David T. Works Vol.23

David Tが参加した数々のアルバムの中からピックアップして紹介するこのコーナー。まだまだ続きます。ではVol.23の10選をどうぞ。

Diana Ross / Everything Is Everything (1970)

シュープリームス解散後の70年、1stアルバムとほぼ同時期にリリースされた2ndソロアルバム。ビートルズのカヴァー「My Place」「Come Together」「The Long And Winding Road」の3曲、バカラックの「Close To You」も採りあげた意欲作で、彼女の弾むボーカルにバック陣の演奏もノリ十分に応える様子が存分に聴きとれる。モータウンの誇る鉄壁のバックアップにクレジットは一切ないが、時折り聴こえる鈴の音のごとくきらびやかなフレーズはまさしくDavid Tのそれ。アルバムタイトル曲となったポップなナンバー「Everything Is Everything」などでのメロウな響きは、現在と全く変わらない彼の個性が全開でたまらなくうれしくなってしまう。

Stevie Wonder / Where I'm Coming From (1971)

いわゆるスティーヴィー名作3部作と名高い『トーキング・ブック』『インナービジョンズ』『ファースト・フィナーレ』前夜ともいうべき71年の作品で、彼のキャリアの中では比較的地味な存在だが、印象的なメロディラインが随所で聴け、その片鱗が存分に感じ取れる一枚だ。優しく力強いスティーヴィーの歌声が美しい「Think Of Me As Your Solder」や、シリータとのデュエットによるホーン入りの軽快なポップナンバー「If You Really Love Me」、一風変わったコード進行ながらもシンプルなピアノの音色が印象的なバラードナンバー「Sunshine In The Eyes」など、聴き逃せない曲も数多い。David Tは「Take Up A Course In Happiness」一曲に参加。シャッフルのリズムに乗って歌うスティーヴィーの横で、一聴すると地味だが最初から最後まで軽快なオブリを奏でるDavid Tの堅実なバックアップが光る一曲だ。

Love Unlimited / Under The Influence Of... (1973)

バリー・ホワイトの秘蔵っ子、ラヴ・アンリミテッドが自身の名義で発表した73年作。ラヴ・アンリミテッド・オーケストラ名義のアルバムでも披露しているA1「Love's Theme」で幕を明ける本アルバムは、バリー・ホワイト、ジーン・ペイジの手によって紡ぎ出される、きらびやかなサウンドが全開。主役の歌姫3人の美しいハーモニーがアルバム全体を優しく包んでいるのは言うまでもないが、そこに実に安定感のある演奏陣の活躍があることも見逃せない事実だ。バリー・ホワイトといえば、というくらい彼の右腕的存在のドラマー、エド・グリーンのしなやかでタイトなグルーヴに、滑らかなストリングス、さらにDavid Tの華麗なフレーズが絡むと、そこにワン・アンド・オンリーの世界が繰り広げられること必至。B2「Someone Really Cares For You」はその頂点のような展開が絶妙で、David Tも持てる業を存分に駆使した柔らかいプレイを連発している。

Lonette Mckee / Lonette (1974)

女優ロネット・マッキーがSUSSEXレコードに残した珍しいアルバム。しかしこれがかなりの傑作。自作の曲も多く、彼女の多才な側面が感じ取れる一枚だが、何と言ってもサポートした面子が豪華豪華。ジェイムズ・ギャドソン(Dr)、ジェイムズ・ジェマーソン(B)、ウィルトン・フェルダー(B)、ジョー・サンプル(Key)、クラレンス・マクドナルド(Key)、ラリー・カールトン(G)らに、クライディ・キング、メリー・クレイトンのバックボーカル陣も加わった、一大バックアップ体制によるファンキー・ポップ・ソウル絵巻が繰り広げられる。しかし最大の貢献者はほとんどの曲に参加しエンジン全開のミラクルプレイを続出するDavid Tだ。アルバム冒頭を飾るマイナートーンの「Message From The Earth」でいきなりの神業プレイ。数あるDavid Tのプレイの中でも指折りの名演だ。リズミカルなクラビネットが印象的なA2「You Mean A Lot To Me」では、エレピの音色とDavid Tの抑制気味のオブリが交差する絶妙グルーヴが白眉。ホーンセクションが加わったミディアム・ファンキー・ナンバーA3「Save It」でのパーカッシブなカッティング、ピアノとエレピによるポップテイスト感溢れるB2「Do To Me」で聴けるフレットスライドによるキラ星プレイなど、見事なまでのDavid Tオンパレードが続く。さらに、ミディアムテンポのR&B風味のB3「See Ourselves, Be Ourselves, Free Ourselves」では全編David Tのフレーズで彩られた絶妙フレーズの山が築かれ、さらに軽快に浮遊するエレピが心地よいB4「The Way I Want To Touch You」でも一歩後ろに引いた位置から鋭いフレーズをキメまくる。David T的には間違いなく“マスト”の隠れた名盤だ。

