David T. Works Vol.34

David Tが参加した数々のアルバムの中からピックアップして紹介するこのコーナー。まだまだ続きます。ではVol.34の10選をどうぞ。

Andy Williams / Raindrops Keep Fallin' On My Head (1970)

米国の国民的大御所シンガーの70年盤。サイモン&ガーファンクル「明日にかける橋」やジョニ・ミッチェル「Both Sides Now」など 、シンガー・ソングライターのスタンダードとも言えるアメリカンミュージックのカヴァー曲を壮大なオーケストレーションとともに歌い上げる貫禄十分の一枚だ。その完成度たるやそこらの似非シンガーが束になってもかなわないクオリティ。長年に渡って多くの人々から愛されるアンディワールドの一端がこの一枚を聴くだけでも伺い知れるはず。B.J.トーマスでも有名なアルバムタイトル曲「雨にぬれても」で、お馴染みのメロディに流れるように響くDavid Tのギターがあまりにも美しい。

Anthony Newley / Pure Imagination (1971)

俳優でもありソングライティングもこなすアンソニー・ニューリー。その彼が関わった映画の楽曲を数曲収録した71年作がこれ。壮大なオーケストレーションを配したキメの細やかなアル・キャプスのアレンジが光る本作は、大人数によるコーラスワークも手伝って実にロマンティックな彩り。弦楽器と生ピアノの小気味良さが対照的なバランスで調和するアルバムタイトル曲をはじめ、王道とも言うべきハリウッドサウンドの真髄を垣間見ること必至の一枚だ。David TはB1「There's No Such Thing As Love」1曲にいかにもDavid Tらしいマイルドなプレイで参加。メロディアスなこの曲をより一層まろやかに包み込む名演だ。

King Errisson / Island Son (1973)

数多くのセッションに名を連ねるパーカッショニスト、キング・エリソンが73年に残したラグド感覚溢れる一枚。彼自身による力みのない味のあるヴォーカルワークと、ウィルトン・フェルダー(B)、ハーヴィー・メイソン(Dr)、ジェリー・ピータース(Key)といった旧知の面々の手堅いサポートによる、ソウル、ジャズの要素を絶妙にブレンドした不可思議なテイストが全編を彩る。ソウルフィーリングに溢れる「Everyone Knows」、スティール・ドラムの音色が奇妙な異国情緒感を漂わすグルーヴナンバー「Life」、複雑なコード感のギターとエレピの背後でひたすら連打されるパーカッションが宙を舞うように交錯する「Pretty Pepper」など、一筋縄ではいかないグルーヴの数々が手ぐすね引いて待ち受ける。ホーンセクションとパーカッションが大活躍する南国ムードのアーシーナンバー「People Got To Live A Better Way」で聴けるDavid Tのさり気ないフレーズとバッキングも、厚みのある音の洪水の中に違和感なく溶け込んでいる。

Foster Sylvers Featuring Pat & Angie Sylvers (1974)

シルヴァース兄妹の二人のお姉さんが末っ子フォスター・シルヴァース君をサポートした74年盤。バラエティに富んだポップでハッピーなファンキーナンバーが満載の楽しさ120%の内容に仕上がっている。ここでのDavid Tのサポートぶりはかなりの充実度。アルバム冒頭を飾る「Na Na Hey Hey Kiss Him Goodbye」のパーカッシヴかつキレのあるDavid Tのギターワークが冴えわたるグルーヴィチューンに引き続き、「I Got You Babe」での落ち着いたムードのDavid Tトーンが姿を表わせば、そこから先の展開が容易に窺い知れるというもの。強烈なドラミングと躍動感溢れるベースラインが印象的な「Hang On Sloopy」や、弾力感溢れるシンコペーションの妙が強力なマーヴィン・ゲイのカヴァー「Stubborn Kind of Fellow」など、全編に渡ってDavid Tサウンドが炸裂。これは穴盤です。

The Sylvers / The Sylvers III (1974)

そのフォスターは不参加のシルヴァースの3rd。荒削り感が薄れつつ躍動感はそのまま、洗練さは1st、2ndからさらに加速した感のある質の高さは彼らの結束力の賜物か。ハーフタイムシャッフルがついつい腰を動かす「Don't Give Up The Good Life」での粘っこいリズムワーク、スローテンポでメロウネス満点の「Even This Shall Pass Away」での円熟味あるフレーズの数々など、David Tのプレイも相変わらずの貢献ぶり。全曲ファミリーのペンによる書き下ろしオリジナルで占められた本作は、ポップでファンキーな彼らの持ち味を残しながらも、年齢的にも熟したテイストがちらりと覗くソウルフィーリングがマイルドでメロウ。2nd『The Sylvers II』にばかり話題が行きがちだが、聴き逃せない心地良いファンクネスが満載の彼らの代表作だ。

