David T. Works Vol.54

まだまだまだ続くこのコーナー! Vol.54の10選をどうぞ。

Andy Williams / Love Theme From "The Godfather" (1972)

数多くレコーディングをこなし多作期となった70年代前半のアンディ。とはいえ、アルバム収録曲を楽曲単位でみると録音時期はかなりバラツキもあり、おそらくは多くの楽曲を次々と仕上げたのち、後からアルバムの収録曲を決め、統一感を持たせる手法だったのかもと深読みしたくなるほど。それだけ彼の歌唱を求める周囲の声がこの時期大きかった証しとも思える72年リリースの作品がコレ。アルバムタイトルにもなった「ゴッドファーザーのテーマ」や、ブレッド「涙の想い出」、プレスリーやバーブラ・ストライサンド版でも知られる「Until It's Time for You to Go」、スリー・ドッグ・ナイト「An Old Fashioned Love Song」のほか、ラストにはジョン・レノンの「Imagine」まで飛び出すという、これでもかと言わんばかり織り交ぜられたヒット曲カヴァー群は、親しみやすさと安定感ある歌声の需要を証明してもいる。David Tの参加は少なく貢献も薄いが、ジミー・ウェッブの「MacArthur Park」では、テンポが変わる後半部分に微量のワウプレイで参戦。楽器パートを個別に録音するのではなく、リズム隊とオーケストレーションも含めてスタジオで一度にレコーディングしたというから驚き。

Love Unlimited Orchestra / My Musical Bouquet (1978)

ご存知バリー・ホワイト率いるオーケストレーション集団の78年作。翌年に『Super Movie Themes - Just A Little Bit Different』なる企画アルバム的要素の強い映画音楽カヴァー集を残したあと、20th Century Recordsから独立し、自身のレーベルUnlimited Goldを立ち上げるバリー。80年代へと映りかわる時代の流れもあって、この後少しずつ制作陣とサウンドに変化が見られる境目となるこの時期、オーケストレーションと息の合ったリズム隊にラヴ・アンリミテッドのコーラスワークが織り成す、バリーサウンドの本流とも言うべき質感がそのまま残る最終期のオリジナルアルバムとなった。David Tも前作までと同様に、リズム隊に徹するキープバッキングで参戦。際立ったメロウなフレーズこそ少なくひたすらリズムを刻む形中心での長年の起用を目の当たりにすると、穏やかで真摯なパーソナリティやそれらを理解し合える息のあった制作体制など、スタジオで必要とされるのは“確かな腕前”だけではないということをついつい想像してしまうのだ。

Love Unlimited / Love Is Back (1979)

20th Centuryレコードからバリー・ホワイト主宰のUnlimited Goldレコードに移籍後二作目。オリジナル作品としてはラストアルバムとなった一枚。ループ感覚溢れるバックトラックに3人のハーモニーがしっとりと奏でられる構図はデビュー当初から変わらぬ個性と美しさ。そんな彼女たちの描く歌世界を支える一コマとしてDavid Tはいつものようにそっと寄り添い控え目に徹する貢献。その輪郭はほとんどとらえることはできないが、アルバムラストを飾る「I'm His Woman」で、きらびやかさを抑制した微量の単音バッキングで彼女達のハーモニーを背後から見守るかのごとくサポートを果たしている。

Danielle / Danielle (1980)

ルー・カルドウェルがプロデュースに関与した3人組フィメールユニット唯一のアルバム。全編繰り出されるノリの良いディスコサウンドは、ジェイムズ・ギャドソン(Dr)、スコット・エドワーズ(B)らの一流どころが名を連ねているとはいえ、彼女たちのオリジナリティは充分に発揮できず終いの感もあり、それが2作目に繋がらなかった要因とも思える仕上がり具合。しかし、ディスコサウンドとしてのビートとグルーヴは必要十分で、David Tが参加したアルバム冒頭を飾る「Let's Have A Party」は、7分を超す長尺さを含めキレのある高揚感たっぷりなファンキーアンサンブルがフロアの躍動を保証したはずだ。

上田正樹 / After Midnight (1983)

大ヒット曲「悲しい色やね」を収録した本作は、山木秀夫(Dr)、渡嘉敷裕一(Dr)、田中章弘(B)、松原正樹(G)、今剛(G)ら日本勢と、レオン・ンドゥグ・チャンスラー(Dr)、フレディ・ワシントン(B)、グレッグ・ポリー(G)、クラレンス・マクドナルド(key)ら米国勢の両方を楽曲ごとに起用し、アンサンブルの完成度をグッと高めた一枚だ。David Tもそんなメンバーの一人として参戦。いかにもカラッとした西海岸サウンドの「夜はもう止まらない」での弾力感あるバッキングをはじめ、「バラードまでそばにいて」では、力みなく感情を込めて歌う主役のブラックフィーリングを後押しするかのようなフレーズで寄り添い、ラストを飾る「我が心のジョージア」では、少ないリズム楽器にストリングスの調べが重なるアレンジの中、タメを活かした呼吸のソロフレーズを披露。大仰で派手なプレイではなく、シンプルなフレーズの組み立てでヴォーカリストの個性を際立たせるDavid Tのギターは、伴奏者としてはやはり格別の存在感だ。

