David T. Works Vol.05

David Tが参加した数々の名演の中からピックアップして紹介するこのコーナー。ではVol.05の10選をどうぞ。

Willie Hutch / The Mack (1973)

プロデューサーとしても名高いシンガー、ウィリー・ハッチの73年作。本作は同名タイトル映画のサントラ盤であり、いわゆる70年代ムービーサウンドが全開の傑作。ウィルトン・フェルダー(B)、エド・グリーン(Dr)らのソリッドな面々がバックを固めながら、そこにホーンとストリングスが加わることで、ステディなグルーヴの中にも豪華さが際立つ音づくり。「I Choose You」のようなゆったりとしたメロウな楽曲にハマるDavid Tのギターはさすがの一言。ウィリーの熱唱が素晴らしい「Slick」などの、ホーンセクションと一体となった疾走感の中にもDavid Tのファンキーバッキングは見事なまでに冴え渡る。アルバム最後を飾る「Brother's Gonna Work It Out」は女性バックコーラス、ホーン、ストリングスが一体となったファンキー・ソウル・チューンで、クール&ホットの一言がよく似合う。

Love Unlimited Orchestra / Rhapsody in White (1974)

これぞ名盤。バリー・ホワイト率いるラヴ・アンリミテッド・オーケストラの74年作。緩やかでしっとりとしたストリングスに、バリー特有の甘く官能的リズムとボイスが絡み、実に居心地の良いポップスが全編を支配。イージー・リスニングとも受け取れなくもないポップ感覚だが、そこに潜むは凄腕ミュージシャンによる完璧なアンサンブル。一聴すると単調さが際立つエド・グリーンのドラムも、良く聞き込めば複雑なリズムを刻んでいることがわかるはず。グッドなグルーヴに応えるべくDavid Tも緻密でメロウなバッキングをフル回転。オーケストレーション・アンサンブルの一役として、カッチリとしたリズムパターンを職人のごとく奏でる姿がここにある。アルバム最後を飾る超メジャー曲「Love Theme」は、その昔、某航空会社のCMで使用されたことからもわかるように、優雅さと気品とメロウ感が一度に堪能できる極上の一曲だ。

T-Bone Walker / Very Rare (1974)

T-Bone WalkerとDavid T. Walker。名前こそ似ているものの、そのスタイルと生み出される音は異なるベクトルを向きながら、ブルースという視点ではどこか通じるフィーリングを持ち合わすこの両者。そのT-Boneが、いつものブルースの枠を飛び越え、ラリー・カールトン(G)、ジョン・トロペイ(G)、ポール・ハンフリー(Dr)、ジム・ゴードン(Dr)、ウィルトン・フェルダー(B)などのジャズ&ソウル&ロック領域の一流どころを目一杯起用した豪華R&Bアルバムがコレ。曲ごとに演奏メンバーが変化したり、2枚組というボリュームも手伝ってか、アルバム全体としては満腹状態腹八分目ちょい超え、という感が無くもない。王道ブルース全開の中にもファンキーさが見え隠れする、T-Boneの違った一面が聴きとれる一風変わった肌触りが面白いところ。ワウペダルを駆使したDavid Tのギターワークが冴える「If You Don't Come Back」などもスウィング感覚満載の女性コーラスが最高にカッコよく、T-Boneのブルースフィーリングを好サポートをしている。

Gene Harris / Astral Signal (1974)

切れのあるピアノと意表をつく展開が素晴らしいジーン・ハリスの74年作。謎の効果音と彼自身の語りで構成される不思議な意匠の1曲目「Prelude」から、息つく暇もなく2曲目「Summer」ではゆったり抑制したグルーヴにジーンのピアノと多重コーラスが宙を舞う。異次元空間に放り出されながら、その気流に逆らうこともなく身を委ねてしまいたくなるアルバム冒頭の展開がなんとも巧妙で心地良い。一転して観客の声がこだまするライヴ演奏の「Green River」では、縦横無尽に跳ねるチャック・レイニーのベースがとにかくカッコいい。続く「Biginnings」では、スローミディアムテンポの軽妙なグルーヴにDavid T節が絶妙に冴え渡り、「Feeling You, Feeling Me Too!」でも力強くファンキーなバッキングが極上のグルーヴを生み出すのに一役買っている。全編通してジーンのピアノがとにかく気持ちよいジャズ・ファンクの傑作盤だ。

Henry Mancini / Symphonic Soul (1975)

数多くの映画音楽を作り続けた巨匠ヘンリー・マンシーニが75年に発表した異色作。というのも彼の率いるオーケストラと、ハーヴィー・メイソン(Dr)、ジョー・サンプル(Key)そしてDavid Tらのソウルフルかつファンキーな面々とが、がっぷり四つに組んだ作品だからだ。重厚なホーンと華麗なストリングスの隙間を縫って、これ以上ないソリッドでファンキーなバッキングが宙を舞う。ハービー・ハンコックで有名なA2「Butterfly」では、ハービーに全く引けをとらないジョー・サンプルのフェンダー・ローズが最高にグルーヴィ。B1「Slow Hot Wind」では、待ってましたとばかりにDavid Tが細かく腰のあるピッキングでファンキーなリズムを奏でまくる。続くB2ではなんとあのアヴェレージ・ホワイト・バンドの「Pick Up the Pieces」をカヴァー。豪華オーケストラがあのメインメロディを奏でる中、わずかではあるがDavid Tのグルーヴィなバッキングが踊りに踊っている。

