David T. Works Vol.09

David Tが参加した数々の名演の中からピックアップして紹介するこのコーナー。次第にCDで聴けるアルバムも少なくなってきましたが…。まだまだ続きます。Vol.09の10選をどうぞ。

Clydie King / Direct Me (1971)

数え切れないほど多くのアーティストのバックボーカルとして名を連ねているクライディ・キングの1stソロアルバム。ビリー・プレストンの鍵盤や女性バックコーラスやホーンセクションが参加していることもあり、爆発力のある彼女のソウルフルな声がよりファンキー度を増している感が大。ポール・ハンフリーのシャープなドラムもアルバム全体をうまく引き締めている。A1「Direct Me」ではワウペダルによるファンキーなカッティング、バラードナンバーA5「You Can't Go On Without Love」ではゆったりとしたテンポで、本領発揮の感のDavid T節が聴ける。そしてアルバムラストを飾るビートルズナンバー「The Long And Winding Road」では、ソウルフルな雰囲気に姿を変えながらも、楽曲の良さを損なわないクライディのボーカルとDavid Tの華麗でメロウなバッキングが堪能できる。

Original Soundtrack / Dollar (1972)

クインシー・ジョーンズによる同名映画のサントラ盤。70年代初頭を飾る映画ライクな音楽が全編にちりばめられており、アルバム単体で聴くと奇妙なBGMで頭の中はまさにドラマティック。テーマとなっているリトル・リチャードのボーカルによるA1「Money Is」は、この時期のセッション・ドラマーとしては外せない存在のポール・ハンフリーに、チャック・レイニー(B)、ビリー・プレストン(Key)といった面々が名を連ねたノリのいいファンキーな一曲。David Tもワウペダルを多用した疾走感溢れるプレイで貢献しており、そのノリはB1「Do It To It」でも同様に聴ける。

Gene McDaniels / Natural Juices (1975)

ロバータ・フラックの「Compared To What」「Feel Like Making Love」の作者として、あるいはナンシー・ウィルソンやレニー・ウィリアムスらのプロデューサーとして、裏方というにはあまりに見事な仕事を手がけてきたユージン・マクダニエルズが「ジーン・マクダニエルズ」名義で発表した75年の傑作アルバム。Odeレーベル移籍後の本アルバムは、前2作の70年『Outlaw』と71年『Headless Heroes Of The Apocalypse』のファンク・ジャズ・ソウルが奇妙に融合したディープでビターな肌触りの流れを汲みながらも、緩やかで静かなムードと抑制されたファンクネスが絶妙に交差する落ち着きのあるトーンが何とも心地よい。A2「Lady Fair」で聴けるリチャード・ティーの優しいエレピの軽妙さとユージンの独特のボーカルが不可思議な魅力を生んでいる。しかし、何と言っても聴きどころはユージン自ら歌うA1「Feel Like Making Love」だ。その聴き慣れたメロディに乗ってDavid Tの緩やかなフレーズが確信犯的とも思える美しさで奏でられる素晴らしい瞬間がここで聴ける。

Original Sound Track / Sheba Baby (1975)

モンク・ヒギンズのプロデュースによる70年代の傑作サントラ盤。映画のために作られた、という前提はあるものの、本作のために召集されたバーバラ・メイソン(Vo)、ハロルド・メイソン(Dr)、ラリー・ナッシュ(Key)、ソニー・バーク(Key)らの面々が織り成すソウル・ジャズ・ファンクといった痛快なナンバーは、アルバム単体でも聴きどころは十分過ぎるほど。その要因となっている一つがDavid Tともう一人のギタリストとして参加しているフレディ・ロビンソンの存在だ。モンク・ヒギンズといえばフレディ、というくらいヒギンズの関わるアルバムには数多く登場している代名詞的存在の彼。同じアルバムでのフレディとDavid Tという二人のギタリストの共演、という意味では大変興味深い光景だろう。それにしても本アルバムでのDavid Tはすごい! ソウル&メロウな素晴らしいフレーズの連発で、かなり意欲的なプレイだ。一方のフレディも随所にその独特のジャジー&メロウな奇抜なアプローチで、その存在を確実にアピールしていてこれまた抜群。B1「Sheba」やB3「Breast Stroke」などではついにこの両者の共演が実現。その独特の個性の違いを存分に堪能できるのと同時に、その素晴らしいプレイにただただ酔うのみ、なのだ。

Alphonse Mouzon / The Man Incognito (1976)

その手数と音数の多さではビリー・コブハムと並ぶ存在のアルフォンゾ・ムザーンの 76年作。トミー・ボーリンが参加して話題を呼んだ75年の『Mind Transplant』など、その超絶ドラムぶりを惜し気もなく披露してきた彼だが、本作ではその持てるエネルギーを若干抑え、ホーン・セクションを随所に配置しノリの良いジャズファンクをずらりと並べた感のあるバランスのとれたアンサンブル重視の好盤だ。それでもA2「Snake Walk」などでは、イントロから聴けるファンキーなフィルインと乾いたスネアのバランス加減は、本領発揮の感で絶妙。David TはB2「New York City」1曲のみに参加。ホーンセクションと女性バックコーラスも加わったミディアムテンポのファンクナンバーの途中から繰り出されるDavid Tのソロプレイは、そのパーカッシブな音色とフレーズが鋭い切れ味とメロウネスを併せ持つという「我らがDavid T」を再認識させてくれる、待ってました的プレイだ。