角松敏生 / Touch And Go (1986)

ブレイクのきっかけとなった『Gold Digger』に続く86年作は、ニューヨーク、ロサンゼルス、東京の3カ所で録音ワークを行った意欲作。ここにあるのは、ヨギ・ホートン(Dr)、バディ・ウィリアムス(Dr)、ドン・グロルニック(P)、リチャード・ティー(P)、シー・ウインドのホーンセクションらツワモノたちが盟友・青木智仁のベースとともに、スリリングでメロウな楽曲と違和感なく溶け合った先鋭サウンド。角松サウンドの原型ともいえる洗練が軽妙で快活なアレンジで全編仕上げられた一枚だ。David Tが唯一参加した「Good-Bye Love」は、アンソニー・ジャクソンのベースとヨギのリズム隊にリチャード・ティーのピアノが力強く響くバッキングアレンジのバラードナンバーで聴き応え十分だ。

Carole King / The Ode Collection (1968 - 1976) (1994)

オード時代の楽曲を収録した初のBOXセット。ベスト盤的要素に未発表曲が加わったセットながら、名盤『つづれおり』の曲が全曲収録されているところも話題に。同じオード時代を共にしたDavid Tも未発表2曲に参加しており、そのうちの一曲「Tie That Bind」は、キャロルの72年作『Rhymes & Reasons』セッション時のアウトテイク曲。もう一曲は、73年に開催され20万人の観客を動員したというニューヨークのセントラルパークでの音源から、同じく73年作『Fantasy』収録の「Believe In Humanity」のライヴテイクが収録。73年「ファンタジーツアー」のメンバーとして起用された、ハーヴィー・メイソン(Dr)、チャールズ・ラーキー(B)、ボビー・ホール(Per)、クラレンス・マクドナルド(Key)、トム・スコット(Sax)らによるDavid T率いる「David T. Walker Band」は、キャロル抜きのオープニングアクトも兼任。多忙を極めた絶頂期ともいえるDavid Tのプレイが聴ける貴重な音源だ。このBOXセット発売以降、過去のライヴテイクやデモ音源が少しずつではあるがリリースされているキャロルの未発表音源。しかし、この「ファンタジーツアー」の音源はまだほとんど姿を見せておらず、その内容に触れたいと思うのはDavid Tファンならずとも。数年前、このツアーのDVD発売の企画が予定されていたものの、リリース直前で中止となったこともあるなど、音源としては存在することが確認されているため、一日も早くその全貌を拝みたいものだ。

Smap / Smap 007 Gold Singer (1995)

バーナード・パーディ(Dr)、ヴィニー・カリウタ(Dr)、オマー・ハキム(Dr)、ウィル・リー(B)、チャック・レイニー(B)、ワー・ワー・ワトソン(G)、ハイラム・ブロック(G)といった米国トップミュージシャンを起用した豪華盤。ポップアイコンに力添えする凄腕セッションマンという構図を具現化したという意味では良質のエンターテインメントとしてのあるべき姿を90年代に再現した好例といってもいい。「切なさが痛い」と「人知れずバトル」の2曲に参加したDavid Tは、この時期特有のアーテックスギターのサウンドで応戦。なにげなく聴いていてもハッとさせられる威力十分なメロウなトーンが牽引するサウンドは、主役が誰であろうと、アンサンブル全体を大きく包む太くキレのある豊潤さで、楽曲のグルーヴを一段高く引き上げている。

13 Cats / Another Shining Day (1996)

マルチプレーヤーのキャット・グレイ、サンタナバンドのパーカショニスト、カール・ペラッツォ、そして沼澤尚の3人によるユニットの4作目。アルバムジャケットから想像する美的感覚と対照的なバンドサウンド然としたシンプルな音楽的アプローチの妙は、前作『March Of The 13CATS』から変わらぬ佇まいで、ついつい何度もリピートしたくなる魅力に溢れている。「Straight To The Heart」では、当時彼らがプロデュースワークに関与したシング・ライク・トーキングの佐藤竹善もボーカル参加。前作に引き続き参加したDavid Tは「Last Time For Love」でメロウなタッチとトーンで落ち着いたテンポの楽曲を静かに支える貢献を果たしている。

One Soul / One Soul (2009)

プロデューサー兼アレンジャーにして鍵盤奏者でもあるシンガー・ソングライターShadrackが、別名“One Soul”の名前で過去の録音音源をまとめてリリースした一枚。ゴスペルやソウルフィーリングをシンプルでオーソドックスに表現するスタイルは、力みのない軽妙さで居心地良い佇まい。David Tは盟友ジェイムズ・ギャドソンらとともに、81年に録音されたもののこれまで陽の目を見なかった5曲に参加。女性コーラスを配しミドルテンポで落ち着いたグルーヴの「American Money」や、タイトル通り都会の面影が静かに佇む「Winter In New York」、ブルージーで弾力感溢れるフレーズとソロプレイが際立つ定番カヴァー「Tabacco Road」、75年にシングル盤としてリリースもされた「I Thought About Our Song」のリメイク版など、主役の個性を全力投球でバックアップ。当時リリースされなかったのが不思議なくらいバラエティに富んだ良質なソウルミュージックであり、脂の乗ったDavid Tのプレイも二重丸の音源がここにある。

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