David T. Works Vol.49

まだまだまだ続くこのコーナー。Vol.49の10選をどうぞ。

Tania / Tania (1969?)

60年代後半と思われる時期、L.A.のマイナーレーベルにひっそりと残されたシンガーの一枚。「Proud Mary」や「Dock Of The Bay」などのカヴァーを、力み無くナチュラルテイストで奏でる彼女の歌声は、この時期多数存在したシンガー・ソングライター的テイストにも通じる佇まい。幾つかのレコーディングの成果を一枚にまとめたと思われる、素性も制作経緯も謎の一枚だが、プロデュースを務めるのは、David Tの1stソロアルバム『The Sidewalk』制作にも関与したハリー・ミッチェル。そうなるとDavid Tの参加も納得というもの。「I'm The One Who Loves You Babe」で聴ける全編を駆け抜けるDavid Tのバッキングは、この時期の柔らかで弾力的なファンキー&メロウフレーズ満載で思わず聴き惚れてしまうこと然り。

Cheech & Chong / Cheech And Chong (1971)

人気コメディアンの二人が織り成すコメディアルバムのこれが1st。音楽アルバムというよりも二人の台詞中心の作品で、日本人にはこの面白さが伝わりにくいのかもしれないが、毒ッ気たっぷりのユーモアが本国アメリカでは未だに根強い人気だとか。David TのソロアルバムをリリースしたOdeレコードからの一枚で、プロデューサーはルー・アドラー。となれば、そこに顔を覗かせるのはDavid T。というわけで「Wink Dinkerson」の背景にうっすらと鳴っている楽曲に、ワウペダルによるファンキーなギターで貢献するという、いささか風変わりな参加を果たしている。

The Temptations / A Song For You (1975)

ディスコ的佇まいとソウル&ファンクフィーリングが充満するこの時期の彼らの魅力が凝縮した70年代中期の名作。バラエティに富む全曲聴き応え十分だが、何と言ってもアルバムタイトルにも掲げられたレオン・ラッセルの名曲カヴァー「A Song For You」で聴ける情感のこもった迫力とソウルネスに永きに渡る彼らキャリアの底力を痛感。David Tが参加した「I'm A Bachelor」は、同年リリースされた彼らのアルバム『House Party』同様、ジェイムズ・カーマイケルのアレンジによる裏方の裏方的役回りながらも、キラ星フレーズでしっかりとその存在感を残すフレーズのマジックがみてとれる。

Love Unlimited / He's All I've Got (1976)

バリー・ホワイト主宰のUnlimited Goldレーベル第一弾アルバム。そのバリーの秘蔵っ子という謳い文句の通り、彼女たちの音楽にバリー・ホワイトは欠かせない存在。だがしかし、バリーのエッセンスが十二分にハマるのは彼女たちの歌声であることもまた真なりなのだ。David Tの魔法のカッティングとフレーズは、そんな彼らの良質な関係構築をもサポート。軽妙なグルーヴにストリングスがからむ「I Can't Let Him Down」など、聴こえてくるスウィートな旋律は抜群のコンビネーション。その他「Never, Never Say Goodbye」や「Whisper You Love Me」などで聴ける、ごく僅かな音量しか存在しないDavid Tのフレーズも、彼女たちにしか描けない豊潤なメロウネスのエレメントとなって佇む。そんなバックアップを背に受け、伸びやかに軽やかに、そして美しいハーモニーを奏でる3人。たまには彼らの師弟関係を意識せず、彼女たちの歌声をひたすら浴びるように感じるのも悪くない。

Barry White / Barry White Sings For Someone You Love (1977)

そのラヴ・アンリミテッドの育ての親、バリー・ホワイトの77年作。盟友ジーン・ペイジがクレジットされてない時期の作品だが、自身でアレンジまでを担うというソロワーク振りを発揮。変わらぬバリーサウンドを自在に表現してみせるところが、ただ者ではないこの人のマジックだ。その貢献の一つがDavid Tのギターフレーズであるところも実に面白く興味深い事実。派手さは皆無。「You Turned My Whole World Around」など、ほとんど聴きとることができない微細な音量バランスのDavid Tのギターワークは、同じフレーズをひたすらループしながらリズムをキープする堅実プレイ。決して強い主張ではないものの、違和感なく横たわる「退きの美学」的抑制バッキングは、聴き手だけでなく御大バリーの心をもグッとつかんだに違いないのだ。

Johnny Hallyday / Hollywood (1979)

シルヴィ・ヴァルタンの元夫としても知られるフランスの国民的シンガーが、アルバムタイトル通り、L.A.に乗り込み挑んだ一枚。華やかなハリウッドスタイルを描いたアルバム表ジャケのアートワークに対し、うらびれた風景を描いた裏ジャケとの対比が、ショービズ世界の陽と陰を象徴しているかのよう。チャールズ・ヴィール(Arr)、ジェイムズ・ギャドソン(Dr)、パウリーニョ・ダ・コスタ(Per)、アーニー・ワッツ(Sax)らツワモノたちを従えハツラツとしたパフォーマンスで繰り広げるR&RやR&Bは、AOR的香りも注ぎ込んだ安定感たっぷりのオレ流的存在感。アルバムラストを飾る楽園的ムード漂う「T'as Le Bonjour De L'amour」で聴けるDavid Tの弾力的カッティングによる躍動感溢れるバッキングは、個性的音色ながらも主役の存在感を引き立てるという至難を違和感なく両立させるマジックで、安心感たっぷりのパフォーマンスだ。

