David T. Works Vol.25

David Tが参加した数々のアルバムの中からピックアップして紹介するこのコーナー。まだまだ続きます。ではVol.25の10選をどうぞ。

Diana Ross & Marvin Gaye / Diana & Marvin (1973)

ダイアナとマーヴィン。決してシャウト型とは言い難い個性の二人が織り成す、静かな佇まいながらも熱のこもった盛り上がりを聴かせるという、デュエット盤ならではの豪華さ感が端々から臭ってくる一枚だ。ウィルソン・ピケットの「Don't Know My Love」やスタイリスティックスの「You Are Everything」と「Stop, Look, Listen」などのカヴァー曲も、うまく男女のデュエット形式にアレンジされており面白い。「Love Twins」で聴けるDavid Tのまろやかなキラ星フレーズは、前に出過ぎず引っ込み過ぎずの抜群のサポートぶりで、このデュエット盤に華を添える貢献を果たしている。

Jackson 5 / Skywriter (1973)

彼らの中では比較的地味なアルバムだが、声変わりする前のマイケルのハイトーンヴォイスがまだ楽しめる一枚。全編躍動感溢れるハツラツとしたポップ&ソウルチューンが満載で、当時の彼らの人気に応える手堅い作りが印象的だ。中でもフォンス&ラリーのミゼル兄弟の作品を取り上げたB4「Ooh, I'd Love To Be With You」は、メロウさの中に不思議な余韻を感じさせる仕上がりで新たな境地への予感を感じさせる。ジーン・ペイジのアレンジによる静かでメロウなA4「Touch」での控え目なきらびやかさを与えるDavid Tのフレーズが、彼らの歌声をより前面に際立たせている。

Jr.Walker & The All Stars / Peace & Understanding Is Hard To Find (1973)

モータウンでのバックアップワークなど多くのアーティストのサポートを果たすジュニア・ウォーカー。自身のバンドを率いてのソロ名義アルバムでは、60年代後半から70年代初めまでにキャリアが集約されている感があるが、73年の本作も幾分まろやかで聴き心地よいテイストによる絶妙のソウルフィーリングが十分堪能できる好盤だ。女性バックボーカルをフィーチャーしたリオン・ウエア作のA2「I Don't Need No Reason」でのミディアムテンポのメロウネス、ウィリー・ハッチ作のA3「It's Allright, Do What You Gotta Do」でのハツラツとしたノリの良さも二重丸。キャロル・キングの名曲A4「It's Too Late」では、原曲の洗練されたソフトでポップな要素は保ちつつも、ジーン・ペイジによるストリングスアレンジとメリハリの効いたリズム隊のバックアップが、この曲が本来持つソウルフィーリングを浮き彫りにする。クレジットがないため詳細なメンバーは不明で、「I Ain't Going Nowhere」への参加などで聴けるDavid Tの活躍度はアルバム全体の中では低いものの、堅実でタイトなグルーヴが生み出すバンドアンサンブルの躍動感は表情豊かで実に素晴らしい。

Jimmy Smith / Black Smith (1974)

名盤『Root Down』に代表される火を噴くファンクネスとジャズフレイバー漂うオルガンの音色を数多くモノにするジミー・スミスが74年に残したグルーヴィな一枚。無論、ジミーのオルガンが躍動感に溢れていることに間違いないが、女性バックボーカルの起用やタイトなリズム楽器隊のアレンジワークなど、そこに描かれる演奏すべてがメロウネスと小気味良いグルーヴ感を演出する。フロアでの需要も軽くクリアするソフトでダンサブルな仕上がりがいつものジミーのそれとは微妙にズレたニュアンスを醸し出しており印象的な余韻を残している。David Tもアルバムほぼ全曲に渡って大活躍。アルバム冒頭を飾るA1「Hang 'Em High」からその予兆がスパークしており、切れ味鋭い粘っこいDavid Tのリズムカッティングとメロディアスでファンキーなジミーのオルガンが、刑事物のテレビドラマシリーズにそのまま使えるのでは?と思わせる疾走感で踊りに踊っている。スタッカートの効いたドラムのイントロで幕を開けるバリー・ホワイトのカヴァーA2「I'm Gonna Love You Just a Little More Babe」は、原曲に勝るとも劣らない安定感たっぷりのバックアップ陣の演奏が白眉。メロウナンバーA5「Why Can't We Live Together」は、女性バックボーカルが実に印象的に響く中、David Tもいつものフレーズを控え目ながらも効果的に連発する。ベンチャーズのカヴァーB2「Pipeline」は、すべての楽器が細かな刻みで複雑に交差する中、ジミーのオルガンが流暢かつ抜群の切れ味を見せながら独壇場の世界を展開。ジミーのキャリアの中では比較的地味な扱いだが、もっと多くの人に聴いてもらいたい隠れた名盤だ。

The Pips / At Last... (1978)

グラディス・ナイトとの活動で知られるザ・ピップスが自身の名義で発表したアルバム。アーサー・ライトのプロデュースのもと、ジェイムズ・ギャドソン(Dr)、チャック・レイニー(B)らのリズム隊や控え目に流れるストリングスアレンジなど、サポート陣のバックアップも光るボーカルアルバムの好盤だ。とは言え、時代的にはディスコビートの全盛期。すべてにおいて彼らの歌を際立たせるアレンジが施されているかといえば疑問だが、それでも3人の息のあったボーカルパフォーマンスは健在。スタッカートの効いた躍動感溢れるベースラインが印象的なB1「Since I Found Love」ではワウギターや安定感たっぷりに刻まれるハイハットのリズムが、3人のボーカルコンビネーションをうまく引き出すのに一役買っている。David TはB2「Happiness」1曲に参加。ほとんど目立たない控え目なプレイに終始しているが、途中、いつもとは違う音像でソロプレイを披露。音色がどうであれ、ピッキングニュアンスの骨格だけでそれとわかるDavid Tのプレイは、存在そのものを素晴らしいと言い切ってしまえるオリジナリティだと舌を巻くこと然り。

