David T. Works Vol.45

まだまだまだ続くこのコーナー。Vol.45の10選をどうぞ。

Jackson 5 / Diana Ross Presents The Jackson 5 (1969)

ダイアナ・ロスによって見出されたというデビュー秘話が実は演出だったという逸話も、この後繰り広げられる躍進と飛躍を見ると、どうでも良く感じられる記念すべきジャクソン5のデビュー盤。ポップテイスト溢れた原石を見る一枚だ。スティーヴィー・ワンダーの「My Cherie Amor」や、フォー・トップス「Standing in the Shadows of Love」、ミラクルズ「Who's Lovin' You」、マーヴィン・ゲイ「Chained」、テンプテーションズ「(I Know) I'm Losing You」などのモータウンソングに加え、スライ&ザ・ファミリーストーンの「Stand!」などを含むバラエティに富んだカヴァー曲主体の構成は、彼らのポップテイストを伝えるに十分な彩りとなった。そんな中、R&Bチャートとポップチャートの両方で1位を獲得したポピュラーミュージックシーンに燦然と輝くポップチューン「I Want You Back」で聴けるDavid Tのキラ星プレイは、この後続く華麗なコンビネーションの序章として、しっかりとその足跡を残している。

Heart Full Of Memories / Heart Full Of Memories (1972)

複数のアーティスト達のシングル盤や未発表音源を、観客の拍手や擬音を組み込みライヴ形式に繋げ一枚のアルバムにしたというちょっと変わった企画盤。仕掛人は収録されたアーティスト全てに関わったボビー・サンダース。ヤング・ハーツとボビー・サンダース・オーケストラの音源で構成されたアルバムA面は、ヤング・ハーツの1968年の名盤『Sweet Soul Shakin'』から4曲が収録されたほか、シングル盤としてリリースされたアルバム冒頭を飾る「The Young Hearts Get Lonely Too」や、未発表の「World Of Fantasies」で聴けるDavid Tのフレーズに、60年代後半から既に確立していたプレイスタイルを再認識。アルバムB面でも、シングル盤としてリリースされたマッキンリー・トラヴィスの「Baby, Is There Something On Your Mind」と「You've Got It And I Want It」の2曲で的確なバッキングに徹するDavid Tのプレイが聴こえてくる。

The Raelettes / Yesterday...Today...Tomorrow (1972)

60年代にはメリー・クレイトンやクライディ・キングも在籍し、幾多のメンバーチェンジを繰り返しながら、レイ・チャールズのバックヴォーカル隊として活動した女性シンガーグループの72年作。掲げられた“Ray Charles Presents”の副題の通り、レイ・チャールズのプロデュースワークによる一枚だが、楽曲単位でみると複数のプロデューサーが関与しておりサウンドプロダクションの統一感は希薄。だが、おそらくはレイのものと思われる鍵盤サポートも手伝って、迫力ある瑞々しい彼女らの歌声は全編を通してあちこちから響いてくる。ギターのボリュームバランスは小さいが、David Tもこの時期何回か行われたレイ・チャールズとのセッションの一環として参加。ウィスパーズの「You Must Be Doing Alright」での抑制された堅実バッキング、ジャッキー・デシャノンの「You Have A Way With Me」でのワウペダルを絡めた躍動感溢れるサポートなど、この時代に顕著な彼一流のプレイが地味ながらも印象的。

Quincy Jones / Sounds ... And Stuff Like That!! (1978)

A&M時代に残したクインシーの集大成的一枚にして大傑作盤。プレイヤーとしてではなくアルバム全体を統括する立場であらゆるミュージシャンを駆使し作品を形作るという方法論とコンセプトを完成させた意味でも本作の持つ意義は底知れず大きい。そればかりか、躍動感、グルーヴ感、ポピュラリティなど、そこにある豊かな音楽性は、ポピュラーミュージックの在り方をも世に問うた総決算的クオリティ。ルーサー・ヴァンドロスとパティ・オースティンのヴォーカルによる「I'm Gonna Miss You In The Morning」、ハービー・ハンコックの「Tell Me A Bedtime Story」、スティーヴィー・ワンダーの「Superwoman」など素晴らしい楽曲がズラリと並ぶなか、アルバム冒頭を飾る「Stuff Like That」がトドメ中のトドメ。アシュフォード&シンプソンとチャカ・カーンを起用したヴォーカル・パートの豪華さもさることながら、何と言っても躍動感のカタマリのようなバックトラックとの化学反応が最高のグルーヴ。David Tのプレイも輪郭が薄れてしまうほど音数の多いバックトラックだが、その控え目に徹したバッキングぶりもまたDavid T一流の貢献なのだ。

Johnny Mathis / Mathis Magic (1979)

ジーン・ペイジのアレンジによるジョニー・マティスの79年作。詳細なミュージシャンズクレジットはないものの、聴こえてくるのはジーン・ペイジ・プロダクションとも言うべきお馴染みの音色で、支えるミュージシャンたちの顔ぶれも容易に想像がつくというもの。David Tもアルバム全編に渡ってこの“マジック”に貢献。コール・ポーターのスタンダード「Night And Day」では、ストリングスに絡むワー・ワー・ワトソンとDavid Tのギターというバリー・ホワイト的テイストの図式が存分に楽しめる。その図式は「My Body Keeps Changing My Mind」でも同様で、アップテンポで軽妙なファンキーナンバーで控え目ながらも踊りに踊るDavid Tの弾力感たっぷりのフレーズが健在。ビリー・ジョエルの「New York State Of Mine」のカヴァーでは、本家版に対する西海岸ミュージシャン流の解釈という対比も興味深く、その一端を担うDavid Tも楽曲のメロウネスに一役買っている。

