David T. Works Vol.40

ついに40回目まで辿り着きました。通算400枚。でもまだ400枚。まだまだ続くこのコーナー。恐るべしDavid T。ではVol.40の10選をどうぞ。

Al Wilson / Weighing In (1973)

アルバム冒頭から飛び出す武骨ながらも熱のある歌と演奏が、アルバムジャケットに映る主役の姿と見事に重なるアル・ウィルソン73年の傑作がコレ。曲単位でプロデューサークレジットが異なる構成だが、不思議と寄せ集め感は希薄で、クオリティの高い楽曲と仕上がりに思わず拍手喝采。フロアでの需要も軽くクリアしそうな軽快なアレンジワークがダンサブル&グルーヴィな「Listen To Me」、メリハリの効いたリズムが実に心地良い「Keep On Loving You」など躍動レベルは間違いなく“高”。イントロからDavid Tの印象的なメロウフレーズがビシバシ飛び出る「The Last Phonograph Record」は主役のアルの表情豊かな歌声と相まってメロウネス満点の一曲。リオン・ウェアがプロデュースワークに関わった「You Do The Right Things」と「The Magic Of Your Mind」の2曲は、ジョニー・ブリストルを思わせる歌声と、枯れに枯れ濡れに濡れたDavid Tのギターのマッチングが実に絶妙で、思わず手をグッと握りしめたくなるミラクルを堪能できる。

Marvin Gaye / Let's Get It On (1973)

緊張の糸が甘くゆるくアルバム全体を紡ぐマーヴィン流“愛”の賛歌。冒頭を飾るアルバムタイトル曲をはじめ、甘く切ないムーディなストーリーに、後年も多くのアーティストがカヴァーする名曲がずらり。官能的でフィジカルな潔さと、込められた想いの複雑さが拮抗しながら同居する佇まいは一筋縄ではいかない濃密さ。ウィルトン・フェルダー(B)、ポール・ハンフリー(Dr)、ジョー・サンプル(Key)といった西海岸の名手たちをフルラインナップで揃えた万全の演奏力も手伝って、抑制されつつも刺激的なこれぞメロウという名に相応しいアンサンブルが直感的な高揚を誘う。ファルセットを多用するマーヴィンの変わらぬ多彩な歌声は十二分にセクシー。だが前作『What's Going On』とも次作『I Want You』とも異なる色彩で描かれた印象の本作は、陰と陽、静と動、という相反する二面性が音楽という“器”の中で究極的に語られ痛感させられる実に哲学的な一枚でもある。名曲「Distant Lover」が終わるや否やDavid Tのミラクルフレーズによって幕を開ける「You Sure Love To Ball」へと流れ移る瞬間はマーヴィンが描きたかったであろう、本能と理性が交錯する象徴的場面転換。スピリチャルな衝動や葛藤をギターという楽器で代わりに具現化するDavid Tのプレイは、マーヴィンを100%虜にしたに違いない。

Love Unlimited Orchestra / Music Maestro Please (1975)

自作曲にプロデュースワークからアレンジメント、おまけにエンジニアリングまでこなす音楽家バリー・ホワイト。まさに彼の彼による彼のためのワン・アンド・オンリーな世界を突き進むラヴ・アンリミテッド・オーケストラ名義の一枚がコレ。のっけからDavid Tのギターフレーズがきらめく「Bring It On Up」で幕を開ける本作は、前作までに聴けるバリー節に比べると、幾分跳ねるリズムを強調したダンサブルなチューンが目立つものの、大仰にならない程度のオーケストレーションが加わると辺り一面はバリー以外の何者でもないオリジナリティが充満。タイトなリズム隊と相まってバリー・ホワイトという愛の形を艶やかに彩る世界は、David Tとワー・ワー・ワトソンが粋にサポートを果たすラスト曲のメロウナンバー「Forever In Love」に集約。裏ジャケに写る楽団メンバーの写真を見ながら聴くと、臨場感も一層際立ってくるから不思議。

