'm Only a Man』などの名作を残すウィリー。本作ではR&Bの持つ「コテコテ感」はどちらかというと希薄で、洗練された音づくりが目立つが、ところどころに聴ける重く粘っこいリズムが彼ならではのアプローチ。その存在感がくっきりとした輪郭であらわれている。そんなバッキング面もさることながら、最大の聴きどころはやはり彼の歌声だろう。その伸びやかでハリのある繊細なトーンは、聴く者に安心感をもたらすから不思議。面白いところではリー・リトナー(G)の参加も興味深く、A1「The Moment of Truth」とB1「Anticipation」の2曲で印象的なソロプレイを披露している。David TはA4「Liberty Bell」の1曲のみ参加。うなるベースラインと重くしなやかなドラムに微かに絡むその粘っこいカッティングに、David Tの内に秘めたファンク魂が感じ取れること間違いなし。

Johnny Hammond / Don't Let the System Get You (1978)

永きに渡ってのキャリアを誇るジョニー・ハモンドが78年に残したフュージョン色濃い一枚。チョッパーベースがちょくちょく顔を出し、シンセが多用された時代の片鱗が随所に感じられる「あの」特有の音像が印象的だ。ノリの良い気持ちよさ100%のグルーヴがよくも悪くも当時のトレンドを象徴しているかのようで今聴くと面白い。そのファンキーな演奏をバックで支えるのはレオン・ンドゥグ・チャンクラー(Dr)、アル・マッケイ(G)、バイロン・ミラー(B)、シーラ・E(Conga)といったリズムの強者たち。そんな中、我らがDavid Tは、A3「Morning Magic」一曲のみに参加。出だしからレオンの紡ぎ出すしなやかなドラムとジョニーの宙を舞うエレピとオルガンの音色にくらくら浮遊するも、当のDavid Tのギター音はほとんど聴くことができず終い。もう本当に微かにしか聴こえないという極めて微力な参加がちょいと残念。

Webster Lewis / Let Me Be The One (1981)

キーボーディストとしてももちろんプロデューサーとしてもその才を発揮するウェブスター・ルイスの81年作。ブラコン&フュージョンライクな音づくりが「時代」を感じさせつつも、ジェイムズ・ギャドソン(Dr)、ハービー・ハンコック(Key)といった一流サポート陣による引き締まったプレイと適材適所ぶりは聴き応え十分。この時期多忙を極めた彼のプロデューサーとして充実度がうかがい知れる作品だ。多くのミュージシャンを多彩に配置する彼の仕事ぶりの中で、David Tも僅かだが貢献。B3「Kemo Kimo」で聴ける弾力感たっぷりのカッティングプレイは、単調でリピート性の強い楽曲のアクセントとしての貢献の中で、ハッキリと彼の手によるものと認識できる個性が詰まっている。

アンリ菅野 / Sunshine Dream (1986)

「アンリのおしゃれで小粋なポップス・アルバム」というアルバムキャッチコピーの通り、スタンダードナンバーからジャパニーズ・ポップスまで幅広くカヴァーしたアンリ菅野の86年作だ。透明感のある伸びやかなその声が実に艶やか。その歌声をバックアップするのが、David T率いるバンド「Warm Heart」だ。ジェリー・ピータース(Key)、スコット・エドワーズ(B)、レオン・ンドゥグ・チャンクラー(Dr)に、我らがDavid T。プロデュースにはDavid Tとご存知ニール・オダ氏が名を連ねている。山下達郎の「甘く危険な香り」のカヴァーではイントロからDavid Tのメロウなオブリが冴え渡る軽快なナンバーに仕上がっている。ユーミンの「海の見える午後」では、ムードたっぷりな歌声が実に素晴らしく、バックアップするDavid Tのプレイはその歌声に応えるに相応しいこれまた名演。「ポップス」と一括りにするには、あまりに幅広い引出しが堪能できる、表情ある歌声と演奏に心から拍手だ。

Angela Bofill / Intuition (1988)

78年のデビューアルバム『Angie』がフリーソウル文脈でも人気の高いアンジェラ・ボフィルのキャピトル移籍後の第一作。ソウル、ジャズ、ポップフィーリングの様々な要素が絡み合いながら、時代にフィットするコンテンポラリーサウンドを展開する本作は、シンガーとしての彼女の本領発揮の感が大。そのコンテンポラリー感覚が好き嫌いの分かれ目、という部分はあるにしても、そのサウンドを支える面子はひとえに豪華の一言だ。ポール・ジャクソン・Jr(G)、ハーヴィー・メイソン(Dr)、デヴィッド・スピノザ(G)、デヴィッド・サンボーン(Sax)、ボビー・ライル(Key)など、書ききれないほどのミュージシャンがこの作品を一流のエンターテインメントに仕上げている。David Tは「For You And I」一曲のみに参加。ノーマン・コナーズのプロデュース、ピーボ・ブライソンとのデュエットと、バラードの王道とも言うべき、こみあげ度120%のこの曲で、まさに「デュエットバッキングの天才」の名を欲しいままにするDavid Tのサポートが静かながらも光っている。

Barbara Lynn / So Good (1993)

愛用のサウスポーギターを抱えたアルバムジャケットの93年作。30年以上のキャリアを誇る彼女の声は、ポップでノリの良い楽曲、ソウルフィーリング溢れる楽曲などのバラエティに富んだ構成と現代的なアレンジが施されたサウンドプロダクションにのって、円熟という名の魅力を重ねながら味わい深い輝きを放っている。David Tは2曲に参加。スローテンポのR&Bナンバー「Crazy 'Bout You」でのイントロから繰り出す必殺のメロウフレーズ。まさにDavid Tには十八番の展開ともいえるプレイが素晴らしい。またミドルテンポのファンキーな一曲「I Love You Babe」では、地味ながらも細かく刻む粘っこいカッティングが堪能できる。

JVC SOUL ALL STARS / JVC SOUL ALL STARS (1996)

10名のボーカリストがバンド・オブ・プレジャーをバックにR&Bを奏でるという企画アルバム。何といっても、参加している10人の日本人ボーカリストのパフォーマンスはエクセレントの一言。マーヴィン・ゲイ、テルマ・ヒューストン、アレサ・フランクリン、アイズレー・ブラザース、ミラクルズなど、全曲ソウルの名曲カヴァーで構成された聴き覚えのあるメロディと歌に、がっちりとしなやかに奏でるバッキングが化学反応を起こす様は実に痛快で心地良い。さらにDavid Tのプレイも最初から最後まで息も出来ないほどの素晴らしさの連続で、全曲マストな出来栄え。そして思わずうっとりのため息。ボーカリスト10人を擁したバンド・オブ・プレジャーの「幻の」4thアルバムとも言えなくもない、素晴らしいコラボレーションがここに収められている。

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