David T. Walker Live In Japan 2018
2018年1月のデヴィッド・T・ウォーカー来日公演が大盛況のうちに閉幕!


2年半ぶりとなる単独名義での来日公演。いつものメンバーたちと織り成す、熱い熱い熱いステージが繰り広げられました!

東京公演※終了しました
日程:2018年1月5日(金), 6日(土)
会場・問合せ:ビルボードライブ東京

大阪公演※終了しました
日程:2018年1月8日(月)
会場・問合せ:ビルボードライブ大阪

来日公演のダイジェスト映像がオフィシャルFacebookで公開されました!(2018.1.13)

David T. Walker Live in Japan 2018 Set List (2018.01.09)

David T. Walker (Guitar)
Jeff Colella (Piano, Keyboards)
Byron Miller (Bass)
Leon "Ndugu" Chancler (Drums)
※以下は基本的なセットリストです。
※ステージによって曲はじまりに様々な楽曲のフレーズが挟み込まれました。

01. "Eleanor Rigby"
02. "Never Can Say Goodbye" (Intro: "I Want You Back", Outro: "I'll Be There")
03. "Global Mindfulness"
04. "You’ll Never Find Another Love Like Mine"
05. "Love's Theme"
06. "Street Life" (Intro: "What A Wonderful World")
07. "Superstition"
08. "Inner City Blues" (Intro: "Come Live With Me Angel")
09. "What's Going On"
10. "Lovin' You" (Intro: "On Love" or "Windows Of The World")
11. "Soul Food Cafe"
12. "I Want You"



 そうだ、この音。この音だよ! 2年半ぶりのデヴィッド・T・ウォーカーの来日公演。ここ数年は毎年のように日本にやってきてくれた印象のあるデヴィッド・Tだが、マリーナ・ショウ公演で前回来日したのが2016年7月、Band Of Plesure公演での来日が2016年1月で、自身のバンド名義での来日は2015年8月以来。随分久しぶりのような気分だ。昨年10月にはベスト盤『Music For Your Heart 〜Best Of David T. Walker〜』もリリースされ、満を持しての来日。待ち遠しかったファンも、ライヴは初めてのファンも、それぞれが「この音」を目の当たりにしたくて会場に足を運んだはず。ふたを開けるとその通り、愛に満ちた音色が観客を大きく包み込んだライヴとなったのだった。


 客電が落ちメンバーがステージに登場すると、デヴィッド・Tは青色の新しいピータース製ギターではなく、以前から使用しているカラザース製ギターを持っている。このメンバーのデヴィッド・T・バンドではずっとカラザースギターを使ってたためそのほうが違和感なくプレイできるとも思えるし、何より、どのギターを使っても聴こえてくる音色はデヴィッド・Tそのもの。プレイしやすいギターをチョイスしたということだろう。

 ステージはビートルズナンバー「Eleanor Rigby」のカヴァーで幕を開ける。続くジャクソン5の「I Want You Back」のイントロから「Never Can Say Goodbye」へと突入する流れはここ数年の十八番的展開だ。サビのメインテーマ箇所で低音階から高音階に弦をスライドさせて駆け上がっていくフレーズがバンドメンバーの音色と合わさると、美しくきらびやかなデヴィッド・Tの音世界が瞬時に開花。会場全体が一気にその世界に引き込まれていく。

 さらにデヴィッド・T特有の東洋的音階フレーズを巧みなコードワークとともに奏でながらオリジナル曲「Global Mindfulness」にスイッチ。テンション高く躍動が全開したあと、間髪入れずルー・ロウルズのカヴァー「You’ll Never Find Another Love Like Mine」からラヴ・アンリミテッド・オーケストラの「Love's Theme」へとステージは続く。ライヴ中、メンバーと阿吽のアイコンタクトをとることが多いデヴィッド・Tだが、特に「You’ll Never Find Another Love Like Mine」では、以前ルー・ロウルズのバックバンドの一員として長年ライヴツアーを共にしたキーボードのジェフ・コレラとのそんなやりとりが際立ってもみえた。


 さらに「What A Wonderful World」のフレーズをデヴィッド・Tのギター一本で静かに柔らかく奏でたあと、テンション高いンドゥグのドラムが鳴り響いてクルセイダーズのカヴァー「Street Life」へ。イントロ箇所をはじめ、低音階から高音階まで大きく動くコード変化が必要とされるこの曲でデヴィッド・Tのコードワークと弦のタッチは実に美しく映え、左手の動きだけをみていても惚れ惚れするうっとり度200%の所作だ。途中、バイロン・ミラーがワウエフェクトを駆使したベースソロを披露しながらバンドアンサンブルは躍動し続ける。緩急と起伏、振り幅の大きなダイナミクスこそデヴィッド・T・バンドの真骨頂だ。

