David T. Works Vol.38

David Tが参加した数々のアルバムの中からピックアップして紹介するこのコーナー。まだまだ続きます。ではVol.38の10選をどうぞ。

The Crusaders / 1 (1972)

ブルーサム移籍第一弾。スティックス・フーパー(Dr)、ジョー・サンプル(Key)、ウィルトン・フェルダー(B, Sax)、ウェイン・ヘンダーソン(Tr)の不動の4人に加え、ラリー・カールトン、アーサー・アダムス、David Tの3人のギタリストを配した豪華セッションが当時2枚組としてリリースされた本作に凝縮。とにかく印象的な楽曲群と名演が満載の一枚だ。唯一のカヴァー曲、キャロル・キングの「So Far Away」は12分を超す長尺アレンジの中に参加メンバー全ての呼吸と息づかいがさりげなく注入。特にラリー・カールトンの個性溢れるギターワークは聴きどころの一つだ。後にライブで定番となる「Put It Where You Want It」で聴ける軽快なポップファンクの衣をまとった粘り気のある力強いグルーヴの嵐。地を這うベースラインにジョー・サンプルのエレピが浮遊する「Full Moon」での卓越した演奏技術によるアンサンブル。ジョー・サンプルの力強く流暢な鍵盤が終始牽引する「Sweet Revival」や「Georgia Cottonfield」などなど、テキサスファンクの正体がこのアルバムすべてに隠されている。David Tは控え目な参戦だが、「Georgia Cottonfield」や「Three Children」など、ワウプレイや弾力感あるカッティングで他の二人のギタリストとは異なる存在感を残している。

Jackson5 / Lookin' Through The Windows (1972)

アシュフォード&シンプソンの「Ain't Nothing Like The Real Thing」で幕を開けるジャクソン5の72年作。シングルカットされた「Little Bitty Pretty One」やアルバムタイトル曲の2曲をはじめ、躍動感に満ちたポップフィーリング満載の彼らの魅力がたっぷりと詰まった一枚だ。イントロからのけ反るようなアレンジが強烈なアルバムタイトル曲や、マイケルの表現力の豊かさに舌を巻くこと然りのメロウナンバー「To Know」など、バラエティに富んだ楽曲のクオリティは非常に高く100%完璧な仕上がり具合。David Tは影の薄いサポートだが、それでも「If I Have To Move A Mountain」では全編通していつものフレーズを奏でる姿が見て取れる。余談だが、シングルカットされたアルバムタイトル曲B面に収録された隠れた名曲「Love Song」はオリジナルアルバムには未収録だが、ここでもDavid Tの甘く切ないギターが静かに聴こえてくる。

Donald Byrd / Stepping Into Tomorrow (1975)

シンセによる無機的な音空間の拡がりと生ピアノや管楽器による緩急ある肌触りの音像の化学反応。そこにドナルド・バードの伸びのあるトランペットが拍車をかけるスペイシーなサウンド。その正体、ラリー&フォンス・ミゼル兄弟の形作るマジックは本作でも眩しいばかりの光を放つ。しかし、ここには点描画のように彩りを添える“David Tというもう一つのマジック”が潜むことを忘れてはならない。ゲイリー・バーツのアルトサックスが瑞々しく響く「Design A Nation」、ステファニー・スプルイルの淡々としたバックボーカルと幾重にも複雑に交差する音の対比が見事に一つの像を描くキレのあるメロウチューン「Think Twice」、自身による怒濤のドラミングが抜群のグルーヴを奏でるハーヴィー・メイソン作「Makin' It」など、ほぼ全編に渡って音の隙間を縫うかのように弾力的でアタック感の強い豊かな鳴りのフレーズを連発。グルーヴバッキングのいろはを余すところ無く披露する、David Tマジックの真骨頂がここにある。

Telly Savalas / Who Loves Ya Baby (1976)

おそらく僕は刑事コジャックをリアルタイムで見た最後の世代。 サバラスといえばコジャック、コジャックといえば森山周一郎というくらいハマり役の彼が76年にMGMにひっそり残した一枚がコレ。低音ヴォイスで渋く語りかけるような歌が途中から本当にセリフのような展開に突入するなど、架空のサントラを自己演出するかのようなアクターぶり全開のパフォーマンスが実に粋に映る。「Gentle On My Mind」や「The Men In My Little Girl's Life」などの王道ソングを歌うサバラスはやはり天下一品のエンターテイナーだと痛感。プロデューサーとしてもクレジットされるマーヴィン・レアードが全編指揮をとる中、アルバムタイトル曲のみストリングスアレンジを担当したのがジーン・ペイジ。とくればそこにはやはりDavid Tの姿が。サバラスの歌声に隠れてほとんど輪郭の見えてこないバッキングだが、その“うっすら”加減がいかにもお仕事的でDavid T的でもあるのだ。

Syreeta & G.C.Cameron / Rich Love Poor Love (1977)

伸びやかなシリータの高音と安定感あるG.C.の対比が実にメロウな世界を描くデュエットアルバム。シリータの元夫スティーヴィー・ワンダーがスピナーズ時代の「It's A Shame」の作者であったり、そのスティーヴィーが全面サポートした2nd『Stevie Wonder Presents Syreeta』収録の「I Wanna Be by Your Side」でも息のあった歌声を聴かせるシリータとG.C.。同じモータウンというレーベルメイト以上のつながりがある二人の個性が程良く甘く香る心地良い仕上がり具合の本作は、単なる企画色先行というデュエットアルバムに有りがちな域を超えた“密”なムードをさらりと醸す。David Tは地味な活躍だが、それでも弾力感が際立つベースラインが印象的な「Let's Make A Deal」での低域カッティングや、アルバム中G.C.とシリータが楽曲作りに関与した唯一の曲「I'll Try Love Again」でのメロウテイスト溢れるフレーズなど、二人の描くドラマをしっかりとサポートしている。特にジーン・ペイジのストリングスが華麗に冴えるアップテンポの「Love To The Rescue」では後半に飛び出すキラ星プレイがスウィートな楽曲に一層の彩りを添えている。

