David T. Works Vol.02

David Tが参加した数々の名演の中からピックアップして紹介する第二弾。彼の素晴しいプレイを少しでも紹介するための第一歩として…。ではVol.02の10選をどうぞ。

Carole King / Fantasy (1973)

Odeレーベル所属、ルー・アドラーのプロデュースなど、何かと共通点の多いキャロル・キングとDavid T。70年代初頭の彼女の名作群にはDavid Tの流麗なギターが鳴っている。本作冒頭を飾る「Fantasy Beginning」が約1分くらい奏でられたあと、寸分の間も与えない状況で始まる「You've Been Around With Each Other」のイントロで聴けるDavid Tのあいかわらずの華麗なピッキング音。もうこれだけで、この一音だけで、David Tの世界へと誘われる不可思議な魔力。無論、キャロル・キングの声を支えるバッキングギターとしてそこにいるわけだが、そんなことはどうでもいいと思えてしまう程、ギターが歌と調和している。なお、本作はDavid Tのソロアルバム『Press On』とほぼ同じメンバーが顔を揃えている。

Blacks And Blues / Bobbi Humphrey (1973)

ラリー・ミゼルのプロデュースによるボビー・ハンフリーのジャズ・ファンク・アルバムの傑作。レアグルーヴの定盤としても名高い本作は、ハーヴィー・メイソン(Dr)、チャック・レイニー(B)、ジェリー・ピータース(Key)といったバック陣によるタイトで堅実なプレイが堪能できるが、やはりなんといってもふわふわと浮遊する彼女のフルートがアルバム全体のカラーを一つに染めていて心地良い。その隙間を縫うように絡み付くDavid Tのギターは楽曲の色彩を決定づける重要ファクターとなった。Blue Note発のとびきりグルーヴィな一枚。

Innervisions / Stevie Wonder (1973)

言わずと知れた70年代屈指のソウルアルバム。冒頭を飾る、テンションコード多用の複雑かつグルーヴィーな「Too High」から切れ味鋭い緊張感がヒートアップ。続く2曲目から4曲目までの流れはバラエティに富んだ完璧な楽曲群がずらりと並び見事の一言だ。文句なしに名盤の名を欲しいままにする極上盤。David Tは2曲目「Visions」で、アルバム全体に流れる特異な高揚感を瞬時に抑制するクールなプレイを披露。この世界は彼以外には誰も描けない。

Boz Scaggs / Slow Dancer (1974)

AORの帝王ボズ・スキャッグス。彼の名作は多数あるが、David Tが参加したソウルアルバムといえば本作をおいて他にない。それもそのはずプロデューサーはジョニー・ブリストル。となればギターは必然的にDavid Tになるというわけ。ジェイムズ・ギャドソンとエド・グリーンの2人とドラマーを起用するなど、David Tとの相性も抜群のバック陣に、当時ブレイク寸前だったボズの甘い歌声がせつなくハマる。David Tは控え目なプレイに徹しているが、音の隙間から微かに洩れるピッキング音とフレーズが全体のトーンを演出するのに一役かっている。

Jimmy Lewis / Totally Involved (1974)

サザンソウル、ディープ系ソウルの名ライターにして名シンガー、ジミー・ルイスの唯一のソロアルバム。全編に漂うパワフルでディープな歌声が、極上のソウルネスを彩る一枚だ。だが、エド・グリーン(Dr)やウィルトン・フェルダー(B)をはじめとしたLAの強者たちによるバッキングは、ゴリゴリ感ではなく程良い洗練が際立つ不思議な魅力を描いた。ワウペダルを駆使したフレーズなど、David Tもディープと洗練を同時に演出する素晴らしいプレイを全編に渡って聴かせてくれる。

Eric Kaz / Cul De Sac (1974)

72年の名作『イフ・ユー・アー・ロンリー』を残すシンガー・ソング・ライター、エリック・カズの2ndアルバム。バック陣もバーナード・パーディ(Dr)やゴードン・エドワーズ(B)など一流ミュージシャンを起用し、フォーキー感覚の中にソウルネス溢れる緩やかな音世界を構築。決して力みのないボーカルの個性もアルバム全体を心地良く響かせる。「Good As It Can Be」でのDavid Tの個性も、エリックの渇いた空気や存在感に程良く調和するから不思議。いい意味で“ヌケた”グルーヴとアーシーなフィーリングが同居したSSWアルバムの傑作だ。

Marvin Gaye / I Want You (1976)

マーヴィン・ゲイといえばやはり『What's Going On』と相場は決まっている感も大だが、メロウグルーヴという視点でみると76年の本作が一枚上。リオン・ウエアのソロアルバムとなるはずだった本作が土壇場でマーヴィン・ゲイの作品になってしまたという逸話は置いておくとしても、メロウで哀愁溢れるメロディの楽曲群はアルバム全体を包み込むように鎮座。マーヴィンのせつない歌声にハマったグルーヴ感とソウルネスは筆舌に尽くし難い極上の仕上がりとなった。「Soon I'll Be Loving You Again」でのDavid Tは、控え目ではあるが、この音世界の牽引者であるかのような素晴らしいプレイを聴かせてくれる。

Melissa Manchester / Don't Cry Out Loud (1978)

そのリオン・ウエアをプロデューサーに迎えた、アダルト・コンテンポラリーな一枚。時代は70年代後半に残されたメロウグルーヴの傑作だ。ドラムにジェイムス・ギャドソン、エド・グリーン、ジム・ケルトナー、ベースにチャック・レイニー、キーボードにリチャード・ティーなど、メリサのキャリアの中でも異色ともいえる硬軟両頭揃えた豪華ミュージシャンたちが参加している。David T的に見たハイライトは何といっても4曲目「Almost Everything」。リオン・ウエア作の哀愁感漂うメロディに、David Tのギターが甘くせつなく響く。この濡れ具合がたまらなくメロウだ。

Joe Sample / Rainbow Seeker (1978)

冒頭を飾る「Rainbow Seeker」から名曲がずらりと並ぶ、70年代屈指のクロスオーバー名作の一枚。「There Are Many Stops Along The Way」で聴ける流れるようなグルーヴ感と鍵盤のタッチは、心地良さを通り超し、まるで本物の歌声が奏でられているかのように錯覚する彩り。息の合ったDavid Tとのプレイはクルセイダーズその他の幾多の共演で実証済み。2曲目「In All My Wildest Dreams」で、David Tはゆったりとしたグルーヴの中、これもまた歌声のようなソロを披露している。

吉田美和 / Beauty and Harmony (1995)

ドリカム吉田美和の初ソロ作。ポップでキャッチーなドリカム路線とは明らかに趣きを異にした、ボーカリストとしての違った一面を覗かせるしっとりと抑制の効いた仕上がりがひと際美しい。チャック・レイニー(B)、ハーヴィー・メイソン(Dr)など、参加ミュージシャンはまさにツボを得た豪華陣。70年代の黄金パターンともいうべき唯一無二の世界だ。全編に渡ってDavid Tのギターワークが、時に鋭く、時に優しく冴え渡り、聴き手を万華鏡の世界にいざなう。透明度と力強さを合わせ持つ彼女のしなやかな声が、それに呼応しながら絶妙のハーモニーとして調和。2曲目「つめたくしないで」のイントロで聴けるDavid Tの必殺アプローチは鳥肌ものの一撃である。

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