David T. Walker Live In Japan 2019
2019年3月のデヴィッド・T・ウォーカー来日公演が大盛況のうちに閉幕!


ドラムにジェイムズ・ギャドソンが加わった新生デヴィッド・T・バンド! 熱くて愛に満ちたステージが繰り広げられました!

東京公演※終了しました
日程:2019年3月5日(火), 6日(水)
会場・問合せ:ビルボードライブ東京

大阪公演※終了しました
日程:2019年3月8日(金)
会場・問合せ:ビルボードライブ大阪


ビデオメッセージが公開されました!(2019.2.25)

来日公演に向けて音楽ライター金澤寿和さんによる特集記事がBillboard Japanのサイトに公開されています。(2019.2.8)

David T. Walker Live in Japan 2019 Set List (2019.03.09)

David T. Walker (Guitar)
Jeff Colella (Piano, Keyboards)
Byron Miller (Bass)
James Gadson (Drums)
※以下は基本的なセットリストです。
※ステージによって曲はじまりに様々な楽曲のフレーズが挟み込まれました。

01. "Eleanor Rugby" or "I Want You"
02. "Going Up" (Intro: "Hard Times")
03. "Never Can Say Goodbye" (Intro: "I Want You Back", Outro: "I'll Be There")
04. "You’ll Never Find Another Love Like Mine" (Intro: If You Want Me To Stay")
05. "Love's Theme"
06. "Inner City Blues" (Intro: "Come Live With Me Angel")
07. "What’s Going On"
08. "Thoughts"
09. "Ahimsa" (Intro: "Windows Of The World")
10. "Lovin' You" (Intro: "On Love")
11. "Global Mindfulness"
12. "Soul Food Cafe"



 前回からまだ1年ちょっとなのに、随分久しぶりの感覚だ。待ちに待ったデヴィッド・T・ウォーカーの来日公演。最近では“マーヴィン・ゲイ・トリビュート”や“モータウン・クラシックス”といったコンセプチャルなステージもあったが、今回はシンプルにデヴィッド・T・ウォーカー・バンドとしての公演とあって、どんなライブになるのか、どんな楽曲がチョイスされるのかと興味津々だったが、もう一つ大きな興味と期待が今回の公演にはあった。

 2007年に初めて単独名義での来日公演が実現して以来、デヴィッド・T・ウォーカー・バンドの一員としてずっと活動をともにしてきた盟友ンドゥグ・レオン・チャンスラーが、前回2018年1月の来日公演を終えてひと月後に急逝。バンドの屋台骨だったンドゥグの存在は大きく、後任探しは容易ではないように思えた。が、フタを開けると、ンドゥグとは違う形でデヴィッド・Tと親しい間柄であるジェイムズ・ギャドソンが後任に。数多のレコーディングセッションで顔を合わせ、80年代のデヴィッド・Tのソロアルバムのレコーディングで組んだバンドWarm Heartのドラマーとしてや、90年代には日米混成バンドBand Of Plesureの一員として活動をともにするなど、幾多の修羅場をくぐってきた同志のような存在のギャドソンはデヴィッド・T・バンドのドラマーとして他には考えられないくらいピタリとハマる抜擢であり頼もしい存在。そのギャドソンがバンドにどんな息吹をもたらすのか。ワクワクは次第に膨れあがっていったのだった。

 そしていよいよ。ステージに最初に登場したのはギャドソン。ひと際大きな体格と風貌もそうだが、オーラは圧倒的だ。ベースのバイロン・ミラーと鍵盤のジェフ・コレラが続いたあと、デヴィッド・Tも登場。カラザース製ギターを抱えて歩く姿はいつみてもスマートで颯爽としている。

 そんな新生デヴィッド・T・バンドがどんな楽曲でスタートするのか。観客全員が固唾を飲んでステージを凝視。今回公演は1stセットと2ndセットはほぼ同じ構成だったが冒頭を飾る1曲目だけは違った。1stセットではビートルズのカヴァー曲「Eleanor Rigby」、2ndセットではマーヴィン・ゲイのカヴァー曲「I Want You」がチョイスされるというあまり例のない構成に。「Eleanor Rigby」は前回公演でもステージ幕開けを飾るにふさわしい躍動感に満ちた1曲だったが、「I Want You」はここ最近の公演ではアンコールラストを飾るグルーヴ感ある楽曲。どちらの曲も掴みという点では申し分ないチョイスだが、ステージによって敢えて1曲だけセットを変えてくるところにも、あらたなバンド体制での意気込みがよぎる。特に2ndセットの「I Want You」は、マーヴィンの原曲でドラムを叩いているギャドソン本人が目の前でプレイしているという光景に、多くの観客が釘付けになったに違いなく、歓喜の瞬間でもあったはずだ。


