"BAND OF PLEASURE" Reunion 2016
featuring David T. Walker, June Yamagishi, James Gadson, Toru Tsuzuki, Ko Shimizu
日米混成バンドBand Of Pleasureのリユニオンライヴが大盛況のうちに閉幕!

90年代に3枚のアルバムを残した日米ミュージシャン混成のR&Bバンド「Band Of Pleasure(バンド・オブ・プレジャー)」のリユニオンライヴが大盛況のうちに閉幕しました。山岸潤史、清水興、続木徹、ジェイムズ・ギャドソンに我らがデヴィッド・T・ウォーカーの5人によるブルース&ソウルフィーリングとメロウネスがたっぷり詰まった彼らの音楽マジックが存分に届けられた珠玉のステージに、会場の興奮はとまりませんでした!

東京公演※終了しました
日程:2016年1月14日(木), 15日(金), 16日(土)
会場・問合せ:ブルーノート東京


Band Of Pleasure - Reunion 2016 - Set List (2016.01.17)

David T. Walker (Guitar)
June Yamagishi (Guitar)
James Gadson (Drums, Vocal)
Toru Tsuzuki (Keyboards)
Ko Shimizu (Bass)
1st stage :
01. "Double Deals"
02. "I Can See Cleary Now"
03. "Best Thing That Ever Happened To Me"
04. "Walk This Way"
05. "Long Disstance Lover"
06. "Love Land"
07. "Y-Ence"
08. "You Are My Sunshine"
Encore. "Soul Food Cafe"

2nd stage :
01. "Double Deals"
02. "Overstanding Understanding"
03. "Brother Sunshine"
04. "Infrastracture"
05. "Taste Of Tokyo"
06. "Love Land"
07. "Marvin Gaye Meddley"
   ("Inner City Blues", "Mercy Mercy Me", "What's Going On")
08. "You Are My Sunshine"
Encore. "Soul Food Cafe"



 最終公演のステージが終了し、心地よい余韻をかみしめながら、高ぶったココロを落ち着かせるように今これを書いてる。素晴らしいライヴだった。それ以外に言葉が見つからない。冷めない興奮で手はまだ震えてる。思い出すと笑みは絶えない。幸せなひとときを届けてくれた20年ぶりのリユニオンは大いなる歓喜に満ちていた。

 2016年1月14日から16日の3日間、1日2公演計6ステージ、バンド・オブ・プレジャー20年ぶりのリユニオン公演がブルーノート東京で行われた。直訳すると“歓びのバンド”、通称“バンプレ”と呼ばれた日米ミュージシャン混成の5人組。公演初日、「今回は1stステージと2ndステージで曲が少し異なります」とMCで宣言した山岸。「演りたい曲がたくさんありすぎてこういうことになってしまいました。商売上手やろ(笑)」と笑いも誘いながら、その言葉通り、1stと2ndで表情の異なるセットが繰り広げられた。

 まずは1stステージ。ライヴレコーディングによるバンプレの1stアルバム『Live At Kirin Plaza』収録の「Double Deals」が目の前で繰り広げられた瞬間、ついに再び揃った5人のアンサンブルに感激の心持ちが体内を駆け巡る。続けざまにジョニー・ナッシュのカヴァー「I Can See Clearly Now」が披露。冒頭にバカラックの「Windows Of The World」やクルセイダーズの「Hard Times」のフレーズを奏で本編へとなだれ込む演出は、デヴィッド・Tのソロ公演でも定番の展開。だが聴こえてくる音はまさしくバンプレの音。デヴィッド・Tのプレイを大きくフィーチャーしながら彼ら5人の間合いが姿をあらわにしていく。


