David T. Works Vol.21

David Tが参加した数々のアルバムの中からピックアップして紹介するこのコーナー。これまで「1アーティスト1アルバム」の原則で紹介してましたが、今回から同じアーティストの他のアルバムも採りあげていきます。ではVol.21の10選をどうぞ。

Merry Clayton / Gimme Shelter (1970)

ルー・アドラーのプロデュースによる記念すべきメリー・クレイトンの1stソロアルバム。ジョー・サンプル(Key)、ビリー・プレストン(Key)、キング・エリソン(Conga)、ポール・ハンフリー(Dr)らによる鉄壁のバックアップも功を奏し、この時点で既に彼女の持つ奔放で伸びやかな歌声が十二分に堪能できる躍動感溢れる一枚だ。とはいえ、ゴリゴリのソウル風味だけではなく楽曲は実にバラエティに富んだ構成。アルバムタイトルにもなったストーンズの「Gimme Shelter」は、本家バージョンにもバックボーカルとして参加している彼女だが、自身のアルバムでは全編通しての熱唱を披露する。David Tも同じOdeレーベルという「仲間」として参加。ジーン・ペイジのオーケストレーションが伸びやかに響くB1「Here Come Those Heartaches Again」でのきらびやかでメロウなフレーズはいかにもDavid Tらしい個性だ。

Thelma Houston / Thelma Houston (1972)

長いキャリアを誇るテルマ・ヒューストンの2ndアルバム。アルバム冒頭とからいかにもモータウン然とした躍動感溢れるサウンドプロダクションが心地よいが、全体的にはアコースティックな弦の響きによる静かな佇まいの楽曲が印象的でもある。が、ジャニス・ジョプリンで有名なA3「Me and Bobby McGee」のカヴァーでは、彼女の持つソウルフルなテイストに加え、ピアノ、ホーンセクションによる南部の香り漂うスワンプ風味も感じられる「いなたさ」が実にいい感じ。ジーン・ペイジのアレンジによるこの曲には、David Tものっけからいつものキラ星プレイと軽快なワウプレイを随所に披露。もう一曲、ジーン・ペイジの手によるオーケストレーションが冴えるバリー・ホワイト作のB4「Blackberries」でもDavid Tのフレーズが輝きを放ちながら歌の持つ凄みに拍車をかけている。

Blue Mitchell / The Last Tango=Blues (1973)

冒頭から強烈なビートとグルーヴで迫る「Soul Turn Around」で幕をあけるブルー・ミッチェルのメインストリーム盤。おなじみボブ・シェッドのプロデュースの強烈な一枚だ。チャック・レイニー(B)、レイ・パウンズ(Dr)、ポール・ハンフリー(Dr)、キング・エリソン(Per)、チャールズ・カイナード(Org)といったリズム隊に支えられ、ミッチェルのペットも安心して奏でまくられるという凄みある仕上がり。A2「Killing Me Softly With His Song」でのDavid Tの独壇場とも言えるキレのあるオブリとメロウフレーズのなんという華麗さ! シネマミュージック風のアレンジが印象的なB1「Last Tango In Paris」での重心の低いキレのあるドラムの横で鋭く切れ込むDavid Tのフレーズは絶妙この上ない。ゆるさとタイトさが紙一重の緊張感。そんなグルーヴが全編を支配し続け、そこにDavid Tのギターも暴れまくりメロウまくりの世界が展開。この時期のDavid Tの典型的なフレーズは全て拝めるというありがたい音源だ。

Billy Preston / Everybody Likes Some Kind of Music (1973)

ファンキーキーボーディストにしてマルチプレイヤー、ビリー・プレストンの73年作。どっしりとしたビートを刻むドラムとベースに、壮大なストリングス、ホーンセクションまで登場しながら、そこにビリーのオルガンやピアノが絡む様は実に伸びやかで楽しげ。ロックとソウルが絶妙に交差する聴き応え十分の仕上がりだ。A1「Everybody Likes Some Kind of Music」からDavid Tも積極的アプローチでエンジン全開。ゴスペル風ファンキーナンバーA4「My Soul Is a Witness」でのビリーのファンキーピアノのノリの良さたるや! 壮大なストリングスが流れながらもファンキーに迫るA7「Listen To the Wind」でのワウペダルを駆使したDavid Tのプレイも、ビリーのピアノと完全にマッチしており渋さ120%。ホーンセクションとの一体感も見事なインストファンキーロックナンバーB2「Space Race」ではビリーのウネウネキーボードにオルガンが絶妙のシンコペーションを奏でており実に痛快だ。イントロで聞けるオルガンが絶妙なスローR&BナンバーB3「Do You Love Me」でのDavid Tの独壇場的バックアップも全体の盛り上がり度に貢献している。そしてアルバムはビリーのピアノのみで奏でる「Minuet For Me」でひっそりと幕を閉じる。最初から最後までバラエティに富んだ構成で楽しめる実に素晴らしいアルバムだ。

Marvin Gaye / Marvin Gaye Live (1974)

カリフォルニア州オークランド・コロシアムで行われたライブ盤。司会者の掛け声で一 気に盛り上がる観客の歓声からも、当時の彼の人気がわかるというもの。「観客を100%楽しませたい」という神経質なまでの彼のパフォーマンスをサポートするのは、エド・グリーン(Dr)、ジェイムズ・ジェマーソン(B)、ジョー・サンプル(Key)、アーニー・ワッツ(Sax)、そして我らがDavid Tといった鉄壁の布陣だ。アルバム冒頭からDavid Tのギターは縦横無尽に奏でまくられっぱなし。重心の低い安定感バリバリのエド・グリーンのスネア、ワンコードに近い楽曲でひたすらグルーヴを生むジェイムズ・ジェマーソンのスタッカートの効いたベース。主役のマーヴィンのファルセットも実に素晴らしく、そこに絡むDavid Tはミラクルプレイの連続で、会場に居合わせることが悔やまれること120%だ。「Let's Get It On」での甘い甘いメロウネスに熱狂する観客の正直な反応。それに一役買っているのはDavid Tのギターであることに間違いない。そしてアルバムラストを飾り、自身も幾度となくカヴァーしているはずの「What's Going On」でのDavid Tは、実に甘美で実にエモーショナルなプレイで、この白熱のライブを名盤の域にまで昇華させている。

