David T. Works Vol.56

まだまだまだ続くこのコーナー! Vol.56の10選をどうぞ。

Marvin Gaye / Trouble Man (1972)

名盤『What's Going On』後、1973年の『Let's Get It On』との間に、同名映画のサウンドトラックとしてリリースされた一枚。マーヴィン名義ではあるものの、歌入りの楽曲は表題曲のみで、残るはすべてインストという本作だが、当時流行したブラックムーヴィーアルバムの一つと考えれば、この一風変わった体裁も納得というもの。「"T" Stands For Trouble」でひっそりと聴けるDavid Tの参加は比較的地味で目立たないが、本作に収録されていない映画本編に流れるBGMでは一聴してそれとわかるフレーズが残されている。なお、本作未収録だった音源をボーナストラックとして加えたエクスパンデッド・エディションCDが2012年にリリースされており、David Tの活躍が一層あきらかになっている。

Barry White / I Love To Sing The Songs I Sing (1979)

20th Centuryレコード在籍の末期にあたる79年作。自身のレーベルであるアンリミテッド・ゴールド・レコードを立ち上げ、秘蔵っ娘ラヴ・アンリミテッドや、オーケストラ名義での活動も合わせ多作の感あるこの時期。サポートする面々に若干変化があるものの、根底を流れるバリー節はここでも十分に健在。David Tもそのサウンドの一端を担うべく、アルバム表題曲や「Once Upon A Time (You Were A Friend Of Mine)」などに参戦。しかし、特徴的で目立ったフレーズは少なく、その輪郭をとらえることは困難なひっそりとした貢献が残念。

アンリ菅野 / My Funny Valentine (1987)

前作『Sunshine Dream』に引き続きDavid Tとニール・オダによるプロデュース。ほぼ全曲スタンダードナンバーで揃えたヴォーカルアルバムをバックアップするのは、当時David Tがソロアルバム『Y・Ence』リリースのために組んでいた、ジェリー・ピータース、スコット・エドワーズ、ジェイムズ・ギャドソンらによるバンド「Warm Heart」の面々。ライヴレコーディングによる程よい緊張感が功を奏し、よくあるカヴァーアルバムにはないピリリとした空気とムーディな色合いを主役アンリの艶やかなヴォーカルを軸に交差させるバンドアンサンブルが実に見事だ。「My Funny Valentine」での饒舌にうたうソロプレイや、アンリのヴォーカルと二人だけの世界を紡ぐ「What's New」で聴ける静かに表情を描くバッキングなど、先頭に立ってアレンジワークも手掛けるDavid Tのプレイは聴きどころ満載で素晴らしいの一言だ。

飯島真理 / Miss Lemon (1988)

ロサンゼルスに活動の拠点を移す直前、のちに伴侶であり音楽的パートナーとなるジェイムズ・スチューダーがアレンジャーとして制作に関与した一枚。大ヒットしたアニメソングのイメージが先行するあまり正当な評価を得られずにいた感のある彼女が、心機一転、制作陣に西海岸勢を起用しシンガー・ソングライターとしての個性をポップに発揮した作品だ。David Tは「ミッドナイト・コール」と「パリからのエアメール」の2曲に参加。おだやかながらも芯のある彼女の歌声に、しっとりと優しく寄り添うDavid Tのうたうバッキングは、物語をひと際表情豊かに味わい深く描いていく。

森高千里 / mix age* (1999)

80年代後半から90年代にかけて、ポップアイコンとして時代の渦中にいた彼女の楽曲をリアレンジしたアウトテイク集。ベスト盤的装いと、何をやっても許される的遊び心とが両立する存在感はほかにはない個性で、自由奔放な佇まいとアイドル的立ち位置の中にある音楽的冒険が本作でも健在。「一度遊びに来てよ'99」で途切れなくフレーズを刻むDavid Tのギタープレイは、キッチュな彼女の歌声に出過ぎず退き過ぎずの加減でやさしく対話する姿が目に浮かぶような、引き出しを十二分に発揮した存在感たっぷりのサポートを果たしている。なお、ラストを飾る「Every Day」は、本作版とアレンジが異なり、本作には収録されなかった同曲のシングル盤バージョンにもDavid Tが参加している。

Solomon Burke / Proud Mary (The Bell Sessions) (2000)

1969年にBellレコードからリリースされた『Proud Mary』に、シングル盤オンリーでリリースされた楽曲や未発表曲をボーナストラックとして追加収録した2000年リリースのデラックスリイシュー盤。そのボーナストラックには、70年代以降、御大バークとのセッションが増えていくDavid Tの参加が。1970年にシングル盤としてのみリリースされた「In The Ghetto」や「God Knows I Love You」をはじめ、これまで陽の目を見ずリリースされなかった未発表曲の「The Mighty Quinn」や「Change Is Gonna Come」で、派手さはないものの的確で安心感あるフレーズを奏でるDavid Tの姿がみてとれる。