 ここで次の曲紹介のため山岸がMCをはさむ。「1988年に『My Pleasure』というソロアルバムを録音したとき、この曲のデヴィッドのギターを聴いて涙がとまらなかった。どうしても一緒にステージで演奏したかった。このバンドができたきっかけになった曲です」と語りはじまった「Best Thing That Ever Happened To Me」。グラディス・ナイト&ザ・ピップス版で知られるジム・ウェザリー作のこの一曲では、バンド結成への思いと静かに一音一音を噛み締めながら繰り出される、先を急ぎすぎないタメにタメた5人のリズムが強い説得力で一体化。いるはずのないシンガーのうたが聴こえてくるかのような、歌心に満ちた5人のバンドアンサンブルに思わず感涙の心持ちが抑えきれなくなる。山岸とデヴィッド・Tの二人のギターがエールを交わし合うようなメロウネスで迫りながら、エンディング間際、微細な音量で繊細なフレーズを入魂の一音で積み重ね会話し合う二人の姿に会場全体が固唾をのんで釘付けに。このバンドのすべてがここにあると言っても過言ではないほど、表情やアクションにも情熱が乗り移った山岸の熱演がバンドアンサンブルの凄みに拍車をかける。気がつくと手をギュっと握りしめてしまっているほど息もできない緊張感に、ステージ序盤にしてココロの高ぶりは一気に上昇していく。


 そして切れ目なく、デヴィッド・T作で彼のオリジナルアルバム『Ahimsa』に収録されてもいる「Walk This Way」へと展開。清水興のアグレッシヴなベースソロをフィーチャーした強力なR&Bが披露される。「ここまでは1枚目『Live At Kirin Plaza』と同じ曲順です」と山岸がMCをはさんだあと「次の曲はヴォーカルにグルーヴマスター、ジェイムズ・ギャドソンをフィーチャーした大好きな曲です」と紹介し「Long Distance Lover」へと続く。バンプレ3作目『A Tiny Step』に収録されたこの一曲は、そこらの凡庸シンガーが束になってもかなわない、ファルセットも駆使したギャドソンの甘い歌声がメロウ&グルーヴなテイスト全開に会場を包み込んでいく。その余韻に浸る間もなく続けてギャドソンのヴォーカルによるアップテンポの「Love Land」へと場面転換。バンプレのアルバムには収録されてないものの、ギャドソンがメンバーとして所属していた「Watts 103rd Street Rhythm Band」の代表曲であるこの曲。“Love Land !”のコール&レスポンスが会場全体を一気にヒートアップしていく。清水興が「蒸気機関車で追いかけられているような感じ」と語るギャドソンのドラムは、片手で16ビートを刻むハイハットの前進力、ズシンでもなくドスンでもなく「バスン!」という響きで迫ってくる切れ味鋭いスネアの破壊力など、どれをとってもギャドソンの音色としか言いようのない瞬発力たっぷりのグルーヴが全開。その横で、派手さなど一切なく、バンド全体を俯瞰しながら芯の通ったシンプルな力強い音色で屋台骨の一角をしっかりと支える清水のベースも抜群に光っていた。


 続いてはデヴィッド・Tのオリジナル曲で1987年リリースのアルバム表題曲である「Y-Ence」。デヴィッド・Tのソロプレイがフィーチャーされスタートするメロウなバラードナンバーは、彼の代名詞でもあったギブソン・バードランドをひとまわり小ぶりにしたフォルムの新しいギターで、メロウながら東洋的音階をも織り交ぜたアプローチが心地よく響き、前曲での高揚を一気にクールダウンさせながらも、続木のエレピとの共鳴が徐々にほのかな緊張感を伴った高揚を紡いでいく。弦の音色を巧みに重ねていくハープ的奏法や、美しい指の動きでジャズ的コードワークを組み立てていくデヴィッド・Tのソロプレイは絶品の一言。バードランドの音色をさらに太くふくよかにしたような新しいギターのサウンドも実に素晴らしく響いてくる。しかし、どんなギターであっても彼が一音奏でるとそこにあるのは彼にしか出せない唯一無二の世界。「楽器の上手い人は世の中たくさんいる。でもホントに大切なのはその人ならではというトーンを持ってるかどうか。真の意味でのワン&オンリー、全宇宙の中でたったひとつの音を持ってる人。それがこのデヴィッドなんです」とMCで山岸が絶賛する、会場を包み込むうたうギターは実にメロウで表情豊かな歌心に満ちていた。“Guitar is my voice”というデヴィッド・Tの信条が目の前で繰り広げられた瞬間でもあった。


