David T. Works Vol.35

David Tが参加した数々のアルバムの中からピックアップして紹介するこのコーナー。まだまだ続きます。ではVol.35の10選をどうぞ。

Joe Turner / The Real Boss Of The Blues (1969)

1930年代からのキャリアを誇ったシンガー、ビッグ・ジョー・ターナーがフライングダッチマン傘下のBluesTimeレーベルに残した69年作。ブルース、ジャズ、R&Bとあらゆるタイプの楽曲を余裕綽々、さらりと歌いこなすその堂々たる姿はあまりにも豪快。自身のヒット曲でもありその後も多くのアーティストにカヴァーされる「Shake, Rattle & Roll」などのロックンロールナンバーの再録も痛快だ。中でも10分を越すブルースナンバー「Plastic Man」は、ブルージーなギターやサックスと相まって彼のシンガーとしての魅力が全開の熱演。アレンジワークにジーン・ペイジの名が連ねていることからかDavid Tも「Two Loves Have I」一曲に参戦。一聴してそれとわかる鈴の音ギターが、男気溢れるビッグ・ジョーの歌声に絡むと、柔らかさを醸し出すかのようで不思議。

Jermaine Jackson / Come Into My Life (1973)

2ndソロアルバム。しっとりとしたムードの静かなテイストが支配するアルバム前半。弟マイケルのソロもそうだが、ジャクソン5の圧倒的なポピュラリティとは異なる落ち着きのある佇まいがここにもある。対照的にアルバム後半はアップビートな躍動感が立ち上がる。そのままジャクソン5のレパートリーかのようなポップ感が満載の「So In Love」を聴くと全身が安堵で包み込まれるかのよう。まさにブラックミュージック界の王道的ポップス。形作るはフレディ・ペレン、デイヴィッド・ヴァン・デ・ピット、デイヴィッド・ブラムバーグ、ジェイムズ・カーマイケル、H.B.バーナムといった鉄壁の布陣だ。そんな重要アレンジャーたちの有らん限りの知恵と技術が支える屋台骨に、David Tも僅かながらも貢献。「A Million To One」での縦横無尽なプレイは、控え目な音像ながらも主役のジャーメインの存在感を凌ぎ兼ねない個性溢れる輝きに満ちている。

Barry White / Can't Get Enough (1974)

のっけから見事なオーケストレーション。次第に輪郭を見せていくタイトでキレのあるビート。そこに融合していく重心の低いバリーの歌声、ラヴ・アンリミテッドのさりげないコーラスワーク。このアンバランスな調和の妙こそがバリーサウンドの真骨頂だ。本作はそんなバリーの魅力が全開する絶頂期とも言える74年作。自身のソロアルバムやラヴ・アンリミテッド・オーケストラでの活動など、この時期、多作で幅広いフィールドで活動するバリーだが、そのどれもが比の打ちどころないクオリティで驚きの一言だ。そのプロダクションにDavid Tのギターは必要不可欠のマテリアル。アルバム冒頭の「Mellow Mood」で聴けるストリングスに溶け込む物憂気なフレーズや、「Oh Love, Well We Finally Made It」でのリズミカルなメロウネスを演出するプレイなど、実に見事なアンサンブルを披露する。

Miracles / Do It Baby (1974)

スモーキー・ロビンソン脱退後、ビル・グリフィンをリードボーカルに迎えた新生ミラクルズの74年作。さすがに一時代を築いたグループ。フレディ・ペレン、ウィリー・ハッチ、マイケル・オマーティアン、ハル・デイヴィスといった常連とも言える多くの大物スタッフがプロデュースとアレンジワークに勢揃いした一枚。ジム・グラディの「A Foolish Thing To Say」でのアーサー・ライトのアレンジワークによるカヴァーは、本アルバムにあっては異色の選曲だが、本家バージョンとは異なる趣きでメロウネスたっぷり。フレディ・ペレンのペンによる「Up Again」で登場するDavid Tのミラクルフレーズは4人が織り成すファルセットとコーラスワークにドンピシャとハマる。全曲ミラクルズの名に相応しいメロウなナンバーが宙を舞う中、リオン・ウェアがソングライティングを担った3曲は本作の目玉の一つ。前作『Renaissance』にも収録されていた「What Is A Heart Good For」での炸裂するリオン節にDavid Tもメロウなフレーズで応戦している。

O.C. Smith / La La Peace Song (1974)

カウント・ベイシー楽団出身のシンガーが放つ74年作。曲目によってプロデューサーやアレンジャーが異なる作りは一見寄せ集め的にも思える構成だが、緩急あるアレンジワークが功を奏し意外にも聴き飽きない仕上がりでナイス。アル・キャプスのアレンジによる映画「黒いジャガー」の挿入歌「Don't Misunderstand」、ギャンブル&ハフのプロデュースによるマリーナ・ショウのカヴァーでも知られる「I Think I'll Tell Her」、ジェリー・フラーのプロデュースによるスティーヴィー・ワンダーの「My Cherie Amour」のカヴァーなど、壮大なオーケストレーションと一体化する落ち着きのある熱唱はさすがの一言で面目躍如の感が大だ。プロデューサーとして3曲に参加したジョニー・ブリストルの貢献も聴きどころの一つで、その全てに映るのはやはり我らがDavid T。アル・ウィルソンもカヴァーしたアルバムタイトル曲ではH.B.バーナムのアレンジワークにツボを押さえた激渋カッティング、「When Morning Comes」や「Wish You Were With Me, Mary」での軽妙この上ないプレイなど唯一無二の個性が随所で鳴り響く。控え目ながらも存在感は際立つという、うれしい矛盾を引き起こすDavid Tマジックはここでも健在だ。

Wings Livinryte / Your Love Keeps Me Off The Streets (1974)