Original Soundtrack / FM (1978)

リンダ・ロンシュタット、イーグルス、ドゥービー・ブラザーズ、ボズ・スキャッグス、ビリー・ジョエル、クイーンなどなど、当時のスター勢揃いの感ある楽曲群で構成される同名タイトル映画の2枚組サントラ盤である。文字通りラジオ局を舞台にした映画のストーリーにちなみ、ヒットの曲のオンパレード、出し惜しみ感皆無の豪華アルバムだ。ほとんどが既出の音源だが、唯一、本映画のために書き下ろされたメインテーマともいうべきスティーリー・ダンの「FM」は、スティーリー・ダンのオリジナルアルバムには収録されてないこともあり、ファンにはたまらない楽曲になっている模様。その「FM」にDavid Tは控え目、というよりほとんど存在感の感じられないフレーズで参戦。この微妙な編集感がいかにもスティーリー・ダン的で思わずニヤリ。

Smokey Robinson / Where There's Smoke (1979)

名曲「Crusin'」収録の79年作。スモーキーのハイトーンヴォイスは健在で、アコギのソロとエレピが軽やかなタッチの「Ever Had A Dream」、レア・アースの「ゲット・レディ」の自演カヴァーやスティーヴィー・ワンダー作の「I Love The Nearness Of You」など、聴きどころ十分。David Tは堅実なバックアップに専念。アルバムラストを飾る「Crusin'」は、ゆったりとしたソウルネスにDavid Tのギターとスモーキーのメロウボーカルが実に心地良く響く、本作のハイライト。

The Ballads / Confessing The Feeling (1980)

70年代に録音されたシングル盤や未発表曲を集めた日本国内のみ発売の編集盤。録音年代にばらつきがあり統一感は希薄気味だが、それでも彼らの素晴らしいヴォーカルワークが十分に堪能できる好盤だ。クレジットがないため不明だが、伴奏陣のステディでソウルフィーリング溢れるサポートも二重丸。女性ヴォーカルとのデュエットによる「Treat Me Like Your Woman」で聴けるメロウなコード感や控え目に挿入されるエレピとバッキングギターには身も心もとろける寸前といったところ。73年に録音されたメロウナンバー「Wait」で聴けるDavid Tのプレイは、バックアップに徹し控え目ではあるももの、一聴してそれとわかる鈴の音フレーズが、彼らの甘くメロウな歌声と見事な調和を果たす。

Victor Tavares / Victor Tavares (1981)

ヴォーカルグループ、タヴァレスのメンバーではないものの、兄弟の一人であるヴィクター唯一のソロ。兄弟の一人フェリシアーノと、タヴァレスとも親交のあるベンジャミン・ライトの共同プロデュースによる本作は、アッパーでビートの効いたメロディアスな80年代サウンドと、メロウネス溢れる洗練度の高いミディアムバラードが混在する均整のとれたコンテンポラリーな仕上がり。ポール・ジャクソン・Jr(G)やジェイムズ・ジェマーソン・Jr(B)らのバックアップは影が薄いものの着実感は十分。David Tは目立ったフレーズこそ少ないものの、ほぼアルバム全編に渡ってその特徴的な音色を披露している。ホーンセクションとの一体感十分なダンスナンバーB1「First House On The Right Side」や、スローバラードB2「Once You've Gone With Your Mind」などで聴けるフレーズは存在感たっぷりだ。

Aretha Franklin / Aretha (1986)

ストーンズの名曲「Jumpin' Jack Flash」のカヴァーをキース・リチャーズがプロデュースし大ヒットを記録した86年作。その他のほとんどの楽曲をプロデュースするのは前作『Who's Zoomin' Who』に引き続き、自身もドラマーとして参加したナラダ・マイケル・ウォルデン。当時人気絶頂だったジョージ・マイケルをデュエットパートナーに起用した「I Knew You Were Waiting For Me」はグラミー賞を受賞するなど、80年代のアレサの代表曲の一つとなった。アレサ自身がプロデュースしたスローバラード「Look To The Rainbow」もアレサ特有のシャウトが全編にみなぎる名演だ。そんな中David Tはアレサがプロデュースしたもう一つの楽曲「He'll Come Along」のみに参加。同じくこの曲のみ参加のジェイムズ・ジェマーソン・Jr(B)、ジェイムズ・ギャドソン(Dr)らの気心知れたサポート陣との一体感でアレサをさりげなくバックアップしている。アルバムジャケットデザインはアンディ・ウォーホル。

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