David T. Works Vol.41

まだまだ続くこのコーナー。ではVol.41の10選をどうぞ。

J.W. Alexander / Raw Turnips & Hot Sauce (197?)

サム・クックやルー・ロウルズと楽曲制作に関わるなど、古くから職業ライターとして活動していたこともあるアーティストの一枚で、その経歴通りほぼ全編に渡って自身のペンによるR&Bやブルージーな作品。リリース年は不明だが、おそらくは69年か70年近くの録音だと推測できるその音は、アール・パーマー(Dr)、ウィルトン・フェルダー(B)、ジョー・サンプル(Key)といった若き日の強者たちによる見事な顔ぶれ。David Tも以後に頻繁に登場する定番的フレーズをポロポロと奏でている。当時愛用していたワウペダルを駆使した「Mean Black Snake」でのファンキーフレーズもこの時期の特徴的なプレイスタイル。ブルースフィーリングたっぷりのプレイで聴かせる「Lightnin' Struck A Pine」では、途中スライドバーを使っているような音色が聴こえたかと思うと直後にワウペダルにスイッチするというフレーズのワザも冴える。ラストを飾るR&Bナンバー「Peace Of Mind」では、ウィルトン、ジョー、David Tの3人が派手さは無いもののライヴ録音を思わせるような生々しいバンドアンサンブルで聴かせる好演。この3人がこの楽器構成で人前で生演奏した機会はほとんどないだけに「一度でいいから見てみたい」的願望を触発させるに十分な一曲でもある。

Jackson5 / Third Album (1970)

飛ぶ鳥を落とす勢いで立て続けに楽曲をリリースしたジャクソン5の1970年。深く考えずとも素直に音を楽しめる聴きやすいアレンジと楽曲、それにマイケルの愛くるしいポップな歌声とキャラクターがこの時期の彼らの最大のミラクル。David Tは本作を含め初期の段階から彼らに関わっていた一人だが、本作のような王道的ポップスの中で求められるのは自由奔放なフレージングではなく緻密な伴奏を着実にこなすプレイスタイル。だが、謙虚な佇まいの職人歌伴ギタリスト的立ち位置の中でも、直感的に響いてくるきらびやかな音色が出過ぎない個性として知らず知らずのうちに周囲に浸透。その音色によるシンプルな刺激の効果は、直後のOdeレーベルでのソロアルバムリリースという形となってあらわれた。本作では、その出過ぎず引っ込み過ぎずの端正な音色が4thシングルとしてもリリースされた「I'll Be There」で冒頭から早くも登場。同時期にメリー・クレイトンのバックバンドでカヴァーしていたサイモン&ガーファンクルの「明日に架ける橋」もDavid Tには馴染みの一曲だ。こうした歌伴プレイの数々によって蓄積された懐の引き出しは、ソロ活動でのカヴァー曲のチョイスにも大きく影響を与えているはず。楽曲を自分流に解釈するワザとセンス。その変遷をフレーズから読み取るのも一興、また現実に読み取れる感覚を伴ってしまうのも彼の個性でありミラクルなのだ。

Al Wilson / Show And Tell (1973)

アル・ウィルソンの代名詞的ヒットチューン「Show And Tell」収録の73年作。その表題曲の作者でもあるジェリー・フラーのプロデュース、アレンジにH.B.バーナムが名を連ねた本作は、いつ聴いてもジョニー・ブリストルに似ているアル・ウィルソンの歌声を主役に据えながらも、完成された楽曲の数々で聴かせる一枚だ。David Tはその表題曲から微細ながらもバッキングで参戦。他にも、静かにフレーズが重ねられていく「I'm Out To Get You」や、ワウペダルによる粘っこいフレーズが満載の「Queen Of The Ghetto」、女性コーラス隊も艶やかに軽快なテンポで迫るグルーヴィナンバー「Touch And Go」など、ほぼ全編に渡っての活躍ぶりで二重丸。David Tは参加してないものの、バリー・マン作の「Broken Home」や、一風変わったアレンジのレオン・ラッセル「A Song For You」でのアルの熱唱ぶりもさすがの一言だ。

Gladys Knight and The Pips / All Need Is Time (1973)

情感溢れるグラディスの歌声は実に素晴らしい。スローテンポの楽曲が並ぶ中「Heavy Makes You Happy」などのアップテンポのポップチューンはピップスのボーカルも重なりながら次第に高揚する感覚にモータウンの香りが漂う。エレピの優しい響きが印象的な「Oh! What A Love I Have Found」や、スライ&ザ・ファミリーストーンのカヴァー曲「Thank You」など印象的な楽曲もちらほらと顔を覗かせる。そのタイトル通りに自らを重ねて歌うグラディスの姿が印象的な「The Singer」では、ジェイムズ・カーマイケルによる重厚なアレンジの中、繊細にフレーズを重ねるDavid Tに、堂々と我が道を行くグラディスの姿が頼もしく映る。その迫力たるや。黒人女性ボーカリスト私的ナンバーワンの座はやはり不動だ。

Motown Sounds / Space Dance (1978)

70年代後半という時代、フロアで重宝されたと思われるダンサブルチューン満載の一枚。わずかにバックボーカルが挿入されるものの、ジェイズム・ギャドソン(Dr)、スコット・エドワーズ(B)、ジェイ・グレイドン(G)、リー・リトナー(G)など、当時のモータウンが誇るミュージシャンを贅沢に起用したマイケル・L・スミスのプロデュースによる全編グルーヴィなインストナンバーが実に明快で清々しい。ディスコフロアを宇宙船的乗り物に持ち込むというアイデアを具現化したアルバムジャケットのビジュアルはいささか安易な感もあるが、それだけ“16ビート”や“空間的サウンド”への希求が大きかったことの証しでもある。David Tは冒頭を飾る「Groove Time」で弾力感溢れるエンジン全開のプレイを披露している。

