David T. Works Vol.13

David Tが参加した数々のアルバムの中からピックアップして紹介するこのコーナー。ではではVol.13の10選をどうぞ。

The Friends of Distinction / Whatever (1970)

男女4人の混合ユニット、フレンズ・オブ・ディスティンクションの70年作。4人の奏でるコーラスワークは重厚で美しいが、決してディープにはなり過ぎないソフト・ロック的風味をも感じさせるライトなソウル感で非常に心地良い。アルバム冒頭を飾るA1「You and I」からその素晴らしい歌声が披露され、ラストまで一気にその魅力は衰えない。参加メンバーにはジェリー・ピータース(Arr,Key)、ウィルトン・フェルダー(B)、ジョー・サンプル(Key)、エド・グリーン(Dr)といった面々が名を連ねており、彼らのハーモニーを前に出過ぎず引っ込み過ぎずのサポート。David TはB9「Willa Faye」とB10「Bring Us a Better Day」の2曲のみ参加。その音は彼らのボーカルの影に隠れて地味に目立たないが、この当時の彼らしいプレイによる、まさにバックアップという名に相応しい仕事ぶりだ。

Booker T / Evergreen (1974)

これは名盤。MG'sの活動でおなじみ、ブッカー・T・ジョーンズの74年のソロアルバムだ。A1「Jamaica Song」からしっとりと優しいメロディ。続くA2「Mama Stewart」やA5「Song For Casey」などドリーミィーな楽曲がずらりと並ぶ。ブッカーTのキーボードがアルバムの全体の色彩を決定付けているのは間違いないが、David Tのギターもそれに大きく寄与しているのもまた事実。A4「Flamingo」は、ブッカーTのせつないオルガンの音色に乗ってDavid TのどうしようもないくらいDavid Tなカッティング。ひたすら同じ小節構成がリピートされる単純な曲だが、徐々に二人の奏でるフレーズが盛り上がりを見せ高揚感が増幅してゆく。David Tの抑揚あるソロフレーズも聴きどころたっぷりだ。そしてB1「Evergreen」では、ひたすら軽快に跳ねるベースとドラムの上で、David Tのギターがカッティングにソロに大活躍。全偏を縦横無尽に駆け巡るパーカッシブかつメロウな素晴らしいプレイを披露する。そしてDavid Tも抑制したプレイで一役買っているB5「Lie To Me」。ブッカーTの美しいピアノの調べと静かに奏でるボーカルが実に印象的なスローバラードで本作はひっそりと幕を閉じる。派手さは皆無だが、不思議な余韻の残るまさにエヴァーグリーンというべき名演が聴ける名盤だ。

Miriam Makeba / A Promise (1974)

南アフリカ出身で、国際的な政治活動でも知られるミリアム・マケバの74年作。本作の最大の特徴、それはジョー・サンプル(Key)、スティックス・フーパー(Dr)、アーサー・アダムス(G)、それにDavid Tと、クルセイダーズ人脈の参加だろう。そのことが彼女の「アフリカの血」が放つ個性をいい意味で緩和させ、アルバム全体を聴きやすいものにしている。とはいえ、コンガやフルートなどのテイスト、また彼女のボーカルスタイルそのものが独特の雰囲気を漂わすのもまた事実。参加ミュージシャンの持つ個性との対比は聴きどころの一つだろう。David Tのギターはアルバム全編に渡って冴え渡っており素晴らしいプレイが満載だ。またアーサー・アダムスとのギターの対比も面白い。「Quit It」や「We Got To Make It」「Mama Ndiyalila」あたりでは二人のプレイは全快でかなり印象的。しかし全体を通してミリアムのボーカルはやはり特別な光を放っていて不思議な余韻が残る実に素晴らしいアルバムだ。

Al Wilson / La La Peace Song (1974)

全米ヒット「Show And Tell」で知られるR&Bシンガー、アル・ウィルソンの74年作。A1のアルバム同名曲のみジョニー・ブリストルがプロデュース。後はスティーブ・クロッパーとジェリー・フラーがそれぞれ分け合っているという構成。ということもあってか、この人、ジョニー・ブリストルに雰囲気似ています。メロウなミディアム・グルーヴB2「Fifty-Fifty」などはストリングス・アレンジや女性バックコーラスなど、まさしくその流れ。B3「The Longer We Stay Together」などの王道的R&Bも聴き応え十分だし、シンコペーションの効いたミディアム・ファンクのB4「Willoughby Brook」やローズピアノが効果的なB5「You're The One Thing」も、ホーンセクションと合わせて高揚感バッチリ。全体として非常に心地よいソウルミュージックを堪能できる一枚だ。David Tの参加は控え目だが、中でもアップテンポの展開が異色のA5「Passport」などでは、とびきり疾走感あふれるDavid Tのカッティングがリズムを支配。それでもフレーズの一つ一つがなぜかメロウな感触を漂わすから不思議。まさにDavid Tマジックともいうべき一曲だ。

Andrae Crouch / Take Me Back (1975)