Michael Jackson / Forever, Michael (1975)

少年期から成長した声が少しだけ大人びた佇まい。持ち前のポップ感覚は変わりなく鋭く、表現力は着実に増しているこの時期のマイケルの成長。随所で聴ける落ち着きのある歌声は同時期まだ並行活動していたジャクソン5とは異なる個性の意図的な差異の主張か。トレードマークのアフロヘアーが目立たず、幼さが幾分消え失せたその笑みがクローズアップされるアルバムジャケットの構図も、成功という名の殻からの脱皮という次なるステップの意図を予感させる。抑制された印象の楽曲が多く、なかでも「One Day In Your Life」は象徴的な名曲。オリジナルアルバムとしてはモータウンでの最終期の作品で、これまでマイケルの数多くの名曲を彩ってきたDavid Tは非常に影の薄い参加。マイケル自身の成長とともにDavid Tのきらびやかなフレーズが影を潜めていくという現象は、音楽的表現の階段を一つ超えたという証しなのかも。4年後に誕生するモンスター的名盤『Off The Wall』の序章がここにある。

Andrae Crouch and the Disciples / This Is Another Day (1976)

コンテンポラリー・ゴスペルというジャンルを築く重要人物アンドレ・クラウチ。75年の前作『Take Me Back』よりさらに洗練度が増し、粘り気の少ない聴き心地良さとメリハリの効いた圧倒的なヴォーカルワークが吉と出た大傑作盤がコレ。盟友ビル・マックスウェルとの共同プロデュースに、全曲自作、アレンジワークまで務める才人アンドレの下に招集されたメンバーは、ジョー・サンプル(Key)、ウィルトン・フェルダー(B)、ディーン・パークス(G)、マイケル・ブレッカー(Sax)、アーニー・ワッツ(Sax)、リオン・ラッセル(P)にジェイ・グレイドン(G)までが加わる豪華絢爛ぶり。その名に恥じないクオリティの高いブラックゴスペルが全編に渡って堪能できる極上の一枚だ。アルバムタイトル曲ではマンハッタン・トランスファーを思わせるバックボーカルハーモニーが実に爽快で軽快。そのハーモニーは続く「Quiet Times」のメロウでムーディな雰囲気へと余韻を残しつつ表情を変える。本領発揮の感あるゴスペルナンバー「Soon And Very Soon」は強烈な印象を残すシンガーたちの力強いパフォーマンスに思わず息を飲むものの、一歩もひけをとらない強弱あるバックトラックも素晴らしい輝きを見せる。David Tも出番は少ないものの、この音世界に必要不可欠な要員として参戦。ミディアムテンポの「You Gave To Me」では、ひと際強いアタック感による立体的なフレーズが宙を舞う。この躍動。味わったが最後、“後にはもう戻れませんよ”的快感の嵐。

Freddie Hubbard / Bundle of Joy (1977)

長いキャリアの中では見落とされがちなクロスオーヴァー〜フュージョン期の一枚。女性バックボーカルの起用やストリングスによるアッパーでメロウな楽曲とアレンジが居心地良さを120%演出。フレディのペットも濃すぎず薄すぎずの絶妙なバランス加減で主役として全体をきっちりとリードしている。総力戦の感あるミディアムグルーヴの「Tucson Stomp」やアーニー・ワッツのテナーサックスソロが拍車をかけるクルセイダーズ風アンサンブルの「Rahsann」はハイライトの一つ。多くのギタリストが参加した本作の中でも、David Tはひと際目立つバッキングで全面的に貢献。アルバム冒頭を飾るアルバムタイトル曲では、一聴してそれとわかる存在感あるソロプレイを披露し、軽快なテンポの「Rainy Day Song」では、デイヴィッド・ガーフィールドによるエレピの陰で静かに弾力感溢れるバッキングが縁の下を支える好サポートぶり。スピナーズで有名なスローナンバー「I Don't Want To Lose You」では完全に伴奏としての起用でありながらフレディのペットと互角に渡り合うプレイで応戦する“バッキングで歌う”スタイルが実にDavid T的で素敵だ。

