David T. Works Vol.07

David Tが参加した数々の名演の中からピックアップして紹介するこのコーナー。まだまだ続きます。Vol.07の10選をどうぞ。

Paul Jeffrey / Paul Jeffrey (1974)

テナー・サックス奏者、ポール・ジェフリーがMainstreamに残した74年作。アルバム冒頭からノリノリのポップなジャズ・ファンクが炸裂。チャック・レイニーの跳ねまくりのベースが否が応でも気分を高揚させ、期待感はいきなり100%に急上昇。続くA2「Ben」ではゆったりとした楽曲にDavid Tのギターも静かに優しくフレーズを奏でる。と思いきやA3「Hip Soul Sister」では再び激しく交差するベースやドラムがそのタイトル通り最高にヒップでグルーヴィ。ブルー・ミッチェルのトランペットもその先頭をひたすら突っ走る勢いだ。B1「Bondage」はジョー・サンプルのピアノがゴキゲンなジャズ・ファンクナンバーで心地よい。そしてその勢いは続く「Jacoba's Song」や「Acrema」でも衰えることなく、盛り上がり度指数は最後まで一気に上昇する。痛快極まれり、とはまさに本アルバムのことを言うのだろう。

Nancy Wilson / Come Get To This (1975)

表現力豊かなその声で幅広いジャンルを行き来するナンシー・ウィルソンの75年のグルーヴィな傑作盤。本作でもジャジーでソウルフルでメロウなバラエティに富んだナンバーが揃っているが、彼女の歌声はそんなジャンルを軽く飛び越える不思議な魅力を放っている。ウィルトン・フェルダー(B)、エド・グリーン(Dr)、ジョー・サンプル(Key)、レイ・パーカーJr(G)らの好サポートが功を奏したのは言うまでもないが、プロデューサーでもあるジーン・ペイジによるストリングス&ホーンアレンジの行き届いた落ち着きのあるサウンドプロダクションがゆったりとした雰囲気の中にもきらめきと輝きをもたらしていることもまた事実。リオン・ウエアの名曲A3「If I Ever Lose This Heaven」など、ホーンセクションとストリングスが一体となった極上グルーヴがここにある。そしてDavid Tはアルバムタイトル曲となったマーヴィン・ゲイの名曲A1「Come Get To This」でいきなり登場。表情のあるフレーズを縦横無尽に奏でまくる姿は、B4「Like a Circle Never Stops」でも変わらず、目立たないが目立っているという不思議な現象を生んでいる。

Jon Lucien / Premonition (1976)

ジャズ、ソウル、ラテンなどの要素が微妙に交じり合うなんとも形容し難い不思議な魅力を持つジョン・ルシアン。90年代に入りフリーソウル文脈の中で再評価された感のある彼の76年のアルバムがこれ。特有の低音揺さぶるボーカルがその音世界の入り口となり、様々なテイストの楽曲がゆったりとしながらも変幻自在に堪能できるリラックス感漂う作品だ。特にB1「Gaku」ではジョン本人の手によるフェンダー・ローズの浮遊感と、際立った音像のベースラインが絶妙のグルーヴを生み出しながらも曲全体の雰囲気に不思議な肌触りを感じさせ印象的。そんな中、David TはB3「And All Goes Round And Round」1曲のみ参加。疾走感漂う16ビートに乗ってノリノリのグルーヴを生み出すベースのチャック・レイニー、そしてひたすら切れ味鋭いカッティングを生み出すレイ・パーカーJr.らの隣で、小気味よくメロウなフレーズで呼応するDavid T。このアプローチの対比はなかなかの聴きどころだ。

Lamont Dozier / Peddlin' Music On The Side (1977)

ブライアン・ホランドとエディ・ホランドとのH=D=Hトリオとして、ソングライティングやプロデュース活動で知られるラモント・ドジャーのワーナー移籍後の2作目となる77年作。多彩なキャリアの持ち主だが、ボーカリストとしての彼の資質はやはり素晴らしいの一言。伸びのあるシャウトに独特のビブラートが、彼の書く楽曲に絶妙にマッチして存分に聴かせてくれる。ジョー・サンプル(Key)、ウィルトン・フェルダー(B)、ジェイムズ・ギャドソン(Dr)といった一流どころをずらりと配置し、ソウルフルでありながらも洗練された音作りが垣間見える77年という時代のトレンドとも合致。ギターはDavid Tの他にレイ・パーカーJr、アーサー・アダムスらが参加しており、そのアプローチの対比も聴きどころの一つだ。アルバムラストを飾る同名タイトル曲では、David Tの絶妙バッキングが音の隙間から輝きを放っている。

Gladys Knight / Miss Gladys Knight (1978)

グラディス・ナイト&ザ・ピップスとして50年代から活動を続けていたグラディス・ナイトの78年作。ポップでヒット性の高い楽曲をソウルフルに奏でるザ・ピップス時代と較べ、シンガーとしての主張と個性がうかがえる仕上がりは印象的だ。歌唱力は折り紙つき。伸びのあるボーカルが存分に聴け、またそれに呼応するバッキングも落ち着きのあるプレイの連続で素晴らしい。デヴィッド・フォスターやジョー・サンプルの鍵盤組に、エド・グリーンの円熟味あふれる抑制されたドラミング、そしてニック・デカロとデヴィッド・ブラムバーグによるストリングス・アレンジがアルバム全体を一つの色に染めている。David Tも決して前面には出てこない裏方に徹した控え目なプレイだが、随所にまさしく彼以外の何者でも無いといわんばかりのエモーショナルなトーンを聴かせてくれる。

Jimmy Smith / Unfinished Business (1978)