Thelma Houston / Breakwater Cat (1980)

マイケル・スチュワートとジェイムズ・ギャドソンのプロデュースによるテルマ・ヒューストンの80年作。エグゼクティブ・プロデューサーとして参加したジミー・ウェッブの楽曲がA面の5曲を飾る構成も面白い本作は、ポップ色も強いが彼女のキャリアの中では比較的地味な扱い。だが、David Tの貢献度はなかなかで、要所要所での聴きどころも意外とある。アルバム冒頭を飾るタイトル曲でもいきなりDavid Tのフレーズが宙を舞い、軽快なテンポのポップチューンA3「Before There Could Be Me」でも細かなリズムで呼応。熱のこもったテルマの歌声も見事なバラードナンバーB2「Down The Backstairs Of My Life」でもソニー・バークのピアノの調べにのってDavid Tのメロウフレーズが好サポートを果たす。そしてB5「Something We May Never Know」では、ジェリー・ピータースのエレピが楽曲のムーディさを演出する中、少ない音数でも存在感を残すDavid Tのフレーズが印象的に響く。テルマの実力も十二分に引き出しながら不思議な余韻を残して本作は幕を閉じるのである。

Jean Carn / Sweet And Wonderful (1981)

ノーマン・コナーズ人脈の一人、ジーン・カーンの81年作。ジェイムズ・ギャドソン(Dr)、ポール・ジャクソンJr(G)、ワー・ワー・ワトソン(G)、ネイザン・イースト(B)、ソニー・バーク(Key)などの豪華バックアップ陣の好サポートも手伝って、スローテンポからアップテンポまで幅広い楽曲群を見事に演じあげる彼女のパフォーマンスに思わずうっとりの一枚だ。David Tの出番は少ないもののほぼ全曲に渡って参加。スローバラードA2「Don't Say No」では、優しく力強いいつものフレーズが控え目ながらも顔を覗かせる。アルバムタイトル曲A3「Sweet And Wonderful」では、独特の細かいリズムを刻みつつも、お得意のキラ星フレーズをさり気なく盛り込むあたりはさすがの一言。アルバムラストを飾るバラードナンバーB4「Love(Makes Me Do Foolish Things)」では、控え目だったDavid Tのプレイが徐々に存在感を大きく表わし彼女の歌と一体化していく様子が聴きとれる。毎度のことながら「恐るべし」のフレーズだ。

O.C. Smith / Love Changes (1982)

カウントベイシー楽団出身のボーカリスト、O.C.スミスの82年作。H.B.バーナムのプロデュースのもと、落ち着きのある低く甘いボーカルが熱を帯び過ぎない程よいソウルネスを感じさせる仕上がり具合で心地良い。マキシ・アンダーソンも名を連ねるバックボーカル陣の歌声も本盤に彩りとムーディさを添える好サポート。そこに加えてDavid Tもほぼ全編に渡ってサポート。ミディアムテンポのファンクテイストのA2「If You Knew」での緩急あるオブリや、ゆったりと流れに寄り掛かりたくなるR&BナンバーA3「Love Changes」やB2「That's One For Love」での、ゆるりとした粘っこいフレーズなど、この手の歌声にはまさにハマりまくりのDavid Tのフレーズの数々が随所で拝めるありがたい一枚だ。

The Crusaders / Good and the Bad Times (1986)

ジョー・サンプルとウィルトン・フェルダーの二人名義による86年作。前作『Ghetto Blaster』でも聴けた一部にシンセを多用したアッパーなアレンジワークが好き嫌いの分かれ目だが、全体的にはファンクネスとジャズフィーリングが随所に見え隠れする「原点回帰への序章の前触れ」の感ある一枚だ。そんな「過渡期」とも言えるアルバムに、旧知の仲間David Tもゲスト参加。ナンシー・ウィルソンをフィーチャーしたスローバラードA2「The Way It Goes」でのメロウフレーズも地味ながらしっかりとその表情を残すバックアップ。A3「Sweet Dreams」では、ジョー・サンプルの色気のあるピアノ、ラリー・カールトンの流暢なギターソロに続き披露される、粘り気のある細かいピッキングで存在感たっぷりのフレーズを繰り出すDavid Tのソロプレイが、熱さとクールさを演出するようで実に印象的だ。

Booker T.Jones / The Runaway (1989)

マルチプレーヤー振りを如何なく発揮したブッカー・T・ジョーンズの89年作。プログラミング・シンセドラムが全編を支配するインストゥルメンタルサウンドの中で、ブッカー・T自身によるハモンドオルガンが健在なのがうれしくもあるが多少中途半端な印象も拭えない感もあり、仕上がり具合としては微妙なところ。ギターワークもブッカー・Tのプログラミングによるソロプレイが展開するが、それ以外にも多彩なギタリストらが参加。ポール・ジャクソン・Jr、スティーヴ・ルカサー、フィル・アップチャーチ、ラリー・カールトンといった強者が、有機的な音像を残すことに貢献している。その一人David TもB2「Never Gonna Leave Again」一曲に参加し、輪郭のはっきりしたメロウなソロプレイを披露している。

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