Dee Dee Bridgewater / Dee Dee Bridgewater (1976)

76年のアトランティック盤。ニューヨーク、マッスルショールズ、西海岸と、3箇所で録音された本作は、それぞれのスタジオでバックを務めるサポート陣によるテイストの変化が楽しめる表情豊かな好盤だ。アルバム冒頭を飾る疾走感溢れる「My Prayer」は、N.Y.組のアラン・シュワルツバーグのドライブの効いたドラムも実に心地よく、ディー・ディーの歌も躍動感に満ちている。マッスルショールズ組では、ピート・カー(G)、ジミー・ジョンソン(G)、デイヴィッド・フッド(B)、ロジャー・ホーキンス(Dr)らの不動の面々がジェリー・ウェクスラーの指揮の元、懐の深さとタイトさを兼ね備えたR&Bを聴かせる中、存在感を十分に放ち応えるディー・ディーの力強さと美しさが堪能できる。「Goin' Through The Motions」でのピート・カーの抑制されたギタープレイに重なるディー・ディーは実に表情豊かで味わい深い。L.A.組の手掛けた「My Lonely Room」「You Saved me」「He's Gone」は、エド・グリーン(Dr)、ウィルトン・フェルダー(B)、ワー・ワー・ワトソン(G)、ジョー・サンプル(Key)、ボビー・ホール(Conga)、レイ・パーカー・Jr(G)に我らがDavid Tという安定感たっぷりのメンバーがジーン・ペイジのしっとりとしたストリングスに絡み、洗練された着実なサポートを披露。特にホール&オーツの原曲に歌詞を一部変えてトライした「He's Gone」はバックアップ陣の完璧なトラックにディー・ディーの熱唱も頂点を極め、見事なアンサンブルで聴く者を圧倒する。

Friends Of Distinction / Reviviscence/Live to light again (1976)

70年代初頭の重厚なコーラスワークと比べると、幾分タッチの軽いグルーヴが印象的なフレンズ・オブ・ディスティンクションの76年作。とはいえ、肝は彼らの「歌」にあることは間違いなく、壮大なストリングスに彩られたヴァン・マッコイ作のA3「You've Gotta Tell Him」や続く「I Don't Wanna Be Late」などは、持ち前の歌唱力を存分に披露したメロウ・バラードの大作で本領発揮の一言だ。ドラムにスティーヴ・ガッドが参加してることも手伝って、アップテンポのナンバーでは安定感のあるリズムが心地よく響くのも特徴的。縦横無尽に躍動するふくよかでキレのあるベースラインが印象的なB2「Rock And Stone」では、一定のビートをキープするドラムを横目に着実にフレーズを刻むDavid Tの姿が見て取れる。しかし、何と言っても本作のハイライトは、フリーソウル系としても人気の高いA5「When A Little Love Began To Die」に尽きる。男女混成ボーカルワークの持ち味が十分に発揮された彼らのパフォーマンスの横で、自由奔放、切れ味鋭いフレーズをビシバシとキメまくるDavid Tのグルーヴィなプレイを肌で感じてしまうと、フロアでのミラクルは想像に難くない。

Vernon Garrett / Going To My Baby's Place (1977)

