David T. Walker スペシャルライヴリポート
─ David T. Walker × sumile TOKYO LIVE 2009 ─


sumile TOKYO http://www.sumiletokyo.com/
クリスマスムード漂う12月。昨年12月に催されたsumile TOKYOでのイベント“Private Live Dinner with David T. Walker”から一年、今年もまたsumile TOKYOでスペシャルなライヴが催されました。題して“David T. Walker × sumile TOKYO LIVE 2009”の模様と演目をリポートします。




 2009年12月20日、東京・渋谷にあるレストラン「sumile TOKYO」で、デヴィッド・T・ウォーカーによる一夜限りのイベントが行われました。前年2008年に引き続き企画されたプライベート・ライヴ・ディナーは、限定20名というごく少数のお客さんだけが楽しめるという特別イベント。出演者はデヴィッド・Tただ一人。バンドメンバーなしのワンマンショーは、彼の描くギターの音色が暖かな空間を彩るスペシャルな時間となりました。

 「何を演奏するか特に決めてこなかったんだ」とリラックスした表情で語るデヴィッド・T。その言葉通り、決められた曲を演奏し続けるのではなく、途中途中に客席とコミュニケーションをはかりながら、短いギターフレーズを少しだけ奏でたりと、その場の流れを大事にした自由なスタイルでイベントは進行されました。





 一方的に演奏するだけでなく「何か演奏してほしい曲があれば」とリクエストに応える場面も。客席からの「ジャクソン5の曲を」の声に、即興で「I Want You Back」をさらりと奏でます。聴き馴れたフレーズを、本人が目の前で奏でてくれるという特別な瞬間に、会場はなんとも言えない高揚感で満たされたはずです。

 曲間には質問コーナーも設けられました。「ギタリストでなかったら何をしてたと思いますか?」との質問には「ギターを弾いてなかったとしても、きっと“アーティスト”でいたいと思ってると思うよ」とクリエイティヴな仕事への関心をのぞかせました。また「ステージなどの演奏前にどんな準備をしているの?」との問いには、指を動かしウォーミングアップするストレッチの方法を披露。両手を合わせた状態で器用に指だけを交互に動かす方法を実演してくれました。そんなトップギタリストの気さくな姿に、会場全体は和やかなムードに包まれ、次第にリラックスした空気で満たされていきました。

 演奏された楽曲も、メロウで繊細なトーンや、躍動感溢れるファンクネス、ブルースフィーリングたっぷりのフレーズなど、バラエティに富む選曲。曲を演奏し終わると、その曲についての簡単な注釈を挟むなど、通常のバンドライヴには無い進行もスペシャルイベントならではです。他の楽器パートは一切なくギター一本だけで奏でるというシチュエーションでも、宿った強固なリズムが体から溢れ出る感覚は圧巻の一言。柔らかさと弾力感が交差する彼流の“タッチ”は、流れるような繊細さと躍動感を両立させる振り幅の大きな音空間を描きます。ふと我に返ると、ギターの匠がほんの目の前で艶やかなプレイを奏でている驚きを思い起こすという実に贅沢な空間となったのでした。

 終演後は、お客さん一人一人に声をかけコミュニケーションをはかるデヴィッド・T。どこまでも暖かみのある真摯な姿勢は、その音楽表現と相まって特別なオーラを描きます。と同時に、堅苦しさのない和やかな表情とユーモアやジョークが会場を自然とゆるやかな空気に変えていきます。40年以上に渡って卓越した技量だけでなくその人柄もたっぷりと愛されたギタリストの底力と魅力がさりげなく伝わってくるスペシャルな時間は、あっという間に過ぎていきました。



Set List (2009.12.20)

01. With A Little Help From My Friends
02. Love's Theme

ライヴは、5thアルバム『Press On』収録のビートルズナンバー「With A Little Help From My Friends」のイントロをさらりと奏でて幕開け。続けて披露されたバリー・ホワイトが率いたラヴ・アンリミテッド・オーケストラの名曲「愛のテーマ」は原曲でもデヴィッド・Tはギターをプレイしており、2008年にリリースした13thソロアルバム『Thoughts』でカヴァーした一曲。

03. The Christmas Song
新作『Wear My Love』でカヴァーしたクリスマスの定番ソング。

04. You Make Me Feel Brand New
05. I Want You Back

13thアルバム『Thoughts』でカヴァーされたスタイリスティックスの「You Make Me Feel Brand New」。その後「何かリクエストは?」とデヴィッド・T自らの声掛けに対して「ジャクソン5の曲を」のリクエストに応え「I Want You Back」のフレーズを短い小節数で披露。

06. Santa Claus Is Comin' To Town
07. Have Yourself A Merry Little Christmas

新作『Wear My Love』からクリスマスソングカヴァーを2曲。まずはレゲエテイストにアレンジされた「Santa Claus Is Comin' To Town」。続いてジャクソン5の『Christmas Album』でもカヴァーした「Have Yourself A Merry Little Christmas」。しっとりとした楽曲はデヴィッド・Tのギターと相性抜群だ。

08. Global Mindfulness
13thアルバム『Thoughts』冒頭を飾る一曲。バンドサウンドの中でも圧倒的なダイナミズムを披露する一曲だが、ギター一本でもそのグルーヴは健在。デヴィッド・Tの体にしみ込んだファンキー感覚がにじみ出る一曲。

09. Wear My Love
新作『Wear My Love』のタイトル曲。原曲通りデヴィッド・Tはポエトリー・リーディングを披露。愛を伝えるには幾通りもの言葉や方法がある、というタイトルに込められた想いを語ってくれた。

10. Merry Christmas Baby
新作『Wear My Love』からの一曲。新作ではバーバラ・モリソンのヴォーカルをフィーチャーしていたが、なんと今回はデヴィッド・T自らヴォーカルを披露! 子供の頃から良く聴いてきたというこの曲は、彼のブルースフィーリングが充満。

11. Holidays Are Mirrors
新作『Wear My Love』からのデヴィッド・Tオリジナルの一曲。ホリデーには世界中さまざまな形があり、それぞれの思考やライフスタイルを映し出す鏡であるというタイトル。深い洞察と明るくきらびやかな楽曲のテイストが相まったデヴィッド・Tらしい一曲。

12. Amen
新作『Wear My Love』からのゴスペルナンバー。

13. Lovin' You
急遽追加演奏された一曲。デヴィッド・Tのメロウな一面を代表する定番的な一曲。


2009年12月 ウエヤマシュウジ
Thanks to Akiko Umegaki (DCT records)