David T. Works Vol.01

ここではDavid Tが参加した数々の名演の中からピックアップして紹介します。その全てを取り上げるのは至難の業。とてつもない数だと予想されますが、彼の素晴しいプレイを少しでも紹介するための第一歩として…。まずはVol.01として10選の紹介です。

The Crusaders / Hollywood (1972)

クルセイダーズは多くの名盤を残しているが、中でもDavid Tといえばコレ、という傑作の一枚。ウィルトン・フェルダー(B)とジョー・サンプル(Key)に絡み付くDavid Tのギターが艶やかでファンキー。旧知の中という安心感からか、ラフにそして伸び伸びとしたプレイながらも、タイトに締めるべきは締める。そんな自由奔放さが随所に感じられる軽快感が実に心地良い。バンドでアンサンブルの楽しさが満載の本作は、まるで彼のソロ作といってもいいくらい全開のギター音がたまらなく素敵。

Odyssey / Odyssey (1972)

フリーソウル文脈では必聴のグルーヴ系アルバムの決定打。フロアで一撃必殺の一曲「Battened Ships」はもはや定盤を通り超した「永久"決"盤」とも言える需要を生み出してしまった。冒頭を飾る「Home of the Brave」で聴ける、ファンキーかつアーシーなフィーリングが、バンドの姿を如実に表現。単なるグルーヴィなアンサンブルだけでない、個性的な佇まいが印象的だ。中でも「Our Lives Are Shaped By What We Love」でのDavid Tのプレイはまるで映画のワンシーンを勝手に作り出してしまったかのような哀愁たっぷりのメロウサウンド。グルーヴの中に確実にギターが歌う名演だ。

Donald Byrd / Street Lady (1973)

75年の『Steppin' Into Tomorrow』や『Places and Spaces』と同様、“渇いた洗練”ともいうべき空気感と鮮明さを演出する、ラリー・ミゼルのサウンドプロダクション全開の一品。レアグルーヴとして評価の高い本作は、疾走感と緊張感による揺れ具合を見事に表現されたジャズファンクがずらりと並ぶ。ここで聴けるDavid Tのリズムギターの存在感たるや! 抜群のタイム感によるノリにノッたピッキングとカッティングが快感度指数120%に達したとき、おそらく彼も昇天したに違いない。

Tavares / Check It Out (1973)

タバレスといえば往年のディスコバンドというイメージが強いが、なんのなんの彼らの1stである本作はジョニー・ブリストルのプロデュースによるメロウグルーヴの傑作盤だ。アントン・タバレスのちょい喉に引っかかりぎみの伸びのあるハイトーンヴォイスに厚みのあるコーラスワーク。この必殺のコーラスこそタバレスの最大の魅力である。軽快なリズムとソフトタッチでゆったりとしたグルーヴが絶妙にマッチするDavid Tのギターワークに、心も体も揺れ続けること間違いなし。70年代の王道的メロウネスを見事なまでにサポートしているDavid Tのプレイをアルバム全体で体感することができる本作に、幾度となく感謝、なのである。

Johnny Bristol / Hang On In There Baby (1974)

そのジョニー・ブリストル自身のソロ1st作は、全編に漂うストリングスと正確無比なリズムワークが絶妙にブレンドされた極上のソウルアルバム。表題曲にもなった「Hang On In There Baby」の甘く切ない美しさ。90年代にいきなり再評価され一気に定番の地位を不動のものにした本作は、メロウネスと躍動感が両立した素晴らしい仕上がりとなった。ここでもDavid Tはオリジナリティ溢れるバッキングとソロを十分に堪能させてくれる。このギターワークを聴けば、彼の右に出るものは本当にいないと断言したくなるのだ。

Nick Decaro / Italian Graffiti (1974)

世間ではこのアルバムを「元祖AORの名盤」「AORの金字塔的名盤」と絶賛している。確かにその通り素晴らしい名演が収められた一枚。だが、1曲目「Under the Jamaucan Moon」で飛び出すDavid Tの反則スレスレ飛び道具的一撃のソロプレイがリスナーに本作の個性を印象付けるのに一役買っていることを忘れてはならない。まさにDavid Tの独壇場といえるエンディング。もう、何も言わずに浸って欲しい。ただただこの名演に耳を傾けるだけでこの上ない幸せなひとときを味わえるはず。これぞ名盤を支えた「華麗なる職人技」の代表格。断言。

井上陽水 / 二色の独楽 (1974)

David Tは数多くの日本人アーティストと共演しているが、とりわけその魅力が十二分に発揮された一品といえば本アルバムの1曲目「傘がない」での神技プレイだろう。この「傘がない」はDavid Tのギターのみのインストゥルメンタルバージョン。これが実にDavid Tらしいフレーズで思わずうっとり。エド・グリーン(Dr)やウィルトン・フェルダー(B)といった、LAの一流ミュージシャンをバックに歌うという陽水のセンスは信じ難い程飛び抜けている。この前代未聞の音作りの冒頭を飾ったDavid Tのギターワークは、たかだか1分程度のパフォーマンスの中で軽々とそして華麗にその答えを提示した。歌詞のある本家本元バージョンをも凌駕する名演中の名演だ。

Marlena Shaw / Who Is This Bitch, Anyway? (1975)

70年代屈指のソウル・ジャズ・クロスオーバーアルバムとして名を残す名盤中の名盤。全曲が名曲であり名演であるという素晴らしい仕上がりが、聴く者全てを虜にする。チャック・レイニー(B)とハーヴィー・メイソン(Dr)の強力リズムタッグに、ラリー・ナッシュのメロメロフェンダーローズがとろける様は、まるでアルデンテのパスタにエクストラ・ヴァージンオイルを適度に絡めた美味のよう。極めつけはバッキングギターの2大巨頭、ラリー・カールトンと我らがDavid Tの驚異の競演。「Feel Like Makin' Love」での本場イタリアンたちをも唸らせるかのような絶妙のハーモニーはここでしか味わえない極上スパイス。

Dee Dee Bridgewater / Just Family (1978)

艶やかな声にはDavid Tのギターは見事にハマる。ディー・ディー・ブリッジウォーターの本アルバムはまさにその好例。A2「Maybe Today」では、迫力あるディー・ディーの歌声とDavid Tの円熟味溢れる指さばきが吸引力大の密着度で奏でられ、その接合箇所に隙間は皆無。寸分の狂いなく一体化したプレイはアドリブなのかシナリオ通りなのか一聴しただけでは判断ができないほどの高クオリティ。まあ、そんなことはどうでもいいと思えるくらい、ここでの2人は、そのどちらにも的確にそして柔軟に対応が可能な「職人技」だけがなし得る特権を手中にしている。艶やか。

Bobby Womack / Poet (1981)

80年代になってもDavid Tの勢いは留まるところを知らなかった。ボビー・ウォマックの溢れんばかりの感性による本作は、80年代初頭に奇跡的に生まれたソウルアルバムの大傑作盤。ときに時代は70年代から80年代に移る微妙な頃。音作りのトレンドに変化の兆しが見え隠れしていたこの時期でさえ、David Tの華麗なるアプローチは健在。ボビー・ウォマックの情熱度120%の歌いっぷりに一歩もひけをとらないサポートが実に素晴しい。特に本作のハイライトといえる「Game」での何物かに取り憑かれたような鬼気迫る激しいプレイは、他のアルバムでは聴くことのできない最高の表現力とグルーヴで、彼の数多い名演の中でも屈指のプレイ。David T一世一代の痕身のプレイがここにある。

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