David T. Works Vol.15

David Tが参加した数多くのアルバムの中からピックアップして紹介するこのコーナー。ではVol.15の10選をどうぞ。

King Errisson / The King Arrives (1970)

70年代にはDavid Tとも数多く共演しているパーカッション奏者、キング・エリソンの1stソロアルバムだ。パーカッショニストのリーダー作なだけあって、最初からコンガのリズムが全編を支配する躍動感溢れる音作りが印象的。ホーンセクションの起用や全体のアレンジ面でのサポートなど、音楽に精通しているであろう姿を想像させるアルバムだ。ウィルトン・フェルダーとフィル・アップチャーチがベースで参加しており、バンドアンサンブルをくっきりサポートしている点も聴き逃せないところ。David Tは地味なサポートに徹しているが、A4「Yesterday Is History」やA5「Dracula」などの突如として繰り出される緩急あるプレイにはドキっとさせられ、8分を越すファンキーナンバーのB1「Alone」などの当時の彼らしいジャズフレイバー漂うプレイにうっとり。そんな初期のDavid Tに僅かだが触れることができる一枚だ。

Solomon Burke / Electronic Magnetism (1972)

大御所。巨匠。その風貌から湧き出てくる単純なイメージが、それほど大きくズレてないと思われるソロモン・バークの72年作だ。ゴスペルをルーツに持つ彼の活動のハイライトは60年代なのかもしれないが、70年代の作品にも見逃せない作品が幾つかある。本作もそんなアルバムの一つ。ポール・ハンフリー(Dr)、ジョー・サンプル(Key)、ウィルトン・フェルダー(B)、ヴィクター・フェルドマン(Per)などのスタジオミュージシャンがこぞって参加しながらも、ソロモンの歌は従来とかわらずパワフルかつ豪快。そこに幾分かのポップさが加わったところが、この時代のこの面子による作品という「気分」なのだ。ノリの良いワウプレイが印象的なB1「Stand」などは典型的な例。David Tも地味ながらもほぼ全面的にサポートしており、B2「PSR 1983」などのスローテンポのソウルミュージックで、瞬間的に彼とわかる得意のフレーズを惜しげもなく披露。この時代の彼らしいプレイが光っている。

Oscar Brown Jr. / Brother Where Are You (1973)

ボーカリスト、オスカー・ブラウン・Jrの隠れた傑作。彼の低音の渋い声をバックアップしたのは、ジョー・サンプル(Key)、チャック・レイニー(B)、レオン・ンドゥグ・チャンクラー(Dr)、デビッド・スピノザ(G)などの面々。エリック・カズがハーモニカで参加しているのも面白いところだが、アルバム全体としては、グルーヴィなソウル・ジャズといった趣きだ。David Tもエンジン全開でサポートしており、その活躍はかなりのもの。B1「Brother Where Are You」では、カッティング、オブリなど全編に渡って切れ味の鋭いプレイを聴かせてくれる。が、ハイライトは何と言ってもA2「Under The Sun」がだろう。静かなオスカーの歌声とゆるやかなファンキーさで始まるこの一曲では、チャック・レイニーのグルーヴィなベースも聴き応えがあるが、これ以上ないというくらいのDavid Tのメリハリのあるファンキーカッティングが白眉。押しては引き、引いては押す。そんな「バッキングギターとはなんたるか」という根本的存在価値に対する答えの一端を物語っているかのような神業プレイなのである。

James Conwell / Let It All Out (1977)

ノーザン・ソウル・シンガー、ジェイムズ・コンウェルの77年作。レア盤として知られる本作だが、2001年にめでたくCD化された。メロウ&ソウルフルなジェイムズの歌が実に気持ちよく、最大の聴き所。2曲目「I'm So Glad」などのメロウなバックコーラスとの絡みもソウル度高しで心地良い。続く3曲目「Dreams of a Shoeshine Boy」で、我らがDavid Tが登場。流れるようなストリングスと、ジェイムズの熱く均整のとれた歌声の間を縫うように華麗なプレイを披露。ミディアムテンポでノリのよい4曲目「Butterfly」ではアグレッシブにオブリともソロともつかない独特のフレーズを展開し心地良さを増幅させてくれる。非常に地味だがどこまでも繊細なそのピッキングに、いつも心は遠くどこかに連れて行かれているようで、気がつくとまた最初から聴き返す。そんなマジックを感じるのは僕だけだろうか?