 続けて、冒頭にデヴィッド・Tがさまざまな楽曲フレーズを少しずつちりばめたソロプレイを披露しながらはじまる躍動感たっぷりの「You Are My Sunshine」。ニューオーリンズ住まいの山岸らしく、途中、ディキシーランド・ジャズの「聖者の行進」のフレーズを挟み込み大きな盛り上がりを見せたあと、エンディングではジャズ的アプローチや自身が関わった楽曲ナンバーなどのフレーズを細かく紡いでいくデヴィッド・T十八番のソロパートをフィーチャーし本編が終了。アンコールに応えて披露されたデヴィッド・Tのオリジナル曲「Soul Food Cafe」で興奮はさらに加速。ドライヴの効いた澄んだトーンで多彩なフレーズを連発する山岸のプレイにどこか突き抜けた自然体の迫力がにじむ。それを受け最後の最後にソロパートがフィーチャーされたデヴィッド・Tの、これでもかとばかりに自在なコードワークを繰り出す姿に、メンバーもみとれながらステージは大団円。音楽の楽しさを存分に堪能した、あっという間の90分だった。


 そして、数曲を入れ替えた構成での2ndステージ。1stステージでも披露した「Double Deals」に続いて、バンプレの3作目『A Tiny Step』に収録されたデヴィッド・T作曲の「Overstanding Understanding」が披露。デヴィッド・Tのメロウなソロプレイを受け、表情豊かな鍵盤ソロを続木が奏でると、その様子をすぐ横で見ていたデヴィッド・Tがニヤリと笑みを浮かべ続木に「プレスオン!」とささやく姿が。続木のプレイにその場でさりげなく賛辞をおくるはからいが実に粋に映る。続いて披露されたのは、バンプレのアルバムには収録されてないものの、20数年前、同時期に山岸と続木が活動していたチキンシャックのナンバーでありバンプレのライヴでもたびたび披露されていた「Brother Sunshine」。続木がデヴィッド・Tのことを“ブラザーサンシャイン”と呼んでいたことから付けられたというタイトルのこの曲は、文字通り太陽のようにメンバーを照らし輝くデヴィッド・Tへのリスペクトを自らのギタープレイで響かせる、余計なものをそぎ落とした山岸のメロウなギターワークが素晴らしく光っていた。そして、「バンド・オブ・プレジャーの音楽は、R&Bやブルースが90%、残り10%がジャズ、そんな基盤がある。そういうイメージでデヴィッドが作ってくれた曲です」と紹介された2ndアルバム『Band Of Pleasure』収録の「Infrastructure」がはじまる。地を這うようなブルースフィーリングに、ジャズエッセンスと細やかなキメを巧みに取り入れた、これぞバンプレの音と呼べる5人ならではの呼吸が展開されていく。


 続いて山岸が「この曲の歌詞を書いてとギャドソンにお願いしたとき、ギャドソンが吸ったたばこがたまたま日本のマイルドセブンで。そのとき“Taste Of Tokyo”ってギャドソンが言ったことがきっかけで曲のイメージがふくらんでいきました」と語ってはじまった2ndアルバム『Band Of Pleasure』収録の「Taste Of Tokyo」。ギャドソンのヴォーカルをフィーチャーしたこの曲は、切ないメロディをうたうギャドソンの歌声とソウルフルなサウンド、そして有無を言わせぬ切れ味鋭いドラミングが抜群のテンションでからみ合いながら徐々に迫ってくるメロウな一曲。原曲での女性バックボーカルの代わりを山岸と清水がつとめながら、デヴィッド・Tが十八番の歌伴フレーズをこれでもかと繰り出す至福! ギャドソン自身が歌とドラムを自在にコントロールしながら、バンド全体が一つに調和し高揚の階段をのぼっていく姿に興奮のメーターはさらに上昇していく。こんなドラマー、ほかにいない!