Gladys Knight & Pips / Touch (1981)

ピップスを率いての活動としては、前作『About Love』に続くコロンビア移籍2作目。プロデュースワークには前作同様アシュフォード&シンプソンが関与。洗練されたコンテンポラリーサウンドにグラディスとピップスの息の合った歌声が全編に渡って展開。ほとんどの楽曲がエリック・ゲイル(G)、クリス・パーカー(Dr)といったNY勢によるバックトラックだが、2曲にジェイムズ・ギャドソン(Dr)、ネイザン・イースト(B)ら西海岸勢も参加。そのうちの一曲、ラストを飾るグロリア・ゲイナーの「I Will Survive」では、本領発揮の熱唱を披露。もう一曲「Love Was Made For Two」のみに我らがDavid Tが参加。一聴してそれとわかる粘り気あるバッキングを披露している。表情豊かで躍動感溢れるジャケ写はノーマン・シーフ撮。

LaQuint / LaQuint (1982)

バーニー・ハミルトンが主宰するInculcationレーベルからリリースされたゴスペル系シンガーの一枚。何層もの歌声が力強く響くゴスペルアルバムだが、アンサンブルやアレンジの洗練によってポップソウルアルバム的な敷居の低さを演出。David Tもほぼ全編に渡って自然体のサポートぶりを発揮。アルバム冒頭を飾る「He Will Bring Things Out Alright」からヴォーカル群の合間を縫いながら個性的オブリをさらりと奏で、ミディアムテンポの「Let Jesus Lead You」でも小音量ながらも切れ味鋭いDavid T節が静かな足跡を残す。「Let The Spirit Of God Touch You」でのファンクネス溢れるバッキングや、スローテンポの「Just A Closer Walk With Thee」でのメロウフレーズなど、どんなジャンルであろうと一貫したプレイスタイルがさりげなく際立つ存在感にあらためて舌を巻くこと然り。

Rene & Angela / Rise (1983)

ルネ・ムーアとアンジェラ・ウィンブッシュのコンビのキャピトルでの3作目。1981年の前作『Wall To Wall』同様、プロデュースワークには彼ら二人と、ルネの実兄でもあるボビー・ワトソンが関与。その流れからかトニー・メイデン(G)、ジョン・ロビンソン(Dr)といったルーファス一派が完全バックアップするその音は、80年代的きらびやかさでキレのある音像と印象に残るメロディのバランス加減が、程よくシンプルな鼓動を導き出すに十分な仕上がり。ルイス・ジョンソン(B)やジェフ・ポーカロ(Dr)といったゲストが顔を揃える中、クレジットにはないもののDavid Tもひっそりと参戦。「Can't Give You Up」で聴けるギターフレーズは、アクセントというにはあまりにも微かな音量バランスだが、背後から聴こえてくる音の輪郭がアンサンブルでの彼の立ち位置をもイメージさせる。この佇まいもまたDavid Tならでは、だ。

Michael Jackson / Farewell My Summer Love 1984 (1984)

1982年のアルバム『スリラー』がモンスター的セールスを記録する中、元在籍していたモータウンがその勢いを借りる形で1984年にひっそりとリリースした未発表企画盤。80年代的アレンジを幾分加えたリミックスが施されているものの、ベーシックな録音は1973年。声変わりするマイケルの歌声の微妙な変化が聴き取れる時期でもあり、スモーキー・ロビンソンの「You've Really Got A Hold On Me」やアル・グリーンの「Here I Am (Come And Take Me)」などのカヴァー曲はその声質とのマッチングを考えての選曲だろう。David Tも録音当時に大貢献していた片鱗を随所で披露。「Farewell My Summer Love」でのエモーショナルなプレイや、ジーン・ペイジのアレンジによる「Call On Me」でのメロウなフレーズなど、マイケルの個性にキラリとハマるDavid Tのキラ星プレイを再認識。

Gene Redden and Jazzbrazz / Gene Redden and Jazzbrazz (1987)

サックスプレーヤー、ジーン・レディンがJazzbrazzなるホーンセクションを率いた一枚。フレディ・ハバードの「Little Sunflower」や、ホレス・シルヴァー「Senor Blues」など、ビッグバンド風テイストから小気味良いファンキーテイストまで、現代的感覚による幅広いジャズがずらり並ぶ一枚だ。スティーヴ・ローレンスがアレンジワークを務めた冒頭を飾るスティーヴィー・ワンダーの名曲「Isn't She Lovely」からDavid T節が全開。ビッグバンド風R&Bナンバー「Blues On The Down Side」でもブルースフィーリングたっぷりのソロプレイが堪能できる。ラストを飾るジーン・レディンのオリジナル「Set Alamanim」では、ディープで低空飛行のアンサンブルに絡むDavid Tのきらびやかなバッキングとリードプレイの対比が楽曲の輪郭を鮮明に浮かびあがらせる。インパクトのあるジャケからは想像もつかない正統派ジャズ・フュージョンサウンドがここにある。

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