Something for T. #02


【後編】




── バンド・オブ・プレジャーでの山岸さんとDavid Tのギターの分担みたいなところはどう決められてたのでしょうか?

KO:DavidはDavidで強烈な個性の持ち主やし、山ちゃんは山ちゃんで良さがあるし。どっちがどう弾くか、みたいなバランスというか比重は、曲によって違ってたね。山ちゃんの作る曲ではやっぱり山ちゃんメインのアレンジやし、Davidの曲だとその逆になるし。でもね、俺は、両方が同じような比重で弾いてもらう曲も聴きたかったわけ。それで『A Tiny Step』の中に入ってる「B.J.」っていう俺が作った曲があるんやけど、その曲では二人とも同じメロディを弾いてもらったね。オクターブで弾いてるんやけど、上が山ちゃんで、下がDavidで。で、一応、譜面にそういう風に書いてDavidに渡してね。でもこれをお願いすることは結構大変なことでね。

── 大変なんですか。

KO:同じメロディを弾くって、それなりの理由がないとなかなか弾いてくれないっていうかね。「こんな感じで弾いてもらいたいんですけどね」って俺がDavidに譜面渡すやん? そしたらDavidは「お前は俺にこの通り弾けってゆうてるんか」と言ってくるわけ。で、さらに「俺にこの譜面通りに弾けと言ったら、俺がどう言うか知ってるやろ?」とこう続くわけ。Davidの中には、Davidなりのいろんなアイデアがあるから「この通り弾け」と言われてもすぐに納得してくれない、という空気があるのよ。でも俺は今回はぜひそうしてもらいたかったから「はい、わかってます」と言う。「わかってる?」「はい、わかってます」「ホントにわかってるんやろね?」「はい、もちろんです」みたいな確認作業があって、「そこまで言うならやってみよう」ということで、ようやくOKサインがでると(笑)。

── 意外と頑固なんですねぇ(笑)



KO:簡単にはOKしないのよね(笑)。そういう理由、というかストーリーがあって、自分を納得させて進むわけ。でもね、Davidに対して「そんなこと言うてもクルセイダーズのアルバムとかでも、ウィルトン・フェルダーと同じメロディライン弾いてることありますやん?」とか切り返すと、「あれは俺がいいと思うてやってるからええねん」と、こう返してきたりしてね(笑)。

── リズム的なところではどうなんでしょうか?

KO:でっかいよね、リズムが。でっかくてゆったりとしてるけど、でも、ごっつスピードがあんねん。

── スピード。

KO:そう、スピード。特に最初の一音のスピードは凄いよ。ビュー!って切り込んでくるからね。よく、Davidのギターはゆったりとしてメロウで、みたいな表現がされるけど、あの人はめっちゃ力強いよ。凄いスピード感で来るのよ。よく他のギタリストが彼のようなフレーズを真似てやろうとするけど、たるーい感じになりがちなんよね。一番の違いはスピード感なんですよ。これは凄いよ。

── ギャドソンはどうでしたか?

KO:ギャドソンも凄いのよ。例えば、ギャドソンという人とバーナード・パーディという二人のドラマーがいるでしょ? 俺は幸運にもこの東西二大横綱級ドラマーと共演させてもらったことがあるねんけどね、実際やってみていろいろ面白かったね。

── 例えば?

KO:例えば、パーディって人は、レコードで聴いてた限りでは、軽快でソリッドでどっちかというとスピード感のあるドラムやな、と思ってたわけ。ギャドソンってのはすごくゆったりとしてて大きいビッグビートっていうイメージを持ってたわけよ。そしたら、実際に演ってみたら、ギャドソンって人は、後ろから蒸気機関車で追い掛けられているような感じなのよ。

── 蒸気機関車ですか。

KO:そう。ちょっとでも気ぃ抜いたら、さーっと追いこされてしまうような感じ、というかね。もの凄いスピードっていうんかなぁ。それに対してバーナード・パーディって、もの凄くメロディアスなのよ。一つ一つがメロディになっててゆったりとしているというかね。

── メロディ。

KO:これもレコードで聴いてたときにはわからなかったことで、やってみてはじめたわかったことやんやけどね。だからギャドソンのほうが油断してたら何されるかわからん的な緊張感があったね。ヤクザ度が高いというかね(笑)。