 1stセットでも披露されたギャドソンのヴォーカルによる「Love Land」で会場がひと際盛り上がりをみせると、バンプレのライヴでは定番ともいえるマーヴィン・ゲイ・メドレーへとなだれ込む。「Inner City Blues」「Mercy Mercy Me」「What's Going On」の3曲を続けざまに展開していくメドレーの最後の最後、「What's Going On」のエンディング間際、エレピから生ピアノにスイッチした続木のソロプレイに場面がフォーカスされる。リリカルにジャズ的テイストを積み重ね繊細なタッチから次第に強いアタック音を織り交ぜドラマティックに展開していく続木のピアノに、メンバーも観客も動向を注視。横にいるデヴィッド・Tも諸手を挙げて続木を賞賛する素晴らしいプレイが繰り広げられ会場は興奮の渦に。その後は1stステージ同様「You Are My Sunshine」からアンコールの「Soul Food Cafe」と続き2ndステージは終了。最終公演日の2ndステージではスタンディングオベーションの拍手と大歓声に促され、ダブルアンコールとして「Best Thing That Ever Happened To Me」が披露される場面もあった。


「バンプレは解散したわけではなくちょっとした休みが続いてるだけ」と以前に続木が語っていたとおり、20年ぶりのリユニオンのステージに立ち現れた音はまさしくバンプレそのものだった。しかしそれがただ懐かしさを共有するだけのステージに止まらなかったのは、文字どおり“お休みが続いた”20年という時間によって育まれたメンバーそれぞれの変化がそこかしこに投影され、ポピュラーミュージックの世界を生き抜いてきたリヴィングレジェンドへの憧れとリスペクトに突き動かされはじまったバンドの姿が確実に更新されたと思えたからだ。近年愛用のテレキャスターを抱え、鋭く太い音色で多彩なフレーズとパーカッシヴな一音を渾身のアクションとともに奏でる山岸のプレイスタイルは、横で静かにすまし顔で仁王立ちするデヴィッド・Tに「いま、こんな感じで弾いてます」と20年ぶりに自己紹介しているような敬意あふれるたくましさと清々しさに満ちてもいた。「周りの音を聴きにいかなくても自然と耳に入ってくるようになっている。このバンド、20年前から進化してます」と、MCでリユニオンの成果を感慨深く語った山岸。そして「誰も主張なんてしない。5人がみんなで音をつくってるバンド。それが歓び。歓喜のバンドなんです」と語った山岸の言葉に瞬間カラダが熱くなる。胸がいっぱいになる。ジャンルやスタイルを表層的に追随するのではなく、音楽の素晴らしさを発して受け取り合う豊かな感性と歓びの心持ち、そして圧倒的な音楽力で彼ら自身がその歓びを自らステージで証明することの凄さを、会場全体でわかちあえることがたまらなくうれしいのだ。

 ただでさえ超がつくベテランの、まさにトップ・オブ・トップの日本人ミュージシャン3人が、敬意の眼差しを絶やさないリヴィングレジェンドの二人と、対等な立場で音を楽しむ贅沢なステージ。豊かな表現力、間合い、呼吸、一音の説得力。20年も肌を合わせなかった彼らが一瞬にしてバンドになれる源にあるのは、互いを認め合う個性豊かな人間力とかわらぬ優しい眼差しだ。だからどんなに環境が変わっても即座に一体になれる。20年の月日がもたらした見事な進化と深化を互いに目の当たりにして笑みが絶えないメンバー5人。そしてその歓びを客席で感じ取りステージに受け返すオーディエンス。唯一無二、彼らにしか表現できないマジカルなアンサンブルで会場全体が歓喜に満ちた音楽空間として同化できることこそ、バンド・オブ・プレジャーという音楽の持つ真の素敵さだ。いつの日かその遺伝子をまた目の前で体現できる日が、もういまから待ち遠しく思えている。

2016年1月17日 ウエヤマシュウジ
Photo by Great The Kabukicho







David T. Walkerからのメッセージ ― リユニオンに寄せて

When I was asked to perform at Blue Note Tokyo again, I thought this would be a good opportunity to perform as B.O.P at least one more time after getting in touch with each member and getting their thoughts. We all agreed it will be good and memorable performances for not only those who have seen us performing 20 years ago but also those who will see us performing for the first time. I am looking forward to seeing and saying hello to as many people as possible!
David T. Walker

ブルーノート東京から出演の打診を受けたとき、バンド・オブ・プレジャーとしてもう一度演奏する良い機会だと思い、メンバーと連絡をとりあい考えを聞いた。メンバーみんなが賛同した。20年前にステージを観たことのある人たちだけでなく、今回初めて観る人にとっても心に残るパフォーマンスになるだろうってね。多くのみんなと会えることを楽しみにしているよ!
デヴィッド・T・ウォーカー