 続く2曲目は、クルセイダーズの「Hard Times」のフレーズを挟み込みながらなだれ込む、デヴィッド・Tの2ndアルバム『Going Up!』に収録されている「Going Up」。これまでのステージでも何度か披露されているジャジーなこの一曲は、ダークでコントラストのあるライティングも手伝ってステージ全体に深遠さが描写。繰り出される複雑なコードワークでのデヴィッド・Tの手の動きや指の動きの美しさにも惚れ惚れで実にうっとり。4フレットや5フレットにまたがるコードワークでの小指の使い方なんて世界一の美しさと言いたいくらいだ。ジャズ的で閃きに満ちたフレーズを奏でるジェフのピアノも楽曲のイメージを豊かに膨らませていく。1989年にリリースされ、ギャドソンがメンバーとして参加したバンド“Warm Heart”の面々で録音されたデヴィッド・Tのソロアルバム『Ahimsa』でこの曲をリメイクしたこともあり、ギャドソンにも馴染みあることからの選曲だったのかもしれない。アルバム『Ahimsa』から30年、『Going Up!』から50年という、キリの良い節目のタイミングの選曲でもあった。

 続くジャクソン5の「Never Can Say Goodbye」では、ポップなカラーで迫る「I Want You Back」のフレーズをイントロに、曲終わりには「I'll Be There」のフレーズを忍ばせるデヴィッド・T十八番の優しさ溢れるアレンジ。音量を絞りに絞ったところから徐々にクレッシェンドしていく緩急あるアンサンブルはデヴィッド・Tの真骨頂だ。

 ルー・ロウルズの「別れたくないのに (You’ll Never Find Another Love Like Mine)」から切れ目なしにラヴ・アンリミテッド・オーケストラの「Love's Theme」へと続く構成もデヴィッド・Tお気に入りの展開。曲始まりにスライ&ザ・ファミリーストーンの「If You Want Me To Stay」のフレーズをわずかに挟み込む構成は、全く異なる楽曲が実は相通じるストーリーとして描かれるというデヴィッド・Tらしい示唆に富む演出だ。


 そして、マーヴィン・ゲイの楽曲が2曲。「Inner City Blues」と「What's Going On」をメドレーのようにつなげて披露するプレイは、ここ最近のデヴィッド・Tのステージでもお馴染みの展開。でも、さかのぼれば90年代に組んでいたバンド・オブ・プレジャーのステージでも定番だったのがこのマーヴィン・ゲイ・メドレーで、まさにその場でギャドソンもこのメドレーを体現しているという、うってつけの選曲でもあった。「Inner City Blues」では多彩なエフェクトで華やかな音色を奏でるパーカッシヴなバイロンのベースソロが静かな楽曲の中に高揚感を醸していた。

 続いてデヴィッド・Tのオリジナル曲「Thoughts」。東京公演のみ披露されたこの曲は、スローな原曲テンポがさらにゆったりとアレンジされ、楽曲に込められたデヴィッド・Tの思いが一層豊かに広がりを見せた瞬間でもあった。そして「Windows Of The World」のフレーズをイントロパートで奏でながら続いたのが同じくオリジナル曲の「Ahimsa」。非暴力を意味するタイトルが実にデヴィッド・Tらしい一曲で、ステージで披露されるのは久しぶりだが、この曲も原曲ではギャドソンがドラムを叩いており、ボサノヴァ調の軽やかな躍動感でピースフルな世界を描いていた。

