David T. Works Vol.10

David Tが参加した数々の名演の中からピックアップして紹介するこのコーナー。さらにさらに続きます。Vol.10の10選をどうぞ。

Etta James / Rocks The House (1964)

パワフルで豪快。ゴスペルやブルースのフィーリングを十分に兼ね備えたその持ち前の喉声が素晴らしいエタ・ジェイムスのライヴ64年盤。70年代初頭から始まる彼特有のギター音はここではまだ聴くことはできないものの、随所に聴けるフレーズやピッキングはいかにもDavid Tそのもの。スタンダードともいえる「Baby What You Want Me To Do」や「I Just Want To Make Love To You」などの、勢いのあるパワフルなロックやブルースナンバーにのって、オーソドックスだが力強いプレイを披露している。ライヴ盤という生々しさを差し引いても、彼の持つギターセンスが際立っていることがうかがい知れる貴重な音源だ。

Celebration - The Big Sur Folk Festival 1970 (1970)

70年にカリフォルニアで開催されたビッグ・サー・フォーク・フェスティバルの模様を収録したライヴ盤。ジョーン・バエズ、リンダ・ロンシュタット、メリー・クレイトン、ビーチ・ボーイズなどの出演者たちの当時の息吹が感じられる興味深い一枚だ。David Tは、スタジオ録音盤でも顔を合わせているメリー・クレイトンのバックで登場。ボブ・ディランの「The Times They Are a Changin'」のカバーでは、熱唱する彼女をDavid Tのギターのみでバックアップ。続くサイモン&ガーファンクルの「Bridge Over Troubled Water」のカバーでは、いつものキラ星イントロフレーズを幾分歪んだ力強いギター音で表現し、徐々に独創的なフレーズを披露する展開が実に素晴らしい。最近のDavid Tではあまり聴くことのできない、若さあふれる攻撃的な演奏がここにある。

Diana Ross / Touch Me In The Morning (1974)

モータウンの歌姫ダイアナ・ロスの74年作。「All of My Life」「We Need You」「Leave a Little Room」「I Won't Lost a Day Without You」などなど、全曲通して、優しさと力強さに満ちた素晴らしい楽曲がずらりと並ぶ傑作アルバムである。しかし、本作をあまりも有名にしたのは、何と言ってもアルバムタイトル曲の「Touch Me in the Morning」である。ジーン・ペイジのストリングスアレンジもきらびやかに、優しく繊細なメロディにのって唄うダイアナは素晴らしいの一言。そして、そのスウィートボーカルの隣で奏でられるDavid Tの細やかで艶やかなプレイがとにかく素晴らしい。もはや、単なるバッキングギターの域を越え、楽曲のメロディの一部と化しているDavid Tのプレイは「究極のバッキング」として普遍的な居心地を感じてしまう。

Blue Mitchell / Stratosonic Nuances (1975)

ジャズ・トランペッター、ブルー・ミッチェルが75年にRCAに残したジャズファンクアルバムの傑作。バリー・ホワイトのA1「Satin Soul」から、もうノリノリのファンキーソウルジャズナンバー。シンコペイトの効いたリズムに、ホーンセクションが絶妙に絡む、聴き心地十分の一曲で、David Tもパーカッシブかつメロディアスなフレーズを連発している。続くスティーヴィー・ワンダーのA2「Creepin'」では、一転してスローなグルーヴなメロウナンバーだが、ここでもやはりDavid Tのギターワークが地味ながらもしっかりと効いている。B1「Bump It」は、これまたファンキーなグルーヴ感あふれるナンバー。小気味良いリズム隊にエレピの柔らかさと、ブルー・ミッチェルの緩やかでいて突き刺すようなトランペットソロが心地よい。ラストを飾るB3「Melody for Thelma」でのホーンセクションと一体となったミディアムグルーヴにも、David Tのしなやかなプレイが際立っている。痛快さと繊細が両立した居心地のよいアルバムだ。

Z.Z.Hill / Keep On Lovin' You (1975)

豪快なシャウトでブルースからメロウナンバーまでダイナミックに歌いこなすZ.Z.Hillの75年作。本作は曲によってプロデューサーが異なり、それぞれ起用されるミュージシャンも微妙に違うという、異色の構成が特徴。A面の4曲では、Lamont Dozierがプロデュースを担当。楽曲にも彼が関わっており、ソウルフルなR&Bを展開している。B面ではアラン・トゥーサンがプロデュース。彼らしいスローなファンクネスが印象的だ。この二人がプロデュースする曲以外の2曲でDavid Tが登場。A5「Am I Groovin' You」では、ポール・ハンフリー(Dr)、ウィルトン・フェルダー(B)らの織り成すワンコードのミディアムファンクに、David Tは極上のブルースフィーリングで弾きまくる。またミディアムテンポのR&BナンバーB5「I Don't Need Half A Love」でも、メロウなフレーズ全開で楽しませてくれる。

