David T. Works Vol.39

David Tが参加した数々のアルバムの中からピックアップして紹介するこのコーナー。まだまだもう少し続きます。ではVol.39の10選をどうぞ。

Hank Ballard / A Star In Your Eyes (1964)

ミッドナイターズとの活動で50年代から多くのヒット曲をモノにしたハンク・バラッド。本作はKing時代の62年から64年にかけて残したシングル曲を中心にまとめたアルバム。ブルース、リズム&ブルース、ロックンロールの境界線を行きつ戻りつの時代性がなんとも興味深い一枚。David Tが関与した録音音源としても初期の初期にあたるもので、シングル盤としても62年にカップリングでリリースされた「Shaky Mae」と「I Love And Care For You」が収められている。ちなみにこの2曲は「Hank Ballard & The Midnighters with The Kinfolks Orchestra」とクレジット。そう、若き日のDavid Tが組んだキンフォークスの演奏とのコラボレーションが堪能できるというわけ。さすがに現在のDavid Tのフレーズと多少の差異はあるものの、それでもその遺伝子がそっと感じ取れる個性的な音色は健在。40年以上も前の話ですよ。恐るべし。

The Sylvers / II (1973)

クラブ筋でも一世を風靡した冒頭の一曲「We Can Make It If We Try」で掴みはOK。その後、抑制された情熱が不思議な高揚感を誘う。ファミリーユニットとしてはジャクソン5やオズモンドと並び比較されるシルヴァースの2ndアルバムは、1stで見せたシンプルな軽快感に加え、落ち着いたメロウネスがチラリと顔を覗かせるところが意外にも粋。プロデュース&アレンジメントを担ったジェリー・ピータースやパーカッションアレンジャーとしてクレジットされたハーヴィー・メイソンらの大人の仕事によって生み出された重く安定感あるリズムプロダクションと秘めた兄弟の絆がしなやかに一体化するポップ感覚は実に見事の一言だ。その一体感はアルバムラストを飾るビートルズの名曲「Yesterday」をアカペラで演じる異色のパフォーマンスに象徴されている。David Tの貢献度は低いもののスローテンポの「Through The Love In My Heart」などではきらめくようなフレーズを粘り気たっぷりに披露している。

Barbra Streisand / The Way We Were (1974)

主演映画『追憶』と同名タイトルを冠したバーブラの74年作。録音年代が異なる楽曲による構成や、映画の主題歌とは異なるバージョンのアルバムタイトル曲収録など、一部複雑な制作経緯があるものの、キャロル・キング「Being At War With Each Other」やスティーヴィー・ワンダー「All In Love Is Fair」などのカヴァー曲を盛り込むというアルバム単位でのプロデュースワークを務めたトミー・リピューマとエンジニア、アル・シュミットの黄金コンビの手腕により、トータルではすんなり聴きやすくまとめられている。特にアルバム後半はオーケストレーションをバックに歌うバーブラの艶のある歌声が十二分に堪能できる仕上がりで、しっとりとした熱を帯びた香りが実に印象的だ。David Tは、ニック・デカロのアレンジによるポール・サイモンのカヴァー「Something So Right」に参加。バッキングに徹した控え目なプレイだが、その静かなサポートがバーブラの歌の魅力を十二分に引き出すという、歌伴の鉄則100%完遂の職人ワザが何ともDavid Tらしい貢献で素敵。

Donny & Marie Osmond / Make The World Go Away (1975)

ヒットしたアルバムタイトル曲の華やかさで幕を開ける、オズモンドファミリーを代表するダニー&マリー兄妹名義の2ndアルバム。スローテンポからアップテンポまで、ダニーとマリーのさわやか極まりない歌声が伸びやかに響き渡るポップ感全開の一枚だ。エレピと生ピアノが効果的な落ち着いたムードの「Living On My Suspicion」など、高いクオリティの楽曲群がずらりと並ぶ“思わぬ感”が満載の仕上がり。プロデュースワークにマイク・カーブ、アレンジャーにドン・コスタ、ジーン・ペイジがクレジットされており、となればDavid Tの参戦は言わずもがな。「It's All In The game」や「Together」でいつものキラ星フレーズをさりげなく披露。このさりげなさが歌に違和感なくマッチするところがDavid Tマジックのマジックたる由縁。二人の歌声も手伝って思わずうっとり、とろける寸前です。

The Temptations / Give Love At Christmas (1980)

大御所ユニットのクリスマスアルバム。新旧織り交ぜた選曲で安心して楽しめる仕上がりは数多くのクリスマスアルバムをリリースしているモータウンならでは。演じる主役たちもお手の物と言わんばかりのエンターテイナーぶりを発揮するが、そこは腕達者の彼ら。抑制されたソウルフィーリングがちらほらと顔を出す歌いっぷりとハーモニーにホンモノの成せるワザを痛感。そんな中、David Tはダニー・ハザウェイ作の「This Christmas」に参加。クレジット表記はないものの、一聴してそれとわかるメロウフレーズが、スローからアップテンポへとシフトする楽曲のテイストに完全にマッチしていて実に見事なサポートぶりを披露する。

Syreeta / Set My Love In Motion (1981)

