David T. Works Vol.17

David Tが参加したアルバムの中からピックアップして紹介するこのコーナー。Vol.17の10選をどうぞ。

Kim Weston / Kim Kim Kim (1971)

ワッツタックスでアメリカ国歌を熱唱したシンガー、キム・ウェストンの71年作。ファンキーでソウルフル。そしてゴスペル風味漂うブラックネス溢れるその熱唱ぶりが躍動感を誘うに十分な仕上りだ。「Soul On Fire」で聴けるファンクなグルーヴ。スローバラード「The Love I've Been Looking For」でのしなやかさ。洗練さとディープさの同居する、まさにR&Bシンガーの名をほしいままに歌う姿が印象的だ。で、本作へのDavid Tの参加について。実は「Love Vibrations」のバックの演奏は、David Tの3rdアルバム『Prum Happy』収録の同曲と全く同じ物が使用されている、のだ。経緯は不明だが、このような使い方は異例中の異例。サンプリングという概念が無かったであろう当時、斬新な手法であるととるか、単にカヴァートラックとしての使用だけの意図なのか。いずれにしても、David Tの「一風変わったお仕事」の一つである。

Michael Jackson / Got To Be There (1972)

ビル・ウィザースの名曲「Ain't No Sunshine」で幕を開けるマイケル・ジャクソンの72年作。ジャクソン5の活動と並行して発表された本作は、そのみずみずしい感性ばかりでなく、類い稀なる表現者としての片鱗が覗ける初期の傑作である。何より提供される曲の数々がどれも素晴らしい。リオン・ウエアの「I Wanna Be Where You Are」やウィリー・ハッチの「Girl Don't Take Your Love From」をはじめ、キャロル・キングの「You've Got a Friend」に至るまでの名曲カヴァーがアルバムに彩りを添えている。まさにスウィート・ヤング・ソウルとはこのアルバムのこと。そんな音空間に貢献しているのがモータウンの鉄壁のバック陣。もちろんDavid Tもその一人で、ドリーミィーな風景を思う存分描いている。

Cheryl Dilcher / Butterfly (1973)

12弦ギターを自在に操る女性シンガーソングライターの1stアルバム。アコースティックな響きがアルバムの随所から聴こえ、そこに彼女の粘り気のある乾いた歌声が重なる。非常に地味だが余韻の残る作品だ。エド・グリーン(Dr)、チャック・レイニー(B)のリズム隊が影でしっかりと支えていることも功を奏し、タイトさと広がりが同居する不思議な空間が演出されている。David TはA6「Can't Get Enough Of You」1曲のみに参加。確かに控え目な参加だが、彼女の持つアコースティックなテイストと較べると、アルバム中ではその個性的なフレーズと音が、印象的な空気を残す結果となっている。

James Brown / Slaughter's Big Rip-Off (1973)

御大JBが関与した同名映画のサントラ盤である。いわゆる70年代ブラックムービーの一つだが、なにせファンクの帝王が絡むのである。映画のバックトラックとしてのスリリングさ、疾走感などは否が応でもクローズアップされて然るべきなのだが、JBの歌声一つでそれはもうJBの以外の何者でもない世界が繰り広げられるという一枚である。「Happy For The Door」などはその典型で、JB'sによるファンキーで粘り気のある演奏がグルーヴ感たっぷり。続く「Brother Rap」での絶叫するJBのファンクネス。アルバム全体的には抑え気味ではあるものの、どこをどう切っても、まさに金太郎飴状態のJBぶりなのだ。このファンキー大会にDavid Tも見事に参戦。アルバムメインテーマである「Slaughter Theme」で聴けるキラ星フレーズや、リン・コリンズのボーカルをフィーチャーしたスローバラード「How Long Can I Keep It Up」での小刻みでメロウなプレイなど、初期のゴツゴツとした肌触りのプレイが聴ける。

Lou Rawls / She's Gone (1974)

ルー・ロウルズの74年作。David Tは彼のツアーに同行したこともあり、その関係は意外と深い。その独特の低音の声を最大限の武器に、本アルバムでもポップスとソウルの絶妙のブレンド具合を披露している。アルバムタイトル曲にもなったA2「She's Gone」は、ホール&オーツのバージョンと同様、印象的なエレピ音とメロディがやはり素晴らしく、David Tのギターも静かながらも確実に生きている。続くA3「Feel Like Makin' Love」は、ラリー・カールトンのアコースティックギターがなかなか。B4「Keep The Faith」では、一聴してDavid Tとわかる彼一流のキラ星フレーズが全開。しかし、ルーさん、ホントに声低いっす。

Shirley Bassey / Nobody Does It Like Me (1974)

