David T. Works Vol.20

David Tが参加したアルバムの中からピックアップして紹介するこのコーナー。Vol.20の10選をどうぞ。

Original Soundtrack / Brewster McCloud (1970)

ロバート・アルトマン監督作品のサントラ盤(邦題「バード・シット」)。風刺とユーモアに溢れる同監督の作品に、ジーン・ペイジが音楽監督に起用されている、というところがミソ。映画のワンシーンを彩るにふさわしいストリングスの魔術はさすがの一言で思わずうっとりだ。また、メリー・クレイトン、ジョン・フィリップスといったルー・アドラー人脈が名を連ねており、そこに我らがDavid Tが顔を出さぬはずがない。というわけでメリー・クレイトンの歌う「White Feather Wings」のバックで、いつものDavid Tのポロポロフレーズが飛び出してくる。 

The Ernie Watts Encounter / The Wonder Bag (1972)

サックスプレイヤー、アーニー・ワッツ率いるEncounterによる、全曲スティーヴィー・ワンダーのカヴァーで占められた面白いアルバムだ。スティーヴィーの歌声は、アーニー・ワッツのサックスとフルートがその役目を果たし、そこに聴けるのは、スティーヴィーのあの独特のメロディライン。当然アレンジは異なるのだが、やはりスティーヴィーの作る楽曲のオリジナリティは普遍的であるという証拠だろう。ポール・ハンフリー(Dr)、ジョー・サンプル(Key)らの参加も、アルバム全体に軽快なソウル・ジャズの彩りを添えている。縦横無尽に弾きまくるDavid Tの姿もそこにあり、B1「Ain't No Lovin'」での自在なフレーズはさすがの一言。B4「Angie Girl」などの優しいメロディにもDavid Tのキラ星フレーズは実に良くハマる。

Charles May & Annette May Thomas / Songs Our Father Used To Sing (1973)

スタックス傘下のゴスペル・トゥルースからの一枚。ゴスペルシンガーのジョー・メイを父に持つチャールズとアーネットの兄妹によるゴスペル風味たっぷりのアルバムだ。「a tribute to the brother Joe May」という副題が示す通り、自らの父に捧げる形で制作された本アルバムは、ゴスペル、ソウル、R&B、カントリーなど様々なテイストを感じさせる実に聴き応えのある仕上がりだ。A4「Medley Of Brother Joe May Mind」では、ジョー・メイのレパートリーを文字どおりメドレーで堪能でき、なおかつそれが実にソウルフルかつリズム&ブルースしているのだ。バックシンガーによるコーラスワークがその色彩に大きく寄与しているのは間違いないが、参加したミュージシャンも見逃せるはずがない。アレンジャーのジーン・ペイジを筆頭に、ウィルトン・フェルダー(B)、ポール・ハンフリー(Dr)、アーサー・アダムス(G)、ボビー・ホール(Conga)、それに我らがDavid Tといった、当時もっとも洗練されたサウンドプロダクションを奏でるこの面々のサポート力は大きく、しなやかなリズムが実に居心地が良い。David Tも全面的に貢献しておりアルバムのあちこちから得意のフレーズが聴こえてくる。アーサー・アダムスとの対比も聴きどころの一つで、特にポール・ハンフリーの強烈なフィルインではじまるB4「I Thank You For The Lift」での両者のギターは、どちらもゆったりとしたフレーズなのだが確実に違う個性の絡みが聴け、アーネットの熱唱とも相まって実に素晴らしい一曲に仕上がっている。

C.M. Lord / C.M. Lord (1981)

ゴスペルシンガーである彼女がMontageレーベルからリリースしたポップ色の濃い作品だ。ブラコン直前壁際ギリギリといったところだが、ノリのよい楽曲からゆったりとしたバラードまで、その内容は幅広い。というのも、プロデューサーを3人起用した3つのサウンドプロダクションでアルバム全体をうまく構成しており、いずれも彼女の歌をうまく引き出すのに成功している。David Tが参加したポップソングB3「Delicious」では、エド・グリーン(Dr)、ネーザン・イースト(B)、ボビー・ホール(Per)らの手による手堅くパーカッシブな演奏をバックに彼女の歌が実に伸びやかに輝いており心地良い。David Tのギターは影に埋もれて判別しにくいが、楽曲の最後部分で「いつもの」音色が聴こえてきて、やはりこの上ない安心感をもたらしてくれる。

Lovesmith / Lovesmith (1981)

マイケル・ラブスミス率いるスミス兄弟のユニット「Lovesmith」唯一のアルバムだ。唯一とは言っても、その前身にあたるスミス・コネクション時代から大きな方向転換はなく、相変わらずの美しいコーラスとソウルフルなボーカルが楽しめる仕上りとなっている。エフェクトが多用される80年代のサウンドプロダクションが好き嫌いの分かれるところではあるが、この4人の織り成す美しいハーモニーに心とろけるのに多くの時間は要さないはず。ネーザン・イースト(B)、ジェイムズ・ジェマーソン(B)、エド・グリーン(Dr)、ジェイムズ・ギャドソン(Dr)といった、その「筋」の達人らの参加もアルバム全体の躍動感に一役買っている。David TもA5「I Hope You Don't Get Enough」やB5「Look Out Below」などで、その甘い甘い世界の一旦を確実に担っている。

