David T. Works Vol.18

David Tが参加したアルバムの中からピックアップして紹介するこのコーナー。Vol.18の10選をどうぞ。

Martha And The Vandellas / Live! (1967)

モータウンの歌姫3人衆マーサ&ザ・ヴァンデラスのライブ盤。主役となるマーサ・リーヴスのはつらつとしたパフォーマンスに会場全体が熱を帯びている様が如実に伝わってくる傑作ライブだ。バックで演奏するミュージシャンの詳細は不明だが、アルバム冒頭から切れのあるカッティングフレーズを切り込むのは間違いなくDavid Tだ。彼女たちのヒット曲でもあるA4「Love Is Like a Heat Wave」では、そのお馴染みのメロディに乗って小刻みにフレーズを奏でるDavid Tの姿が聴き取れ、A6「My Baby Loves Me」では、近年でも聴けるあのキラ星フレーズが既にここで連発される。B2「Jimmy Mack」では終始アグレッシブなプレイで完全バックアップ。その他ほぼ全曲に渡って繰り広げられる若き日のDavid Tの熱演。個性あるそのスタイルはこの時点でほぼ完成の域だ。

Letta Mbulu / Naturally (1973)

南アフリカ出身のレッタ・ムブールの73年作。キャノンボール・アダレイが全面参加した本作は、ホーンアレンジにウェイン・ヘンダーソンがクレジットされている点からもクルセイダーズ人脈が全面サポートした素晴らしいボーカルアルバムだ。素朴ながらもしっとりとした歌声が印象的なA2「Learn To Love」をはじめ、A3「Noma Themba」やB1「Never Leave You」でのワウプレイ、ジミー・ジョーンズのストリングスアレンジも絶妙なB2「Now We May Begin」でのメロウなバッキング、さらにはB4「Setho」での華麗でメロウなコードワークなど、David Tも各所で好サポート。音の職人たちをバックに、レッタの伸びやかで奔放な歌声が随所に光る好盤だ。

Foster Sylvers / Foster Sylvers (1973)

ジャクソン5フォローワーの筆頭、シルバースの一員にしてボーカル担当のフォスター・シルバース君の73年のソロアルバム。フリーソウル文脈ではおなじみの本作は、やはりマイケル・ジャクソンのソロ作を意識してしまうが、単なる二番煎じではない躍動感とメロウなムードを抱えた「ヤング・ソウル」ならぬ「キッズ・ソウル」というジャンルを作り出している。ジェリー・ピータースがプロデュースワークに名を連ねていることから、彼のキーボードが効果的に使われているところもポイントの一つかも。スモーキー・ロビンソンで有名なB4「More Love」のカヴァーもなかなかムード。David Tの音像を聴くことは非常に難しいが、それでもB2「Happy Face」のバックではキラ星フレーズがわずかだが聴ける。

Danniebelle / Danniebelle (1975)

2000年に惜しまれながら他界したゴスペルシンガー、ダニーベルの75年作。彼女と親交の深かったアンドレ・クラウチがプロデュースを務め、ジョー・サンプル(Key)、ウィルトン・フェルダー(B)、ディーン・パークス(G)、アーニー・ワッツ(Sax)といったセッションマンが脇を固めた洗練さ加減が心地良いポップなアルバムに仕上がっている。David Tもその素晴らしい歌声をサポートするべく全力投球。フルートの音色も軽快なポップナンバーA2「Work the Works」で、いきなりマジックともいえるフレーズで印象的なプレイを連発。続くスローナンバーA3「All Things Work Together」でもダニーベルの熱唱をさりげなくバッキング。ポップなメロウナンバーB2「In Remembrance」でもいつものキラ星プレイが飛び出し、スローバラードのB4「He's All That」でも、ストリングスと重厚なバックコーラスの合間を縫ってDavid Tのフレーズが確実にうたう。ギターの音色もまさにノリに乗った感がある、隠れた名盤だ。

Bette Midler / Broken Blossom (1977)

女優ベット・ミドラーが77年に残した豪華盤。まずバックを務めるミュージシャンが豪華。リー・リトナー(G)、ジム・ケルトナー(Dr)、リー・スクラー(B)、クレイグ・ダージ(Key)、チャック・レイニー(B)といった西海岸のセッションマンに加え、トム・ウェイツまでもがゲスト参加している(「I Never Talk to Strangers」)。ビリー・ジョエルの「Say Goodbye To Hollywood」をはじめ、ほとんどがカヴァー曲で占められ、時にポップに、時にジャジーに、縦横無尽に姿を変えるベットの歌は、全ての曲の役を演じきるエンターテイナーならではの持ち味だ。David Tは「Empty Bed Blues」1曲のみに参加。ジム・ケルトナーのシャッフルのリズムにホンキートンクピアノが重なるノリの良いR&Bナンバーの後ろで聴ける粘っこいギターフレーズが、なぜか安心感のようなものをもたらすから不思議。

