David T. Works Vol.14

David Tが参加した数多くのアルバムからピックアップして紹介するこのコーナー。それではVol.14の10選をどうぞ。

Wilton Felder / Bullitt (1969)

ご存知クルセイダーズの不動のメンバーであり、ベーシストとしても数々の名演を残すウィルトン・フェルダーの1stソロアルバム。プロデュースにはウェイン・ヘンダーソンが名を連ねていることからもわかる通り、本作にはクレジットこそないもののクルセイダーズの面々が完全バックアップしているものと思われる。ということで、この時期のクルセイダーズと非常に近い音作りが印象的だ。クルセイダーズの音作りの特色として、前面に突出するウィルトンのサックスがメロディラインを奏でる役割を果たすことでアルバム全体の表情を彩っていた。本作でもその路線が功を奏しているのは間違いなく、このことがウィルトンがクルセイダーズに必要不可欠な存在であることを物語ってもいる。David Tは非常に控えめにバックアップ。ビートルズのカヴァー「With a Little Help From My Friends」などで裏方のさらに裏方というような、地味ではあるが当時の音色とフレーズを奏でている。

Mary McCreary / Butterflies in Heaven (1973)

本作発表後にレオン・ラッセル夫人となるメアリー・マックリアリーの73年作。プロデューサーにD.J.ロジャースを迎え、チャック・レイニー(B)、アンディ・ニューマーク(Dr)などの豪華陣を配置した意欲作だ。レオン・ラッセルとの共同名義Leon & Mary Russellでの活動のほうが知られる彼女だが、本作は本来彼女が持っているファンキーさやゴスペル風味が色濃く反映されたソウルフルな一枚に仕上がっている。また単なる熱唱型のボーカリストというだけでない多彩な表現力も特筆すべきところ。ミディアムバラードのB1「Butterflies in Heaven」でのしっとりした歌声による洗練さは独特の雰囲気を醸し出して素晴らしい。David Tもそのソウルフルさを着実にバックアップ。A3「Jessie and Bessie」ではいつものキラ星フレーズも飛び出してくる。

Peggy Lee / Let's Love (1974)

アトランティック移籍後の初アルバム。様々なタイプの楽曲を独特の声で歌い上げてきた彼女。本作も多くのカヴァー曲で占められているが、中でも注目なのがポール・マッカートニーが彼女のために書き下ろした表題曲「Let's Love」だろう。経緯は不明だが、この曲のみポールがプロデュースし、かつピアノも弾いているという入れ込みようだ。その他、バックに参加したミュージシャンは、チャック・レイニー(B)、リー・リトナー(G)、デイブ・グルーシン(Key)、ハービー・メイソン(Dr)といったLAの豪華陣。デイブ・グルーシンのフェンダー・ローズとハービー・メイソンのしなやかなドラムが心地良いグルーヴを生み出しているB4「Sweet Talk」は、今の気分にハマるノリが実に軽やか。David Tも多種多様なフレーズと技で全力投球していて気持ちのいいプレイが随所で聴ける。A3「Easy Evil」で聴ける、鋭い切れ味のファンキー・カッティングとメロウフレーズの混合バッキング。そして、極めつけはスタイリスティックスのB1「You Make Me Feel Brand New」。幾多のスローテンポの楽曲でプレイしたDavid Tのメロウネスの中でも屈指のプレイが聴ける名演だ。やはりただ者ではないっすDavid T。

Sarah Vaughan / Send In The Clowns (1974)




『Sarah』(M2X1)
ジャズ・シンガーとして数え切れないほどの歌を歌い続けてきたサラ・ヴォーンがメイ ンストリーム・レコードに残した74年作。ジーン・ペイジがアレンジを施したノリのいいポップな楽曲群がずらりと並ぶ快作で、となればそこにDavid Tが顔を覗かせるのは必然。「Love Don't Live Here Anymore」ではストリングスの使い方などまさにジーン・ペイジならではの音作りでサラのボーカルにもズバリはまっている。一転してノリのよいソウル風味の「That'll Be Johnny」では時折り聴けるDavid Tのリックが「いかにも節」度100%で印象的。ミディアムテンポのメロウ・ソウル・ナンバー「I Need You More」では、David Tを始めとする巧みなバック陣の演奏が、ジーン・ペイジの手によって料理され、サラの腰の据わった歌と見事に調和。心地良さを十二分に演出している。※なお、本作リリース後、同じメインストリームから、ミシェル・ルグランとの共同名義アルバム『Orchestra Arranged And Conducted By Michel Legrand』(Mainstream MRL361)と本作がカップリングされ、二枚組アルバム『Sarah』(Mainstream M2X1)として再リリースされた。

Jim Gilstrap / Love Talk (1976)

バッキングボーカリストとしても数多くのアルバムを彩ってきたジム・ギルストラップのソロ76年作。時代的に幾分かディスコ風味の加わった感のあるダンサブル&メロウな一枚だ。アルバムは全4曲で一曲一曲が長尺なナンバーという、ソウルアルバムにしてはなんとも面白い構成。なんといっても13分を越しA面全部を使い切る「Love Talk」が圧巻で、David Tとワー・ワー・ワトソンの切れ味鋭いギター共演が楽しめる。B1「Move Me」やB2「Never Stop Loving Me」でもリズミカルでパーカッシブな二人のフレーズが冴え渡っており気分はノリノリ。二人の共演が実現した経緯は不明だが、以降、バッキングボーカリストとしての活動はともかく、表舞台での活動は控え目になっていくだけに、本作の出来が余計に良く感じられるのだ。