Sergio Mendes / Sergio Mendes (1975)

ボサノヴァ、ブラジリアン・ミュージックの雄、セルジオ・メンデスが自身の名義で発表したソロアルバム。ブラジル'66や'77を引き連れず、敢えて自己名義で自らの音楽性を注入したこのソロアルバムは、なんと全曲カヴァー曲。ジャズ、ソウル、ブラジル、ポップスといったあらゆるジャンルを軽く飛び越えるメロウでグルーヴィな仕上がりが心地よい。David Tも、アルバム冒頭を飾るマリーナ・ショウ『Who is this bitch, anyway』収録の極上メロウ・グルーヴナンバー「Davy」から全開サポート。以降も、スティーヴィー・ワンダー作の「I Believe」「All In Love Is Fair」やジョージ・ハリスン作のビートルズナンバー「Here Comes the Sun」など、メロウな楽曲にからみつくセルジオのエレピとDavid Tの華麗なバッキングの競演が存分に楽しめる。特にアヴェレージ・ホワイト・バンドやマキシン・ナイチン・ゲール、クインシー・ジョーンズもカヴァーした名曲「If I Ever Lose This Heaven」での、指が踊りに踊るDavid Tの凄腕バッキングは「絶妙にも程がある」と満面の笑みで苦言を呈したくなる実に素晴らしいプレイ。アルバムジャケットからは想像もつかない70年代の生んだ極上のメロウ・グルーヴがここにある。

Thelma Houston & Jerry Butler / Thelma & Jerry (1977)

伸びのあるソウルフルな歌声のテルマ・ヒューストンと、低音の魅力を放ってやまないR&Bシンガー、ジェリー・バトラーが組んだモータウン発のアルバム。ソウルフルでメロウな「これぞソウルネス」なボーカルが心地良い両者の豊かな表現力は実にしなやかで粋だ。77年という時代からか、多少ディスコ色が見え隠れするポップな「Only the Beginning」や「I Love You Through Windows」なども聴き応え十分だが、アルバム後半でジェイムズ・ギャドソン(Dr)、エド・グリーン(Dr)やDavid Tらの演奏陣が登場する場面を迎えると、タイトでありながらメロウなバッキングに乗って歌うテルマとジェリーの姿がことさら良く映え、聴く者をさらに心地良く包み込む。

Harvey Mason / Funk In a Mason Jar (1977)

LAの超一流職人ドラマー、ハーヴィー・メイソンの3rdソロアルバム。ドラマーのソロアルバムらしからぬ、ポップでグルーヴィな音作りに彼流の姿勢が感じ取れる好盤だ。「Till You Take My Love」は、当時頭角をあらわしていたデヴィッド・フォスターとの共作で、メリー・クレイトンのファンキーボーカルが宙を舞う、本作中最もポップでグルーヴィな一曲。マーヴィン・ゲイの「What's Going On」のカヴァーではジョージ・ベンソンの流暢なギターとロニー・フォスターのエレピがポップで軽妙なグルーヴを生んだ名演中の名演だ。アルバムラストを飾るスローテンポのメロウナンバー「Liquid」で、我らがDavid Tの抑揚のある華麗で力強いソロプレイが登場。このタイプの音世界ではDavid Tの独壇場は揺るぎない。

Randy Crawford / Now We May Begin (1980)

ノーマン・シーフのジャケット写真も見事なランディ・クロフォードの3rdアルバム。ソウルフルでキュートな一面も覗かせる彼女の歌声を支えるバック演奏陣は、ジョー・サンプル(Key)、ウィルトン・フェルダー(B)、スティックス・フーパー(Dr)といったご存知クルセイダーズの面々。多少ブラコンテイストのポップなアレンジも目立つが、そこは職人たちのツボを押さえまくり激渋プレイが全体を上質のシルクで包み込む。特にジョー・サンプルのキーボードは素晴らしく、エレピやピアノを縦横無尽に操り出す彼流の演出で彼女をサポート。David TもA2「Tender Falls the Rain」で、旧知の面々と息の合ったソロプレイを披露していてさすがの一言。落ち着きのあるR&Bが堪能できる円熟の一枚だ。

松岡直也 土岐英史 / Pacific Jam (1981)

ラテンフレーバーと爽やかでポップな鍵盤タッチで聴かせるキーボディスト松岡直也と、アルトサックスの第一人者、土岐英史が組んだ80年代冒頭を飾るブラジリアンフュージョンの名作。パーカッション、フルート、サックスとが一体となってきらびやかに踊るラテンのリズムは、松岡氏の王道的展開。フローラ・プリムの魅惑の歌声が、ラテンの色彩をさらに加速させているが、全体の景色はその「熱」がどこかクールに感じられる爽快感を伴っているから不思議。David Tも「Feelin' Gently」「Toyland」で地味ながらも彼ならではのフレーズを見事に描いている。そのフレーズだけ切り取って聴いてみても違和感なくラテンのリズムに溶け込むDavid Tの姿。ラテンだろうと何だろうとDavid TはいつもDavid Tなのだ。

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