David T. Works Vol.24

David Tが参加した数々のアルバムの中からピックアップして紹介するこのコーナー。まだまだ続きます。ではVol.24の10選をどうぞ。

Bobby Bryant / Swahili Strut (1971)

トランペット奏者ボビー・ブライアントが71年にカデットに残したソウル・ジャズの傑作。フリーキーさをも漂わすボビーの刺激に満ちたペットと、きっちりと脇を固めるキレのあるリズム隊が混然一体となって奏でるグルーヴ感は、まさにソウル・ジャズの醍醐味全開といったところ。スタッカートの効いたベースがリフレインするA2「A Prayer For Peace」は、怒濤のホーンセクションの隙間をぬってジョー・サンプルの鍵盤がサラリと表情を見せながら疾走するグルーヴ感満載の一曲。ダークなオルガンとホーンの音色が絶妙のファンキーさで交差するB1「Kriss Kross」も疾走感溢れるアレンジが秀逸。ノリの良いブガルー調のナンバーB4「Nite Crawlers」ではアーシーなオルガンとアーサー・アダムスのふくよかでエッジの効いたカッティングに伸びやかなボビーのペットが実に居心地よく響きあう。David Tはカーペンターズで有名なロジャー・ニコルス作の「We've Only Just Begun」に登場。控え目な音量ながらいつものキラ星フレーズを連発しミドルテンポのアレンジを華麗にバックアップしている。

Donald Byrd / Ethiopian Knights (1971)

ノーマン・シーフのアートワークによるドナルド・バードの71年作。72年の次作『Donald Byrd』から始まるラリー&フォンス・ミゼル兄弟のスカイハイ・プロダクションが手掛ける洗練された音像とは幾分異なり、整理整頓される半歩手前のライブ感溢れる生の臭いが印象的な本作。かといって完全なフリースタイルのジャズとも違う、ファンキーなグルーヴを美的に感じる居心地良さを持つあたりが、マイルスとの決定的な違いだろう。その微妙なテイストはアルバム冒頭を飾る「The Emperor」を聴けば納得かも。エド・グリーン(Dr)、ウィルトン・フェルダー(B)、ジョー・サンプル(Key)、ボビー・ハッチャーソン(Vibe)、ボビー・ホール(Cong)らによる音の洪水をワンコードでリフレインする生々しさが、当時のトレンドの一端を垣間見るようで興味深い。うって代わって続く「Jamie」では、David Tのメロウフレーズが冴えるゆったりとしたメロディアスな楽曲で、ここでひとまず一呼吸。そしてラストを飾る「The Little Rasti」。強烈なフィルインとリズムを奏でるエド・グリーンの素晴らしいドラミングにウィルトン・フェルダーの重くバネのあるベースが絡みつく展開で幕を開けるこの曲では、David Tのサイケ感溢れるワウプレイが全開し、17分を超す長丁場にドナルドのトランペットも宙を舞い続ける。

Blossoms / Shockwave (1972)

女性3人によるブラッサムズ唯一のアルバム。全編伸びやかなコーラスワークとタイトなバックアンサンブルが見事に調和する躍動感溢れるヤング・ソウルネスたっぷりの、フィーメイルボーカル好きにはたまらない一枚だ。アレンジワークにはデイヴィッド・ブラムバーグとジーン・ペイジらが参加。フリーダ・ペインのA3「Cherish What Is Dear To You」やビル・ウィザースのB3「Grandma's Hands」など、カヴァー曲の解釈も爽快で心地よく響く。 David Tもそのグルーヴに一役買っており、A2「It's All Up To You」では小気味良いドラムとベースラインに呼応するカッティングを披露。A5「Fire And Rain」では、ゆったりとしたメロウなバラードを熱唱する3人のボーカルの後ろで、途中ワウプレイによるアクセントも交えながら最初から最後まで深みのあるブリリアントなオブリを奏でるDavid Tのバックアップとともに、こみ上げ度も一気に上昇する展開が実にスリリングだ。

Original Soundtrack / Blacula (1972)

ジーン・ペイジの手による同名映画のサントラ盤。ホーンセクションとオーケストレーションによる怒濤の疾走感、うねりまくるベースライン、浮遊感と迷宮への誘い感漂うエレピの音色が一体となって押し寄せる、見事なブラックムーヴィーのバックミュージック。そこに必要不可欠なのがワウプレイであることに異論があるはずもなく、David Tの出番、というわけ。アルバム全編にまたがって発散される黒っぽい香りはあくまでも映画のバックトラックとしての役目からくるという事実が、もったいないような、そうでないような。映像とリンクしてはじめて効果のある音楽の何たるか。それを想像する度に70年代ブラックムーヴィー音楽の奥深さを思い知らされるのである。たまには。

Stanley Turrentine / Have You Ever Seen The Rain (1975)

テナーサックス奏者スタンリー・タレンタインの75年作。ムーディで滑らかなアレンジが印象的なジャズ・フュージョンサウンドが展開される本作の聴き心地良さは、サポート陣の顔ぶれを見れば納得というもの。フレディ・ハバード(Trp)、パトリース・ラッシェン(Key)、ロン・カーター(B)、ジャック・ディジョネット(Dr)らに加え、ストリングスアレンジにはジーン・ペイジにビリー・ペイジ、それに我らがDavid Tといった完璧な布陣。A3「T's Dream」では、パトリースの浮遊するエレピとDavid Tのパーカッシブかつメロウなリズムカッティングが骨太のスタンリーのサックスと絡むや否や、まろやかでスムーズな色彩に変貌を遂げる。マリーナ・ショウのB2「You」のカヴァーでもそのスムーズ加減は変わらず、David Tの単音フレーズが抜群のタイミングで隙間を埋めていく。これといったインパクトはないものの、アルバム全編を通して安心して寄り掛かれる居心地の良さが楽しめる一枚だ。