ゴスペル界のクインシー・ジョーンズの異名をとるアンドレ・クラウチが自らのバンドthe Disciplesを率いて発表した75年作。クリスチャンによるクリスチャンのための音楽だが、それ以外の層にもすんなりと受け入れられる聴きやすい仕上がり具合が彼の持ち味。本アルバム発表後はAOR的洗練さも取り入れ、コンテンポラリー・ゴスペルというジャンルを確立していく。だが、本作はその一歩手前、土っぽさの香りが残る音像とポップさがちょうどいいバランスで形成されたR&Bだ。A4「All I Can Say」やA5「You Can Depend On Me」などのいかにもゴスペルなバックコーラス隊の躍動感と、ローズピアノの音色の対照的な色彩は、オルガンによる効果のそれと較べるとポップフィーリングさえ漂わすから不思議だ。B2「The Sweet Love Of Jesus」でのラリー・カールトンのギターソロもまさしくアメリカンな雰囲気を十分に表現。David Tの出番は非常に少ないが、A1「I'll Still Love You」でのワウプレイや、アルバムラストを飾る「Tell Them」でのかすかに聴こえるキラ星バッキングなど、ほとんど表には出てこないものの確実に楽曲のイメージを決定付けている。

Aretha Franklin / You (1975)

クィーン・オブ・ソウルの異名を欲しいままにするアレサ・フランクリンの75年作。アレサと言えば『Live At Fillmore West』や『Young, Gifted and Black』『Sparkle』など名盤は多数。ゴスペルに根ざした抜群の歌唱力は、どんな時代にもどんなスタイルにも他を寄せ付けない圧倒的な存在感だ。ジーン・ペイジが全体のアレンジワークを担当していることからか、リー・リトナー(G)、レイ・パーカーJr(G)、エド・グリーン(Dr)、トム・スコット(Sax)らの手堅い布陣の起用がさらにその音作りを華麗なものにしている。ゴスペル風味なファンキーさが力強いA1「Mr.D.J」、ヴァン・マッコイ作のスローバラードA4「Walk Softly」も、その演奏陣の確かな仕事が輝いている。David Tはアルバム全体に渡って地味にサポート。一聴するとその影は薄いが、よく聴けば彼の絵筆が一曲一曲を彩っているのがわかるはずだ。

Johnny Mathis & Deniece Williams / That's What Friends Are For (1978)

50年代からアメリカン・ポップスの舞台で活躍しているジョニー・マチスとカリンバ・プロダクション出身の歌姫デニース・ウィリアムスがデュオを組んだ77年作。多数のカヴァー曲が収録されていることからもジョニーが自身のアルバムとしてより完成度の高い「歌」を求めた結果のデニースの起用だろう。スティーヴィー・ワンダー作の名曲A2「Until You Come Back To Me」や、そのスティーヴィーがハーモニカで参加しているビリー・ジョエルのB2「Just The Way You Are」なども男女のデュオという視点で聴くと新鮮さもひとしおだ。またアルバムタイトル曲のB3「That's What Friends Are For」も、デニースのソロアルバムバージョンと較べるとアップテンポでノリが良い。A3「You're a Special Part of My Life」などではDavid Tも二人の情感たっぷりの歌声をうっすらとではあるがサポートしている。

上田正樹 / Sweet Love Bitter (1989)

上田正樹の声は色っぽい。日本屈指のR&Bボーカリストとして確固たる存在の彼だが、本作でもその魅力は全く変わらない。そんな彼を本作では多彩なミュージシャンがバックアップ。山岸潤史(G)、続木徹(Key)、ジェイムズ・ギャドソン(Dr)、それにDavid Tというバンド・オブ・プレジャー組の他、ボビー・ワトソン(B)、マイケル・ワイコフ(Key)、内田勘太郎(G)といった面々も顔を覗かせる。1曲目「I'll Be Coming Back」から、いきなり山岸氏とDavid Tのギターがしのぎを削り、つかみはOK。以降もオーソドックスかつ王道的な上田節が続き、緩急のある実に安心して楽しめる内容に仕上がっている。

Diane Schuur / Blues For Schuur (1997)

盲目のシンガー、ダイアン・シューアのブルースアルバムだ。1曲目「I'm Not Ashamed to Sing the Blues」からソウルフルな彼女のボーカルが全快で一気に彼女の世界に引きこまれる。またギターはほぼ全編に渡ってDavid Tがサポート。いつもながらのスウィートバッキングに加え、ブルース・フィーリングたっぷりのソロワークも披露しており聴き応え十分。ジャズ・ブルース「Stormy Monday Blues」でもその勢いは衰えず、抜群のソロで「ブルース」を奏でる。「Who Will the Next Fool Be」で聴けるDavid Tの緩急あるブルース・ギターのフレーズ一つ一つが、ジャズ、ブルース、ソウルのすべてを嫌が応でも感じさせる。ほぼ全曲、近年の彼の素晴らしいプレイが堪能できるという、David Tファンにとってはまさに「お買い得」盤だろう。

David Garfield & Friends / Tribute to Jeff (1997)

1992年に他界した元TOTOのドラマー、ジェフ・ポーカロのトリビュートアルバムである。数え切れないほどのミュージシャンが本アルバムに名を連ねており、そのことがジェフの素晴らしさを十分に物語っている。選曲もかなりバラエティに富んだ優れもの。ボズ・スキャッグスの「Lowdown」ではエイブラハム・ラボリエルJrがドラムを担当。原曲よりもハードなタッチで再演している。またジミヘンの「If Six Was Nine」ではサイモン・フィリップスのドラムにウィル・リーのベース、まるでジミがのり移ったかのようなエディ・ヴァン・ヘイレンの気迫溢れるギターソロも聴ける。また「Babylon Sisters」では、スティーリー・ダンの原曲バージョンでプレイしジェフ本人が絶賛して止まなかったバーナード・パーディが参加。原曲と同じく抜群のタイム感を叩き出している。David Tはアル・グリーンの「Let's Stay Together」のカヴァーに参加。ドン・ヘンリー、ビル・チャップリン、ジョー・サンプル、スティーブ・フェローンなどの豪華なメンバーの中にあっていかにも彼らしいプレイで貢献している。

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