David T. Works Vol.33

David Tが参加した数々のアルバムの中からピックアップして紹介するこのコーナー。まだまだ続きますよー。ではVol.33の10選をどうぞ。

Jimmy Smith / In A Plain Brown Wrapper (1971)

見事なまでにシンプルなジャケ。文字通りのアルバムタイトルを冠したミニマムな作りが潔い、ジミー・スミスの痛快ファンキーアルバム。あの名盤『Root Down』の前年にリリースされた本作だが、その佇まいは180度趣きの異なるファンキーチューン満載の一枚。一聴するとジミーのオルガンも影が薄い印象を持ってしまう程、キレのあるバック陣の演奏と女性バックボーカルのグルーヴが腰に来る。フロアで躍動感を誘うにはもってこいの、「時代の揺れ」を十分に楽しめるグルーヴチューン満載の傑作盤だ。David Tもファンク度高しの切れ味鋭いカッティングで応戦。A2「Jimmy Smith Is A Midnight Cowboy」は、ワウペダルによる装飾と弾力感ある縦横無尽のフレーズの両方が一度に堪能できるという「持ってけ泥棒」的一曲。高速ファンクナンバーA4「Zodiac Song」でもその健闘は続き、手に汗握る攻防を容易に想像できる入魂のバッキングが堪能できる。そんなDavid Tに思わず拍手な気分になること必至の一枚。恐るべし。

Lou Rawls / Natural Man (1971)

スローから軽快なナンバーまで実にスムーズに実に軽やかに歌い上げる御大ルーのバラエティに富んだ一枚がこれ。エンターテナーとしての実力十分。じっくり聴くとこの低音ヴォイスは病みつきになりそうなほど安定感たっぷり。というか余裕しゃくしゃく。いつにも増してご機嫌なテイストが溢れかえるのはバックのシャープでタイトな演奏の故かも。キレのあるドラミングはおそらくエド・グリーン。そこにスタッカートの効いた跳ね跳ねベースラインがグルーヴを誘う。フロアでも十分にいける軽いファンキーさを備えたナンバーがちりばめられた落とし穴的アルバムだ。David Tの活躍は少ないものの、それでもB4「Till Love Touches Your Life」ではお馴染みの鈴の音フレーズが宙を舞っている。

Frankie Valli The Four Seasons / Chameleon (1972)

フォー・シーズンズとの共同名義による72年盤。多彩なハーモニーワークにヴァリのトーンが美しく力強く絡む個性は唯一無比の世界だ。Mowestからのリリースということもあってか全体的にシャープで軽いファンキーさを演出しながら、根底に流れるメロディの良さも実感できるという不思議な調和感が実に楽しい。David Tもアルバムのあちこちで堅実なサポートぶりを発揮。A3「You're A Song」での軽いタッチのフレーズや、次第に壮大な盛り上がりを見せるA5「A New Beginning」でのバッキングなのかソロプレイなのかどちらでもありながらどちらでもないという存在感あるプレイなど、楽曲の素晴らしさを十二分にサポートする演出が心地よく響く。B1「When The Morning Comes」でのメロウなフレーズも楽曲に最大限マッチした激渋バッキング。ヴァリのアルバムの中でも屈指の仕上がりだが、David T的にもマストに近い傑作盤だ。特殊加工を施したジャケの出来も実に秀逸。

Bobby Hutton / Piece Of The Action (1973)

シャウト型でありながらどこか甘く柔らかな声質がメロウで溌溂としたソウルネスにハマりにハマるボビー・ハットンの73年盤。グルーヴを生むベースラインとストリングスのマッチングが粋なA4「Until See You Again」や、ポジティブテイストの高揚感溢れるファンキーナンバーA5「Can't Get Enough Of Your Love」など、心に響く楽曲群が実に印象的だ。David Tも地味ながら粘り気たっぷりの骨太フレーズを随所で披露。A2「It's All Been Said Before」で軽やかなにリズムを奏でたかと思いきや、女性バックボーカルが力強い吸引力を放つシャッフルナンバーB3「There Ain't No Man」では全編に渡ってキラ星プレイを連発。哀愁味溢れるマイナーチューンB4「Can't Stop Talking」やミディアムファンクナンバーB5「A Part Of Me」では思わずワウプレイまで飛び出すという大盤振舞い。が、決して叩き売りでないところがDavid Tの真骨頂。聴く者に静かに余韻を残すそのマジックに今夜も華麗に騙されたい気分。明日もね。

Vikki Carr / One Hell of a Woman (1974)

