David T. Works Vol.16

David Tが参加したアルバムからピックアップして紹介するこのコーナー。Vol.16の10選をどうぞ。

The Sylvers / The Sylvers (1972)

男女6人の兄弟姉妹組のシルバースの1stアルバム。フリーソウル系では2nd『The Sylvers 2』が注目されているものの、本作もそれに負けず劣らずの若さと情熱に溢れたポップ・ソウルを披露してくれるなかなかの好盤だ。プロデューサーにジェリー・バトラーを起用。ソウルとポップのフィーリングがバランスよく調和し、彼ら6人のハーモニーを上手く活かしたアレンジと構成が光る一枚だ。同時代を生き抜いたジャクソン5と比較されがちな彼らだが、女性陣と男性陣による混合コーラスは、このバンドならではの特徴的な聴きどころだろう。B1「I Know Myself」などはまるでソフトロックのような巧みなコーラスワークで面白いところ。クレジットこそないもののDavid Tも本作に参加。一聴するとわからないほど地味なプレイだが、A5「Touch Me Jesus」などでは、ワウペダルを駆使したアグレッシブなカッティングを披露している。

Gloria Jones / Share My Love (1973)

ソウル・レディ、グロリア・ジョーンズの73年作。ホーンセクションやバックコーラスなど多数の人数が参加した大掛かりな曲からポップでグルーヴィな曲まで、モータウン発らしい躍動感と渋さの同居したアルバムだ。David Tはアルバム1曲目から全面的に参加。A1「Share My Love」では、ワウペダルを駆使したこの時期の彼らしいフレーズが全開。続くA2「Why Can't You Be Mine」も同様のカッティングで好サポートを果たしている。抜群のファンキーさを奏でるB3「So Tired」でもそのピッキングは変わることなく、アルバムラストを飾るスローテンポのB5「What Did I Do To Lose You」では、短い時間だがエモーショナルなソロプレイを披露してくれる。

Jimmy Jackson / Rollin' Dice (1976)

喉に引っかかり気味のソウルフルボーカルが身上のジミー・ジャクソンの76年作。ワー・ワー・ワトソン(G)、エド・グリーン(Dr)、スコット・エドワード(B)、キング・エリソン(Conga)などの西海岸勢が多数参加した一枚だ。全体的にジーン・ペイジのストリングスアレンジが素晴らしいA2「Rollin' Dice」では、ジミーのシャウトがそのしっとり具合に見事に調和しているところがなんとも面白いところ。とくればDavid Tの参加もうなずけるわけで、いつものキラ星バッキングで応戦している。A3「You Say You Love Me More」は、打って変わってホーンセクションやウォーターズのバックコーラスもゴキゲンなファンキーな一曲。B1「I'd Love You To Want Me」ではワウの効いたファンキーなフレーズを連発。全体的には地味なサポートに徹しているが、存在感は残す個性はさすがだ。

The Originals / Down To Love Town (1977)

モータウン発、長いキャリアを誇るオリジナルズの77年作。時代的にディスコ風味が軽くブレンドされたノリの良い楽曲群がずらりと並ぶ本作は、やはり一流どころが数多く名を連ねている。ジェイムズ・ジェマーソン(B)、ジェイムズ・ギャドソン(Dr)、エド・グリーン(Dr)、ジェフ・ポーカロ(Dr)、ジェイ・グレイドン(G)、ワー・ワー・ワトソン(G)、レイ・パーカー・Jr(G)、ディーン・パークス(G)といった名手たちが、ソウルフルなボーカルワークを堅実にバックアップ。これだけのメンバーの中にあるとDavid Tといえども目立った活躍が保証されているわけではなくかなり地味な参加となってしまうのだが、それでもB3「Sunrise」などでは、その片鱗が僅かだが聴ける。といっても、やはり地味ですが。

Chevy Chase / Chevy Chase (1980)

俳優チェビー・チェイスが残した珍しいアルバム。制作の経緯は不明だが、実に様々なタイプの楽曲が並んだコンセプチャルと適当さ加減が紙一重の面白さを感じさせる興味深い構成がポイントだ。ボブ・マーリーの名曲A4「I Shot The Sheriff」や、言わずと知れたビートルズのA5「Let It Be」をおとぼけトーンで実にさらりとカヴァーする離れ業(?)も、彼の存在そのものの個性がもたらしたセンスなのかも。トム・スコット(Sax)、リチャード・ティー(Key)、スティーブ・ガッド(Dr)などのメンバーが参加してタイトな演奏を聴かせるものの、かなり匿名的であることもまた事実。ニューオーリンズ・ファンク調のA2「Short People」などはドクター・ジョンをも思わせるテイストでなかなか聴かせる。David TはA3「Never Never Gonna Sing For You」のみに参加。バリー・ホワイトを意識した、まさにDavid T以外には任せられないだろうと容易に予測可能な、アルバムの中で唯一メロウタッチな一曲に思わず笑みがこぼれること間違いなし。

Freddie Hubbard / Splash (1981)