Norman Connors / This is Your Life (1977)

元々はドラマー出身ながら、プロデューサーとしての活動に抜群の才を発揮するノーマン・コナーズの77年作。クインシー・ジョーンズにも決してひけをとらないそのクオリティの高い仕事ぶりはもっと評価が与えられてもいいほど。本作は、旧友ファラオ・サンダースをはじめ、ボビー・ライル(Key)、リチャード・ティー(Key)、ゲイリー・バーツ(Sax)、ジェイムズ・ギャドソン(Dr)、リー・リトナー(G)といった面々が参加した極上メロウ・クロスオーバー・ソウルな一枚だ。聴き所はなんと言ってもバラードの名曲B2「You Make Me Feel Brand New」でのジーン・カーンとノーマンのソウルフルな熱唱だろう。またハービー・ハンコックのB3「Butterfly」のジャジーなカヴァーもクオリティの高い演奏と仕上げがさすが。David Tはかなり控え目な参加。しかし、ノーマンのソウルフルなボーカルが冴えるA3「Listen」では、イントロから繰り広げられるゲイリー・バーツのメロウなブロウに、いかにもDavid Tなフレーズが絡みつくという、なんとも言えないムーディさが白眉。

Pharoah Sanders / Love Will Find Away (1978)

コルトレーンの影響を強く受け、スピリチュアルで前衛的な作品を数多く作りあげてきたファラオ・サンダース。そんな彼が78年に残したメロウ・クロスオーバーな一枚がこれ。プロデューサーにノーマン・コナーズが起用されていることから、その人脈がフルに参加した作品だ。非常に聴きやすいメロウなテーマとタイトなリズム、それに時折り覗かせるストリングスが絶妙に効いてくる居心地十分な作品が並んでいる。ファラオのテナー・サックスも、まるでスムース・ジャズかと思わせるほど滑らか。彼のキャリアの中でも異色の作品だが、当時のトレンドに沿った音作りであることは間違いない。ノーマン人脈の一人フィリス・ハイマンのボーカルが素晴らしいA3「Love Is Here」とB1「As You Are」では、David Tのいかにも手堅いサポートぶりに思わず拍手。また、ギターで参加のもう一人の名手ワー・ワー・ワトソンのプレイも聴き逃せないところ。アルバムラストを飾るB3「Everything I Have Is Good」では、フィリスとノーマン・コナーズのデュエット・ボーカルに、ボビー・ライルのキーボードが重なり、ワー・ワー・ワトソンの個性あるフレーズが堪能できる。マーヴィン・ゲイ作のA4「Got To Give It Up」ではDavid Tとワー・ワーの白熱した共演も楽しめる。

Alessi Brothers / Words and Music (1979)

双子のデュオ、アレッシー・ブラザースの79年作。プロデューサーにニック・デカロ、ストリングスアレンジにジーン・ペイジが起用されていることからか、非常にクオリティの高いポップ・アルバムに仕上がっている。バックをつとめるのもこれまた多彩。チャック・レイニー(B)、リー・リトナー(G)、アル・クーパー(Key)、エド・グリーン(Dr)、アーニー・ワッツ(Sax)、トム・スコット(Sax)、ジェイムズ・ギャドソン(Dr )といった、書ききれないほどの面々だ。David TはA3「Word and Music」1曲のみ参加。ここでのDavid Tはほとんど前面にでてこない微かな音のみで物足りなさが残る。しかし、アルバム全体としては、彼ら二人の線の細いボーカルをうまく料理した感のあるバックミュージシャンたちの全方位的サポートが完成度をグッと増している。

Charles Veal / Only the Best (1980)

ヴァイオリニストにして名アレンジャー。プロデュースワークまでこなす多才な側面を持つチャールズ・ヴィールの80年作。軽快なポップ・フュージョンという感のある本作に名を連ねるのは、ポール・ジャクソンJR(G)、ジェリー・ピータース(Key)、ハービー・メイソン(Dr)といった名手たち。David Tが参加した2曲のうちの一つA4「Prelude - What Good Is A Song」では、シェリル・リン、ボビー・キンボール、パトリース・ラッセン、ジョー・コッカーらがスペシャル・ゲストとしてバック・ボーカル参加している点も見逃せないところだ。もう一曲のダニー・ハザウェイ作のB5「Someday We'll All Be Free」ではチック・コリアの幻想的なフェンダー・ローズとDavid Tのきらめくような絶妙のフレーズが、互いに美しさを倍増させるような相乗効果を醸し出していて、実に素晴らしい一曲に仕上がっている。まさにうっとり度100%、とろけ度120%のプレイがここにある。

阿川泰子 / Gravy (1984)

決してディープになり過ぎないライトでムーディな感覚。時代に沿って変化するアレンジ形態に左右されない固有の声によって、阿川泰子は自らの「ジャズ」の魅力を放っている。そんな彼女が84年に残した、R&Bとポップなフィーリングを併せ持つ意欲作だ。全編LAのミュージシャンをバックに軽やかに歌う彼女の姿は、時にブルージーに、時にダンサブルに、全く違和感なくアルバムの色彩に溶け込んでいる。David Tもゲストとして本作に参加。ウォーターズのバックコーラスが光るシャッフル・ナンバー「Red Lights」で飛び出すゴキゲンフレーズ。アルバムラストを飾るスローバラード「Who You Are」では、冒頭の押さえ気味のプレイから途中のソロではブルージーでアグレッシブでエモーショナルなプレイが堪能できる。

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