Original Soundtrack / Doctor Detroit (1983)

ダン・アクロイド主演の同名映画のサントラ盤。ディーボ、ジェイムズ・ブラウン、パティ・ブルックスらによる80年代特有のサウンドプロダクションが良くも悪くも時代を感じさせるに十分な一枚だ。David Tはジェイムズ・ブラウンのA3「King of Soul」とB1「Get Up Offa That Thing / Doctor Detroit」に参加。いずれも、70年代までのJBを知る者にとってはまるで別モノとしかいいようのないアレンジが炸裂する楽曲で、そこにクレジットされているミュージシャンの個性もかすんでしまうかのよう。きっとDavid T的にも数ある「お仕事」の一つなのだろう。だが、そこにかすかに聴こえるDavid T節は、彼のプレイが時代のトレンドとは全く無縁のところに位置するという事実をまぎれもなく突き付けてくれる。

Patti La Belle / Winner In You (1986)

マイケル・マクドナルドとのデュエットによる大ヒット曲「On My Own」を収録したパティ・ラベルの86年作。ラベル時代から聴けるパティのソウルフルな歌は健在ではあるが、シンセドラムが大きくフィーチャーされ、ヒットチャートを賑わすポップなテイストがアルバム全体を支配する80年代色が今となっては懐かしくさえある。David Tは「Kiss Away The Pain」と「Finally We're Back Together Again」の2曲に参加。特に後者では、バラード楽曲をしっとりと歌うパティのバックでブリリアントな響きをもたらすDavid Tのフレーズが、確かな存在感を残している。

The Newtrons / The Newtrons (1990)

ニュー・キッズ・オン・ザ・ブロックをはじめ、90年代にはいろんなキッズユニットが登場したが、このニュートロンズもその一つ。古くはジャクソン5やシルバースなど、家族や兄弟といったコンビネーションをうまく活かした個性と、高音とハーモニーによる「声」の魅力が最大の「ウリ」だろうが、日本と海外ではまた違った存在価値があるようにも思うのですがどうでしょう? ということで、本アルバムの最大の聞き物は、なんと言ってもジャクソン5の「I Want You Back」のカヴァーに尽きる。原曲でもバッキングを担当したDavid Tが、20年の時を経て、再びこの名曲に華を添えた。

L.A.Workshop / 真夏の果実 (1992)

サザンオールスターズ、ユーミン、ドリカム、山下達郎といった日本を代表するポップスの名曲を海外の一流ミュージシャンたちがカヴァーするという企画アルバム。David Tのギターは全編良く聴こえてくる実にうまい仕上がり具合だ。松任谷由実の「情熱に届かない」「避暑地の出来事」のイントロで飛び出すキラ星フレーズ、杏里の名曲「サマーキャンドル」での歌メロに合わせた忠実な単音弾きからアドリブによるソロプレイへの移行、ドリカムの「Eyes To Me」イントロでのメロウフレーズなど、David Tのあらゆるフレーズが随所に聴けるところが素晴らしい。アルバムラストを飾る山下達郎の「さよなら夏の日」では、ジョー・サンプルのピアノの調べに絡み付く静かで優しいDavid Tがそこにいる。一歩間違うと「歌のない歌謡曲」になってしまいがちな企画ではあるが、David Tの個性はそれを軽く飛び越える魅力を放っている。

Najee / Plays Songs From The Key Of Life - A Tribute To Stevie Wonder (1995)

アルバムタイトルが示すとおり、スティーヴィー・ワンダーの超名盤『キー・オブ・ ライフ』をまるごとカヴァーしたというアルバム。スティーヴィーの歌の代わりにナジーのサックスとフルートがまさに歌を奏でるように吹き込まれた異色の『キー・オブ・ライフ』だが、聴き心地は意外に違和感などない。アルバム全体に漂う70年代の香りは、プロデューサーのジョージ・デュークの手腕によるところも大きいだろう。参加ミュージシャンも豪華の一言。チャック・レイニー(B)、ジェイムズ・ギャドソン(Dr)、ロニー・フォスター(Key)、フィル・アップチャーチ(G)、レオン・ンドゥグ・チャンクラー(Dr)、ワー・ワー・ワトソン(G)、スタンリー・クラーク(B)、シーラ・E(Per)など、書ききれないほどのそうそうたる面々がこの前代未聞のアルバムにトリビュートしているのだ。もちろんDavid Tも同じで、数々のミラクルプレイを披露している。「I Wish」では、シンコペーションの効いたリズミカルなリフを刻みつつ、途中から得意のオリジナリティ溢れるフレーズを織り交ぜるという実にニクいプレイを披露。「孤独という名の恋人(Knocks Me Off My Feet)」ではメロウタッチのフレーズを連発。しっとりとした肌触りの「今はひとりぼっち(Summer Soft)」では、静かにリズムを刻むDavid Tと躍動感溢れるスタッカートの効いたチャック・レイニーのベースに、ハービー・ハンコックの生ピアノが実に素晴らしく輝く。アルバム全体を通して『キー・オブ・ライフ』の素晴らしさを再認識してしまうカヴァーアルバム異色の傑作だ。しかし、スティーヴィーの楽曲って、サックス奏者にとってはバイブルのようなものなのでしょうかね。

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