Band Of Pleasure ヒストリー ―リスペクトに満ちた“歓びのバンド”再び。

 バンド・オブ・プレジャー。直訳すると「歓びのバンド」。90年代にオリジナルアルバム3枚と企画アルバムへの参加1枚を残し活動を休止していたバンドが、2016年1月に満を持して約20年ぶりに集結。通称「バンプレ」と呼ばれた、日米ミュージシャン混成という稀有な形態のバンド。そのヒストリーを、メンバーの山岸潤史、続木徹、清水興の3人の証言を交えながら振り返ってみよう。


『Mama, I Want To Sing』('88)
 1988年。米国で大ヒットしたゴスペルミュージカル『Mama, I Want To Sing』の日本公演向けに、あらたにサウンドトラック盤が制作されたところからストーリーははじまる。当時、ギタリスト山岸潤史とキーボーディスト続木徹は、R&Bやソウルミュージックを都会的なサウンドにブレンドした「チキンシャック」というインストゥルメンタルバンドで活動。このチキンシャックの所属するレコード会社「メルダック」の親会社である三菱電機が「Mama, I Want To Sing」の日本公演に協賛したことから、山岸がサントラ盤のレコーディングに参加し、続木徹もアレンジワーク等で関わることに。加えて、チキンシャックとも関わりの深かったルーファスのベース奏者ボビー・ワトソンがベーシスト兼プロデュース役としてこのサントラ盤制作に参加したこともあり、そのルーファスのリズムセクションであるトニー・メイデンとジョン・ロビンソン、さらにアンジェラ・ウィンブッシュやレス・マッキャンらも参加が決定。一方、デヴィッド・Tの80年代のソロアルバムをプロデュースしたニール・オダとも接点のあった山岸は、ニール氏との交流からギャドソンとデヴィッド・T・ウォーカーの参画を構想。こうしてこのサントラ盤は、米国と日本のミュージシャンが混成参加した豪華アルバムになったと同時に、バンド・オブ・プレジャーのメンバーが出会うきっかけの一つになったのである。


山岸潤史『My Pleasure』('88)
 その後『Mama, I Want To Sing』アルバム制作の打ち上げ時に、山岸はギャドソンとデヴィッド・Tをホテルの一室に呼び、自身がソウルナンバーを演奏した教則ビデオを見せ、「オレ、こういうのを演りたいんよ、あんたたちといっしょに」と、60年代から70年代の素晴らしい音楽を形作ったレジェンド二人に呼びかける。意気投合したギャドソンとデヴィッド・Tの二人は、同1988年にリリースされた山岸のソロアルバム『My Pleasure』制作に参加。アルバムに収録された、グラディス・ナイト&ザ・ピップスで有名なジム・ウェザリー作「Best Things That Ever Happened To Me」のカヴァーをスタジオで録り終えたあと、自宅でその録音テープを聴き、あまりの素晴らしさに感激した山岸はこのとき「絶対にこの二人とライヴが演りたい」という強い思いを抱く。のちに正式結成することになるバンド・オブ・プレジャー構想の根幹が誕生した瞬間だった。

 その思いは翌1989年4月、東京・汐留PITで開催されたライヴイベント「Tokyo Soul Volcano」での、山岸潤史、デヴィッド・T・ウォーカー、ジェイムズ・ギャドソン、ボビー・ワトソン、マイケル・ワイコフ、続木徹、大野えりらメンバーによるステージとしてついに結実する。同時期には、山岸のアルバム『My Pleasure』リリース記念ライヴツアーにもギャドソンと続木が参加するなど、これら交流を通じて得た感触から山岸は、デヴィッド・Tとギャドソンの2人をメンバーにオフィシャルなバンドとして形にすることを発案。ベーシスト候補だったボビー・ワトソンが都合で参加できなくなり、当時ヒューマン・ソウルで活動していた清水興が参加することで構想は現実化して動き出す。かつてジミ・ヘンドリックスが組んでいたバンド「Band Of Gypsys(バンド・オブ・ジプシーズ)」から着想し「文字通り『歓びのバンド』にしたかった」という山岸のアイデアでバンド名を「Band Of Pleasure」と命名。こうして、デヴィッド・T、山岸潤史、ジェイムズ・ギャドソン、続木徹、清水興という5人による“歓びのバンド”は結成された。