 そして、デヴィッド・Tのステージでは欠かせないミニー・リパートンのカヴァー曲「Lovin' You」。バンド・オブ・プレジャーのステージでもギャドソンとともに何度も披露されたこの曲は、骨格は同じでもステージごとに毎回少しずつアレンジは異なり、デヴィッド・Tがメロウで美しい音色とパーカッシヴでキレのある音色でバンド全体を牽引しながら大きな世界を描く一曲。いや、正確にはアレンジを変えているということではなく、メンバー間の呼吸や間合いがステージ毎に違うため緩急や強弱のポイントが毎回異なるのだ。だから、バイロンもジェフもギャドソンも、デヴィッド・Tの一挙手一投足を見逃さないよう、無言の呼吸で一音一音を重ねていく。間奏パートではジェフのピアノが叙情的でエモーショナルに響き合う瞬間が何度も訪れる素晴らしいアンサンブルが繰り広げられた。原曲でミニー・リパートンがサビで“ラララララ”と歌う箇所では、メンバー全員が“ラララララ”の譜割をユニゾンで奏でるなか、バスドラムとわずかなリムショットだけで“ラララララ”を奏でるギャドソンのふところ深さも粋だった。時折り椅子から立ち上がり大きなアクションと渾身のプレイを奏でるデヴィッド・Tの姿に、楽曲のモチーフをさらに大きく包み込む彼の音楽が凝縮されてもいた。この曲をデヴィッド・Tが最初にカヴァーしたのが1976年のソロアルバム『On Love』。それまでもレコーディングセッションでは顔を合わせていたデヴィッド・Tとギャドソンだが、ソロアルバムでがっちり顔を合わせたのはアルバム『On Love』が最初。そんなことに思いを馳せながらステージ上の二人の姿を眺めていると、今回の公演全体が“Love”というテーマに満ちているようにも思えたのだった。


 本編ラストはオリジナル曲「Global Mindfulness」。デヴィッド・Tらしさ溢れるこの一曲はバンド全体が躍動感たっぷりのアンサンブルを紡ぎ出すパフォーマンスで、原曲でドラムを叩いたンドゥグへのバンド全員によるトリビュートのようにも聴こえた。こういう選曲の配慮も実にデヴィッド・Tらしい。敢えて言葉ではなく、音楽家らしく音楽表現でさりげなく伝えようとするところが実に素敵なのだ。

 アンコールは、バンド・オブ・プレジャーでのレパートリーでもあったギャドソンにも馴染みのシャッフルナンバー「Soul Food Cafe」。何度もデヴィッド・T・バンドで披露されたこの曲も、ギャドソンのフィルインが種類の違うドライブ感でバンド全体を牽引。スネアを叩く左手で随所に鋭くハイハットを刻む姿もギャドソンらしい切れ味で、デヴィッド・Tの真骨頂でもあるブルースフィーリングを思う存分引き出して共鳴しているようにもみえた。

 かつてバンド・オブ・プレジャーでギャドソンと活動をともにした清水興さんが「後ろから蒸気機関車で追い掛けられているよう」と評したように、特有のスタイルで16ビートのハイハットを刻むギャドソンは、バスンと重みのあるスネアと弾力感たっぷりのタムとバスドラムを織り交ぜながら重厚な推進力をうみだす。その魅力が加わったデヴィッド・T・バンドがあらたに船出したような今回のライヴ。東京公演のステージ袖にはギャドソンに師事した師弟関係でもあるドラマー沼澤尚さんが終始スタンバイ。ギャドソンがスティックを落とすハプニングの際にも機敏な動きでカヴァーするなど、師匠を全力でサポートする素晴らしい光景が見られたことも付け加えておきたい。

 間もなく80歳を迎えようとするデヴィッド・Tとギャドソン。その少し下の世代のバイロンやジェフも含めて、彼ら4人はポピュラーミュージックの歴史をつくってきたまぎれもないレジェンドで、そんな彼らの生き様のような音楽に触れる歓びは何物にも代えがたいこと。そこにある音色やフレーズはもちろんのこと、呼吸や所作、しぐさや表情に至るまで、奏でられる音楽以上のことがステージ全体に音楽とともに表現される。そんな彼らのステージをみてると、音楽とは何か?人生とは?という禅問答のような問いが自然な感情として沸き起こる。彼らにとって音楽とは人生そのものだという当たり前のことを肌身で感じ、心の底から素晴らしさを納得できるステージがいかに特別なものであるか。そのスペシャルなひとときをわかち合える歓びだけで僕らは幸せなのだ。

 アンコールが終わったステージ去り際に、デヴィッド・Tは観客全員とハグするようなしぐさで愛情と感謝の気持ちを伝えようとしてくれる。いやいや、感謝すべきは僕らのほうだ。どこまでも優しく茶目っ気たっぷりに真摯な心持ちで全力投球のステージを披露してくれる愛に満ちた心意気に、精一杯の拍手で応えたいと心の底から思ったのは、決して僕だけではなかったはずだ。