Dusty Springfield / It Begins Again (1978)

イギリスの歌姫ダスティ・スプリングフィールドの78年作。メンフィスに出向いた『Dusty in Memphis』('69)など、元々ソウル志向の強い彼女だが、本作でもそのスタイルは変わりない。さらに洗練された感が漂うのはバックに陣取るつわものたちのせいかも。リチャード・ティー、ジョー・サンプル、デビッド・ペイチといったキーボード陣に、チャック・レイニー(B)、ジェイ・グレイドン(G)、エド・グリーン(Dr)などなど、その筋の方々が多数名を連ねている。B4「That's The Kind of Love I've Got For You」など、時代のトレンドに沿ったノリの良いディスコ・グルーヴのような一曲があるのも印象的だが、やはり根底に流れるブルースやソウルへの想いはA4「A Love Like Yours」など、その端々から如実に感じ取れる。David Tはアルバム冒頭を飾るA1「Turn Me Around」で、いかにもDavid Tなフレーズで貢献している。

野口五郎 / LA.Express ロサンゼルス通信 (1978)

ギタリストとしても非凡な才能を発揮する野口五郎の78年のロサンゼルス録音アルバムだ。まあこれが大変なアルバム。アメリカの西海岸と東海岸のそれぞれの一流ミュージシャン達をバックに歌うという、当時の「アイドル」としては異例の作品なのだ。リック・マロッタ(Dr)、リー・リトナー(G)、デヴィッド・サンボーン(Sax)、ラリー・ナッシュ(Key)といった面々が、がっちりとサポート。A5「Menu」などは、サンボーンのサックスもいい具合に絡む、かなり気合いの入ったミディアム・グルーヴで秀逸の出来だ。David Tも全編を通して積極的に参加しており、彼独特のプレイが数多く聴ける。

Rodney Franklin / In the Center (1978)

キーボード奏者ロドニー・フランクリンの1stアルバム。A1「Spanish Flight」ではフェンダー・ローズを弾きまくるスペイシーなクロスオーバーを、続くA2「Yours」では一転してアコースティック・ピアノの弾き語りを披露するなど、アルバム冒頭から鍵盤弾きとして類い稀なる手腕を発揮。飽きのこないメリハリのある構成で、アルバム全体として豊かな音楽性が垣間見れる聴きどころの多い作品だ。David TはA3「I Like the Music Make It Hot」一曲のみに参加。のっけからDavid Tのパーカッシブなカッティングが炸裂するファンキーなこの一曲には、ジェフ・ポーカロのステディでキレのあるドラムが実に素晴らしく、またシーウインドのホーンも全体の躍動感に一役買っている。

Saint & Stephanie / Saint & Stephanie (1979)

数え切れないセッションに名を残すステファニー・スプルイルとロジャー・ケネリーのデュオの唯一のアルバム。時代はディスコ・グルーヴの全盛期であり、サウンドプロダクションもノリ重視の軽いタッチ。参加したミュージシャンは多数だが、大きな特徴もこれと言って見当たらない匿名性の高い「ポップ」な仕上りだ。ステファニーのボーカルを活かしきれてないプロデュースワークが少々残念ではあるがこれも仕方ないといえばその通り。David Tの音像を聴き出すことはほとんど不可能。が、B2「Stringman」一曲のみ、突如として例のキラ星プレイが飛び出してくる。「よくあるディスコ盤」と一言で片付けられない。David Tのギターには、そんな「そこはかとない」魅力が隠れている。

Barbara Morrison / Love'n You (1990)

ジャズ、ソウル、ポップスのいずれのフィーリングをも持ち合わすバーバラ・モリソン の90年作。カヴァー曲とオリジナルがいい具合で混在した、しっとり落ち着きのあるボーカルアルバムの佳作だ。なんと本作はこの時期David Tと行動を共にしているニール・オダとDavid T本人がプロデュースを担当。バックを務めるミュージシャンも、チャック・レイニー(B)、ジェイムズ・ギャドソン(Dr)、レオン・ンドゥグ・チャンクラー(Dr)、ウィルトン・フェルダー(B)といった、David T人脈がまとめて参加しており、バーバラの歌をさらに輝きのあるものにしている。ビル・ウィザースの「Make Love To Your Mind」のカヴァーも、バーバラの熱のこもった歌いっぷりが見事。アルバムタイトル曲の「Love'n You」でも、そのゆったりとしたグルーヴの中でバーバラのボーカルとDavid Tのギターが、まさに歌っているという表現がぴったりな妖艶さで際立っている。しかし、バーバラのようなボーカルには、ホント、David Tのギターはハマりまくりだ。

Various Artists / Sketches of James (2001)

これは面白い企画。なんとジェイムズ・テイラーのトリビュートアルバムである。しか も、参加したミュージシャンはデヴィッド・ガリバルディ(Dr)、ロッコ・プレステア(B)、レス・マッキャン(Vo)、エイブラハム・ラボリエル(B)、パトリース・ラッセン(Key)、ポール・ジャクソン・Jr(G)などの新旧入り交じりの一流どころがずらり。現代的でレンジの広いライブ感溢れる音作りが全く違和感なく展開されるあたり、JTの楽曲センスはジャズミュージシャンたちをも虜にさせるようだ。中でも聴きどころが、唯一David Tが参加した「Nobody But You」だ。なんとギターにはもう一人ロベン・フォードが参加。David Tのいつものソウルフル&ハートウォームなプレイと、ロベン・フォードのワウとドライブの効いた華麗なソロの対比が、ボーカルパートのレス・マッキャンの粘っこい歌とともに繰り広げられスリリングで面白い。

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