Various Artists / "Pops We Love You"...The Album (1979)

モータウン創始者ベリー・ゴーディの父親に捧げるというコンセプトの企画盤は、アルバムジャケットに写るモータウンアーティストたちの楽曲で構成されたオムニバス。各アーティストの既発の楽曲中心の構成で、中でもマーヴィン・ゲイの「God Is Love」は、初出のアルバム『What's Going On』版とも異なるバージョンが収録されるなど貴重な一枚でもある。ハイライトとも言える、ダイアナ・ロス、マーヴィン・ゲイ、スモーキー・ロビンソン、スティーヴィー・ワンダーが勢揃いした本作のテーマソング「Pops, We Love You」は、モータウンを代表する華やかさを象徴するとともに、代わる代わる聴こえてくる特徴的な歌声に4人の個性を痛感。豪華な共演陣の中、イントロからエンディングまで、華麗できらびやかなDavid Tのギターが彩りを添えていることに拍手をおくりたい気分だ。

Christy Essien Igbokwe / Ever Liked My Person? (1981)

ナイジェリア出身シンガーがL.A.に乗り込み録音した一枚。ネイザン・ワッツ(B)、ジェイムズ・ギャドソン(D)、ウェブスター・ルイス(Key)、ジョージ・ボハノン(Trombone)らL.A.人脈が起用される中、David Tのギターもバランス良く配置。SSW的佇まいのアルバムタイトル曲にはじまり、ミドルテンポのダンスチューン「I Want To Keep Your Appointment」や「Shooby Shooby」、ゴスペル調「Stay Apart For A While」に、レゲエテイストの「Lonely Road」など、バラエティに富んだ楽曲を職人的バッキングで静かに支える貢献ぶり。なお、アルバムジャケットにクレジットされた「Davy T. Walker」の表記はご愛嬌。

Brothers Johnson / Kickin' (1988)

David Tがソロアルバム『With A Smile』を録音していたL.A.のアルチザンスタジオに、彼ら兄弟が訪れたことがきっかけとなってDavid Tの参加にも繋がったという一枚。80年代的ファンキーテイストが全編を支配する彼ららしい仕上がりに、David Tも静かに貢献。弾力感溢れるパーカッシヴなバッキングが頼もしい「P.O. Box 2000」や、硬質なリズムでありながらアルバム中最もメロウな香り漂う「We Must Be In Love」で聴ける変わらぬ音色に、緊張感ある躍動と安堵感が両立するDavid Tのフレーズが随所に効いていることを痛感。

Harold Jackson's Ink Spots / Once In A Million Dreams (1999)

幾多のメンバー交代や率いるリーダー毎の複数派閥の存在など、永きに渡る活動の形態はさまざまで少々複雑。だが1930年代の結成起源から、グループ名はしっかりと生き続けてきたというドゥワップ集団の99年作品がコレ。本作は50年代からメンバーとなったハロルド・ジャクソン名義によるグループ名がつけられた形でリリース。スタンダードな名曲カヴァーを中心とした構成で「I Don't Want To Set The World」にはルー・ロウルズが、「If I Didn't Care」にはフィル・ペリーがゲスト参加している。ほぼ全編に渡って参加したDavid Tも彼ら熟達した歌声を、しっとりとしたプレイでサポート。まさに円熟の極み。“大人の音楽”という言葉では括れない、年齢を重ねてしか生まれ得ない音楽の到達点の一つのような、ふところ深い佇まいがここにある。

back next
Top
About
『For All Time』
『Wear My Love』
『Thoughts』
Solo album 60's & 70's
Solo album 80's & 90's
Unit album
Band of Pleasure
David T. Works
 01  02  03  04  05  06  07  08  09  10
 11  12  13  14  15  16  17  18  19  20
 21  22  23  24  25  26  27  28  29  30
 31  32  33  34  35  36  37  38  39  40
 41  42  43  44  45  46  47  48  49  50
 51  52  53  54  55  56  57  58  59  60
 61 NEW!
Discography NEW!
Talk To T.
Something for T.
 #01 タイロン橋本さん
 #02 清水興さん
 #03 宮田信さん
 #04 中村正人さん
 #05 石井マサユキさん
 #06 椿正雄さん
 #07 二村敦志さん
 #08 鳴海寛さん
 #09 山岸潤史さん
 #10 山下憂さん
 #11 切学さん
 #12 ニール・オダさん
 #13 風間健典さん
 #14 中村正人さん
 #15 伊藤八十八さん
 #16 続木徹さん
Link