David T. Works Vol.11

David Tが参加した数々の名演の中からピックアップして紹介するこのコーナー。さらにさらに続きます。Vol.11の10選をどうぞ。

Tufano & Giammarese / Tufano and Giammarese (1973)

ルー・アドラープロデュースによるTufano & Giammareseの1stアルバム。二人の美しいコーラスワークとアコースティックギターそれにハーモニカが実にアメリカンでフォーキー。決して重くなり過ぎない適度なポップさと心地良い乾いたメロディがアルバム全体をさらりと伸びやかなものにしている。ジム・ゴードン(Dr)、ウィルトン・フェルダー(B)のリズムセクションもがっちりとタイト。ODEレーベルつながりからか、ゲスト参加のキャロル・キングもA1「Music Everywhere」とA4「Rise Up」の2曲にピアノを披露している。そしてDavid Tもこの2曲に参加。乾いたノリにピアノとソウルフルなギターはフォーキーなロックにも心地良くマッチすると確信してしまう一枚だ。

Lumumba / Lumumba (1974)

ガーナ出身のフルート奏者にしてボーカリスト、ルムンバ唯一のアルバム。民族音楽とも伝統音楽ともとれる不思議なリズムと装飾に満ちた謎の音楽。歌というよりはリーディングに近いスタイルのルムンバのボーカルも、アフリカ色を連想するに十分でかなり印象的だ。しかし、決して奇をてらったギミックではなく、よく聴くとかなりしっかりとしたリズムが奏でられていることに気がつく。ドラムやパーカッションといった打楽器系とうねるベースによるリズムの反復運動がアルバム全体を支配し、そこにローズピアノによる浮遊感が混沌とした世界観を演出している。David Tの流暢なフレーズが重なってくるA1「Sing With the Birds」など、反復するリズムといつもながらの魔法のギターさばきが化学反応をおこし、実に印象的な世界を描いている。

Johnny Rivers / New Loves and Old Friends (1975)

60年代、ポップスシンガーとして、多くのR&BやR&Rのカヴァーをヒットさせたジョニー・リバースが75年に残した意欲作。エド・グリーン(Dr)、ラリー・カールトン(G)、マイケル・オマーティアン(Key)、トム・スコット(Sax)らによる手堅いバックアップが全体のトーンを引き締めながらも、持ち前のR&B感覚は前面に出すという、まさしくアメリカンポップスロックの王道的展開が実に気持ちよい。ハイライトは、やはりA5「Postcards From Hollywood」。ネッド・ドヒニーのこの名曲のカヴァーには、なんとネッド本人もギターで参加。ジョニーのボーカルと美しいバックコーラス。ネッドのアコースティックギターも美しく、素晴らしい一曲に仕上がっている。David Tは全体的に控えめながらもB2「Dancin' In The Moolight」、B3「You Better Move On」、B5「U.F.O.」の3曲に参加。特に「U.F.O.」は、サザンロック的なノリの疾走感漂うリズムセクションと印象的なメロディラインが、実に心地いい一曲だ。

小椋佳 / 夢追い人 (1975)

シンガー・ソングライター小椋佳が75年に残した隠れた名盤。バックミュージシャ ンは豪華の一言。ジム・ゴードン(Dr)、エド・グリーン(Dr)、ウィルトン・フェルダー(B)、リー・リトナー(G)、ジョー・サンプル(Key)といった鉄壁の布陣と女性バックコーラス隊が小椋氏の独特の世界をサポートしている。日本語によるその歌詞世界と洗練された演奏は、一聴すると微妙な違和感と時代のトレンドを感じさせるが、聴きこむ程に不可思議な調和が見えてくる。この時代にこの起用を実現する小椋氏の意欲と音楽的背景がうかがえる一枚だ。David Tもゆったりとしたメロウなギターを披露。A1「いまさら」の途中部分では彼の王道的フレーズが連発。どんな場合でもやはりDavid TはDavid Tなのである。

Jack Jones / What I Did For Love (1976)

ポップスシンガー、ジャック・ジョーンズの76年作。全曲、彼のソフトでムーディな歌声が堪能できる素敵な一枚だ。幾分控えめなバッキング、オーケストレーションとコーラスワークを適度にちりばめた、どこか懐かしく品の良い雰囲気が、まさにポップスの王道と言わんばかりの優しさに溢れた印象を与える。アルバムタイトル曲A3「What I Did For Love」は、時代をタイムスリップしたかのような情景が目の前に広がるような、そんな彼の魅力が詰まった珠玉の一曲だ。A5「Don't Mention Love」でかすかに聴けるDavid Tのプレイも、彼の歌声の後ろで静かにそして優しさに満ちている。

Frankie Valli / Valli (1976)

