David T. Works Vol.22

David Tが参加した数々のアルバムの中からピックアップして紹介するこのコーナー。まだまだ続きます。ではVol.22の10選をどうぞ。

Gladys Knight and The Pips / Neither One of Us (1973)

その独特の歌声が一度聴くと耳から離れないグラディス・ナイト&ザ・ピップスの73年作。ヒットチャートを賑わしたアルバムタイトル曲をはじめ、グラディスとピップスのソウルフルなボーカルが楽しめる彼らの最高傑作と言ってもいい一枚だ。なかでもジョニー・ブリストルがプロデュースを務めた4曲はメロウ&ナイスグルーヴの名曲揃い。自在に躍動するベースラインにピップスの歌声も見事にハマるファンクナンバーB2「Daddy Could Swear, I Declare」、グラディスの伸びやかな声がグッとしみ入るB3「Can't Give It Up No More」、ミディアムテンポのファンキーグルーヴB4「Don't It Make You Feel Guilty」でもその勢いはとどまらない。が、しかし本作はなんと言ってもA2「It's Gotta Be That Way」の素晴らしさにトドメを刺す。ゆったりとしたテンポのメロウな楽曲にのるグラディスの大らかな歌声は見事の一言。途中で繰り出されるDavid Tのメロウフレーズも手伝って、歴史に残る名曲がここに生まれた。

Genie Brown / Woman Alone (1973)

ファンキーディーバ、ジーン・ブラウン唯一のアルバム。アップテンポからスローナンバーまで幅広い楽曲群が抜群のブラックネスとメロウネスを奏でる一枚だ。ほとんどの曲をサポートするジェリー・ピータース(Key)、ハービー・メイソン(Dr)、キング・エリソン(Conga)らによる演奏組に混じって、David Tが参加した2曲にはポール・ハンフリー(Dr)、ジョー・サンプル(Key)らが参加するという、2つのバックアップ陣体制による構成も面白いところ。前者組での聴きどころはなんといってもグラディス・ナイトで有名なB2「It's Gotta Be That Way」だろう。グラディスに全くひけをとらないソウルフルな素晴らしい熱唱がここで聴ける。後者組では、A5「Let Me Stand In Your Shadow」でのハコ鳴りの乾いた潤いのあるDavid Tのプレイが地味ながらも印象的。B5「Life Is Beautiful When Love Is Everywhere」では、ジョー・サンプルの軽やかに弾むローズピアノに絡むDavid Tのワウプレイが謙虚ながらも実にメロウだ。

Jerry Butler / Power Of Love (1973)

こちらもジョニー・ブリストルがプロデュースを担当したジェリー・バトラーの73年作。ジェイムズ・ギャドソン(Dr)、ジェイムズ・ジェマーソン(B)、ジョー・サンプルらの手堅いバックアップに加え、H.B.バーナムらによるオーケストレーションも印象的な仕上がりで、いかにもブリストルな仕事ぶりが素晴らしい。そうなると我らがDavid Tも全面的貢献を果たすのは必然。ストリングスが冴え渡るA2「What Would I Do Without Your Love」やA3「That's How Heartaches Are Made」など、最初からエンジン全開のメロウネス。続くアルバムタイトル曲A4「Power Of Love」でのキレのある粘っこいカッティングは幾分控え目だが、コーラスワークも見事なスローナンバーA5「Don't Wan't To Love You」で、途中から盛り上がりを見せるDavid Tの珠玉のフレーズが炸裂し、前半戦は完全KO必至。ところが後半戦もそのプレイは衰えをみせることなく続き、テリー・キャリアー作のB3「Whatever Goes Around」でも、そのマイナーメロディにDavid Tのフレーズが実に印象的に奏でられる。ラストを飾るアップテンポのB4「Too Many Danger Signs」で、コンマ数ミリずれるオブリガードはご愛嬌。全編通してDavid Tのプレイが堪能できる珠玉の一枚だ。

David Axelrod / Auction (1974)

フリーソウル文脈で再評価された感のあるレア・グルーヴ定番の一枚。数多くのアルバムでプロデューサーとしても才を発揮するデヴィッド・アクセルロッドの74年作だ。デヴィッドと共同名義でキャノンボール・アダレイがプロデュースワークに名を連ねていることからか、ジョー・サンプル(Key)、キング・エリソン(Cong)、アーサー・アダムス(G)といった強者たちがこぞって参加。タイトでグルーヴィなバッキングが楽しめる仕上がりだ。アルバムタイトル曲にもなったA2「Auction」やA3「Sympathy」で聴けるアーサー・アダムスのソウルフルでジャジーなギタープレイは絶品の一言。女性ボーカルと男性ボーカルによる不可思議感炸裂のメロディラインが実に印象的なA4「Freedom」では、ブルースフィーリングとジョー・サンプルのローズピアノによる浮遊空間の同居が、この上ないソウル感とグルーヴ感を生み出しており、まさに鳥肌もの。そんな中、DavidTはB1「The Leading Citizen」でエキサイティングなワウプレイで参戦。アルバムジャケットから漂うビターなテイストに逆調和するかのごとく見事なサイケ感を表現している。フロアで聴き流すだけではあまりにもったいない、単なるレア・グルーヴとして片付けられない強烈な世界がここにある。正座して聴いてみよ。

Johnny Bristol / Feeling the Magic (1975)

