David T. Works Vol.03

David Tが参加した数々の名演の中からピックアップして紹介する第三弾。アルバム全編に渡ってのプレイではないものの、少なからずDavid Tの香りを漂わす、そんな名演の数々を。ではVol.03の10選をどうぞ。

Merry Clayton / Merry Clayton (1971)

Odeレーベル所属の元祖ディーバ、メリー・クレイトンの2ndアルバム。1st『Gimme Shelter』でも共演しているDavid Tだが、ここでも彼女のパワフルな歌声をしっかりとサポート。ポール・ハンフリー(Dr)、ウィルトン・フェルダー(B)、ジョー・サンプル(Key)、ジェリー・ピータース(Key)といった、ルー・アドラーのプロデュースによるバック陣は旧知で多彩。彼女もひと際ソウルフルで力強く堂々たる歌声を披露する。中でも「Same Old Story」は、ゆったりと高揚するバラード調の展開に、David Tの素晴らしいフレーズが絡み付く名演中の名演。軽やかなブラックフィーリングとディープな感覚が絶妙なバランスで溶け込んでいる本作は、その鼓動がよりシンプルに伝わってくる。

Paul Humphrey / Paul Humphrey And The Cool …Aid Chemists (1971)

そのメリー・クレイトンとも旧知の仲、西海岸ファンキービート職人ポール・ハンフリーの1stソロアルバム。ドラマーのソロ作にありがちな火花散る音数の嵐は期待しないほうが無難。むしろ、ゆったりとした心地良いミディアムテンポの楽曲群の中、シンプルかつステディなグルーヴをものにするハンフリーの姿がここに映る。音の行間が聴こえてきそうな軽いグルーヴが小気味良いファンキー感覚を演出。David Tもワウペダルを駆使したエキサイティングなプレイを披露。A3「Sack Full Of Dream」で聴ける必殺のイントロギターは見事の一言だ。お互いを知り尽くすからこそ浮かび上がる自然な呼吸が、凡人には到達不可能なリズムの競演を生み出した。強烈。

Steve Ferguson / Steve Ferguson (1973)

70年代初頭「アサイラムレーベル唯一の黒人シンガー・ソングライター」という触れ込みでデビューを飾ったスティーヴ・ファーガソン唯一のアルバム。その独特の唱法から発せられるナイーヴなメロディと楽曲は、70年代屈指の稀有な存在。どこまでも静かでどこまでも物憂げな空気。あまりに柔らかなフォーキー感覚は、David Tを始めとするタイトなバック陣によって、素朴さと洗練さの同居をかろうじて可能にするアコースティック&ソウルとでも言うべき特異なジャンルを作り出した。70年代にひっそりとその形と影を生み落としたSSWの名盤だ。

Quincy Jones / Body Heat (1974)

奇才クインシー・ジョーンズによるメロウグルーヴの金字塔。リオン・ウエアを全面に迎え、哀愁感たっぷりのメロウネスと極上のアンサンブルが華麗に結実した大傑作盤がコレ。一線級の職人による“超”の字が付く高水準の演奏力とリミックス技術により、新たな時代を予感させる巧緻な音世界を作り上げた。アヴェレージ・ホワイト・バンドやマキシン・ナイチンゲール、セルジオ・メンデスら、多くのカヴァーでも知られるリオン・ウエアの名曲「If I Loose THis Heaven」でのDavid Tのプレイは、しっとりとした世界の中で、ただただ酔うだけの自分という存在に気付きながらも、「これでいいのだ」と意味不明な確信を抱かせてくれる名演で虜にさせる。素晴らしい。

Leon Haywood / Come And Get Yourself Some (1975)

LAの一流ミュージシャンたちをバックに起用したリオン・ヘイウッドの75年作。ディープ系で熱いソウルとファンクネスが持ち前の彼だが、本作ではタイトなアンサンブルが功を奏し、メロウでありながらクールであるという風貌を漂わす。聴きどころでは洗練が見え隠れするから不思議。ある意味でブラコンの元祖といったら言い過ぎか。David TはA2「This Feeling's Rated Extra」で絶妙のきら星プレイを披露している。