Kellee Patterson / Turn On The Lights (1977)

73年の『Maiden Voyage』に聴けるジャジーな雰囲気が幾分抑えられたソウルフルでファンキーな77年作。彼女の伸びのあるチャーミングな声とバックのファンキーなノリがダンサブルでメロウ。ディスコ風味も若干匂わせるアレンジの塀際ぎりぎり感は時代のトレンドだったというべきか。アルバムタイトル曲「Turn On The Lights」や「I'm Coming Home」などで聴ける16ビートのドラムとベースのリズム隊もグルーヴィ。David Tも全体的にパーカッシブなピッキングによる切れの良さを披露しており、そのファンキーさに一役買っている。ハイライトとも言えるA2「Heaven」ではイントロの数秒間のメロウな雰囲気からグルーヴィなテンポへと展開する意表をつく構成。その中で、エレピとストリングスによる美しいメロディの隙間からDavid Tのしなやかなフレーズ。実にさりげなく、そしてこの上なくうれしいのだ。そして最高のメロウナンバーA4「Yesterday Was Love」で聴けるあまりにDavid Tなフレーズが心に染み入ること間違いなし。

Jose Feliciano / Jose Feliciano (1981)

フリーソウル文脈による再評価によって再び注目されたホセ・フェリシアーノの81年作。スティーヴィー・ワンダーの「Golden Lady」のグルーヴィなカヴァーやブラジル色の強いテイスト感でフロア受けする彼だが、本作では当時のトレンドを見据えた感のあるバラエティに富んだ幅広い楽曲群をラインナップ。リオン・ウエア作のA1「I Wanna Be Where You Are」のカバーでは、彼の奏でるアコースティックギターとエレピの浮遊感が絶妙にフォーキーでソウルフル。B1「Everybody Loves Me」やB3「Find Yourself」ではジーン・ペイジのストリングスが効果的にその壮大さを演出する中で、彼の優しくも力強いボーカルが切なく心に響く。David Tの出番は非常に少ないものの、どんな楽曲でも「ホセ色」に染めてしまうその圧倒的な歌唱力は実に魅力的で聴き応え十分だ。

Phyllis Hyman / Can't We Fall In Love Again (1981)

ノーマン・コナーズのプロデュースによるフィリス・ハイマンの81年作。喉元に引っかかる独特の声が力強くそして華麗にアルバム全体を一つの色に染めている快作だ。メロウな楽曲が多くを占める中、A3「I Ain't Asking」などのアップテンポのダンサブルなナンバーも、ホーンセクションを従えて華麗に歌い上げるあたり、多少80年代的アレンジが時代を感じさせることを考慮しても仕上げはばっちりという感じがうかがえる。レオン・ンドゥグ・チャンクラー(Dr)、ネーザン・イースト(B)、ソニー・バーク(Key)らの織り成す完璧な演奏をバックに、実にムードたっぷりに大人の雰囲気を十分に醸し出している。David Tも地味ながら聴きどころには確かに絡んでくる絶妙さでさりげなくサポートしている。

Jeffrey Osborne / Jeffrey Osborne (1982)

豪華面々が参加したジェフリー・オズボーンの1stアルバム。ジョージ・デュークのプロデュースによる本作では、元L.T.D.のドラマーという肩書きを忘れさせるほどの見事な歌唱力と表現力を披露。ルイス・ジョンソン(B)、ラリー・グラハム(B)、スティーブ・フェローン(Dr)、マイケル・センベロ(G)らの的確なバッキングによる手堅い演奏も仕上がり度100%だ。ジョージ・デュークのシンセが多少耳につくところはご愛嬌。David TもB2「You Were Made To Love」とB4「Baby」の2曲に参加。スローテンポの2曲とも最初から最後までしっとりとした音色のフレーズを連続して奏でている。

Bloodstone / We Go A Long Way Back (1982)

60年代初頭から活動を続けるファンクボーカルグループ、ブラッドストーンの82年作。70年代『Natural High』『Unreal』などの名作をものにしてきた彼らが、80年代に入りT-Neckレーベルに移籍し、その美しくソウルフルなボーカルスタイルに磨きをかけた意欲作だ。前半3曲はスローでメロウなR&B、後半4曲はノリのよいダンサブルなナンバーが続く構成も面白いが、全体的な音作りは80年代初頭特有のコンテンポラリーサウンド。洗練されたアプローチに絶妙のコーラスワークが絡みつくボーカルワークこそ本作最大の魅力だろう。冒頭を飾る「Go On And Cry」などを聴けば聴くほど、表には見えにくいが、David Tのバッキングがアルバムのメロウネスにふくよかに貢献しているという点を実感できるのだ。

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