Nancy Wilson / All In Love Is Fair (1974)

ジーン・ペイジによる全編しっとりと伸びやかなストリングス満載のナンシー・ウィルソンの73年作。とは言え、小気味良いグルーヴィーでメロウな楽曲もちりばめられており、ジャズ、ソウル、ポップスの絶妙のブレンド加減が実に心地よい仕上がり。アルバム冒頭のA1「You're As Right As Rain」から流れるような弦の響きにのって、David Tも静かにいつものフレーズを奏でる。が、続くアップテンポのメロウナンバーA2「Try It You'll Like It」の時点でエンジン全開。こらえきれずに弾きまくるDavid Tがそこにいる。軽快ながらも安定感のあるエド・グリーンのドラムのフィルインが印象的なアルバムタイトルにもなったスティーヴィー・ワンダーの名曲のカヴァーではトム・スコットの緩やかなフルートの音色にDavid Tのキラ星フレーズがこみ上げ度をさらに際立たせるのに一役買っている。アルバムラストを飾るポール・マッカトニーの名曲B4「My Love」では、本家よりも幾分ポップなテンポで熱唱するナンシーの後ろで静かにオブリを切り込むDavid Tのメロウバッキングが聴ける。70年代の彼女のキャリアの中では75年の『Come Get To This』と並ぶメロウグルーヴの傑作盤であり、そこにDavid Tのプレイが大きく貢献しているのは疑う余地のないところだ。

Willie Hutch / Ode To My Lady (1975)

シンガー、プロデューサーなど多面的に活躍するマルチプレイヤー、ウィリー・ハッチの75年作。全編モータウンらしいメロウでグルーヴ感に富むソウルナンバーが楽しめる好盤だ。その屋台骨となっているのはジェイムズ・ギャドソンのドラムで、その安定感たっぷりのハイハットとスネアが落ち着きと高揚感を同居させるのに一役買っている。適度なハネ具合が心地よいメロウナンバーB2「Just Another Day」でのいつものDavid T節にまずくらくら。ストリングスの響きが印象的なB3「Talk To Me」で聴けるウィリーのリズムカッティングにひっそりと絡むDavid Tのメロウオブリも実に効果的。アルバム全体に「艶やかさ」が滲み出るソウル名盤の一つだ。

Leon Ware / Musical Massage (1976)

裏『I Want You』という評価はもう敢えて必要ないだろう。76年にリオン・ウエアが残した奇跡の大傑作盤。全編メロウもメロウ、珠玉のグルーヴがずらりと並ぶ本作を彩るのは、チャック・レイニー(B)、ジェイムズ・ギャドソン(Dr)、レイ・パーカーJr(G)、ジェリー・ピータース(Key)、ボビー・ホール(Per)といった面々に我らがDavid T。デイヴィッド・ブラムバーグの繊細なストリングスが心地よく響く「Instant Love」では、ミニー・リパートンのキュートなハイトーンボイスも絶妙のアクセント。メロウネス満載の「Holiday」では途中から突如繰り広げられるギャドソンの16を刻むハイハットに度胆を抜かれること必至。「Phantom Lover」に至っては、全てを委ねてもいいとさえ思わせる、とろけるようなDavid Tのフレーズが圧巻。だが、なんと言ってもせつないメロディを歌うリオン節がこの上なく素晴らしく、その甘美な世界にただただ浸ってしまうのだ。

Marlena Shaw / Let Me In Your Life (1982)

ところどころに顔を覗かせるブラコン色が、典型的な「80年代」をイメージさせるマリーナ・ショウの82年作。70年代の奇跡のジャズ・ソウルアルバム『Who Is This Bitch, Anyway?』で共演を果たしたマリーナとDavid Tが再び顔を合わせた作品だ。A面をジョニー・ブリストル、B面をウェブスター・ルイスがプロデュースする構成で、両者の当時の個性が色濃く反映された仕上りになっている。David TはB面のウェブスター・ルイス組にひっそりと参戦。ウェブスター・ルイスの華麗でしなやかなピアノの鍵盤がドラマティックなアルバムラストを飾るバラード「At Last」では、ジェイムズ・ギャドソンのおおらかながらも引き締まったドラムに乗って、細やかなきらめきを放つDavid Tのプレイが炸裂。マリーナの歌で彩られた本アルバムは、そんな静かな余韻を残して幕を降ろすのである。

Delicious Hip / Delicious Hip (1997)

元サイズのボーカリストCHAKAのソロユニット「Delicious Hip」唯一のアルバム。バラエティに富んだ楽曲群がCHAKAの豊かな表現力を自在に引き出すかのように彩られ、その仕上がりはまさに「デリシャス」。近田春夫とジェイムズ・ギャドソンという対照的な二人が楽曲毎にプロデュースを担当した話題作だ。全曲CHAKAの伸びやかな歌声が心地よいが、中でも素晴らしいのがメロウバラードの傑作「Magic Carpet Ride」。唯一David Tが参加したこの曲では、ジェイムズ・ギャドソンの安定感たっぷりのドラムに、ウォーターズのコーラスワーク、そしてH.B.バーナムの手による甘美なストリングスがCHAKAの歌をがっちりサポート。アルバム全体をキュッと引き締めている。

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