Johnny Mathis / Different Kinda Different (1980)

ジャケットからの想像と音そのものが100%近く合致するであろうポップでAOR的風貌も顔を覗かせる80年作。ジーン・ペイジの指揮によるストリングスが時折りムーディに流麗に情景を彩りながらも、わかりやすいメロディとリズムによる王道ポップスがずらりと並ぶ一枚。グロリア・ゲイナーのヒット曲「I Will Survive」のカヴァーも面白いが、ハイライトは情感たっぷりに歌い上げるメロウナンバー「Love Without Words」だろう。そんな中、David Tは目立たない参加で残念。だが、ルーファスの初代ヴォーカリストでもあるポーレット・マックウィリアムスがゲスト参加したアルバムタイトル曲やミディアムテンポのメロウバラード「Never Givin' Up On You」では、音の隙間に隠れながらもDavid Tの輪郭あるフレーズが僅かに聴こえてくる。控え目度120%のプレイが実に奥ゆかしい風情。

Temptations / Power (1980)

アッパーでダンサブルなアレンジが目立つものの、しっとりとした楽曲では底力を見せる80年代最初のテンプス。地味な一枚だが、モータウン復帰とともに返り咲いたデニス・エドワーズを筆頭に5人の新たな決意のあらわれがそのまま表題曲に象徴的に描かれているかのよう。David Tは軽快なノリの「Isn't The Night Fantastic」で最初から最後まで彼らの歌声をぐいぐいと引っ張る存在感あるバッキングプレイで貢献。スローテンポのメロウナンバー「Can't You See Sweet Thing」ではジーン・ペイジのストリングスアレンジも相まって淡々と静かにバッキングするDavid Tのフレーズがどうにもメロウでしびれまくり。

Ronnie McNeir / Experience (1984)

70年代リリースの『Ronnie McNeir』がフロアでも人気のロニー・マクネアの80年代色満載の一枚。レネ&アンジェラ作の「Come Be With Me」で軽快に幕を開けるダンサブルテイスト中心の4曲入りミニアルバムだが、主役のロニー・マクネアの表情豊かなヴォーカルワークが実に心地良く、いずれも完成度の高い仕上がり具合が二重丸、「Light My Fire」で聴ける幾分硬質気味な音色はいつものバードランドとは異なる音色のようにも思えるが、“フレーズは身に覚えあり”のごとく、まさしくDavid T節全開の切れ味鋭いバッキングでナイスサポート。

LeVert / Bloodline (1986)

80年代的解釈のブラコンテイストにやがて訪れる90年代的R&Bの素養を先取りしたかのような音楽性を披露する3人組。そのうちショーン・リヴァートとジェラルド・リヴァートの2人は、オージェイズのエディ・リヴァートを父に持つ兄弟という折り紙付きの血筋。だが、その表現力は血統書を不要とする質の高さ。86年という時代ゆえ、リズムトラックのほとんどを無機的な打ち込み処理を施す潔さは、裏を返すと自身の歌声と楽曲の良さで勝負する自信の表れ。「Kiss And Make Up」などのミディアムテンポのメロウナンバーでは印象的なメロディでそのポテンシャル高さを披露する。そんな中David Tは2曲に参加。リズミックで重心の低い「Pose」では低音弦による粘り気たっぷりなフレーズバッキングで貢献。ハイライトはアルバム冒頭を飾る「(Pop, Pop, Pop, Pop) Goes My Mind」。最初から最後までメロウネス溢れるバッキングで迫るDavid Tはこの曲に不可欠なもう一人のメンバーのような実に素晴らしいプレイを披露する。

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