David T. Works Vol.28

David Tが参加した数々のアルバムの中からピックアップして紹介するこのコーナー。まだまだ続きます。ではVol.28の10選をどうぞ。

Michael Jackson / Ben (1972)

マイケルの2ndアルバムにしてタイトルにもなった映画のサントラ盤。前作『Got To Be There』とほぼ同様の手堅いサウンドプロダクションがこの時期のモータウン色を如実に物語っており、タイトル曲「Ben」は全米ヒットチャートで1位を獲得。極めて完成度の高い安心して楽しめるポップでソウルな一枚に仕上がっている。やはりDavid Tもそのクオリティに貢献する一人であることに間違いないわけで、地味ではあるが、「Everybody's Somebody's Fool」「Shoo-Be-Doo-Be-Doo-Da-Day」などで一聴してそれとわかるフレーズで応戦している。

Smokey Robinson and The Miracles / Flying High Together (1972)

翌年に初のソロアルバム『Smokey』を発表する、ミラクルズでの最後のアルバム。プロデューサーにジョニー・ブリストル、スティーヴィー・ワンダーらが名を連ねる好盤だ。音数を極力控えた静かな佇まいや、淡々と築き上げられていく抑制された感のあるボーカルワークとストリングスの美しい共演は、H.B.バーナム、デイヴィッド・ヴァン・デ・ピットらによるアレンジワークの貢献度が大きいのだろう。派手さはないものの、David Tもその美しさとメロウネスをサポート。スティーヴィー・ワンダー作のA6「It Will Be Alright」では得意のポロロンギターを随所に披露。アシュフォード&シンプソンによるB2「You Ain't Livin' Till You're Lovin'」でも静かに炸裂するフレーズの一つ一つが彼らの歌声を控え目にバックアップ。この控え目さ加減が絶妙すぎて病みつきなのだ。

James Brown / Reality (1974)

灼熱のファンク地獄大会というよりも、どこかクールなグルーヴが顔を覗かせるあたりがこの時期特有のトレンドか。そんなJBの渾身の74年作。とは言いつつも、一声御大の掛け声がかかれば、そこはもうJB節炸裂のテイストが充満。しなやかで引き締まったドラミングから始まるA2「Funky President」の隙間ファンクの妙、シャッフルナンバーA3「Further On Up The Road」でも粘り気たっぷりのノリが持続し、A5「Don't Fence Me In」でのシンコペーションの効いたミディアムファンクはまさにこの時期のトレンドにJBの個性が絡むJBならではのループファンクで軽妙この上ない。そんな中、クレジット表記こそないものの、アルバムラストを飾る唯一LA録音のメロウネスチューンB4「Who Can I Turn」で、我らがDavid Tが参戦。アルバム全体から漂う乾いたファンクネスの高波の中で、穏やかなさざ波のごとく鳴り響くフレーズの数々を御大自ら欲したという事実に、David Tのメロウネスの必然性を感じてしまうのである。

Popcorn Wylie / Extrasensory Perception (1974)

プロデューサーとしてもその筋では高い評価を受けるポップコーン・ワイリーの74年作。その巨体から繰り出されるスケールの大きいボーカルと、繊細かつキレのあるバッキング陣の好演がうまく調和したソウルアルバムの隠れた傑作だ。エド・グリーン(Dr)、ジェイムズ・ギャドソン(Dr)、ジェイムズ・ジェマーソン(B)、スコット・エドワーズ(B)、ワー・ワー・ワトソン(G)、ディーン・パークス(G)といった強者の伴奏に、ジーン・ペイジのストリングスが絡むあたりの洗練さはなかなかの聴きどころで、David Tもアルバム全編に渡って参加。A2「Georgia's After Hours」やB2「I Can Take The World On With You」など、音数が多い楽曲アレンジの中で、全体の中を支配するまでには至ってないが、群を抜いて輝きを放つ彼一流のポロポロフレーズが実に印象的に響く。バードランドのあの乾いた音は静かながらも強烈な存在感なのだ。

Tavares / In the City (1975)

デニス・ランバート&ブライアン・ポッターのプロデュースによる75年作。ディーン・パークス(G)、エド・グリーン(Dr)、マイケル・オマーティアン(Key)、トム・スコット(Sax)、スコット・エドワード(B)といった面々が5人の鉄壁のコーラスワークをこれまた完璧にバックアップした快作だ。AWBのA4「Nothing You Can Do」や、エドガー・ウインターで有名なダン・ハートマン作のB3「Free Ride」など、当時のトレンドに沿ったカヴァーを盛り込むあたり構成にも一工夫の本作。が、A1「It's Only Takes A Minute」に代表されるディスコ風味のテイストもちらほらあり、次作『Sky High!』以降、その傾向は強くなっていく。さて、肝心のDavid Tの活躍はほとんどなく残念。ま、たまにはこういうのも。

Danniebelle Hall / Let Me Have A Dream (1977)