言わずと知れたジャズ・オルガニスト、ジミー・スミスの78年作。『Root Down』『The Cat』などジミーの名盤は数多くあるが、その中でも本作はアーシー加減が幾分か抑えられた洗練が際立つアレンジとサウンドプロダクションが印象的なジャズ・ファンクがずらりと並ぶ。といっても、奏でられるフレーズやメロディに聴けるいつもの「ジミー節」は健在で、安心して彼のうねりまくる鍵盤プレイを堪能できる。中でも圧巻がB3「Serpentine Fire」。アルバム中、この曲のみ参加メンバーが異なっており、ジェイムズ・ギャドソン(Dr)、ロニー・フォスター(Key)、エイブラハム・ラボリエル(B)そして我らがDavid Tらが、ジミーの火を噴くオルガンを好サポートしている。

Margie Joseph / Feeling My Way (1978)

しっとりと深みのある声で表情ある歌を披露するマージー・ジョセフの78年作。アリフ・マーディンのプロデュースによる74年の『Sweet Surrender』など多くの名盤を残す彼女だが、Atlantic時代の最後となる本作も文句無く素晴らしい出来である。プロデューサーにジョニー・ブリストルを起用、ジェイムズ・ギャドソン(Dr)、ジェイムズ・ジェマーソンJr(B)、リー・リトナー(G)といった面々が参加し、よりメロウに、よりポップにアルバム全体を色鮮やかに描いている。さらにジョニー・ブリストルといえばギターはDavid Tというくらい、本作には全編彼のメロウバッキングが全開。バッキングギターの「いろは」が全て揃っているといっても差し支えない多種多様のアプローチの妙が堪能できる極上盤だ。特にジョニー・ブリストル節が冴え渡るA2「Come On Back To Me Lover」では、メロディとリズムが一体化したピッキングとフレーズが、どうしようもなくDavid Tしていて、どうしようもないくらい素晴らしい名演。やはりジョニー・ブリストルといえばDavid T、なのである。

Leon Ware / Inside Is Love (1979)

リオン・ウエアといえばDavid T。二人の共演は、互いの個性を呼び合うように濃密な世界を描く素晴らしいプレイの連続なのだ。哀愁たっぷりなメロウ感とコードワークが心に染み入る本作はジーン・ペイジのストリングス・アレンジがリオンの持ち味を効果的に引き出すのに成功している傑作。時代を感じさせるサウンドプロダクションが懐かしくもあるが、リオンの描く音世界はマーヴィン・ゲイの『I Want You』以来何ら変わりなく、あくまでもメロウでせつない。エド・グリーンのタイトなドラム、ソニー・バークのシンセ、リオン本人によるエレピなど、いずれの要素もただただリオンの描き出す世界に絶妙に溶け込んでいる。ミニー・リパートンの『Adventures In Paradise』('75)に提供した「Inside My Love」の原作者バージョン「Inside Your Love」でのグルーヴ感覚も、楽曲のメロウネスとの相乗効果で高揚感が一層際立っている。アルバムラスト曲「Hungry」では、最初から最後までDavid Tのメロウネス全開の素晴らしいプレイが披露される。

Les McCann / The Longer You Wait (1983)

キーボーディストとしてのみならず60年代末にはロバータ・フラックを世に送り出すなど、ジャズ界とR&B界を股にかけながら多才な側面を持ち合わせるレス・マッキャンの83年作。ここで聴けるのは円熟味を増した大人のR&Bとも言うべき音世界。80年代初頭特有のサウンドプロダクションは、今聴くと決して洗練されているとは言い難い面もあるが、当時の感覚ではトレンドに沿った現代的な音として彩られており、70年代特有の“良い意味での垢抜けなさ”が感じられないという変化はある。だが音楽そのものに大きな変化はない。「The Longer You Wait」ではジェイムズ・ギャドソンの大きく静かに揺れるリズムに乗り、David Tのギターも歌とサックスに絡みつきながら歌っている。「All Strung Out On You」では小刻みで軽快なバッキングでノリのいいファンキーさを醸し出しているものの、それが決して大味になることなく、あくまでも熟した大人のプレイに感じてしまうから不思議。そして「Just Like Magic」では、これ以上ないくらいの落ち着きのある枯れながらも濡れているというDavid Tの激渋プレイが聴ける。バッキングとは斯く在れり、と言わんばかりのプレイの連続だ。

山岸潤史 / My Pleasure (1988)

日本が誇るブルースマン山岸潤史の88年の大傑作盤。ここに結集したメンバーは、ジェイムズ・ギャドソン(Dr)、沼澤尚(Dr)、レス・マッキャン(Key)、続木徹(Key)にボビー・ウォマックという日米混合の超強力隊。「I'll Come Running Back To You」と「Give This Love a Try」ではそのボビー・ウォマックの実にソウルフルなボーカルに山岸氏のブルースフィーリング溢れる表情豊かなアプローチが見事に調和した傑作だ。ギターが歌うこと歌うこと! さらにダニー・ハザウェイ作の「We Need You, Right Now」で我らがDavid Tの登場である。ここでのDavid Tは水を得た魚のような弾きまくり状態。その勢いは続く「Best Thing That Ever Happened To Me」でも衰えることはない。そこに負けず劣らずはじけている山岸氏。実に素晴らしい競演。アルバムラストを飾るB4「Please Send Me Someone To Love」ではついに、他の楽器を排除したDavid Tと山岸氏の二人だけの音世界が描かれる。自由にソウルを奏でるDavid Tのプレイの隣で実に幸せそうな表情を浮かべながら絡みつく山岸氏の姿が容易に想像できるという、リラックスとリスペクトが共存した見事なアンサンブルがここにある。

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