 ステージ後半はスティーヴィー・ワンダーの「Superstition」からマーヴィン・ゲイの「Inner City Blues」と「What's Going On」へとモータウンナンバーが続く。ンドゥグのドラムが起点となって始まる「Superstition」では若き日のファンクネスを彷彿とさせながらもじっくり弾力感をにじませながらフレーズを刻むデヴィッド・Tの姿が。続いて、静かに場面転換をはかるように「Come Live With Me Angel」をデヴィッド・Tのギターのみで奏でたあと、バイロンのベースソロも途中に交えたダークな色合いの「Inner City Blues」から、高揚がクレッシェンドしていく「What's Going On」へと連なっていく流れはまさに高低差ある緩急の至福。会場の盛り上がりが一つのピークを迎えたかのような華やかなアンサンブルとストーリー性あふれるステージングに、心ときめく瞬間が何度も訪れる。

 ここまででも十分に素晴らしいライヴだったが、忘れちゃいけない十八番中の十八番、ミニー・リパートンの「Lovin' You」が待ってましたとばかりに続く。どこまでも優しく美しい音色のギターが会場全体に響き渡るなか、ほかのどこにも存在しない素晴らしいパフォーマンスが繰り広げられたのだった。


 これまで何度も演じられてきた「Lovin' You」だが、今回のツアーでは一段とテンポを落としたようなアンサンブルが目の前に。一音一音を聴き逃すまいと会場全員が緊張感とともにデヴィッド・Tの音色に耳を傾ける。激しく勢いのあるビートやグルーヴによる高揚ではなく、年齢を重ねた今だからこそふさわしく思える限りなくスローなテンポで、楽曲のストーリーをじっくりとギターで語る姿にじわり胸が熱くなる。テンポを落とす分、一拍に込める情感はより深みのあるものになり、大げさではなく、一音には人生そのものが注がれる。微弱な音量の静寂から高揚が徐々に増し、楽曲後半は椅子から立ち上がって全身でプレイするデヴィッド・Tの躍動。フレーズを奏でるのではなく一音にすべてが注がれるギターの音色を、バンドメンバー全員が注視しながらバックアップする姿にデヴィッド・Tへの限りないリスペクトが覗く。ドラムのンドゥグからは「どんなふうにプレイしてもいい。俺たちが全力で支えるから」と言わんばかりの絶対的な信頼が満面の笑みと強力なドラミングに満ちていた。そしてその信頼を信頼の音色で受け応えるデヴィッド・T。自由度たっぷりの楽曲構成も、多少のミスをミスと思わせない自在なアンサンブルも、この信頼関係あってこそ。このことこそがデヴィッド・T・バンドでしか味わえない素晴らしさなのだ。音を詰め込みすぎることなく隙間を活かしたタイム感を伴いながらジャズ的語彙あふれる創意に満ちたメロディやパッセージを奏でるジェフのピアノも実にロマンティックで、バンド全体の土台と紡がれる歌世界のストーリーを豊かに彩っていた。

 その躍動に会場全体が心揺さぶられたまま、デヴィッド・Tのブルージーなギターソロが共鳴しはじめる。ツアー最終日の大阪公演最終ステージではデヴィッド・Tがセンターマイクに近づきブルースフィーリングたっぷりに即興で弾き語りをはじめる場面も。その流れからジェフがオルガンの音色を炸裂させるシャッフルナンバー「Soul Food Cafe」へと続いてステージは大団円。ソウル、ジャズ、ポップス、ブルースといったあらゆるジャンルの楽曲をバラエティ豊かに網羅したステージだが、そもそもその歴史を築いてきたのは彼ら自身。音楽のジャンル分けが無用であることをも自らの音で表現してしまう素晴らしさがそこかしこに溢れていた。


 アンコールはンドゥグのドラムソロからスタート。あらゆるドラムパーツを自在に操り、毎回ステージごとに姿をかえる引き出しの多いソロプレイは、重量感たっぷりの大きなリズムで観客を魅了しながらそのままマーヴィン・ゲイのカヴァー「I Want You」のイントロへとなだれ込む。前回公演よりもさらにスリムに絞った印象のンドゥグだが、切れ味鋭く力強いドラミングは健在。デヴィッド・Tをして「パワーの源」と言わしめるンドゥグの魅力は、この僅かなソロプレイの時間だけでも存分に伝わり、同時にンドゥグに対するデヴィッド・Tの絶対的な信頼感も浮かび上がってくる。中盤、楽曲のメインテーマから一転し、強烈なファンクネスで迫るアンサンブルには、高い次元で意思疎通をはかりながら、音楽を奏でる楽しさを身をもって証明するデヴィッド・T・バンドの魅力が最大級に充満。胸いっぱいのままステージは終幕したのだった。


 昔からのファンと思われる年配の方から近年の若いファンまで、老若男女あらゆる層が客席を埋めたライヴ。思えばソロデビューとなるアルバム『The Sidewalk』をリリースしたのが1968年だから今年2018年はソロデビューから50年という節目の年。スティーヴィー・ワンダーやマーサ&ザ・ヴァンデラスらモータウンご一行の来日公演メンバーとして初来日したのも50年前の1968年だ。50年という途方もない年月を音楽とともに歩むデヴィッド・T。だがそれはただの50年じゃない。半世紀もの長きにわたって、日本に親しみ、日本を愛し、尋常ならぬ回数で来日を果たしてくれたこんなにもハートのあるギタリストを僕はほかに知らない。優しく、暖かく、美しく、切れ味鋭く、パーカッシヴで、どこまでも伸びやかできらびやかなギターの音色が会場全体と共鳴するとき、そんな彼の生きざまが包み込むようにシンクロする。ほかの誰にも真似できない唯一無二の音色と、その音色に比例するように人間性や哲学までもが、あらゆる世代で聴き手を魅了し続けることの凄みと素晴らしさを実感するのだ。