シャーリー・バッシーといえば、言わずと知れた「007・ゴールドフィンガー」とは思いつくものの、トータルアルバムでの彼女をほとんど知らずにいた自分自身が情けない。と断りを入れておきたくなるくらい「聴かせる」74年作。ジーン・ペイジによるストリングスアレンジが見事なまでに彼女独特のビブラートと調和した素晴らしい楽曲群による聴き応え十分なアルバムだ。ジャズ、ソウル、ポップスといった様々な要素が渾然一体となってきらめく中、彼女の歌声の存在感はやはりひときわ大きい。そんな中、我らがDavid Tも全力投球。A1「Leave a Little Room」やA4「Davy」などでは比較的抑え気味の感があるが、B1「Morning In Your Eyes」などでは最初から最後まで、David Tのキラ星フレーズが随所に輝きを放ち始める。アルバムラストを飾るスティーヴィー・ワンダーの「You're the Sunshine of My Life」でも、そんな彼のプレイがきらびやかに流れる中、実にしっとりと幕を下ろしていくのである。

Street Corner Symphony / Litte Funk Machine (1976)

西海岸で結成された5人によるアカペラコーラスグループ。ウィリー・ハッチのプロデュースによる実に美しいハーモニー満載のアルバムだ。A1「Medley」で、いきなりアカペラを披露。5人の息の合ったハーモニーが実に心地良い。ジェイムズ・ギャドソン(Dr)、エド・グリーン(Dr)、ジェイムズ・ジェマーソン(B)といったしなやかでタイトなボトム陣が均整のとれたリズムを叩きだすことで、ダンサブルなグルーヴ感を演出。声と楽器が一体となったファンキーさが十分に堪能できる。David Tもアルバム全編に静かに参加。A4「We Got a Good Thing Going」ではそのファンキーな楽曲に合わせたリズミカルなフレーズを連発。ミディアムテンポのB1「No Game To Play」やB3「I'll Fly Away」ではエレピのまろやかさに、きらめくようなDavid Tのピッキングが楽曲の背景に見事に調和する。そしてB4「Come On Baby」ではアタック感の強いパーカッシブなフレーズでスピード感とグルーヴ感を十二分に演出している。

Lara Saint Paul / Saffo Music (1977)

知る人ぞ知るイタリアの歌姫が77年に残した隠れた名盤。リオン・ウエアをプロデューサーに迎え、LAに出向いて録音されたという実に不思議な大傑作アルバム、なのだ。となればバックを務めるミュージシャンも容易に想像がつくわけで、ジェイムズ・ギャドソン(Dr)、チャック・レイニー(B)らの好演が見事に光る極上ソウルアルバムに仕上がっている。全曲リオン作の曲で占められ、あの「リオン節」が120%堪能できるという点においても極めて珍しいアルバム。女性ボーカルが起用されたリオンのソロアルバム、といっても過言ではない素晴らしい作品だ。ここでのDavid Tは、もう全編に渡ってエンジン全開。「リオンのメロディにはDavid Tは不可欠」の格言がここでも十分に生きており、全ての楽曲に彼の個性的なプレイが満載だ。特にA3「So Good」やA4「Give Me All Of You」と続くメロウなリオン節でのDavid Tのプレイときたら! 続くB面でもその凄腕は留まる所を知らず。B1「Thank You」でのミディアムグルーヴでのフレーズや、ラテンフレイバー漂うB2「The Voodoo Lady」での小刻みでリズミカルなカッティング、まさにワン・アンド・オンリーの個性がここにある。

Michael Wycoff / Love Conquers All (1982)

ブラコン時代の80年代、様々なタイプのシンガーが出現したが、マイケル・ワイコフも重要な一人。すでにシンセが台頭していた80年代初頭。エレピの音色とストリングスの響きが塀際ギリギリのところで70年代の雰囲気を残しつつあるが、新しい時代への突入を予感させるに十分な音作りの本作は、やはりマイケルのしっとりとしたボーカルが情感溢れて素晴らしい。ジェイムズ・ギャドソン(Dr)、ウェブスター・ルイス(Key)、アル・マッケイ(G)、ハービー・ハンコック(Key)らの好演もあって、しっかりと引き締まったサウンドがアルバム全体を支える。David Tの出番は少なく、A4「Can We Be Friends」に参加。非常に地味で小さ目の音量だが、途中、突如として「その」フレーズは飛び出してくる。ファンにとっては物足りないと思いがちだが、こんな「短い小節でも起用されるDavid Tのフレーズ」ということの意味を、またしても痛感してしまう。やはり「恐るべし」である。

Love John Lennon Forever (1991)

ジョン・レノンのトリビュートアルバム。ニール・オダ氏とDavid Tがプロデュースを手がけている作品で、参加メンバーもビリー・プレストン(Key)、ジェリー・ピータース(Key)、ウィルトン・フェルダー(Sax)、メリー・クレイトン(Vo)、スティーヴン・スティルス(Vo & G)といった彼らと親交の深い新旧混在のバラエティ豊かな面々が名を連ねている。David Tは全曲に参加しており、随所に彼のフレーズが楽しめる。特に「Don't Let Me Down」では、ビリー・プレストンの歌声とDavid Tの「あいかわらずの」プレイが実に素晴らしい。馴染みのジョンの曲を新しいアレンジで再構成するという、言わば企画物アルバムの体裁で、古くからのジョンのファンにとっては賛否両論分かれるところだろうが、そこはかとない愛情とリスペクトが音と音のすき間から滲み出ていることもまた事実。あらためてジョンの影響力を感じずにはいられない仕上りだ。

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