メインストリームというよりはマイナー・レーベルでの活動の多かったヴァーノン・ギャレットのレアな一枚。アルバム単位よりもシングルリリースという形での活動が多かったからか、本盤は70年初頭にシングル盤として世に出た楽曲を集め、さらに新録を加えたという構成とのこと。録音時期が若干違うため楽曲間に質感のバラツキがあるものの、躍動感たっぷりの熱唱を披露するヴァーノンの声はどこを切ってもヴァーノンらしさで溢れており、実にブルージーでソウルフル。ゴツゴツとした肌触りで重心の低いリズム隊によるミドルテンポのファンクネスが炸裂するA2「I Learned My Lesson」で聴けるバッキングは、クレジットこそないものの間違いなくDavid Tのフレーズ。カラッと乾いた突き抜けるようなオブリはヴァーノンのパワフルさと相まって清々しささえ呼び起こす。女性バックコーラスのサポートもファンキーな臨場感溢れるB2「Keep On Forgiving You」では、幾分奥に引っ込んだ感のあるプレイだが、きっちりとバッキングに徹するDavid Tの姿が見て取れる。もっと多くの人に聴いてもらいたいR&Bの好盤だ。

Bert Robinson / No More Cold Nights (1987)

野太い低音と細やかな感情表現の魅力を合わせ持つバート・ロビンソンの1stアルバム。エフェクトの効いたベースとドラムのリズム隊によるダンサブルな展開とミディアムテンポの聴かせる楽曲のバランスもよく、アーバンなテイスト感満載の王道的ブラコンが楽しめる仕上がりがこの80年代後期という時代にしては意外と言えば意外。サウンドプロダクションは80年代初期〜中期に頂点を極めた方法論を踏襲し歌をメインに引き立たせることで、主人公であるバート本人の歌唱力が大きくフィーチャーされた感のある一枚だ。David Tは、A4「Never Gonna Give You Up」のみに参加。アルバム全体から感じ取れるヒリヒリするコンテンポラリー感とは一線を画す歌い上げ系のバラードともいえるこの曲において、この音なしでは成立しないと直感できるDavid Tのプレイが悶絶この上なく、ひいてはバートの魅力を最大限に引き出すことにもなるという「バッキングの鉄則」をひたすら感じさせてくれる。こういうマジックがあるからやめられないとまらない。

Body / Body (1987)

デトロイト出身の3姉妹によるボディの1stアルバム。アップテンポでビートの効いたナンバーから、ミディアムでゆったりと流れるバラードR&Bまでバラエティに富んだ楽曲群の中、抜群の歌唱力と3人の息のあった艶やかで伸びやかなコーラスワークによる存在感が本作の最大の聴きどころであり、伸びやかな彼女らの歌声はいずれももぴったりとハマっている。シンセが多用されきらびやかな装飾が施された丁寧ながらも画一的な仕上がり具合のバックトラックが個性に欠けるところがあるものの、David Tが唯一参加したB2「Show Me How」はその表情が一変。まろやかで暖かみのあるいつものフレーズが、他の楽曲とはあきらかに違う色彩で語りかけてくる。

Nick DeCaro / Love Storm (1990)

74年の名作『イタリアン・グラフティ』から16年ぶりに発表されたニック・デカロのソロ2ndアルバム。『Nick DeCaro Sings Tatsuro Yamashita』の副題が示す通り、アルバム中ほとんどを占める山下達郎の楽曲を英語詞でうたうという日本制作によるもの。存在感のあるニックの優しい歌声がハマりにハマった実に素敵な仕上がりだ。ニール小田氏のプロデュースの元、集められたメンバーも豪華。ニール・ラーセン(Key)、ハーヴィー・メイソン(Dr)、ジョン・ロビンソン(Dr)、ディーン・パークス(G)といった面々が、達郎の楽曲を奏でるところが実にいい居心地だ。「クリスマス・イヴ」は、原曲よりもポップで軽快なアレンジが施されているが、ニックの高音によるボーカル・ワークが美しい表情で語りかけてくる。David Tも全面的に参加しニックの歌声を効果的にサポート。どの曲でも安定感のあるプレイで心地よいが、中でも「Only With You」での抱擁力に満ちあふれたDavid Tのプレイは、癒し度100%だ。

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