Sylvia Smith / Woman Of The World (1975)

David Tのオリジナルアルバム『Ahimsa』への参加でも知られるシルヴィア・スミスのソロアルバム。ファンキーかつ独特のビブラートを聴かせる彼女の声を見事にバックアップするスタッフ陣には、プロデューサーとしてスティーヴ・バリとマイケル・オマーティアンが名を連ね見事な仕事ぶりを発揮している。バックを務める粒立ちの良いファンキーサウンドの立て役者は、エド・グリーン(Dr)、ウィルトン・フェルダー(B)、ヴィクター・フェルドマン(Per)に我らがDavid Tといった面々。さらにウォーターズの華麗でメロウなバックボーカルも本作の彩りを決定付ける大きな貢献度で印象的だ。アルバム冒頭を飾る「Original Midnight Mama」では、キレのあるエド・グリーンのリズムに乗って全てのパートがフル稼動するグルーヴ感の渦の中でDavid Tのギターも地味ながら貢献。A5「Breakin' Up A Happy Home」やB1「Stop I Don't Need No Sympathy」では、シド・シャープによるオーケストレーションの隙間から時折り聴こえるDavid Tのバッキングフレーズが絶妙のアクセントとなって冴え渡っている。

Jackson Sisters / Jackson Sisters (1976)

レディ・ジャクソン5の名を欲しいままに、いやポップさとファンキーさでは一枚上の感も漂わすジャクソン・シスターズ唯一のアルバム。冒頭からエンディングまでダンサブルでポップでソウルフルなナンバーが目白押しのグルーヴ感満載な一枚で、フロアでは盛り上がり大会必至は覚悟すべし。特にB面の「Boy, You're Dynamite」から「Rock Steady」そして「Miracles」に至る躍動感溢れる怒濤の連続攻撃は、フロアにいなくとも見事なKO劇を約束する完璧な流れだ。ジョニー・ブリストル作のメロウ・グルーヴなナンバーが多く収められていることもあり、David Tも本作にしっかりと参加。A2「Maybe」で絶妙のアクセントとタイミングによるカッティングフレーズを刻むと同時に、彼以外の何者でもないという刻印をもこの傑作盤にしっかりと刻んでいる。

Shalamar / Uptown Festival (1977)

TV番組「ソウルトレイン」がきっかけとなりデビューする3人組ユニット、シャラマーの1stアルバム。当初は2人組の架空ユニットとしてスタート、そこに後にソロデビューし大ヒットを飛ばすジョディ・ワトリーが加わった形で発表された本アルバムは、モータウンの名曲をずらりと並べた良質の居心地感満載の一枚だ。中でもミラクルズのB2「Ooh Baby, Baby」のカヴァーは、ジーン・ペイジのアレンジによるストリングスと3人のハーモニーのバランスが実に聴き心地よく秀逸の出来。David TはスローテンポのメロウナンバーB1「High On Life」でその個性的なフレーズを見事に披露し貢献している。アルバムジャケットのイラストワークを手掛けたのはアース・ウインド&ファイアの仕事でも有名な長岡秀星氏。

Brothers By Choice / Brothers By Choice (1978)

いきなりDavid Tの粘っこいカッティングフレーズが強烈なダンサブルチューン「She Puts The Ease Back Into Easy」で幕を開けるブラザーズ・バイ・チョイスの78年作。しなやかな女性バックボーカル、哀愁味たっぷりのストリングス、浮遊するエレピ、腰に来る太く躍動するベースライン、堅実にリズムをキープするドラムワークなど、ここで聴けるアンサンブルは間違いなく極上のソウルネス。ダンスミュージックではあるがディスコオンリーではなく、時折り顔を覗かせるクロスオーバー風の味付けとメロディアスなポップ感覚のバランス具合も程良く響き、最初から最後まで一気に駆け抜けるノリとファンキーさは実に頼もしい。フロアでの需要は言うに及ばずの快作だ。David Tの参加は少なく地味だが、それでもB1「Take a Little More」では細かい単音ピッキングで貢献し確かな足跡を残している。

Bobby Womack / Someday We'll All Be Free (1985)

『Poet』『Poet 2』と80年代に入ってもその存在感をあらわにしたボビー・ウォマックの85年作。ノーマン・シーフによる粋な写真ジャケが飾る本作に参加したのは、ハーヴィー・メイソン(Dr)、ジェイムズ・ギャドソン(Dr)、ジェイムズ・ジェマーソン(B)、クラレンス・マクドナルド(Key)らにウォーターズのバックボーカルといった布陣。一部シンセの多用によるアッパーなサウンドプロダクションが顔を覗かせるものの、変わらぬボビー節が聴こえるとそこはもう一面ワン・アンド・オンリーの世界が繰り広げられる。David Tもアルバムラストを飾る「I Wish I Had Someone To Go Home To」で地味ながらもボビーの歌声をバックアップ。しかし、本作の最大の聴きどころはダニー・ハサウェイの名曲A2「Someday We'll All Be Free」のカヴァーだろう。本家よりも幾分スローテンポなR&Bに仕上がっているこの曲を、じっくりと、そして丁寧に歌い上げるボビーの姿は実に印象的で、この曲の持つポテンシャルの高さが証明されているようでもある。なお、本アルバムのCD盤ではアコースティックギター一本による別ヴァージョンがボーナストラックとして収録されている。

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