俳優ウイングス・ハウザーが別名義で発表したアルバム。プロデューサーのデイヴィッド・キャンベルによって召集されたメンバーは、エド・グリーン(Dr)、ポール・ハンフリー(Dr)、ウィルトン・フェルダー(B)、ボビー・ホール(Per)、ジェリー・ピータース(P)といった西海岸の強者たち。しかしアルバムの半分以上を自ら書き下ろす才覚と味わい深い歌を披露するウイングスの力量はかなりのもので、サポート陣の裏方に徹した堅実なバックアップも功を奏しアルバム全体の好感度をアップしているかのよう。ランディ・ニューマンの「You Can Leave Your Hat On」や、ジミー・ウェッブ「The Moon's a Harsh Mistress」などカヴァー曲の渋い選曲眼も恐るべし。そんな中、David Tも派手さ希薄なものの実にさりげないプレイで参戦。「Your Love Keeps Me Off the Streets」で聴ける切れ味鋭いフレーズの一瞬のインパクトにこれ以上ない存在感を痛感すること然りだ。

Flying Kitty Band featuring Ogura Kei / 5.4.3.2.1.0 (1977)

小椋佳、星勝、安田裕美の3人が中心となって生まれたユニットの唯一のアルバムにして怪作。ジム・ケルトナー(Dr)、デヴィッド・フォスター(Key)、ヴィクター・フェルドマン(Key)、ジェイ・グレイドン(G)、トム・スコット(Sax)らのLA勢と、深町純(Key)、高中正義(G)、正木五郎(Dr)といった日本勢が織り成すスマートで洗練されたサウンドプロダクションが小椋佳の歌詞世界をバックアップするという稀有な構図。多賀英典プロデューサーの思い描いた世界を実現したのは星勝の人脈と創作意欲が大きく寄与しているのは間違いないところ。David Tも場面は少ないものの大きな彩りを添えて貢献。「つかみきれないシャボン玉」や「10才の誕生日」で、あらゆる引き出しを出し尽くす自在なプレイは圧巻の一言だ。そんな彼らの堅実なサポートと日本語の歌詞世界が100%フィジカルな融合を果たしているかというと疑問は残る。だが、その違和感さえも軽く飛び越えるコンセプチャルな音世界は実に創造性豊かな個性だ。時間、人類、宇宙。アルバムタイトルやジャケットワーク、小椋佳の描く歌詞、それらすべてのエレメントがトータルに一つの世界を象徴的に描く。まさに時空を飛び越える奇跡の一枚だ。

Ndugu & The Chocolate Jam Company / Do I Make You Feel Better? (1980)

歌うドラマー&パーカショニスト、レオン・ンドゥグ・チャンクラー率いるユニットのこれが2作目。79年発表の1st『The Spread Future』とほぼ同じメンバーが参加した完成度の高い楽曲がずらりと並ぶ快作だ。タイトなリズムにンドゥグ本人の味わい深い歌声やコーラス陣の彩りが重なる洗練された音づくりが印象的。David Tもダンサブルな楽曲では豊かな弾力感でリズムを刻み、メロウチューンでは鈴の音を鳴らすかのようなしっとりとしたフレーズを自在に披露する。特にアース・ウィンド&ファイア風のスローテンポの「A Chance With You」に重なるDavid Tの甘いフレーズはとろけ度120%のムーディさ。本作以降、ンドゥグとDavid Tはクルセイダーズへの参加や、チャック・レイニーとのユニット、レイニー・ウォーカー・バンドでのプレイなど、セッション度数は増えていく。

Ray Charles / Brother Ray Is At It Again (1980)

2004年6月、巨匠の突然の訃報に世界中が揺れた。ミスターソウルマン。そんなシンプルな称号が相応しい故レイ・チャールズがアトランティック傘下の自身のレーベル、CrossOver Recordsに残した80年作がこれ。ロバータ・フラックで有名なユージン・マクダニエルズ作の「Compared To What」のスマートなビートの効いたカヴァーや、ザ・バンドの「Ophelia」のコンテンポラリーな解釈、フランキー・ミラーのR&Bナンバー「I Can't Change It」など、トレンドを意識した感のあるダンサブルチューンやメロウなR&Bの数々がレイの歌声に見事に絡められていく。そんなバラエティに富んだアレンジによるカヴァー曲群が全編を彩る中、唯一レイのオリジナル曲「Questions」にDvaid Tが参加。ミドルテンポのダウンビートが続く静かなファンクネスにDavid Tの粘り気のある乾いたフレーズがレイのソウルフィーリングを静かにバックアップしている。

Les McCann / Listen Up! (1996)

鍵盤奏者としてのみならず60年代から70年代には多くのアーティスト発掘やプロデュースワークなど多彩なフィールドで活動したレス・マッキャン。時を経て90年代。ジャズ、ソウル、R&Bのエッセンスを無理なく昇華した彼の音楽性は、熟達した力みの無さと洗練によりスムースなジャズとして結実した。ジョージ・デューク(Key)、エイブラハム・ラボリエル(B)、ジョン・ロビンソン(Dr)といった強者たちによるセッションワークは渋みをさらに加速させるに十分の堅実ぶり。だが、情感たっぷりのレス本人のボーカルは塀際ぎりぎりの生々しさをこのアルバムにもたらしてもいる。David Tも安定したプレイで貢献。ここぞとばかりにキメまくるビリー・プレストンによるダウン・トゥ・アース感覚炸裂のオルガンとアーニー・ワッツの粋なサックスが調和する「A Little 3/4 For God & Co.」や、楽し気なシンセのメロディが大らかに包み込むミディアムテンポの「Ruby Jubilation」など、切れ味の鋭さと弾力感が両立するいつものDavid T節が随所で光る。

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