Gary Bartz / Music Is My Sanctuary (1977)

ラリー&フォンス・ミゼル兄弟のスカイ・ハイ・プロダクションズのプロデュースによるゲイリー・バーツの77年作。スカイ・ハイ、とくればその音作りは想像に難くないが、本作も極めて痛快なジャズファンクナンバーが宙を舞う。中でもA1「Music Is My Sanctuary」やB1「Swing Thing」などで聴けるグルーヴィなノリは浮遊感たっぷりで素晴らしい。A3「Love Ballad」などのしっとりとした楽曲でもゲイリー・バーツの情感あふれるアルトサックスがなんともクールで聴き応え十分だし、シリータのバッキングボーカルも効果的な演出だ。David Tもまさにおハコ的プレイを披露。ノリノリのビート感あふれる楽曲群の中で、圧倒的に存在感のあるフレーズを聴かせてくれる。

The Brothers Johnson / Right On Time (1977)

クインシー・ジョーンズのプロデュースによるブラザース・ジョンソンの77年作。ジョンソン兄弟といえば、弟ルイスの超絶チョッパーが炸裂のファンクバリバリの展開かと思われがちだが、1曲目「Runnin' For Your Lovin'」のホーンとうねうねシンセがゆったりと絡むミディアムグルーヴにまず拍子抜けするほど。しかし曲の途中から後半にかけて次第にそのグルーヴに拍車がかかる様子が聴きとれ、「さすが」の一言。続く2曲目「Free Yourself, Be Yourself」で、いきなりDavid Tも全開の境地。軽い小気味良いノリの中、縦横無尽にバッキングフレーズを奏でるDavid Tは、水を得た魚のようでアグレッシブだ。そして表題曲にもなっている4曲目「Right On Time」では、シンセの使い方に多少軽さは感じるものの低音の効いた重厚なベースラインのファンクが聴けるが、その中でもDavid Tのカッティングが随所に切れの良さを醸し出し、全体をうまく調和している。

Jean Carn / Trust Me (1982)

ノーマン・コナーズのプロデュースによるジーン・カーンの82年作。パワフルで伸びのある歌声が印象的な彼女のボーカルスタイルに、80年代初頭のブラコン風味の加味されたポップでソウルフルな一枚だ。A面がポップでダンサブルなナンバーが並ぶのに対し、B面は一転してミディアムバラードを中心としたメロウな楽曲群で、聴かせどころの多い構成となっている。カバー曲B2「If You Don't Know Me By Now」も、オーソドックスなアレンジながらも彼女の歌声が楽曲全体を優しく包み込んでいて秀逸な出来だ。David TもB1「My Baby Loves Me」やB3「Completeness」で、地味ながらも優しく柔らかなプレイで彼女を好サポートしている。

Mama, I Want To Sing. (1988)

日本でも大ヒット上演されたミュージカルのレコーディングアルバム。全編素晴らしいゴスペルミュージックが堪能できる本作は、無論「うた」がこの上なく 素晴らしいのが、それをサポートするバックミュージシャン達も見逃せない。David Tをはじめ、ジェイムズ・ギャドソン、レス・マッキャン、ボビー・ワトソン、山岸 潤史らがこぞって参加。超一級のゴスペル・ミュージック・アルバムに仕上がっているのだ。David Tは「Faith Can Move a Mountain」と「Gifted Is」の2曲に参加。いずれも山岸氏との競演であり、その抜群のブルースフィーリングで、「うた」と一体化する白熱のプレイを繰り広げている。

Sing Like Talking / Discovery (1995)

佐藤竹善氏の個性的な声とツボにはまるメロディラインが魅力的なシング・ライク・トーキングの95年作。全編落ち着きと躍動感の両立した細やかなアレンジの行き届いたサウンドプロダクションで、居心地のいい空気感を十分に生み出している。本作ではドラマー沼澤尚率いる13CATSのメンバーが数曲で参加しており「みつめる愛で」などでは印象的なメロディを彩るタイトな演奏力で見事にコラボレートしている。David Tは、その13CATSの面々とともに「瞬く星に」と「Perfect Love」の2曲に参加。洗練された都会の香り漂うミディアム・グルーヴにDavid Tのフレーズが絶妙にはまりきっており、艶っぽさに拍車をかけるサポートを果たしている。

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