今なお第一線で活躍するポップスシンガー、ヴィッキー・カーの74年作。カーリー・サイモンの「Haven't Got Time For The Pain」やジョン・デンバーの「Sunshine On My Shoulders」、カーペンターズの「Let Me Be The One」などのカヴァーをしっとりと、そして安定感たっぷりに歌い上げる彼女の懐の深さときたら。ストリングスの流暢なアレンジも手伝って、美しい色彩風景にのびのびと奏でる彼女の姿が全編に映る。そこに絡むDavid Tの個性的なバッキングの妙。A2「Sleeping Between Two People」の途中で突如として繰り出されるDavid Tの鈴の音フレーズは一瞬にして世界を一転するに十分の効果を発揮。またバラードナンバーA4「That's The Way We Fall In Love」でも弾力感あふれるカッティングフレーズでヴィッキーの歌声を力強くサポート。バラエティに富む数々の情景たちはアメリカンポピュラーミュージックのエッセンスに満ちあふれている。

Blue Mitchell / Function Junction (1976)

格段にポップ色が強くなったブルー・ミッチェルの76年作。ステディな演奏のキレはバック陣の面目躍如。ストリングスとホーンセクションによるカラフルな音像は豪華絢爛。ジェイムズ・ギャドソン(Dr)、ロン・ブラウン(B)らのリズム隊も質実剛健。クロスオーバー的肌合い満載の本作にDavid Tも万全の援護射撃。ミラクルズの「Love Machine」での転がるようなフレーズの数々、B2「Delilah」でのメロウ極まりないエレガントなプレイなど、お手本中のお手本がぎっしり満載。スムーズでありながらどこか黒々。そんな当時のソウル・ジャズの進化形にもDavid Tのブラックフィーリングはハマりにハマる。魅力寄せるは老若男女。みんなみんな拍手喝采。

Jermaine Jackson / Frontiers (1978)

いきなりの16攻撃。ダンスビートが宙を舞うジャーメインの78年作がこれ。ビシバシキメる器の大きいギターカッティングはファンキー大会開始の合図。音のトレンドが移り変わる微妙な時期であることはあまりにパーカッシブなベース音を聴けば納得の感も。スティーヴィー・ワンダーの「Isn't She Lovely」の好カヴァーも本作に彩りを添えているが、何と言っても聴きどころはDavid Tが参加したメロウチューン「Je Vous Aime Beaucoup」だろう。参加したというよりこの曲、クエスチョンマークが全灯する問題の一曲なのだ。というのもイントロ部分はJackson5の「Never Can say Goodbye」とクリソツ。と思ったのも束の間、途中間奏部分も聴き覚えのあるDavid Tのフレーズがチラリチラリ。あれれあれれ。真相は如何に?

Carrie Lucas / In Danceland (1979)

まさにタイトル通りのダンスナンバーが目白押し。ウィスパーズで有名なSOLARレーベルのお抱え嬢キャリー・ルーカスが70年代最後に放ったこの一大ディスコアルバムに、1曲だけDavid Tが参加。アレンジャーがこれまたこの1曲のみ参加のジーン・ペイジとくれば有無を言わさずの納得感。アルバム冒頭を飾るA1「Danceland...」がそれで、他にもワー・ワー・ワトソン(G)、ポール・ジャクソン(G)、エド・グリーン(Dr)、エディ・ワトキンス・Jr(B)、ソニー・バーク(Key)と当時のダンスチューンの担い手が一同に会した豪華な一曲だ。ゆったりとしたミディアムグルーヴに微かに絡むDavid Tの引き際バッキングの力が意外と大きな存在であることを再認識すること然り。

Leda Grace / Amazing (1980)

レダ・グレース嬢の80年作。ジェイムズ・ギャドソン(Dr)、ハーヴィー・メイソン(Dr)、レオン・ンドゥグ・チャンクラー(Dr)、ポール・ジャクソン(G)、ネーザン・ワッツ(B)、ジェリー・ピータース(Key)、ヴィクター・フェルドマン(Per)など書き切れない程の豪華メンバーが勢揃い。典型的なブラコンのオンパレードかと思いきや、時折り見せる質の高いアンサンブルによる楽曲が程良いバランスとなって安心感をもたらす。壮大に歌い上げるバラードナンバーB2「Overnight Sensation」などでは彼女の実力の一端が垣間見え聴きどころも多い。古くは自身のソロ2nd作『Going Up!』でもプレイした「My Baby Loves Me」にDavid Tが参加。これといって特徴のない楽曲にも関わらずその馴染みのあるフレーズが耳に届くや否や背筋がピンと張る感覚はいつになっても消えることはない。病気かしら。

Stephanie Mills / I've Got The Cure (1984)

ジョージ・デュークのプロデュースによるコンテンポラリーサウンドが印象的なステファニー・ミルズの84年作。シンセ多用の典型的な80年代サウンドをバックに一歩も引かない伸びやかなボイスで応戦するステファニー流R&Bが目白押しだが、ジョン・ロビンソン(Dr)、ポール・ジャクソン(G)、フレディ・ワシントン(B)といった顔馴染みの一流どころを配したケニー・ロギンスの名曲カヴァー「Give It Half A Chance」は聴きどころの一つ。David TはB3「Everlasting Love」1曲のみに参加。スローテンポのバラードナンバーに一際映えるDavid Tのスウィートなバッキング。80年代も70年代も関係なしの穏やかな音空間がそこに広がる。

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