 ステージ上でデヴィッド・Tが観客に向けて発した「Happy New Year!」の一言。新年早々、愛に満ちたこんなにも素晴らしいステージをみせてくれた彼ら4人の鼓舞がじわり心に刻まれる。今年一年、頑張らなきゃと奮い立たせてくれる。その音はいつだって僕らにありったけの勇気をくれるんだ。

2018年1月9日 ウエヤマシュウジ




01. "Eleanor Rigby"
15thアルバム『For All Time』収録のビートルズナンバーのカヴァー。ベスト盤『Music For Your Heart』にも収録。

02. "Never Can Say Goodbye"
4thアルバム『David T. Walker』収録のジャクソン5のヒット曲カヴァー。冒頭には「I Want You Back」のフレーズも。いずれも原曲でデヴィッド・Tがギターを弾いている名曲。

03. "Global Mindfulness"
13作目『Thoughts』収録のデヴィッド・Tオリジナル曲。ベスト盤『Music For Your Heart』にも収録。

04. "You’ll Never Find Another Love Like Mine"
13作目『Thoughts』から、ルー・ロウルズの名曲カヴァー

05. "Love's Theme"
13作目『Thoughts』収録。原曲は、バリー・ホワイト率いるラヴ・アンリミテッド・オーケストラによるデヴィッド・Tが参加していた一曲。ベスト盤『Music For Your Heart』にも収録。

06. "Street Life"
13作目『Thoughts』に収録されたクルセイダーズの名曲カヴァー。ベスト盤『Music For Your Heart』にも収録。

07. "Superstition"
5thアルバム『Press On』収録の、スティーヴィー・ワンダーのカヴァー。

08. "Inner City Blues"
1971年リリースのマーヴィン・ゲイの名作『What's Going On』収録曲のカヴァー。1974年リリースの『Live!』収録の同曲にデヴィッド・Tが参加。

09. "What's Going On"
1971年リリースのマーヴィン・ゲイの名作『What's Going On』収録曲のカヴァー。David Tの4thアルバム『David T. Walker』にカヴァー収録。マーヴィン・ゲイの1974年リリースのライヴアルバム『Live!』収録の同曲にもDavid Tが参加。

10. "Lovin' You"
6thアルバム『On Love』、Rainey Walker Band『Rainey Walker Band』、Band Of Pleasure『Live At KIRIN PLAZA』(※再発盤のボーナストラックのみ)に収録されたミニー・リパートンの歌声で知られる名曲カヴァー。

11. "Soul Food Cafe"
1989年にデヴィッド・Tが組んだ同名ユニット名義でのアルバム『Soul Food Cafe』に収録され、バンド・オブ・プレジャー『Live At KIRIN PLAZA』にも収録。

12. "I Want You"
1976年リリースのマーヴィン・ゲイの名作『I Want You』収録曲のカヴァー。David Tの13作目『Thoughts』や、チャック・レイニーとのユニット「レイニー・ウォーカー・バンド」の『Rainey Walker Band』でもカヴァー収録された一曲。ベスト盤『Music For Your Heart』にも収録。




●メンバー紹介:

Jeff Colella (Piano, Keyboards) ジェフ・コレラ
ルー・ロウルズのバックで長年デヴィッド・Tと活動をともにした鍵盤奏者。1990年のルー・ロウルズ来日公演にはデヴィッド・Tとともにバンドメンバーの一員として来日。デヴィッド・Tのソロ活動の中では、90年代のソロアルバム『...from My Heart』『Dream Catcher』『Beloved』の3作と、2008年の13作目『Thoughts』に参加するほか、タイロン橋本『Key To Your Heart』でもデヴィッド・Tと共演している。

Byron Miller (Bass) バイロン・ミラー
ハービー・ハンコック、ジョージ・デュークらとのセッションで知られるファンキーベーシスト。80年代のクルセイダーズのライヴツアーでともに活動したのをはじめ、デヴィッド・Tとはスタジオで幾度も顔を合わせた仲。これまで3枚のソロアルバムをリリースし、近年では故ルーサー・ヴァンドロスのバックバンドの一員としても腕をふるったクールガイ。

Leon Ndugu Chancler (Drums) レオン・ンドゥグ・チャンスラー
マイルス・デイヴィスやハービー・ハンコック、ジョージ・デュークらのリズム隊を担ったソリッドドラマー。70年代後半に自身のユニット「チョコレート・ジャム・カンパニー」を率いて『The Spread of the Future』『Do I Make You Feel Better?』の2作をリリース。80年代にはクルセイダーズの一員としても腕をふるい、90年代にもデヴィッド・Tのソロ作をサポート。きらびやかで骨太なリズムとシャープなスティックさばきを披露している。