吉田美和 / beauty & harmony 2 (2003)

ドリカム吉田美和のソロアルバム第2弾。「マリーナ・ショウの名盤『Who Is This Bitch, Anyway?』の現代によみがえらせたかった」とプロデューサー中村正人が語ったソロ前作『beauty & harmony』の方向性はそのままに、ハーヴィ・メイソン、チャック・レイニーら西海岸勢に加え、ボブ・ジェイムズ、オマー・ハキム、ウィル・リーら東海岸勢の腕利き達までもが、レコーディングからアルバムリリース後のソロツアーまでを短期間で強力にサポート。シンガーとして、そしてアーティストとして、その豪華さに一歩もひかず真っ向勝負で挑んだ吉田美和の存在感と力量をあらためて際立たせた意欲作だ。前作に引き続き参加したDavid Tは4曲でサポート。ライヴで見せた渾身のバッキングが記憶に残るアルバムラスト「告白」でのDavid Tのプレイは、ヴォーカリストと寄り添うギタリストという存在の何たるかを、音一つで表現する力強い説得力に満ちている。アルバムリリースから10年、そろそろ第3弾を期待しても悪くはないだろう。

Aretha Franklin / Rare & Unreleased Recordings From The Golden Reign Of The Queen Of Soul (2007)

完成を見ず、オクラ入りとなったデモ音源の域を超えてない楽曲も含めたアウトテイク集。とはいえ、主役アレサの素晴らしいパフォーマンスとそれを支えるミュージシャンたちの息吹を歴史の一コマとして封印した思い切りと清々しさがアンサンブルの行間からあふれているという凄みがここにはある。バーナード・パーディを筆頭にした伝説のフィルモアライヴのメンバーや、ダニー・ハザウェイやレイ・チャールズとの荒削りのセッションは、まだまだほかにもあるのでは?と想像力を無限にたくましくする。刺激的な楽曲がズラリと並ぶなか、エタ・ジェイムズで知られる「At Last」で聴けるシンプルで原石のような高揚は、デヴィッド・スピノザの素晴らしいギタープレイと芯のあるアレサの間合いとをひと際大きく包みこむストリングの調べが、渾然一体となって迫る名演。それにひけをとらずどっしりと佇む、73年リリースの『Hey Now Hey (The Other Side Of The Sky)』収録のボビー・ウォマックの名曲カヴァー「That's The Way I Feel About Cha」の別バージョンは、オフィシャル版ではエレピだった鍵盤が生ピアノに変わり紡がれるバンドアンサンブルをバックに力強くうたい奏でるアレサが実に素晴らしく、その横で力みなくそっと寄り添うDavid Tのうたうバッキングは、しっとりとした表情で楽曲の躍動に貢献している。

Donovan / The Sensual Donovan (2012)

吟遊詩人ドノヴァンがママス&パパスのジョン・フィリップスと1971年にハリウッドで録音したものの、公式にはリリースされず半ばオクラ入りしていた音源が2012年に突如発掘。参加メンバーは、ジョー・サンプル、ウィルトン・フェルダー、スティックス・フーパー、ラリー・カールトンらに我らがDavid Tという、いわゆるクルセイダーズの面々。軽妙なファンキーさと、しっとりとしたアコースティックな風貌を携え、朴訥とした味わい深い主役ドノヴァンの歌声を支えるDavid Tの威風堂々たる的確なバッキングはさすがの一言。自身もOdeレコードに移籍しソロ活動を本格化させながら、同時にセッション機会も飛躍的に増えていく時期特有の、あまりにDavid Tらしい特徴的なフレーズに、40年眠っていた音源がようやく陽の目をみたことへの感謝と安堵を痛感。現在、ドノヴァンのオフィシャルサイトでのみダウンロード販売中。

G.C. Cameron / Love Songs & Other Tragedies [Expanded Edition] (2013)

スピナーズのヴォーカリストが1974年に残した1stソロアルバム『Love Songs & Other Tragedies』に、ボーナストラックを加えリイシューされたエクスパンデッドエディション。このボーナストラックに、70年代前半にG.C.が所属していたモータウンの傍系レーベル、モーウェストからリリースされたシングル盤音源と、未発表だったオクラ入り音源が収録。「Don't Wanna Play Pajama Games」や「What It Is, What It Is」をはじめ、アルバム収録がなかったシングル盤オンリーの音源でDavid Tのきらびやかで粘り気たっぷりなバッキングが堪能できるとともに、公式には初披露となる「I'm Gonna Get You, Pt.1 & 2」でも、ファンクテイスト満載のバッキングが、楽曲のグルーヴを静かながらも華麗に演出。まだまだ陽の目をみない音源が眠っていると思わせる70年代のモータウン。やはり恐るべし。

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