長きに渡って活動を続けるトランペッター、フレディ・ハバードの81年作。ジェイムズ・ギャドソン(Dr)、ジム・ケルトナー(Dr)、ポール・ジャクソン・Jr(G)、クラレンス・マクドナルド(Key)らが参加したフュージョン色濃い一枚だ。全編にフレディのペットが宙を舞い、ファンキーなカッティングとチョッパーベースがうねる、いわゆる80年代初頭のコンテンポラリーな「あの」音がメイン。David Tも7曲中3曲に参加。ファンキーでパーカッシブなB2「Sister 'Stine」では、ポール・ジャクソン・Jrの細かく刻むシンコペイションの効いたリフの隣で、自然体のオブリを奏でるDavid Tがいる。極めて地味な参加とはいえ、このフレーズが有ると無いでは全く違った印象をもたらしてしまう、そんな影の功労者的貢献が、彼の魅力の一つなのだ。

Willie Hutch / Making A Game Out Of Love (1985)

モータウン復帰後2作目となる85年作。リズム隊のほとんどをプログラミングやシンセで補う80年代的香りが充満したダンサブルチューン満載のサウンドプロダクションは、今振り返るとかなり時代的だが、それがまた一回りして逆に新鮮に思えてくるところもあるから人生何が起こるかわからないというもの。ベリー・ゴーディが制作総指揮に携わった映画『The Last Dragon 』で活用された、シリータがヴォーカルでゲスト参加した「Glow」と、テンプテーションズとの共演となった「Inside You」が収録されるなど、いい意味でバラエティに富んだ一枚となっている。そんな中、唯一有機的な色彩で描かれるのが、ジーン・ペイジによるストリングスが冴える泣きのバラード「Always」で、どこか懐かしさを醸すアーニー・ワッツのサックスの音色が素晴らしい。David Tはその輪郭を掴むことすら困難なほど影の薄い参加で残念。

Guitar Workshop / Tribute To Otis Redding (1989)

故オーティス・レディングのトリビュートアルバムだ。しかも8人のギタリストが一同に共演。個性的なギターフレーズをバックにオーティスソングを奏でるという好企画盤である。参加したギタリストはスティーブ・ルカサー、スティーブ・クロッパー、フィル・アップチャーチ、ディーン・パークス、ジェイ・グレイドン、アーサー・アダムス、チャールズ・ジョンソン、そして我らがDavid T。本作ではなんとニール・オダ氏の他にDavid Tとブッカー・T・ジョーンズが共同プロデューサーとしてクレジットされている点も興味深い。8人のギタリストがそれぞれメインとなるように曲を配置しながらも、David Tは全曲に少しずつ参加を果たしている。バックを務めるジェフ・ポーカロ(Dr)、エイブラハム・ラボリエル(B)、ジェリー・ピータース(Key)、ジェイムズ・ギャドソン(Dr)、ジェイムズ・ジェマーソン・Jr(B)らの好演もタイトでしなやか。あくまでもトリビュート企画なのだが、ボーカルパートがないのが残念に思えてならないが、逆にオーティスの素晴らしさを感じずにはいられない一枚だ。

Darek Jackson / Mother Land (1991)

チキンシャックとのコラボレーションでも知られるデレク・ジャクソンのソロ・アルバム。ベーシストとしてのみならずボーカリストとしての才能を如何なく発揮した本作は、ムーディで落ち着きのある楽曲群がずらりと並ぶ大人の一枚、といったところか。沼澤尚(Dr)、続木徹(Key)らもそのアダルトな雰囲気を演出するに一役買っている。David Tは「Asending」と「Itsumademo」の2曲に参加。特に後者では前半部はほとんどその音色が姿を見せないが、後半部からDavid Tの細かいピッキングフレーズが徐々に姿を見せ、途中、見事なソロプレイを披露する。全く持って憎い演出、というより、これがDavid Tマジックなのだ、とあらためて痛感させられ、またしても彼の魅力にはまっている自分を再認識するのである。

タイロン橋本 / Key To Your Heart (1994)

タイロン橋本の94年作。ソウルフルなボーカルに、ピアノとベース、それにDavid Tのギターだけが全体の空気を支配する、極めてゆるやかで繊細なバンドサウンドが最大の魅力だろう。それにしてもここでのDavid Tはすごい。ドラムレスという最小限の楽器構成が影響しているのか、ギターの比重がかなり大きいバランスで録音されている。それゆえ彼のギタープレイがこの上なく全編に渡って文字通り「堪能」できるのだ。アルバム中ほとんどがカヴァー曲という構成で、馴染みの曲がこんなにも落ち着きのあるものに変貌するものか、というアレンジの妙も聴きどころ。キャロル・キングの「So Far Away」では、原曲のゆったり感を活かしながらもDavid Tの随所に繰り広げられるフレーズが最高に素晴らしい。また「You've Got A Friend」では、原曲とは一味違うリズムで、これもDavid Tのギターが一役買っている。そしてアルバムラストを飾るダニー・ハサウェイの「This Christmas」のしなやかでしっとりした音世界。グッと落ち着きのある余韻に浸りながら、また一曲目から聴きたくなる。そんなトータルバランスの優れた本作で、この時期の情緒豊かなDavid Tの全てが間違いなく堪能できるはずだ。

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