ビル・マックスウェルのプロデュースによる洗練されたゴスペルミュージックがずらりとならぶCCMの名盤。ジェシー・ディクソン、ビリ・シェドフォードといった旧知の面々に加え、ジョー・サンプル(Key)、アーニー・ワッツ(Sax)らの好演も手伝って、シンプルながらも豪華な肌触りの、丁寧なサウンドプロダクションが印象的だ。生ピアノとエレピが調和するスローテンポのA5「We All Need Each Other」で、微かに聴こえるDavid Tのフレーズの数々は、聴く者に安心感のようなものをもたらすから不思議。ノリのよい8ビートの軽快ナンバーB1「I'll Be Right There」でも、弾力あるカッティングと単音フレーズを織りまぜながら全編弾きまくり状態のDavid Tの姿がここにある。高いテクニックを駆使した伴奏者たちの引き締まった演奏が見事なB4「It's Freedom」では、地味ながら粘り気たっぷりのファンキーバッキングでその一役を担うDavid T。多くの音数が見事に一体化する極上のR&Bの中で、そのプレイはひと際輝きを放っている。

Johnny Bristol / Strangers (1978)

アトランティックでの2作目。前作『Bristol Cream』に続くメロウネスたっぷり、ジョニブリ節たっぷりの快作だ。ジェイムズ・ジェマーソン・Jr(B)、ジェイムズ・ギャドソン(Dr)、ボビー・ホール(Per)といったメンバーがジョニー世界を見事に構築。特にソニー・バークの手によるストリングスアレンジは本アルバムを影で支える印象的な貢献で二重丸だ。多少抑制気味ではあるものの、David Tも前作同様に全面的参画。A2「I'm Waiting On Love」や、A5「Everyday She's Around」などで聴けるいつものフレーズは、高揚感を演出するに十分な呼吸と間でさすがの一言だ。

Kocky / Post No Bills (1979)

クルセイダーズの一員として来日経験もあるというベーシスト、エディ・ワトキンス・Jr率いる4人組Kocky唯一のアルバム。エフェクトがかかったバネのあるブラコン&ダンサブルチューンが目白押しの一枚。ジェイムズ・ギャドソンやエド・グリーンらのリズム隊がサポートを果たしてはいるものの、その影は非常に薄く、エディの躍動するチョッパーベースは聴き物だが、画一的なサウンドプロダクションが良くも悪くも一時代的。David Tもこの時代的な音作りに地味に参加。その面影はB4「Everybody Is A Winner」で一瞬感じ取れる程度だが、アルバム最後にようやく登場する得意のフレーズは、一瞬の出来事でも有意義なものに思えてくる。「画一的なサウンドに映えるメロウネス」の格言通りの瞬間体験は十分に得られる、というところか。

Norman Connors / Take It To The Limit (1980)

アリスタからの3作目となるノーマン・コナーズの80年作。ジェイムズ・ギャドソン(Dr)、ネイザン・イースト(B)、ソニー・バーク(Key)、ジェリー・ピータース(Key)、ゲイリー・バーツ(Sax)、ジーン・カーン(Vo)といった豪華メンバーを従えながら、スティーリー・ダンの「Black Cow」のカヴァーや、「I Don't Need Nobody Else」でのアル・ジョンソンのボーカル起用など、バラエティに富んだ構成で聴かせるあたりプロデューサーとしての手腕発揮といったところだ。David Tは「You've Been On My Mind」と「Everywhere Inside Of Me」の2曲に参加。特に後者は楽曲の作者でもあるリオン・ウェアをボーカルに起用した名演で、David Tのギターも静かにそしてしっとりと、とろけるようなリオンワールドを彩っている。

Teena Marie / Starchild (1984)

「Lovegirl」がスマッシュヒットを飛ばしたティーナ・マリーの84年作。アッパーでシンセを多用した80年代特有の音づくりは今聴くと敬遠される向きもあるだろうが、これもこの時代のブラコントレンドの一つだったのだと思わず納得させられる象徴的な仕上がりが印象的だ。全曲彼女の手による楽曲だが、リオン・ウェアが曲作りに関わった唯一の曲「My Dear Mr Gaye」が最大の聴きどころ。ストリングスをうまくアレンジしたマーヴィン・ゲイへの想いを綴るスローバラードのこの曲は、途中ミディアムテンポに転調するまさにマーヴィンへのトリビュートな展開がなかなか面白い。そこに絡むDavid Tのギターもまた彼流のトリビュートのカタチなのかもしれない。

back next
Top
About
『For All Time』
『Wear My Love』
『Thoughts』
Solo album 60's & 70's
Solo album 80's & 90's
Unit album
Band of Pleasure
David T. Works
 01  02  03  04  05  06  07  08  09  10
 11  12  13  14  15  16  17  18  19  20
 21  22  23  24  25  26  27  28  29  30
 31  32  33  34  35  36  37  38  39  40
 41  42  43  44  45  46  47  48  49  50
 51  52  53  54  55  56  57  58  59  60
 61 NEW!
Discography NEW!
Talk To T.
Something for T.
 #01 タイロン橋本さん
 #02 清水興さん
 #03 宮田信さん
 #04 中村正人さん
 #05 石井マサユキさん
 #06 椿正雄さん
 #07 二村敦志さん
 #08 鳴海寛さん
 #09 山岸潤史さん
 #10 山下憂さん
 #11 切学さん
 #12 ニール・オダさん
 #13 風間健典さん
 #14 中村正人さん
 #15 伊藤八十八さん
 #16 続木徹さん
Link