The Pointer Sisters / Having a Party (1977)

フリーソウル系でも人気の高いポインター・シスターズの77年作は、全編に渡って躍動感溢れる最高のソウル&ファンキーアルバム。それもそのはず、脇を固める面々はジェイムズ・ギャドソン(Dr)、エド・グリーン(Dr)、ワー・ワー・ワトソン(G)など見事な顔触れ。スティーヴィー・ワンダーが参加した「Bring Your Sweet Stuff Home To Me」では、軽快に跳ねるベースラインと、すき間に揺れるエレピの音色が浮遊するグルーヴを演出。A3「I Need A Man」で聴けるルイス・ジョンソンのチョッパーベースはフロアでの盛り上がりが容易に想像できる爆発力。アルバムラストを飾る「Lonely Gal」では、David Tの粘り気たっぷりフレーズが存在感を見せつける。

Syreeta / One To One (1977)

リオン・ウエアをプロデューサーに迎えた3rdアルバム。リオンの作り出す哀愁たっぷりの音世界に、伸びやかにハマるシリータのハイトーンボイスが軽妙なソウルフィーリングを演出。ソニー・バークのエレピが心地良く鳴り響くA1「One To One」では、 抑制気味にフレーズを重ねるDavid Tだが、続くA2「I Don't Know」はリオン節全開の高揚感溢れるメロウネスが全開。そうなるとDavid Tのバッキングは独壇場の極致だ。

Bobby Lyle / New Warrior (1978)

70年代ジャズファンク&クロスオーバー路線で、うねるキーボードを披露し続けたボビー・ライルの1stソロ作。ピアノ、オルガン、エレピ、ムーグなど、ありとあらゆるキーボード群を駆使したカラフルでファンキーなアレンジが心地良い。David TもB1「Groove」で、ハーヴィー・メイソンのドラムに絡みつく小気味良いファンキーカッティングで好サポート。アルバム全体に渡りボビーのメロディアスかつシンコペイションの効いたリズミックなキーボードが色濃く表現されており、浮遊感漂うジャズファンク感覚が心地良い。

Anita Baker / Songstress (1983)

ゴスペルに親しみ、ソウルフルな歌声を聴かせる元チャプター8のボーカリスト、アニタ・ベイカーの1stソロアルバム。「Feel The Need」でのDavid Tのプレイときたら、そりゃあもう鬼に金棒10本でも足りないメロウグルーヴ。ジャジーでソウルフルな彼女のボーカルスタイルに、メロウネスを極限的に解釈するとこうなると言わんばかりのキレで迫るDavid Tのギター。80年代、彼のギターは時代が求めたブラックネスに適応した「David T」としか言いようのないフレーズとフィーリングを定着させる。それは90年代に入っても衰えることなく、さらに新しい極みと深みを増そうとしている。恐るべし。

Coolin''n Groovin' A Night At ON-AIR (1993)

90年代初頭、国内では空前のジャズファンク・ムーヴメントが巻き起こった。その発端となったのがプレスティッジレーベル再発を行ったレキシントン。このレキシントンの画期的偉業によって実現が可能となったJazz Groove Sessionの集大成的ライヴが93年の本作だ。急遽召集された往年のグルーヴマスターたちが一堂に来日を果たした記念すべきライヴ。バーナード・パーディ(Dr)を中心に揃えられたメンバーは、チャック・レイニー(B)、ソニー・フィリップス(Org)、ルー・ドナルドソン(Alto Sax)、パンチョ・モラレス(Per)らに、当初予定されていたコーネル・デュプリーの代役として急遽抜擢された我らがDavid T。「Tighten' Up」や「What's Going On」でのDavid Tのプレイは、90年代に入っても決して衰えることのないその凄腕ぶりを存分に発揮した名演中の名演だ。それだけでも聴く価値は十分にあるが、それ以上にバーナード・パーディのハイハット多用のグルーヴが堪能できるという、実に傑作なライヴアルバムなのである。

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