ブラコン時代のシリータ。David Tの参加は非常に地味で残念だが、ジェイムズ・ギャドソン、ポール・ジャクソン・Jrといった西海岸の名手らがこれでもかと多数参加した豪華絢爛のきらびやかさと画一的でアッパーなサウンドプロダクションが織り混ざった不思議な印象の一枚。スティーヴィー・ワンダーとのコラボレーションによる初期の作品とは明らかに異なるベクトルの仕上がりだが、彼女のしなやかさはこの時代特有の色彩にもギリギリの地平で調和する。さまざまな種類の楽曲が幾人ものアレンジャーによって形作られる煩雑さが、変わらぬシリータの歌声をより一層際立ててしまうところに彼女のポテンシャルの高さを否が応でも痛感。アルバムタイトル曲やスローテンポの自作曲「Wish Upon A Star」などはその代表格といえる美しさでうっとり度120%だ。アルバムラストを飾るもう一つの自作曲「I Love You」に込められた想いは届いたのだろうか。

The Crusaders with B.B.King / Royal Jam (1981)

ロンドンのロイヤル・フェスティバル・ホールで行われたライヴを収録した81年作。ロイヤル・フィルハーモニック・オーケストラと共演という異色の組み合わせに加え、御大B.B.キングが顔を揃えるといった珍しい記録の一枚だ。だが不思議とクルセイダーズの色彩は損なわれることはなく、スムーズに溶け合うコラボレーションが楽しめる。ジョー・サンプル(Key)、ウィルトン・フェルダー(Sax)、スティックス・フーパー(Dr)を中心に、ジェイムス・ジェマーソン・Jr.(B)、バリー・フィナティ(G)、そして我らがDavid Tというメンバーにより、この時期の彼らの楽曲と、ジョー・サンプルのソロ楽曲「Fry With Wings Of Love」「Burning Up The Carnival」やランディ・クロフォードの「One Day I'll Fly Away」など、バックに控えるオーケストレーションと一体化できる選曲とアレンジの妙も聴きどころの一つだ。後半はさらにB.B.の楽曲をB.B.自身が加わりながら披露する。ブルースフィーリングたっぷりのB.B.のプレイをクルセイダーズサウンドがバックアップするという構図が全く違和感ないどころか、聴きごたえ十分の化学反応をみせるところは互いの音楽的色彩が十分にクロスしている証拠でもある。David Tも準レギュラー的サポートとは思えないほど全編に渡って堅実で刺激的なプレイを披露する。ちなみに、CrusadersレーベルからリリースされたB.B.キング『Live In London』も本作と同じ公演で、B.B.の専属バンドによるパフォーマンスが収録されているが、その中の1曲「Encore」と題されたブルースジャム風セッションのみ本作に収められなかったクルセイダースとの共演楽曲。B.B.の貫禄たっぷりのプレイに一歩もひけを取らないDavid Tの粘っこいプレイがそこでも十分に楽しめる。

Gladys Knight and The Pips / That Special Time Of The Year (1982)

オーソドックスな定番曲をはじめとして全編クリスマス仕様のアルバム。企画色が強くテーマが大きく作用したゆえ幾分大仰なアレンジとゴスペルテイストが顔を覗かせる仕上がりだが、グラディスの安定感ある歌声はここでも健在。「This Christmas」などはピップスのコーラスワークと寸分のズレもない息の合った呼吸を聴かせてくれる。アレンジャーとして4人の名が連ねる中、ジーン・ペイジが3曲に関与し、その一曲、アルバム冒頭を飾る表題曲にDavid Tが参加。アップテンポの華やかなアレンジに、お得意のメロウなフレーズを織り交ぜながら軽快にリズムを刻むDavid Tの手腕がこの手の楽曲に彩りを添える必要不可欠な存在だと再認識させられる。

阿川泰子 / When The World Turns Blue (1989)

ジョー・サンプルのプロデュースによる89年の意欲作。ウィルトン・フェルダー(Sax)、ラリー・ウィリアムズ(synth)、マイケル・ランドゥ(G)といった海外からのバックアップで固めたトラックは堅実すぎるくらいタイトで強力。楽曲のほとんどをジョー・サンプルが提供していることもあり、鍵盤楽器が印象的なアレンジが施されている。特にジョーの代表曲でもあり多くのカヴァーを生んだアルバムタイトル曲では、原曲にない新しい力強さが宿った名演が聴ける。「Teach Me Tonight」などのジャズナンバーでは彼女の持ち味とピアノの調べが幸せなハーモニーを奏で落ち着いて楽しめ、定番ナンバー「Summertime」も、現代的なサウンドプロダクションでひと味違った表情を見せる。David Tはスイングナンバー「Alright, Okay, You Win」1曲のみ参加。ウィルトン・フェルダーのサックスに絡みながらクリアで弾力感あるフレーズをきっちりとキメている。

Dreams Come True / The Monster (1999)

向かうところ敵なし、不動の地位を誇る文字通りモンスターな彼らが99年にリリースした13作目。当時よく見ていたドラマ「救命病棟24時」の挿入歌「朝がまた来る」を含む全15曲は、バラエティに富んだ楽曲群と吉田美和の圧倒的な歌によって、他を寄せ付けない抜群の存在感が頼もしい。サウンドプロダクションのほとんどを担う海外勢ミュージシャンたちとサウンドメーカーとして彼らを切り盛りする中村正人の切れのある仕事ぶりも吉田美和の歌の魅力をより一層引き上げ、ドリカム的サウンドの真骨頂をほしいままに表現している。この数年前から交流を深めるDavid Tもこのアルバムに参戦。ラストを飾る「dragonfly」では、吉田美和とDavid Tの二人のみによる「うた」と「ギター」の親密なパフォーマンスが繰り広げられる。引き出しの中からフレーズを丹念に選びとって奏でるDavid Tのサポートぶりが実に見事だ。

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