Shalamar / Disco Gardens (1978)

モータウンカヴァーが印象的だった77年の前作『Uptowon Festival』から一転、タイトル通りアッパーなディスコ・グルーヴが全体を支配するSolarレーベルからの一枚。時代的には違和感はないが、カッチリとしたその特有のノリはジョディ・ワトリーの艶っぽい歌声も相まって、単に聴くよりやはり体を躍動させるのに向いているとあらためて痛感。中でもシングルカットされた「Take That To The Bank」はその最たるきらびやかさのポップチューンで爽快だ。ミドルテンポの「Leave It All Up To Love」や「Cindy Cindy」で聴けるDavid Tの個性的なメロウフレーズによるバッキングは、派手さはないものの楽曲に十分な彩りを添える貢献。この弾力感はフロアでなくとも腰にくる。

Leon Haywood / Naturally (1980)

ブラコン時代突入前夜の80年作。ドラムは画一的に、ベースラインは低音強調にと、この時代の躍動セオリーを重視した音作りが支配する中、ホーンやバックコーラスの多用が功を奏し、ポップでダンサブルなバラエティ感が意外にもすんなりと耳に馴染む一枚。ジェイムズ・イングラム作の「That's What Time It Is」ほかは、ほぼ全てのトラックを書き下ろしたリオンの楽曲センスが本作を支える屋台骨。アルバムラストを飾る長尺ナンバー「Lover's Rap」のワンコードグルーヴも、近くで誰かがステップを踏む光景を即座に思い浮ぶダンスチューン。David Tのバッキング音はほとんど聴こえてこない地味な参加だが、良くも悪くも時代のノリを映した一枚。この後、リオンは自身のEve Jim Productionを発展させたEvejim Recordsを主宰、インディレーベルながら現在でも地道なプロデュースワークを重ねている。

Smokey Robinson / Essar (1984)

フレディ・ワシントン(B)、ソニー・バーク(Key)、ポール・ジャクソン(G)、チャールズ・フィアリング(G)など、その筋の強者たちが参加しつつも時代の流れに逆らえない感のある打ち込み主体のサウンドプロダクションが今となっては微笑ましくも映る。だが、その歌声が聴こえると安堵の感を抱くファンも多いハズの80年代のスモーキー。「Girl I'm Standing There」や「Gone Forever」などスローテンポの楽曲では雰囲気をズバリ醸し出してさすがの一言だ。David Tは計4曲に参加。中でもさらりと軽快なミドルテンポの「Little Girl Little Girl」では単調なリズムトラックの中にあってスモーキーの歌声とともに最初から最後まで唯一メロウな音色を奏でている。

Minako Obata / Brand New Day (1997)

メリハリの効いた透き通るヴォイス。だが、通り過ぎて行かない微細な引っかかりのある心地良いトーン。この特有の響きが、タイトで洗練されたバッキングとアレンジに巧妙にハマる。打ち込みとプログラミング、そして所々に配置されるゴスペル的風貌のバックボーカルや、生々しい意匠のバンドアンサンブルの数々をバランス良く仕上げたビル・カントスとカラパナのケンジ・サノの二人による極上のプロデュースは、彼女の表現力を見事に際立たせた。全編に渡ってサポートするマイケル・トンプソンのギターや、「Land Of Celebration」で聴けるエヴェレット・ハープが描く強い輪郭のサックスプレイ、デイヴィッド・ガーフィールドの力強い鍵盤など、高いクオリティのバンドサウンドが華麗に強弱を彩る。その豪華さに一歩も退けをとらない彼女の歌声が頼もしく艶やか。日本人的な湿り気皆無の鮮やかな洗練が美しい。スローテンポのR&Bナンバー「Gotta Be You」のみに参加したDavid Tのギターも、いつものキラ星プレイを惜し気もなく披露。“あなたしかいない”と歌う彼女の声が、随所に響くDavid Tのフレーズに向かっているようでもあり、そのフレーズもまた彼女の歌声に同じ感覚で呼応しているかのよう。アルバムラストを飾るに相応しく、それらフレーズの舞いが彼女への賛辞にも聴こえてくる。

Elaine Norwood / God Has A Way(2005)

リオン・ヘイウッドが主宰するレーベルEvejim Recordsからリリースされたゴスペルシンガーの一作。David Tのソロアルバム『On Love』収録の「I Wish Your Love」にバックボーカルとして参加するという意外な繋がりはあるものの、ソロシンガーとしてのキャリアは2000年以降にスタート。収録曲のほとんどが2004年にリリースされた前作『Good News』で、そこに新曲2曲を追加しタイトルも新たに世に出たという不思議な一枚だが、その新曲2曲にのみにDavid Tが参戦しているとなれば、無名に近いこのシンガーのアルバムにも俄然興味が湧くというもの。さらには、その2曲のうち1曲はなんとアリシア・キーズの大ヒット曲「If I Ain't Got You」のカヴァー。折り紙付きの歌唱力による余裕たっぷりのパフォーマンスに、アコースティックな質感が際立つ艶やかなDavid Tのギターの音色が自然と調和。David T参加のもう1曲「Got Has A Way of Working It Out」では、弦を爪弾く接触音が聴こえるほどの生々しい響きに満ちたギターフレーズが、抜群の演出でソウルフルな熱唱をサポートしている。

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