── ギャドソンは特に16ビート刻むときは特徴的ですよね。

KO:ギャドソンのハイハットのストロークは尋常じゃないよ。片手であれだけのことやれるっていうのは、ホンマ凄い。彼はそういうテクニカルな部分であまり評価を受けてないけど、ところがどっこい、シンバルのシングルストロークのレガートの早さとかタイムの正確さは天下一品よ。

── 東西両横綱の違いを体感してしまった、わけですね。

KO:これはね、ホンマ凄いことだと自分でも思いますよ。自分がもっとも聴いて尊敬してきたドラマーと実際に共演できるというのはね、これはベーシスト冥利に尽きますよね。ホンマ、ええ経験させてもらったと思うてるよ。

── 「ベーシスト」でのフェイバリットって誰ですか。

KO:やっぱ、ジェイムズ・ジェマーソンかな。あの人の創造性とタイム感というのは到底真似でけへんけれども、凄い好きやし、レコードなんか聴いてると、いまだに自分の中に反映させたいなぁと思うことがあるね。

── 実際、清水さんが聴かれてきた音楽もその辺りのものが多かったんでしょうか?

KO:そうやね、やっぱりR&Bってのはすごく好きやね。いわゆるオールドスクール系のものから、80'sのちょっとメロウな感じのものもたまらなく好きやね。ちょっとメロウな感じのやつね。

── ボーカルのバックアップとインストものとでは、やはり演奏するスタイルが違ったりするんでしょうか。

KO:いや、そんなに違いはないね。インストものでも、だいたいメインアクトの役割の人ってのがおるからね。リズムのボトムを支えるという意味では同じですよ。でも、ファンクとかドラムンベースみたいな音楽だと、いかにリズムを持続させてグルーヴを作り出すかという点に重点をおくから、ちょっと違ってくるけどね。ダンスミュージックの場合はホンマ、いかに踊れるようにできるか、みたいなところが重要やしね。

── そもそもベースをはじめたきっかけはなんだったのですか?

KO:最初はピアノをやってたんよ。で、俺が高二の時、上田正樹のバンドの前座をしないかっていう話があったわけ。サウス・トゥ・サウスよりもっと前のバッド・クラブ・バンド時代の話やけどね。で、俺がやってたバンドのベーシストが辞めることになってね。で、誰もベースやるヤツおらんかったから、じゃあ俺やるわ、みたいなことになって。そっからですわ。

── ピアノですか。ピアノと言えば、David Tがピアノを弾いたということあったとか。

KO:そうそう、俺がやってた関西TVの「夢の乱入者」という番組にゲストで来てもらったことがあって。ピアノを弾くDavidってのはおそらくそのくらいしか記録にないんじゃないかな。あと、ステージで歌を歌ったこともあったよね。ジュニア・パーカーのブルースナンバーをね。

── David Tの歌は『Press On』の中でタイトル曲を歌ってる以外では聴けないですよね。

KO:そうやね。リハーサルのときには結構歌ってることがあるんやけど、ライブ本番で歌ったことは、そんなにないはずなのよ。

── やっぱり、Davidといえばあのギターっていうイメージもあるし、ピアノも歌も、意外な感じがしますね。

KO:そうやね。意外なといえば、彼は盆栽が趣味でね。

── 盆栽ですか!

KO:そう、いわゆるあの盆栽よ。自宅の庭に結構いい感じに置いてあるらしいよ。あのミラクルな音を奏でる手が、自宅に帰ったらハサミを握ってるって思うと信じられへんけどね(笑)。

(2002年12月、都内某所にて)



清水興(しみず・こう)
1956年12月13日生まれ。関西医大中退後、渡米。82年、NANIWA EXPRESSでデビュー。90年、日米混合バンドBand of Pleasureに参加、以降3枚のオリジナルアルバムとオムニバスアルバム1枚を残す。91年、HUMAN SOULの1stアルバム『HUMAN SOUL』発表。93年には世界屈指のグルーヴドラマー、バーナード・パーディ率いる「The Jazz Funk Masters Featuring Bernard Purdie」ライブに参加し話題を呼ぶ。2002年には、KANKAWA122『ROOTS PROOF』のプロデュース、ゴスペラーズ『FRENZY』、石田長生『D.N.A』への参加と、活動範囲はますます多岐に渡っている。そして2003年5月24日、NANIWA EXPRESS、待望の18年振りオリジナルアルバム『life of music』を発表。

NANIWA EXPRESS
『life of music』
WAVE FLOWER NNCJ-7001
(2003.5.24)
オフィシャルサイト
"Dr.KO's GROOVE SKOOL"
http://grooveskool.com/

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