ジョニー・ブリストル入魂の2ndアルバム。1st『Hang On In There Baby』と3rd『Bristol's Creme』の間に挟まれていながら長い間CD化されなかったのが不思議なくらい素晴らしい仕上がりの傑作盤だ。A1「Leave My World」からジョニブリの世界が全開。ワー・ワー・ワトソン(G)、レイ・パーカー・Jr(G)、クラレンス・マクドナルド(Conga)、エド・グリーン(Dr)といったソリッドな演奏陣も絶妙のサポートを果たしつつ、そこに当然のごとく顔を覗かせるのが我らがDavid Tだ。スローナンバーB2「I'm Just A Loser」やB4「All Goodbyes Aren't Gone」で見せるキラ星フレーズ、コーク・エスコヴェードのカバーでもおなじみのB5「I Wouldn't Change A Thing」でのキレと艶のあるバッキングなど、David Tならではのプレイが堪能できる。ジョニー・ブリストルといえばDavid T、この格言はやはり有効。一本。

Gene Page / Lovelock! (1976)

70年代の最重要アレンジャーにしてプロデューサー、ストリングスの魔術師ジーン・ペイジの76年作。言うまでもなく彼の人脈がフルラインナップした感のあるクロスオーヴァーな一枚だ。女性バックボーカル陣が絶妙のファンキーさを醸し出すA2「Organ Grinder」でのグルーヴ、フルートの音色とストリングスが絶妙に絡むふくよかなアレンジが印象的なA3「Higher My Love」など、全編を通して至る所でDavid Tのプレイは光っている。トム・スコット(Sax)、アーニー・ワッツ(Sax)、オスカー・ブラッシャー(Tmp)らが参加したホーンセクションが大活躍するA4「Together - Whatever」やB2「Into My Thing」でも、その多くの音色に埋もれずDavid Tのフレーズは存在感を発揮。エド・グリーン(Dr)、ウェルトン・フェルダー(B)、ワー・ワー・ワトソン(G)、リー・リトナー(G)、ボビー・ホール(Per)、メリー・クレイトン(Vo)、ジム・ギルストラップ(Vo)など、役者が勢揃いした感のあるこのアルバムの中で、出番は多くないものの、一曲一曲に確実にその存在感を残すDavid T。ジーン・ペイジが彼を起用し続けたのも十分にうなずける。

Jessy Dixon / It's All Right Now (1977)

ジェシー・ディクソン・シンガーズのメインアクト、ジェシー・ディクソンのソロ作。全編多くのシンガーを配したゴスペルミュージックがずらりと並ぶ高揚感溢れる一枚だ。しなやかなストリングスアレンジも功を奏したA5「Hold On」では、バックボーカルの重厚でソウルフルな仕上がり具合が聴きごたえたっぷり。ジェイ・グレイドンの流暢なギターソロで幕を開けるA3「Father Me」は途中ジョー・サンプルのローズピアノによる華麗なソロが奏でられる中、着実に弾力のあるリズムを刻むDavid Tの姿も聴き取れるメロウ・グルーヴな一曲だ。スローテンポの壮大なR&BナンバーB3「Load, You've Been So Good To Me」では、盛り上がりを見せるエンディングで突如として奏でられるDavid Tのフレーズが実にさりげなく実にメロウに輝きを放つ。ゴスペルのテイストに的確にクロスオーバーするタイトなサポートが、文字通りコンテンポラリーな風味を醸し出す隠れた名盤だ。

Jermaine Jackson / I Like Your Style (1981)

ご存じジャクソン兄弟の一人、ジャーメインの81年作。スティービー・ワンダーのプロデュースによる80年発表のヒット作『Let's Get Serious』と較べると、よりポップさとコンテンポラリー感が増しつつある時代を感じさせる一枚だ。ジーン・ペイジのストリングスアレンジが冴える壮大なナンバーB5「I'm My Brother's Keeper」など聴きどころも多いが、やはり弟マイケルに似た感触を端々に味わうところもあり全体的な質感は微妙なところ。で、David Tはと言うと、A5「Is It Always Gonna Be Like This」に参加。リタ・クーリッジとのデュエットバラードのこの曲で、控え目ながらもDavid Tのフレーズは二人のハーモニーに間違いなく優しく溶け込んでいる。

Latoya Jackson / My Special Love (1981)

そのジャクソンファミリーの歌姫の一人、ラトーヤ・ジャクソンの2ndアルバム。ファミリーの中では比較的地味な存在の彼女。突出したヒット性はないものの、堅実なバックアップも手伝ってか、聴き心地よいバランスのとれた構成の一枚に仕上がっている。ラトーヤとは対照的に後年ビッグヒットを飛ばすジャネットが、この時期既にB2「Camp Kuchi Kaiai」で曲作りに参加しているところも面白いところ。しかし何といってもB1「I Don't Want You To Go」とB3「Sommertime With You」での素晴らしいDavid Tのプレイが光る。いずれもスローテンポのしっとりとした楽曲の中で、いつもより際立った感のある質感で繰り広げられるDavid Tの表情たっぷりの音色に、思わず吐息がもれること間違いなし。

A.S.A.P. / Graduation (1990)

ご存じユーミンの楽曲を黒人女性3人によるユニットA.S.A.P.がカヴァーするという企画アルバム。ユーミンの楽曲は万国共通のメロディ?などと簡単に片付けてしまうのもどうかと思うが、聴き慣れたユーミンの歌が、ジョン・ロビンソン(Dr)、ポール・ジャクソン・Jr(G)、マイケル・ランドゥ(G)、フレディ・ワシントン(B)、トム・スコット(Sax)らの手による現代的なアレンジで蘇るのは、本家バージョンとは違った新鮮な感覚があり面白い。1曲目「卒業写真」ではハーフタイムシャッフルのリズムアレンジに乗って奏でられるしっとりとしたテイストが印象的だが、途中いきなりDavid Tの実に艶やかなソロプレイが響き渡り、思わず笑みがこぼれること間違いなし。

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