フォー・シーズンズのリードボーカリスト、フランキー・ヴァリの76年作。きらびやかなオーケストレイション、バックをつとめるミュージシャン達の確かな演奏力、そしてライトなソウル感。なんともブルーアイドソウルの香り漂う一枚だ。しかし、なんと言っても甘く優しいヴァリの歌声とハーモニーが素晴らしく、何度も繰り返し聴きたくなる美しさ。このアルバムの最大の魅力はここに尽きるだろう。B3「Look at the World It's Changing」などはまるで宝石の輝きのよう。David TはB4「Where Were You」の1曲のみ参加。ジーン・ペイジのストリングスにのって、レイ・パーカー・Jr、リー・リトナーと3人のギタリストを擁したこの曲の中で、地味ながらも確実なバッキングを披露している。

Veronique Sanson / Hollywood (1977)

フランスの歌姫ヴェロニク・サンソンがLAミュージシャンとコラボレートした意欲作だ。ハービー・メイソン(Dr)、ジェイムズ・ギャドソン(Dr)、レイ・パーカーJr(G)、ウィリー・ウィークス(B)といった凄腕達によるタイトで堅実なグルーヴに絡むヴェロニクの歌声がその独特の語感とあいまって実に印象的な佇まい。B1「Ya Pas De Doute Il Faut Que Je M'en Aille」などのミディアムグルーヴもヴェロニクの声にかかると、フレンチポップス風に様変わりするから不思議だ。B6「Les Delires D'Hollywood」のようなマイナートーンのスローポップスなどでは、David Tも、あまり目立たないながらもこのポップさを成立させる好サポートで一役買っている。

Eloise Laws / Eloise (1977)

ロウズ四兄妹の一人エロイーズ・ロウズの77年作。アルバム冒頭を飾るA1「Baby You Lied」のメロウでジャジーでソウルフルな落ち着いた雰囲気がアルバム全体を象徴しているかのような彩り具合いだ。ジェイムズ・ギャドソン(Dr)、ウィルトン・フェルダー(B)、ソニー・バーク(Key)といった鉄壁の布陣がもたらす柔らかなグルーヴは実に心地良く、ジーン・ペイジのストリングスアレンジも全体の印象を決定付けるのに一役買っている。ブラジリアンタッチが心地良いB4「Forever Now」ではバッキングギターとして起用されているDavid Tやワー・ワー・ワトソンも、前に出すぎず隠れすぎずの絶妙のスタンスで、いつもの個性的なフレーズを放ちながらメロウさを際立たせている。特にB3「Love Comes Easy」のようなマイナー調の曲でのDavid Tのプレイは、さすがの一言だ。

Hubert Laws / Family (1980)

そのエロイーズの兄でフルート奏者ヒューバート・ロウズが80年に残したジャズファンクの傑作盤である。最初から最後までまさに完璧を音に描いたという感じのメロウグルーヴィチューンが満載だ。参加ミュージシャンは豪華の一言。ボビー・ライル(Key)、ネーザン・イースト(B)、レオン・ンドゥグ・チャンクラー(Dr)、アール・クルー(G)、チック・コリア(Key)らの競演によるきらびやかな極上クロスオーバーサウンドが実に心地良い。A1「Ravel's Bolero」は、チック・コリアのピアノとヒューバートのフルートによる壮大で華麗な一大クロスオーバーボレロに仕上がっている。特にクラブ筋でも人気の高いB1「Family」。ステディなリズムとホーンセクションにデブラ・ロウズのパワフルかつソウルフルなボーカルが重なり、その隙間を縫うようにDavid Tの小刻みなギターが全体を演出する静かなグルーヴを生み出している。

Brigette McWilliams / Too Much Woman (1997)

90年代に登場したニューソウルレディ、ブリジット・マクウィリアムスの2ndアルバム。チャカ・カーンが在籍していたルーファスの初代ボーカリストであるポーレット・マクウィリアムスを母に持つブリジット。しかしその肩書きが全く不必要な程、彼女のソウルフルでブルージーな歌声が輝きを放っている本作は、生演奏によるゆるやかでしなやかなグルーヴと、90年代という空気感を如実に伝えるヒップでクオリティの高いサウンドプロダクションが絶妙に交差する、まさにニュークラシックソウルと呼ぶに相応しい内容だ。やはりそのルーファスのベーシストだったボビー・ワトソンを中心に、ビリー・プレストン(Key)、アル・マッケイ(G)など名手たちの参加も見逃せないところ。David Tは「It's Your Life」1曲のみに参加。ビリー・プレストンの心地良いオルガンが好サポートする中で、最初からエンディングまで静かながらも切れ味鋭いバッキングを連発。彼にとってはオーソドックスなフレーズなのだろうが、それが90年代の最新のポップミュージックの中で全く新鮮さを損なっていないという点に、David Tの普遍的な個性が見え隠れしている気がしてならないのだ。

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