『Live At Kirin Plaza』('92)

『Band Of Pleasure』('94)

『A Tiny Step』('95)

V.A.『JVC Soul All Stars』('96)
 その初舞台となったのは1990年12月六本木ピットイン。東京・下北沢にあるレコードショップ「フラッシュ・ディスク・ランチ」が主催者として関わったこのライヴでバンプレは正式に5人のメンバーによるバンドとして船出する(このときはアタマに「The」をつけ「The Band Of Pleasure」と名乗っていた)。このステージを振り返って清水興は「デヴィッドがメインで一人ギターを弾く場面を横で見てて、なぜかわからんけど涙でてきた」と感激の心持ちを回想している。その後、1992年2月に開催された大阪・キリンプラザでの「Band Of Pleasure Romantic Valentine '92」をライヴレコーディングし1stアルバム『Live At Kirin Plaza』としてリリース。ライヴ活動も並行しながら、1994年4月にはドナ・ワシントンらゲストヴォーカルを迎えL.A.でレコーディングした初のスタジオアルバム『Band Of Pleasure』をリリース、同年5月にはゲストヴォーカルにテルマ・ヒューストンを迎えたステージも敢行する。さらに翌1995年5月にはアル・シュミットをレコーディング・エンジニアに起用したL.A.録音による3rdアルバム『A Tiny Step』をリリース。同年9月に東京・青山でライヴを行ったのち、翌1996年にはバンド・オブ・プレジャー名義ではないものの、10人の日本人シンガーがソウルミュージックのカヴァー曲をうたう企画アルバム『JVC Soul All Stars』のレコーディングに全曲バックバンドとして参加する。

 ライヴでは、往年のソウルミュージックのカヴァーやマーヴィン・ゲイのカヴァーメドレーをはじめ、デヴィッド・Tのソロ楽曲や、ギャドソンがヴォーカルをとるナンバー、それにオリジナル曲も加えながら、彼らの音楽ルーツに馴染んだ楽曲をレパートリーとして披露。「いっしょに演ってるオレたちがデヴィッドやギャドソンのファンになってて、そしてオレたちだけじゃなくて、お客さんも状況わかってるから一体になれる」と山岸が回想するほど、奇をてらわない、シンプルなリスペクトに満ちたステージが繰り広げられた。

 しかし96年リリースの『JVC Soul All Stars』のレコーディング参加を最後にバンドは活動を休止。山岸はニューオリンズに活動拠点を移し、デヴィッド・Tは同年リリースされたドリームズ・カム・トゥルーの吉田美和のソロアルバムへの参加を機にドリカムとのコラボレーションを深めていくなど、メンバーそれぞれがそれぞれの活動へと歩を進めていく。

 それからちょうど20年。バンプレは戻ってくる。「バンプレは別に解散したわけではないし、何かがきっかけでしばらく休もうとかみんなで決めたわけでもなく、気がついたらお休みが長く続いているという感じ」と語った続木徹の言葉どおり、2016年1月、彼ら5人が再びステージに立つ日がついにやってくる。ソウル、R&B、ジャズ、ブルースといったアメリカンミュージックの歴史を支えたレジェンド2人と、その彼らと彼らが作り上げた音楽に洗礼を受けリスペクトし続ける3人の日本人ミュージシャンが織り成すバンプレのサウンドが、それぞれがそれぞれに過ごした20年を踏まえ、どんなふうにあらたな化学反応をおこすのか。続木をして「バンプレの核になってるアンサンブルの形って、メンバーそれぞれの人間性みたいなものと深く関わっていたと思うんです」と言わしめる、彼ら5人にしか表現できない極上のステージがきっとそこに待っているはずだ。

2015年12月12日 ウエヤマシュウジ


■メンバー関連ページ(当サイト「Something for T.」)
清水興インタビュー
山岸潤史インタビュー
続木徹インタビュー