2019年3月9日 ウエヤマシュウジ




01. "Eleanor Rigby" or "I Want You"
「Eleanor Rigby」は15thアルバム『For All Time』収録のビートルズナンバーのカヴァー。ベスト盤『Music For Your Heart』にも収録。「I Want You」は1976年リリースのマーヴィン・ゲイの名作『I Want You』収録曲のカヴァー。David Tの13作目『Thoughts』や、チャック・レイニーとのユニット「レイニー・ウォーカー・バンド」の『Rainey Walker Band』でもカヴァー収録された一曲。ベスト盤『Music For Your Heart』にも収録。

02. "Going Up"
2ndアルバム『Going Up』と9thアルバム『Ahimsa』収録のオリジナル曲。

03. "Never Can Say Goodbye"
4thアルバム『David T. Walker』収録のジャクソン5のヒット曲カヴァー。冒頭には「I Want You Back」のフレーズも。いずれも原曲でデヴィッド・Tがギターを弾いている名曲。

04. "You’ll Never Find Another Love Like Mine"
13作目『Thoughts』から、ルー・ロウルズの名曲カヴァー

05. "Love's Theme"
13作目『Thoughts』収録。原曲は、バリー・ホワイト率いるラヴ・アンリミテッド・オーケストラによるデヴィッド・Tが参加していた一曲。ベスト盤『Music For Your Heart』にも収録。

06. "Inner City Blues"
1971年リリースのマーヴィン・ゲイの名作『What's Going On』収録曲のカヴァー。1974年リリースの『Live!』収録の同曲にデヴィッド・Tが参加。

07. "What's Going On"
1971年リリースのマーヴィン・ゲイの名作『What's Going On』収録曲のカヴァー。David Tの4thアルバム『David T. Walker』にカヴァー収録。マーヴィン・ゲイの1974年リリースのライヴアルバム『Live!』収録の同曲にもDavid Tが参加。

08. "Thoughts"
13作目『Thoughts』収録のデヴィッド・Tオリジナル曲。

09. "Ahimsa"
9thアルバム『Ahimsa』収録のデヴィッド・Tオリジナル曲。

10. "Lovin' You"
6thアルバム『On Love』、Rainey Walker Band『Rainey Walker Band』、Band Of Pleasure『Live At KIRIN PLAZA』(※再発盤のボーナストラックのみ)に収録されたミニー・リパートンの歌声で知られる名曲カヴァー。

11. "Global Mindfulness"
13作目『Thoughts』収録のデヴィッド・Tオリジナル曲。ベスト盤『Music For Your Heart』にも収録。

12. "Soul Food Cafe"
1989年にデヴィッド・Tが組んだ同名ユニット名義でのアルバム『Soul Food Cafe』に収録され、バンド・オブ・プレジャー『Live At KIRIN PLAZA』にも収録。




●メンバー紹介:

Jeff Colella (Piano, Keyboards) ジェフ・コレラ
ルー・ロウルズのバックで長年デヴィッド・Tと活動をともにした鍵盤奏者。1990年のルー・ロウルズ来日公演にはデヴィッド・Tとともにバンドメンバーの一員として来日。デヴィッド・Tのソロ活動の中では、90年代のソロアルバム『...from My Heart』『Dream Catcher』『Beloved』の3作と、2008年の13作目『Thoughts』に参加するほか、タイロン橋本『Key To Your Heart』でもデヴィッド・Tと共演している。

Byron Miller (Bass) バイロン・ミラー
ハービー・ハンコック、ジョージ・デュークらとのセッションで知られるファンキーベーシスト。80年代のクルセイダーズのライヴツアーでともに活動したのをはじめ、デヴィッド・Tとはスタジオで幾度も顔を合わせた仲。これまで3枚のソロアルバムをリリースし、近年では故ルーサー・ヴァンドロスのバックバンドの一員としても腕をふるったクールガイ。

James Gadson (Drums) ジェイムズ・ギャドソン
60年代にワッツ・103rd・リズム・バンドの一員としてキャリアをスタート。ビル・ウィザースのバンドドラマーとしても活動しながら、数え切れないセッションワークに参加したファーストコールドラマー。デヴィッド・Tとのレコーディングセッションも多く、80年代にはWarm Heartというバンドを結成しデヴィッド・Tのソロアルバム3枚に参加。90年代には日米混成バンドBand Of Pleasureにデヴィッド・Tとともに参加。若い世代のアーティストからのセッション要請が後を絶たないレジェンダリードラマー。