Sammy Davis Jr / Sings The Great TV Tunes (1978)

エンターテイナーといえばやはりこの人抜きには語れない。その存在感やパフォーマンスぶりに目が行きがちだが、70年代のサミーは意外なほど多作でグルーヴィ。いまやDJ諸氏からもひっぱりだこのサミーの70's。本作はサミーが関わったさまざまな映像タイトルのヒットチューン集でこれが実に躍動感たっぷり。アルバムの統一性よりも寄せ集め感が際立つ企画モノ的佇まいが濃厚な一枚だが、クレジットされるプロデューサー&アレンジャー陣の豪華さたるや。マイク・カーブ、アル・キャプス、ドン・コスタ、デイヴ・グルーシンといった面々がさらりと名を連ねるところにサミーの偉大さが窺えるというもの。刑事コジャックのテーマ「We'll Make It This Time」などの疾走感溢れるグルーヴィな展開はフロアでの高揚も想像に難く無い。David Tは「Those Were The Days」や「Baretta's Theme」などで、地味ながらも一聴してそれとわかるキラ星プレイでサミーをサポート。おそらくはレコーディングスタジオでも顔を会わすことのなかったサミーとDavid Tだろうが、同じステージでパフォーマンスする二人の姿を一度見てみたかったという想いが不思議と強く残るのである。

The Whispers / Headlights (1978)

過去の名曲「The Planets Of Life」を違ったアレンジでセルフカヴァーするなど心機一転の感も大の78年作がコレ。腰にくるノリノリグルーヴのタイトル曲をはじめ、当時のビート感を十二分に盛り込んだ、ダンス&メロウチューンが満載の一枚だ。中でもジーン・ペイジのストリングマジックは直線的ビートに緩急をつけながら効果的に柔らかな音像を残すのに貢献。となればDavid Tの参戦も大いに頷けるところで、メロウバラード「(You're A) Special Part Of My Life」での少し隠ったトーンやアルバムラストを飾る「Children Of Tomorrow」などで聴ける派手さはないが極めて印象的であるといういつもの流麗なフレーズを残している。

Tina Turner / Private Dancer (1984)

「What's Love Got To Do With It」「Private Dancer」などビッグヒットを連発した80年代のモンスターアルバム。この時期特有のきらびやかなシンセサウンドを全て包み込むティナの迫力ある歌声が実にポップでソウルフル。アル・グリーンの名曲「Let's Stay Together」やデヴィッド・ボウイの「1984」などカヴァー曲のチョイスも秀逸。David Tはビートルズナンバー「Help」一曲のみ参加。ウィルトン・フェルダー、ンドゥグ・レオン・チャンクラー、ジョー・サンプルといったこの曲のみ参加のメンバーとともに、ゴスペル風味とソウルテイストが漂うアレンジによる極上のカヴァーを披露している。

13Cats / March of the 13CATS (1991)

プリンスバンド出身のキャット・グレイ、サンタナとの活動で知られるパーカショニスト、カール・ペラッツォ、そして日本が誇る最高級ドラマー沼澤尚の3人によるユニットの3rdアルバム。アルバムジャケットの美的センスと聴こえてくるシンプルでプリミティブなファンクネス。この対比の面白さとカッコ良さは他には見当たらない個性のかたまりだ。そんな3人をサポートするゲストも豪華の一言。怒濤のドラミングに乾いたエレピが絡むグルーヴチューン「DJ〜Spilit Decision」ではアル・マッケイのリズムギターが渋くサポートし、イコライズされた隙間だらけの硬質なミドルファンク「Thank You」にはなんとあのスライ・ストーンが参加。「The Love That You Have」では山岸潤史のファンキーロックフィーリング溢れるギターソロが展開。そして息つく間もなく辿り着く「Galaxy」ではアル・マッケイのリズムギターとシーラ・Eのパーカッションによるひと際くっきりとした輪郭のグルーヴが炸裂。そんなファンキーテイストを彩る本作のラストを締めくくるに相応しいメロウナンバー「Love Is The Answer」で我らがDavid Tの登場。ここに至るまでのダイナミズムを一気に抑制するようなDavid Tマジックによって深い余韻を残しながらアルバムは幕を閉じていく。

Bobby Womack / Back to My Roots (1999)

ボビー・ウォマックのゴスペルアルバム。シンプルなプログラミングに、ビリー・プレストン、ウィルトン・フェルダーらがバックアップする気負いのない音づくり。が、そこはさすがのウォマック。熱の入った魂の歌声はここでも健在だ。躍動感溢れるゴスペルアレンジを施した「Bridge Over Troubled Water」のカヴァーもウォマックのしなやかな歌声で時空を超えて蘇る。David Tも少ない出番ながら参戦。「Rug」で聴ける控えめバッキングや、「Ease My Troubled Mind」では短いながらも的確なソロプレイを披露する。21世紀に入ってからは主だった活動が聞こえてこないウォマック。次なる活動が待たれるアーティストの一人である。

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