Donna Washington / For The Sake Of Love (1980)

ディスコ〜ブラコン時代のドナ・ワシントンの80年作。しっとりとしたナンバーでは余裕さえ感じられる繊細でしなやかな仕上りだ。エド・グリーン(Dr)、ジェイムズ・ギャドソン(Dr)、ネーザン・イースト(B)、パトリース・ラッセン(Key)、ワー・ワー・ワトソン(G)といった豪華布陣をバックに時にダンサブルに時にメロウに伸びやかに歌う彼女の姿はなかなかに頼もしい。痛快なビートでノリノリのA1「First Things First」からDavid Tの粘っこいリズムが炸裂。ゆったりとしながらも着実なビートを刻むジェイムズ・ギャドソンのドラムが印象的なスローナンバーA4「Innocent」でも壮大なストリングスにDavid Tのメロウバッキングが冴え渡り、B1「Didn't You Know」でのフィンガリングも実に効果的。アルバムラストを飾るB4「For The Sake Of Love」でもDavid Tマジックは留まることを知らず。何度も繰り返すが、女性ボーカルにはDavid Tのプレイは見事に「ハマる」のだ。

Original Soundtrack / Endless Love (1981)

ブルック・シールズ主演の大ヒット映画のサントラ盤。ダイアナ・ロスとライオネル・リ ッチーのデュエットによる主題歌も大ヒット。80年代に多く見られた「映画の中でのデュエット曲」という形の元祖的位置付けといっても過言ではない楽曲だろう。アルバム全編で印象的なストリングスを奏でるのはジーン・ペイジ。一聴するとわからないが、エド・グリーン(Dr)、ポール・ジャクソンJr(G)らの引き締まった演奏も功を奏している。David Tは、A2「Dreaming of You」1曲のみに参加。微かに聴こえる地味な参加だが、確かに彼とわかるフレーズとピッキングがこのラブロマンス映画に一役買っていると思うと、なんだかうれしくなってくるのだ。

Chuck Cissel / If I Had The Chance (1982)

ブラコン色の強いチャック・シズルの82年作。今聴くと時代の流れを痛感することになるのだが、意外とこの人の声にはぴったりなのでは?と思えるほど、ツボを押さえたアレンジが随所に光るボーカルアルバムだ。シンセが多用され、リズムが強調されたギターワークなど、好き嫌いの分かれる音作りだが、David Tも非常に地味ながらも3曲に参加。全体的には影の薄い貢献だが、中でもスローなR&BナンバーB2「Love Is Missing From Our Lives」ではいつものメロウバッキングが見事に楽曲に溶け込んでいる。

土岐英史 / 1:00 A.M. (1988)

サックスプレイヤー土岐英史のソロアルバム。ムーディというにはあまりに洒落た演奏がずらりと並ぶ大人の匂い漂いまくりの作品だ。プロデューサーにレオン・ンドゥグ・チャンクラーを迎え、質の高いサウンドプロダクションが耳に残るが、そこにあるのは実にエモーショナルなプレイの数々だ。「Short Story」で見せるDavid Tのソウルフルなプレイ。「Old Friends」での呼吸をするかのようなピッキング。ファンキーなノリの「Flippid」では単調になりがちな展開に色気を与えるかのように独特のオブリが響く。ヴォーカルこそいないものの、土岐氏のブロウを始めとしてここにある全ての表現がまさに「うたっている」のだ。

David Goldblatt / Facing North (1996)

キーボードプレイヤー、デイヴィッド・ゴールドブラットの初リーダー作。ラリー・カールトン、リー・リトナー、ポール・ジャクソンJr、ワー・ワー・ワトソンといったLAを代表するギタリストがこぞって参加したコンテンポラリーサウンド満載なアルバムだ。1曲目「Panda」ではいきなりラリー・カールトンの華麗なソロプレイが聴け、4曲目「Yes and No」でもその指さばきは見事の一言。ジャジーでスイング感溢れる5曲目「Brief Encounter」での、リー・リトナーのプレイも渋さが光る。David Tは2曲目「Kula」に参加。デイヴィッド・ゴールドブラットのエレピが静かなムードと佇まいを醸し出す中、切れのあるシャープなカッティングを施すポール・ジャクソンJrのプレイの隣で、あくまでメロウにそしてブルージーなフレーズを奏でるDavid T。力強さと繊細さが同居するプレイに、うっとり度120%だ。

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